タイトル:【馬】 映画の新作が公開されるということなので
ファイル:デスゥ・ノート① 微修正版.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:1804 レス数:1
初投稿日時:2008/01/30-00:07:37修正日時:2008/01/30-00:07:37
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【デスゥ・ノート 1】


『デェッ、デェッ…』
その赤い実装服を着た実装石は林の奥の太い木の陰に転がり込むと、
大の字に倒れ込んだ。
『デェッ…こ、ここまで来れば大丈夫デスゥ…?』
息が荒いのは今まで全力疾走していたからだ。
『デェッ…こ、この公園は、デェッ…怖い所デスゥ…
 ご主人様、早く、デッ…迎えに来てデスゥ…』
テキーラは値段の割によく躾けられたペット実装だった。
ただテキーラの産んだ仔実装の半分以上が糞蟲であったために、
初心者の飼い主に愛想を尽かされて子供達と一緒にこの公園に捨てられたのである。
いつも散歩に行く近所の小さな公園ではなく車で1時間以上かかるこの公園に捨てたのは
野良が多数生息している大きな公園の環境ならテキーラ一家も暮らしていけるだろうという
思いやりではなく、ただ単に戻ってこられないようにという判断からだった。
『デェェェェン、ご主人様ァ、子供達がみんな死んじゃったデスゥ…
 このままじゃ、デェッ、テキーラまで死んじゃうデスゥ…』
6匹いた子供達は1匹も残っていない。
ただでさえ元飼いの仔実装など野良のいいエサだというのに、
目立つ赤い実装服を着ていたのである。
元飼い主が立ち去って10分と経たないうちに子供達は踊り食いにされた。
大勢の〈公園に住むお友達〉に殴られ、蹴られ、耳をかじられながらも、
最初は子供達を守ろうとしたテキーラだったが、
自分の子供が実際に食い殺されるのを見てアッサリと逃げ出した。
それがほんの30分前のことだ。
『オロローーーン、ご主人さ…デッ?デデッ?』
何かが…空から降りてくるのが見えた。


ソレは樹の枝の間をぬって、〈落ちて〉くるのではなくゆっくりと〈降りて〉きた。
通常ではありえない不自然な現象だと、ニンゲンなら恐怖を感じるかもしれないが、
科学的知識の無い実装石には、ただ興味を引くだけだった。
『デ?いったい何デスゥ?』
テキーラは疲れた体をゆっくりとひっくり返してうつ伏せになると、
ソレが着地した場所に向かってモソモソと四つ這いで近づいた。
正体は何だかわからないが、ソレは黒く、四角く、平べったかった。
少し離れた所から匂いを嗅いでみる。
なんとなく嫌な匂いがするが、地面の上に落ちているだけで動く様子はない。
これといって危険はなさそうだ。
テキーラはさらに近づくと、それを手に取って見た。
『デスゥ・ノート…デスゥ?』
ちゃんと躾を理解できた元飼いとはいっても、ニンゲンの文字を読めるほど賢いわけではない
テキーラだったが、ナゼかその黒いモノの表面に書かれた銀色の文字は読むことができた。
パラッと表紙をめくってみる。
そこにはデスゥ・ノートの使い方が書かれていた。
やはりナゼかテキーラにはその文字が読めて、意味も理解することができた。
《このノートに名前を書かれた実装石は死ぬ。》


『これは…これを使えばワタシの子供達を食べた〈怖いお友達〉を殺せるデスゥ?』
テキーラはすぐに考え始める。
『これで〈怖いお友達〉を殺せば、ワタシは死ななくて済むデス!
 ご主人様が迎えに来るまで安心して待っていられるデス!』
元飼い主が迎えに来ることなど有り得ないのだが、幸福回路が働き始めたテキーラの中では
優しいご主人様が迎えに来るのはもう疑う余地のない決定事項である。
『子供達のカタキも討てるデス! それだけじゃないデス!
 高貴で美しくて賢いうえに〈怖いお友達〉を皆殺しにできるほど強いワタシなら、今のケチな
 ご主人様じゃなく、もっとワタシにふさわしい大金持ちのご主人様が迎えに来るはずデス!
 もうボソボソの徳用フードじゃなく、毎日がフードのステーキデス! フードの寿司デス!
 フードの踊り食いデス! コンペイトウだっておかわり自由なんデス!
 きっとこのノートは高貴なワタシを助けるために神様がくれたんデス!』
現実離れした妄想で勇気が湧いてくると同時に、体にも力が湧いてきた。
テキーラはスクッと立ち上がると、ノートを持って元来た方向、
公園中央の噴水広場へと向かって走り出した。


『デェェ、美味しかったデスゥ。』
『やっぱり飼い仔実装は丸々と太ってアブラがのっていて、最高デッスーン!』
『それにキレイに洗ってあるし、フードやコンペイトウしか食べてないから臭みもないし、
 自分の子供とは一味違うデスよ。』
『もっと食べたいデスゥ、まだ食べ足りないデスゥ。』
『デシャシャシャシャ!』
公園中央の噴水広場では、テキーラの子供達を食い殺した野良達が久々のご馳走の余韻に浸りながら
無駄話に興じていた。
地面に広がる赤と緑の染みはテキーラの子供達ばかりではないが、この公園では日常茶飯事だ。
誰も気にしていない。
『おい、オマエ達! 覚悟するデス!』
なごやかな雰囲気は一匹の実装石によって破られた。
野良達の視線が一点に集中する。
赤い実装服を着てベンチの上に立つ実装石。
左手には黒いノート、そして右手にはノートに付属していたこれまた黒い鉛筆を持っている。
言わずと知れたテキーラである。
『ワタシの子供達を食べたオマエ達は絶対に許さないデス! 
 これからこの〈デスゥ・ノート〉にオマエ達の名前を書いてやるから覚悟するデス!』
ビシィッ!
右手に持った鉛筆で野良達を指してポーズを決める。
シーン…
一瞬の静寂の後にドッと笑いが沸き起こる。
『デププププ! コイツ馬鹿デス!』
『名前! 名前だってデスゥ! デププププ!』
『だいたい、ノートに名前を書いたらどうなるっていうんデス? デププププ!』
生まれながらの飼い実装であるテキーラは、ニンゲンに名前を付けてもらうのが
当たり前のことだと思っていたが、野良で名前を持っている実装石は稀だ。
テキーラと同じように捨てられた元飼い実装か、
元飼いの親に名前を付けられた仔実装くらいのものである。
しかもどちらも、公園での生存率は著しく低い。
『だまれデスゥ! 笑うなデスゥ!』
顔を真っ赤にしてベンチをダンダン! と踏み鳴らすテキーラ。
しかし野良達の笑いは止まらない。
『デププププ! 飼い実装は底無しの大馬鹿デス!』
『デッ、デッ、もう駄目デス! ツボに入りまくりデス!』
『デヒーッ、デヒーッ、笑いすぎてオナカが痛いデス!』
むしろ腹をかかえて地面を転げまわり、ますます笑いまくっている。
『コイツら、ワタシの仔を食い殺したうえに高貴なワタシを笑うとは、
 もう許さないデス!』
実装石を殺す〈チカラ〉を手に入れたことで、自分自身が強くなったと勘違いしたテキーラは
ベンチから降りると、腹をかかえて地面を転げている野良実装に近づき、無謀にも蹴りを入れ始めた。
『このっ! オマエら! 笑うなデス!
 ワタシは! オマエらとは違って! 選ばれた! 高貴な! 存在なのデス!
 オマエら! ごときが! 笑っていい! 存在では! ないの! デス!』


そしてそれがテキーラの最期の言葉になった。
後には赤と緑の染みだけが残った。


−− 終わり −−





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

初スク : マラ実装エステの時代

次スク : 本作

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1 Re: Name:匿名石 2016/11/20-05:05:06 No:00002909[申告]
作者さんの新作から
こっちは本物の超常現象っぽいけど名前がない野良には効かなかったか
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