僕の名前は虹野としゆき、 家には一匹の同居人がいる。 赤頭巾のような服を着た実装石のユウ、 ある日の仕事の帰り、野良実装によって リンチされて殺されかけている所を助けて以来なつかれている。 人間の手によって彼女の片眼は焼き潰され眼帯で覆われている。 声帯も焼かれ濁音のついた声だ。 ユウ 「ゴジュジンざんおながへっだデズゥ〜」 としゆき 「はいはい、待ってな、」 「今実装フードを細かくして卵とご飯を混ぜて焼いた実装炒飯が出来るからな」 ユウ 「ゴジュジンぞれあまりおいじぞうじゃないデズゥ・・。」 と、何時ものやり取りをしているとバンバンと窓を叩く音がする。 どうやら招かれざる客のようだ。 窓の外には石を持った野良実装石の親子がいる。 リンガルを使って窓の外の実装と会話する、 としゆき 「何のようだい?ここは君の家じゃないよ?」 実装石 「クソニンゲン!早くここを開けるデス!」 としゆき 「だからここは君の家じゃないと言ってるだろう?」 実装石 「寒いから早く入れろと言ってるデス!!」 そんなやり取りをしている一人と一匹を見て ユウは過去の自分を思い返していた。 ・ ・ ・ ・ ・ 〜時は一ヶ月前〜 公園のベンチで一人煙草を吸ってる男が居た。 そこへ一匹の実装石が現れた。 「そこのクソニンゲン!!ワタシを飼えデス!!金平糖とステーキとスシを差し出すデス!!」 典型的な糞虫、これが後にユウと呼ばれる実装である。 男は煙草を吹かしながら何処吹く風とばかりに実装を無視していた。 怒った実装がポフポフと足を殴り始めた頃、 リンガルを使い男はこう言った。 「実装ちゃん実は僕とってもアンマァ〜イ金平糖持ってるんだけどさぁ」 そう言うと見る間に実装の口の端から涎がだらだらと零れ落ちる 男は言った 「 欲 し い か い ?」 実装は当然 「欲しいデス!!」 と言った。 男は言った 「なら眼を瞑って口を開けてごらん、そうした方が何倍も美味しく感じるよ?」 実装は 「分かったから早くするデス。」 と眼を瞑り口をアーンと開けた そこへ男は火の付いた煙草を放り込んだ!! 実装 「!?デギャアアアアアアアアアア」 実装は転げ周り公園中に響くような絶叫を上げる。 男はゲラゲラと笑いながら二本目の煙草に火を付けた。 暫く転げまわった後実装は憤怒の如く怒り狂い 男の足をポフポフとまた殴り始めた。 実装 「なんで事ずるデェズ!バガニンゲン!!」 声帯が焼かれたのか実装は濁音の付いたガラガラ声で怒鳴る 男は 「うっせーよっ!」 と言うや否や火の付いた煙草を実装の緑色の眼に突き刺した。 実装 「グェヒィィィィィギャアアアアアアア!!」 またも実装は転げ回り、男は大笑いする。 そして痛みのあまり実装が白目をむいて仮死した後、 男は公園を出て行った。 目を覚ました後の実装に待ち受けていたのは、 同属による異端者リンチだった。 周りを弱者を蔑む目が覆う。 「こいつ変な声デスゥ!!」 「ボコボコに殴ってやるデスゥ」 「髪と服を剥いでドレイにするデスゥ」 髪を全て引き抜かれ実装服をビリビリに破かれる。 実装 「デエエエ、何ずるデズ!!やめろデェズ!!」 完全に禿裸にされた実装に対して野良達が罵声を浴びせる。 野良 「お前などドレイになるのがお似合いデス。」 野良 「デププ高貴で美しいワタシのと違ってなんて醜いデス」 「オマエなんかワタシの糞でも食えばいいデス。」 野良仔 「チププ、マヌケテチィ、醜いテチィ〜」 デププ、チププと言う野良達の中、 禿裸にされた実装のプライドは粉々になっていた。 実装 「デビック、デビック、デェエエエエエエエエン」 実装は自分のあまりの惨めさに泣き出してしまった。 それをきっかけに野良達の加虐心に火がついた。 「ウルサイデス!禿裸の癖に泣くなデス!」 「そうテチィ!生意気テチィ!ぶっ殺すテチィ!」 取り囲む野良達の輪が小さくなる、 数匹の子実装達が殴り蹴りし始め、それに成体が数匹加わり あっという間に袋叩きになった。 実装 「デエエエンデエエエン、やめるデズゥー」 野良 「デッピャッピャッピャ、泣き喚けデス!!」 野良仔 「テチテチ!シネテチィ!オマエなんか糞以下テチィ!!」 集団による暴力、 実装は身も心もボロボロになった。 野良 「そろそろコイツにも飽きてきたデスゥ、」 野良仔 「ママ!コイツ殺しちゃえばいいテチ!!」 野良 「そうデスゥ!こんな奴生きる価値ないデスゥ!」 —殺される! 目の前にある死の恐怖、 自分が殺されると言う絶対的な恐怖、 実装は死を覚悟した。 その時だった。 としゆき 「お前ら何してるんだ!!!」 死の寸前にニンゲンが現れた、 —ああ、ワタシは殺されるのだろうか、 だが実装の予想とは違い彼は、 周りの野良実装を掻き分け彼女を抱きかかえた。 朦朧とした意識の中、ボロボロの実装は思った、 —何、デス?とても暖かいデス、とても暖かい・・・。 彼は急いで実装病院へと向かった。 〜実装病院〜 としゆき 「誰か!急患なんです!この子を、この子を助けてやってください!!」 彼は病院にもかかわらず大声を上げたが、 看護士はすぐに状況を理解したのか診察室へと彼を通した。 医者 「如何なさいましたか?」 としゆき 「この子が公園で野良実装達に集団リンチを受けていたんです。」 医者は顔をしかめた。 医者 「当院では野良実装の無償での治療はしてないんですよ。」 —ワタシの為なんかにニンゲンはオカネなんて払わないはず。 としゆき 「お金は払います!この子を助けてやってください!」 —何故?この人は何でワタシを助けるの? 医者 「野良実装の為に何故そこまでするのですか?」 彼は医者の問いに答えなかった、ただ必死に言葉を発した。 としゆき 「お願いします、この子を助けてあげてください。」 医者 「・・・分かりました、まずは偽石を摘出しましょう。」 医者は手際良くボロボロの実装服を脱がせ、 麻酔をかけた実装の腹にメスを入れ、偽石を取り出した。 黒ずみひび割れた偽石に粘土の様なローゼン社製偽石補修剤を塗りこむ。 そしてビンに入った栄養剤に浸した。 医者 「ひとまずこれで死ぬ事は無いでしょう。」 としゆき 「よかった・・・。」 としゆきは心から安堵の溜息を漏らす。 —この人は、なんでワタシを・・。 実装の意識はまどろみ深い眠りについた。 医者 「体の傷の方は自然に完治すると思います。」 「ですが喉と目のほうは人為的に焼き潰されていて回復は不可能だと思われます。」 「髪の毛の方は植毛された方が良いでしょう。」 実装石にとって命の次に大切な物ですからと、医者は言った。 医者 「傷の完治と植毛が済むまで一週間ほどかかります。」 「一週間後にまた来て下さい。」 ・ ・ ・ ・ 一週間後、実装石を迎えにとしゆきは実装病院を訪れた。 としゆき 「あの、すみません、」 「こちらで預かってもらっている実装石の子を引き取りに来たのですが、」 看護士 「どうぞこちらへ」 としゆきは実装シリーズの入ったケージの方まで案内される。 看護士 「えーっと、たしかこの子ですよね。」 そこには片目こそ焼き潰れて眼帯で覆われているが、 見ためほぼ完治した実装石が居た。 —あのヒトデス、ワタシを助けてくれたヒトデス! 実装はとしゆきの姿を確認するとすぐにケージの前に走った。 看護士 「髪の毛の方の植毛も終わりましたし、」 「偽石も体内に戻してあります。もう退院できますよ。」 としゆき 「そうですか、良かった。」 ほっとした表情のとしゆきに看護士は軽く微笑む。 その時実装が何か言っているのに気付く、 看護士 「何かお話したいようですね、リンガルを点けましょう。」 看護士がケージの横にあるリンガルを起動する。 実装 「あなだは何故ワタシを助けでぐれだデズ?」 実装が問いかける、その言葉にとしゆきは言った。 としゆき 「助けたかったからだよ。」 実装 「何故デズ?ワダジどあなだは関係無いはずデズ」 としゆきは苦笑しながらもこう答えた。 としゆき 「それでもだよ、ほっとけなかったんだ。」 実装 「・・・。」 としゆき 「僕は君を家で飼う事に決めた。」 「今日からは君は僕の家族だ。」 実装の瞳から一筋の涙が零れた。 としゆき 「あと、これ、」 ゴソゴソと鞄を漁るとしゆき、 そしてようやく一着の実装服を取り出す。 赤い頭巾と白いフリルのエプロンの付いた赤い実装服。 としゆき 「気に入って貰えると良いのだけど。」 実装 「うれじいデズ、ありがとうございまずデズ。」 さっそく病院服から受け取った実装服に着替える実装、 着替えたその姿は童話の赤頭巾のようだった。 としゆき 「君の名前も考えたんだけど、いいかな?」 実装 「デ、な、なまえデズ?」 としゆき 「うん、ユウ、優しいって字でユウって読むんだ。」 ・ ・ ・ ・ ・ 回想は終わり、現実へと戻る。 野良実装 「寒いから入れろデス!!飯を寄越せデス!!」 としゆき 「だからここは君の家じゃない!飯を食わせる義理も無い!!」 ユウ 「ゴジュジンざん・・・。」 としゆき 「ん?なんだユウ?」 ユウ 「ワダジの分のご飯を上げて欲しいデズゥ」 としゆき 「ユウ、一度やったらまた来るぞ」 ユウ 「彼女には仔が居る見だいだがらがわいぞうデズゥ」 としゆき 「まったく、ユウは優しいな」 仕方無しにとしゆきは窓を開けた。 すると野良が我が物顔で入って来た。 野良実装 「今日からここは私達の家デスゥ!!」 野良仔実装 「テチュテチュ〜ン暖かいテチュ〜!!」 野良仔実装 「ご飯!ご飯はどこテチュ!」 としゆきが実装フードを混ぜた炒飯を持ってくると野良達は 夢中で貪り食った。 野良実装 「ムガムガガフガフ」 野良仔実装 「モグモグ、テチューン美味しいテチュ〜♪」 「ウマウマテチューン♪」 としゆき 「飯食ったらとっとと出てけ」 野良実装 「デ?何でワタシ達が出てくデス?出て行くのはオマエらの方デス!!」 「この家はもう私たちの物デス!!とっとと出て行けデス!!」 と言うや否や実装はパンツに手をいれ、糞を掴み出し、としゆきに投げ出そうとした。 その瞬間、野良の顔面には鋭いパンチが叩き込まれていた。 野良 「ブギャアアアアアアアア!!!」 拳を叩き込んだのは何とあのユウである ユウ 「ゴジュジンに失礼をはだらぐものは許さんデズゥ」 静かにユウは言った。 その形相はまるで鬼のようだった。 野良達はもちろんの事としゆきでさえその表情に固まったそして ユウ 「次はゴロズ」 この言葉を聞いた瞬間野良は仔を脇に抱え窓から逃げ出した。 としゆき 「ユ・・・ユウ・・。」 ユウに向かってとしゆきが話しかけると、 何時もの優しげな表情に戻り ユウ 「ゴメンナザイデス、ゴジュジン」 と謝ったその表情が何処か寂しげでとしゆきはユウを抱きしめた。 としゆき 「いいよ、ありがとな。」 そう言うと、嬉しそうにユウは微笑むのであった。

| 1 Re: Name:匿名石 2017/08/22-22:38:53 No:00004848[申告] |
| 偽善者の主人公はその偽善の故己を滅ぼすが良い |
| 2 Re: Name:匿名石 2017/08/25-20:38:43 No:00004850[申告] |
| こりゃまた懐かしいのが浮上してきたなぁ
改めて読み返したが他の数作含めて壮大な物語のプロローグだけ読んだ感じ、 俺が未発見なだけでどこかでシリーズ続編が有るのだったら失礼。 正直物足りないと思ってしまったが、起承転結の起として見れば興味を引かれる逸品。 もし作者さん見てたらまた何か書いて欲しい。 |