バールを片手に、親仔を公園の隅に追い詰める。 「おう、死ぬ準備はOK?」 もう逃げるところが無いのを悟ったのだろう、こちらを向き、涙を流す親実装。そしてその背に隠れる仔実装達。 誰でも知っていることだが、実装石の歩みは遅い。住処のダンボールから蹴り出し、ゆっくり、ゆっくりと追い詰めながら、 脱落した仔実装を潰してゆく。そうして公園の隅にやってきた。 親実装がうつむく。そして両手で仔実装を持ち上げると、そのままこちらに差し出してきた。 携帯をリンガルモードに切り替える。 「どういうつもりだ?」 「せめてこの仔だけでも助けてほしいデスゥ」 「・・・ほう」 「この仔はいい仔デス。助けてあげてほしいデスゥ」 「・・・他の仔はどうする」 「私と一緒に死ぬデスゥ」 「・・・そして俺に預けたその仔はそのまま公園に捨てられて、一家全滅サヨウナラというわけだな」 「そうなることはもとより承知デス、あなたがこの仔を生かしてくれることに望みを賭けるデスゥ」 「・・・ふうん。とりあえずその足元でテチテチ騒いでいるガキ共を前に差し出せよ」 「わかったデス・・・」 差し出される四匹の仔実装達。「オマエタチ、このニンゲンさんは命を助けてくれるそうデス。そのためにまずは並ぶのデス」 仔実装達が親実装の嘘を信じるまでには、随分と長い時間がかかった。 「・・・これでいいデス?」 「ああ」 テチテチ騒ぐ仔実装達。リンガルには「早くメシをよこせテチ」「逃がしてほしいテチ」「生きておいしいものを食べたいテチ」 「コンペートー」と表示されていた。そこでいったんリンガルを切り、エアガンを取り出す。 「お前ら、生きたいか?」 「テチ!テチテチ!」 「そうか。じゃあこれからエアガンを撃つ。当たらなかった奴だけ生かしてやるよ」 ——皆殺しにした。その度に親実装の叫び声がした。 リンガルのスイッチを入れる。 「おい親実装」 親実装は変わらず泣いていた。 「はいデス」 「お前に免じてそのガキだけは貰っといてやるよ」 「ありがとうございますデス」 「さ、お前は死ぬ。何か言い残すことはあるか?」 「・・・ひとつだけ、いいデス?」 「ああ。立っているのが疲れたから座りたい。ガキを連れてこっちへ来い」 今逃げれば全て無駄になることは分かっていたようだった。素直についてくる。 「・・・で?」 「はいデス。実装石も必死に生きているデス、どうしてそんな楽しそうに殺すデス?」 「最後の最後に泣き落としか?つまらんな」 「違うデス!・・・あの家は何日もかけて手に入れたダンボールで作ったデス。雨が漏らないようにビニール袋を上に敷き詰めたデス。 寒くないように新聞を敷き詰めたデス。仔供達のおもちゃにピンポン玉を拾ってきたデス。飢えないように保存食も手に入れていたデス。 目立たないように草むらに作ったデス。この仔は長女デス。他の仔は手伝わなかったデスが、この仔はよく手伝ってくれたデス・・・」 そう言って親実装は最後の仔を撫でた。親実装は続ける。 「どうして殺すデスか?私タチも必死に生きようとしているデス!!」 子実装が親実装の顔を見つめる。 「・・・つまり親仔ともども生かしてほしいと」 「違うデス!!違うデス!!!!」 「・・・何が違うんだ?」 「私は死ぬデス。あなたに今から殺されるデス。死にたくはないデス。けれど、仔が生きるデス。私はそれで本望デス」 「ああそう。話は終わったな?」 「待つデス!まだ終わってないデス!!」 「・・・聞いてやってるんだから早く終わらせろよ」 「私タチは生きようとしてるデス。何の権利があってニンゲンは私タチを殺そうとするデスか?」 「・・・じゃあ愛護派にでも媚びろよ」 「愛護派も同じデスゥ、なんでニンゲンはそんなに偉そうなんデスゥ?」 親実装は真っ直ぐこちらを見つめている。 「命の代わりに教えてやるよ。よく見ておけ」 「デェ・・・」 ヒュッ! 独りになった仔実装の叫び声が響いた。
