実装石の日常 言いつけ 立派な飼い実装用の衣服を着こんだ成体の実装石が1匹、人気のない公園の入り口にたたずんでいた。 足元には真新しいダンボール(外にはマジックペンで大きく何かが書かれていた)が置かれ、その中を覗き込んで言う。 「いいデス? これからママが戻ってくるまで、絶対、ここを出たら駄目デスー。 でも、もしニンゲンさんが来たら言う事を全部聞くデス」 「「はいテチ」」 まだまだ幼い仔実装が2匹、元気にうなづく。 しかしもう1匹いる仔実装は顔色が悪く、目も涙目だった。 親実装の前掛けをつかみ、引っ張る。 「テチャアアアアアアア! 行っちゃ嫌テチ! 行かないでママァ!」 「い、言いつけを守らないといけないデスー」 ひるむ様子を見せながら、親実装はコンペイトウを3粒取り出すと他の2匹は目を輝かせた。 打ち捨てるように投げると、2匹がダンボールの床を転がるコンペイトウ飛びついて、すぐに舐め始める。 だが相変わらず残された1匹はぐずっていた。 歯をカチカチ鳴らし、親の前掛けを離さない。 親実装は弱ったように視線を泳がし、ちらちらと遠くのほうを見ていた。 いつもは大人しい次女なので、長女・3女はコンペイトウを舐めながら楽しそうに笑う。 「ママの言いつけを守れないなんて次女姉ちゃんは悪い仔テチ」 「そうテチ、悪い仔は捨てられちゃうテチ」 「公園に捨てられて怖い野良に食べられちゃうテチィ」 「やめるデス」 いつになく硬い声と表情で、なぜか2匹に注意する親実装。 慣れない空気に2匹は口を閉ざす。 ……時間ばかりがかかるデス 時々振り返って確認していた主人の姿がない、すでに帰ろうとしていた。 親実装はどっと汗が流れるのを感じた。 今まで味わったことがないほどの深い恐怖であった。ブリーダーに躾けられたときでも、これほどではない。 圧倒的な絶望感に顔が引きつる。 ……このままでは、私まで…! 「いいから言いつけを守ってこの中にいるデス! ママの迎えか人間さんに声をかけられるまで、この中から出るなデス!」 「行かないでテチャア! マーマァ!」 次女はまだ前掛けを離さなかった。躊躇なく親実装はわが仔を殴り飛ばすと、一目散にかけていく。 何かを前方に向かって言いながら。 そんな後姿に長女・3女が能天気な声をかける。 「いってらっしゃいテチー」 「お土産は金平糖がいいテチ」 顔面が潰れかかった次女は痛みと恐怖で転がりまわっていた。 「ヂィィィ! ヂィィィイ!!!! ママ! ママァ! お願いだから置いていかないでテチャ———————!」 END
