承前 男が仔実装一匹を残し、実装一家を皆殺しにした。 仔実装は男の手で精神をいたぶられ続けた。 男は仔実装に自分が同族殺しであるという意識を与えた。 男は仔実装にカルマ(≒同族殺し)という名を与えた。 * 駅前。 「かわいそうな実装石を助けましょう!」 「デスデデスーーーーーー!!!!!!!!!」 横断幕。看板。陣取る人々。着飾った実装石の群れ。 通りすがりの若い女性がふと足を止める。女が話しかける。 「かわいいでしょう。私は実装石が大好きなの」 女はそう言って一頭の実装石を手に取り、頭をなでた。そして続ける。 「ご存知ですか?実装石は今、色々なところで苦しんでいるのです」 「は、はあ・・・」 「これを見てください」 ファイルを覗き込んだ若い女性は絶句する。虐待された実装石の写真。 「これは虐待派がインターネットにアップロードしていたものです。それからこれ、それに・・・」 次々と見せられる残酷な写真。若い女性はただ絶句するしかない。 「酷いですね・・・」 「そうでしょう!今!行われているのですよ!助けたいとは思いませんか?!」 「そうですね・・・どうしたら助けられますか?」 女は嬉々とした顔で紙を示す。 「今、署名を募っていますので、お気持ちがあるのでしたら署名してください。あと、これはチラシです。お暇なときにでも」 若い女性はペンを受け取り、署名を書き始めた。 一部始終を見届けて、そっとカルマに声をかける。 「分かるか、あれが愛護派のやり口さ」 「正しいことをしているテチ!」 「いいや、あの若い女の人の顔を見てみな。嬉しそうだろう?」 「そうテチね・・・?」 「説明は後。今は出来ることをしなくちゃね」 若い女性に近寄る。 「署名は済まされましたか?」 「ええ」 「もしお気持ちがあるのでしたら、出来ることをなさってください」 「ええ、もちろん」 女性は嬉しそうだ。 「くれぐれも無理はなさらないでくださいね」 「・・・?」 「いえ、たまにいるんですよ。入れ込みすぎて自分の生活を持ち崩す人が」 「やだあ、そんなことはしませんよ」 「あと、虐待派は皆殺しにしてやる、とか言い出したり。殺人はどう考えても犯罪です」 にっこり笑っておく。 「ふふ、そうですね」 若い女性を見送ると、女が話しかけてきた。 「この間ね、家に隣の人が押しかけてきたのよ」 「どうなさったんですか?」 「実装石がデスデス煩いとか言うのよ!信じられないわ」 「まあ、好みが分かれるといいますし・・・」 「臭いとも言ってたわ。それに実装石の数が多いですって!人の生活にケチをつけないでほしいわよ、もう」 「そうなんですか・・・ちなみに何頭ほど飼っておられるのですか?」 「今はねえ、百頭くらい」 「いやいや、多いでしょう。またどうしてそんなに飼っちゃうことになったんですか?」 「だって、かわいそうじゃない!」 「えーと、つまり、拾ってたら、ってことですか?」 「そうなのよお。たくさんいるでしょう」 「いやー、でも、エサ代とかフンの始末とか・・・大変じゃないですか?子供も生まれますし」 「実装石のためならへっちゃらよ!」 「でも百頭って、凄い金額になっちゃうんじゃ・・・」 「そうなのよねえ・・・月二十万はかかっちゃうし」 「ど、どこからそんなお金が・・・」 「働くのよ。悪人ばっかりの酷い職場でも耐えられるわ」 「・・・悪人といいますと?」 「弁当工場なんだけどね、入ってきた実装石のあの緑の服を脱がせて!あのきれいな毛も抜いて! 公園に追い返すのよ!!ご飯が無い実装石の気持ちも分かってあげてほしいわ!!」 「てことはこっそりあげてたりとか」 「してたら主任が怒り出すのよ!規則だからだって!仕方ないけど、もう、信じられない!」 「そうですか・・・」 皆に挨拶する。 「これから用事がありますので、失礼します」 「今日は来てくれてありがとう。またね」 「はい。それでは」 家に帰り、カルマに話しかける。 「やつらがどういう人間か分かったか?」 「分かったですテチ!凄くいい人たちですテチ!」 ペンで殴りつける。ペンが頭にめり込む。 「もう一度言ってみろ」 「・・・テ・・・テチ・・・」 「やつらには意思がない。感情だけで動いているんだ」 「分からないテチ・・・」 「お前が意思を持てば分かる」 「テ・・・?」 * 数日もすると頭の傷は回復していた。 「今から虐殺に行こうか」 「テェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!!!!!!!!!!」 「ほら、行くぞ」 「テ・・・」 公園に着く。 「ほれ、デスゥガン。仔実装向けだぜ」 「テェ・・・」 デスゥガンを装着する。 「うーん、仔実装向けに工夫したんだろうなあ」 むしろカルマが砲に固定された形になり、カルマは砲の支柱を中心に、水車よろしくその場で回ることしか出来なくなっていた。 「はは、これじゃ機関砲みたいだな」 「テェ・・・?」 「これを押してみな」 「テチ?」 タン!という音とともにBB弾が発射される。 「テチーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」 「わかったな?ちなみに長押しで連射だから」 「テェ・・・テェ・・・」 カルマはこくこく頷くばかりだった。 辺りを見回す。いた。 「お、あそこにいるぞ、撃て!」 「テ・・・」 「撃たないのか・・・そのつもりなら、まぁ独りで頑張りな。じゃ」 「テ?!」 独りになったカルマに野良実装が近づいていく。成体実装。体躯は数倍。 「デププ」 「デプ」 さらに次々と野良実装が近寄っていく。 「テ・・・テ・・・テ・・・テェェェェェェェェン」 「撃てば倒せるぜー」 遠くから声をかける。 「テェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーン」 「はーやーくー撃ーてーよー」 「テチャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 タン!タン!タタタタタタタタタタタ!!!!!!!!! 「デボアッ!!」「デズアッ?!」「デアッ????!!!!!」 「デ、デアア・・・」 野良実装達が逃げていく。 「テチャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 タタタタタタタタタタタ!!!!!!!!! 「デゲッ」「デブアッ」「デズアアアアアアアアアアア・・・」 「・・・初めてのくせに追い討ちをかけるとは、やるな・・・!」 こうして戦うこと数度。 「カルマ、戦い方には慣れたか?」 「テチ!」 場所を移す。 「いいか、まず俺が金平糖を撒いておびき寄せる。そして馬鹿共が集まってきたところで、お前がデスゥガンをぶっ放す!」 「テチ!」 しばらくすると野良達が寄ってきた。 「まだだ・・・まだ・・・よし、撃てぃ!」 「テチャーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!」 タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 小さな広場は倒れた実装石で埋め尽くされた。 「今日は楽しかったテチ!」 「そうかそうか、楽しんだなら良かった。また来ような」 「テチ!」 * 「じゃあ・・・このグリューンと遊ばせてください」 「飼い実装をいたぶるのは楽しいテス」 「殺すなよ、こっちも三万円は正直痛いからな」 「分かったテス。じっくり楽しむテス」 「ほれ、首輪だ。これでまさしく飼い実装だよ」 「ありがとうございますデス!」 「カルマ、今日の戦果は?」 「ざっと二十匹というところデス」 「もう実蒼石も顔負けだな」 「デス!」 「実はお願いがあるデス」 「なんだ?」 「仔供が欲しいデス」 「仔供か・・・」 「はいデス」 「・・・いいぜ、生めよ」 「ありがとうございますデス!」 「テッテレ〜♪」 「見てくださいデス!私の仔デス!!!」 「ほお・・・じゃあ早速だが、こいつらを殺せ」 「デエッ?!」 「殺せ」 「いやデス・・・」 「は?今まであれだけ殺してきてか?」 「自分の子は殺したくないデスーーーーーーー!!!!!!!」 「じゃあ俺が殺す」 「いやデス」 「力で負けるのは分かっているだろう?」 「それでもデス」 「・・・同族をただ殺してきた報い、なんだがな」 「・・・デ?!」 「カルマ・・・お前、自分の同族をひたすら殺してきたんだろ?」 「・・・殺してきたデス」 「その力はどうして手に入った?」 「デスゥガンや実装格技を教えてもらったからデス」 「誰の手で?」 「アナタの手でデス」 「人間の力を使って、実装石を殺した」 「デ・・・」 「そして今、人間の命令に逆らう」 「・・・」 「わかるか?都合のいいところでは人間に媚びておいて、都合が悪くなったら刃向かってるんだよ。しかもお前のご都合でな」 「デ・・・デアアアアアアアア!!!!!!!!」 「選ぶ時間をやる。考えろ」 * 「分かったデス!」 「何がだ?」 「私は悪くないデス!」 「は?」 「言ったのはあなたデス!私は言われたまま動いていただけデス!」 「やったのはお前なんだがな」 「やらされていたデス!」 「楽しそうにやっていてか?」 「デ・・・・・・」 「お・ま・え・が・コ・ロ・し・た・ん・だ・よ」 「デズアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!」 「騒いだらガキを一匹殺すぞ」 「デアア・・・」 「そうそう。お前、酷いことをしているからな」 「デ?」 「生・き・よ・う・と・す・る・や・つ・ら・を・コ・ロ・し・た」 「・・・デ?」 「お前は他の実装石より偉かったか?」 「他の奴らより強いデス!」 「人間に媚びて強そうに見せかけた だ け だろう?」 「お前は実装石だ。どこまでもな」 「カルマ・・・」 「デ・・・?」 「俺に従って仔を殺すか、仔を連れて出て行くか、選ばせてやる・・・返答次第では仔を皆殺しにするが、な」 「もちろん、仔を連れて出て行くデスゥ」 「・・・まず一匹」 七女を潰す。 「デアッ?!何がいけなかったデスゥ?」 「もう一匹」 五女を潰す。 「やめるデスッ!!出て行くのに殺す必要は無いデスッ!!」 「まだ言うか」 四女を潰す。 「お願いデスッ!殺さないでデス!!!」 「お願い、ねぇ」 長女を潰す。 「やめてデスゥ!あなたこそ気まぐれに殺してるだけデスゥ!」 「そう見えるか」 次女を潰す。 「これは嘘デス!信じないデスゥ!!!」 「事実ですから」 六女を潰す。 「デアア・・・デ・・・デェェェェェェェェェェェェェェェェン」 「泣いても始まらないぜ」 十女を潰す。 「そうデス!私を助けたらきっとあなたの実装殺しの罪も軽くなるデスゥ」 「は?」 八女を潰す。 「デッスゥ〜ン♪」 「もはや意味が分からないな」 九女を潰す。 「デェェ・・・最後の仔デスゥ・・・この仔だけは守るデスゥ・・・今すぐ出て行くデスゥ」 「・・・失せろ」 「分かりましたデスゥ」 「今まで飼ってくれてありがとうございましたデス・・・」 「とりあえず、住むならお前がもと居た公園が近いし一番快適だろう・・・それからお前の仔に名前をやりたいのだが」 「本当デス?どんな名前デスゥ?」 「マイムナー」 「・・・変な名前デスゥ」 「・・・うるさいな」 「これからあなたの名前はマイムナーデスゥ」 「マイムナーテチ?分かったテチ!」 「最後にひとつ頼みがある」 「何デス?」 「ゴミがあるから出しに行ってくれ。生ゴミとダンボールとビニル袋と新聞紙だ。あと、デスゥガンも要らないから捨てておいてくれ」 「・・・分かりましたデス!」 「では、今度こそさようならデスゥ。マイムナーもさようならを言うデスゥ」 「さようならテチ!」 「ああ、さようなら・・・」 またどこかで逢おうな、と言いかけたが、やめた。そしてただ、二頭が去っていく後姿を眺め続けた。 -------------------------------------------------------- あ。終わっちゃった(汗) というわけで「公園にて」シリーズは終了です。 なお、不発に終わった愛護派フラグその他いくつかのフラグの回収はもうしばらく先に、 カルマを主人公にする形で出したいな、と思っています。是非書きたいシーンがあるのですが、 そこにいつまで経っても行き着かない・・・w あと、すみません、非常に勝手ながら日常さんのお話に少し引っ掛けさせてもらいました(グリューンのくだり)。 これまた非常に勝手ながらリスペクトさせていただいております。
