「悲しみのチュワワ 1」 その男が公園を訪れたのは偶然だった、日曜の昼下がり暇を持て余し近所の公園へ散歩にやってきた。 だが草木の緑を期待してやって来たのに別の緑色の物がやたら目に付いた。 『ちぇっ・・この公園も実装石の巣窟か、何だか気分が悪い』 男の足元には身なりの汚い実装石が「デスデス」と、盛んに口走り物乞いよろしく両手を差し出している。 『お前らにやるもんなんか、なんもないよ』 男は煙草を取り出すとライターに火をつけた。 「デス!」 「デシャ!」 「デスゥゥ!」 ライターの火に実装石は驚き後ずさりをする。 『へぇ・・こいつらライター程度の火が怖いのか』 あらゆる怪我を再生できる実装石でも火傷だけは再生が出来ない。 それを知っている実装石はどんな小さな火でも、恐怖の対象に映った。 特にライターや煙草の火は虐待道具としてポピュラーなものだ。 男は煙草に火をつけ。プカリと煙を吐いた。 とたんに安心したのか後ずさった実装石達は波が引くように戻って、また物乞いを始めた。 男は特に虐待派でもなく愛護派でもない、ごく普通の成年だった。 裕福ではないが親からの家を継いで、どこにでもあるような会社に勤め、年老いた母親と暮らしていた。 特に趣味も無く友人も少ない、他人から見れば退屈極まりない人生を大人しく生きていた。 男はふと実装石の群れを見る、後ろの方で何やら揉め事が起きている。 暇を持て余している男は群れを掻き分け、その騒ぎの元へやって来た。 騒ぎの元は一匹の仔実装が仲間からリンチをされている。 よく見るとリンチをしているのは親とその姉のようだ。 「この世は弱肉強食テチ、お姉ちゃんがオマエを食って生き残るんテチ」 「死ねテチ、死ねテチ!」 「チュワワァァァ!!」 「チュワ!チュワ!チュッワァァア」 仔実装は随分と体の大きい姉であろう仔実装から何度も顔を蹴られ、体中血まみれで血涙を流している。 そこへ親実装が仔実装の足を引き摺り上げ、地面にビタン!ビタン!と顔面から叩き付けた。 仔実装は叩きつけられる度「チュワァ!」「チュワワッ!」と悲鳴をあげる。 見かねた男は『こら!いい加減にしないか』と、二匹の実装石を怒った。 だが親実装は「デス!デス!」と、男に抗議を繰り返し両手を差し出す。 男は携帯電話を取り出すとリンガルモードへ切り替えた。 「ニンゲーーーン!!ワタシの餌を横取りする気デス!」 「コイツはワタシの仔だからワタシの物デス」 「オマエには何の権利もないデスゥ!」 男は何を勘違いしてやがると思ったが、取り合えず話してみた。 『そう言う事なら文句は無い、だが食うならとっとと食えばいいだろ』 『痛めつける必要は無いと思うぞ』 実装石はデププ!と鼻で笑う。 「オマエなにも知らないデス、肉は痛めつけた方が柔らかくなるデス」 「半殺しにして死ぬ寸前が一番おいしいデス」 「ママこいつバカものテチ、ニンゲンの癖に何も知らないテチ」 二匹はかたまり男の顔を見てはデププと、あざけ笑った。 「まぁワタシも鬼ではないデス」 「コイツを許して欲しければ、なにか食べる物を持って来いデス」 自分を見てあざけ笑う実装石に男は少しむかついていた。 だからと言って打ち殺す訳ではない、男の性格は草食動物のように大人しい。 『分かった、少し待っててくれ』 そういうと男は公園を走って出て行った。 姉実装と親実装は「あのニンゲン腰抜けデス、きっと戻ってこないデス」 「戻ってこなければ直ぐにコイツ食べるテチ」などと、話し合っている。 傷だらけの仔実装はその間、膝を抱え出来るだけ小さくなっている、仔実装にしてみればそれで身を隠しているつもりだった。 「チュワァァ・・ワタチの運命はどうなるテチュゥ・」 暫くすると男がコンビニ袋を持って走ってきた。 『良かった・・まだ食われていないな』 ガサガサと袋から取り出した物は、実装フードの箱だった。 色めきたつ実装石達、口々に「フードデス!あれはフードデス」騒然となった。 親子は「これはワタシのもんデス」「そうテチ!お前らどけテチ」と、喚き立てる。 『この箱を丸ごとオマエにやろう、だからその仔実装は許してやるんだぞ』 「こんな出来損ないもういらんデス!どこへでもいけデス」 仔実装は親実装に背中を蹴られ、「チュベェェァ!」と、前のめりに男の前に倒れこんだ。 『ほら!約束の物だ』 フードの箱を遠くへ投げると他の実装石達もそれを追いかけた。 暫くするとフードをめぐり醜い争いが始まる。 小さな個体から食い殺され、姉もその中に含まれた。 食い殺される姉を蹴飛ばし親実装は箱にすがりつく。 「お前らーーー!これはワタシのフードデス!」 「どけデス!どけデス!」 母実装が箱に齧りつくとそれをよこせと他の実装石達が引っ張る。 と、中身がブワーっと地面に散り、それを拾う為にまた争いが起こった。 飛び散るフードと実装石の肉片、あたりは地獄絵図さながらだ。 『まったく・・あいつら分け合うって事も出来ないんだな』 男は呆然とその様子を眺めていた。 「テチュー・・」 声に気づき足元を見ると、先程の仔実装が何とか上半身を起こそうとしている。 『おい!大丈夫か?』 男は仔実装を拾い上げると立たせ、泥で汚れた服をぱんぱんとはたいた。 「痛いテチュ・・体中あちこち痛いテチュ」 力なくへたり込む仔実装に男は『早くここから離れなさい』と告げた。 「離れるチュ?ワタチにはどこにも行くところなんか無いテチュ」 「それよりニンゲンさん・・ワタチを助けてくれたテチュ?」 『ああ、なんだかいたたまれなくてな』 仔実装は正座をして丸まりブルブルと震える体を更に小さく折り曲げ、男に感謝の言葉を搾り出した。 「あ、ありがとうテチュ、ニンゲンさんのおかげで生きてるテチュ」 「恩返しをちたいテチュ・・でもワタチには何もあげる物がないテチュ」 男は仔実装を観察してみる。 パサパサな髪、ビリビリに破れ汚れた実装服、一度も洗った事が無いのか皮膚や服に汚れが層になってこびり付いている。 いくら仔実装でも痩せて小さすぎる体躯、この仔実装はろくに餌も食わせて貰っていない事が伺える。 性格もいつも苛められているのか、ビクビクとなにかを常に怖がっていた。 『いや、別に恩返しとか良いから、それじゃ食われない様に気をつけてな』 (ニンゲンさんが行っちゃうテチュ) 立ち去ろうとする男の背後から仔実装は足にがしがみついた。 「チュワァァー!待ってテチュ!待ってテチュ!」 「まだ話は終わってないテチュ!」 男はなんだ?と言う顔をして立ち止まった。 『話ってなんだい?』 男の問いに仔実装はうつむき体を震わせたまま、何も答えられない。 「それは・・その・・チュワァ」 もじもじする仔実装の頭に男は手を置いた。 「チュワ?」 『大分やられたなオマエ、ボロボロだぞ』 優しく頭を撫でられると仔実装は目をつぶりうっとりとした顔をする。 (気持ち良いテチュ・・このニンゲンさんなら・・テチュ) 「ニンゲンさんが行ったらワタチはきっと食べられちゃうテチュ」 『なんで?フードは買ってきてやったろう』 「ママは次の仔を生む為にワタチを食べるのは決まっていた事テチュ」 「寒くなったら餌を取れなくなるテチュ、だから非常食だって毎日いってたテチュ」 「今がその季節テチュ、フードなんてすぐに無くなるテチュ」 『ばかだなぁ、逃げれば良いだろう、この公園以外でも実装石の棲家は沢山あるぞ』 仔実装は首を振った。 「ワタチみたいにちっぽけな仔は、ママに守ってもらわないと生きて行けないテチュ」 「餌も取れないテチュ、ハウスも無いテチュ、マラ付きもいるテチュ、 同属もワタチを食べるテチュ、ギャクタイハも毎日きてるテチュ」 『ふーん・・実装石社会も大変なんだな』 「ニンゲンさん!」 仔実装は撫でている手にしがみついた、そして目をつぶったまま声を絞り出した。 「ワタチを・・・ワタチを飼って欲しいテチュ!」 少しの間、無言の緊張感が生まれたが男はそっけなく告げた。 『それは勘弁してくれ、実装石なんて飼う訳にはいかない』 しがみつく仔実装を振り払うと立ち上がった。 仔実装は男の前に「チュワ!チュワ!」と声を出しながら走り出し、必死に訴える。 「お願いテチュ!お願いテチュ!ニンゲンさんの邪魔はしないテチュ」 「良い仔にしてるテチュ!言いつけ守るテチュ!ウンチだって決められた所にするテチュ!」 男は困ったような顔をすると早足に歩き出した。 仔実装は公園の入り口まで必死に男を追いかけた。 自分の命が掛かっているのだ、男に飼って貰えないという事は死を意味していた。 だが所詮は仔実装、早足の人間には全く追いつけない。 男の背中に向かって懸命に泣き声を上げる。 「チュワワァァァア!!チュワワァァァァア!!」 ガックリと膝を突いて仔実装は地面を見つめた。 優しそうなニンゲンだった、あのニンゲンなら自分に優しくしてくれる。 そう思って一世一代の告白をしたのに、仔実装に厳しい現実を見せ付けた。 「行っちゃたテチュ・・チュワァー・・」 仔実装は入り口のゴミ箱横で、ひざを抱えて座ったまま動こうとしない。 帰れば母実装に食われてしまう、帰る所は仔実装には無かった。 夕方になりピュウーピューと寒風が吹きすさび仔実装の体温を奪っていく。 「寒いテチュ・・ここにいたらきっと凍え死ぬんテチュ」 仔実装は放熱面積が少なくなるよう小さく体を丸めた、既に手の感覚が無くなってきている。 いつしか寒さと空腹で睡魔が襲ってくると、仔実装は座った姿勢のままうとうとと眠りだした。 どれ位の時が経ったろうか、仔実装は懐かしい声を夢うつつで聞いた。 『おい!大丈夫か!起きろ!起きろ!』 誰かが自分の体を擦っている、擦ったところがとても暖かかった。 「チュワァァ・・」 目を開けるとあのニンゲンが自分の体を擦っていた。 冷たくなった両手を揉みしごき、暖かな息をハァーハァーと吹きかけている。 「チュワ?どうちてテチュ、ワタチまだ生きてるテチュ?」 『なんだか妙に心に残る泣き声だったんだ、僕のせいで死なれちゃ目覚めも悪いしね』 『しかし本当に死に掛けてるとは思わなかったよ、あのまま寝てれば確実に死んでいたぞ』 仔実装はうつむくと「死んでも良かったテチュ・・どうせ生きてても良い事なんか無いテチュ」と答えた。 男は仔実装の手を擦りながら見つめ話した。 『しょうがないな、僕が君を飼ってあげるよ』 男はもし仔実装が公園の入り口にまだいたならば飼ってあげよう。そう思って訪れた。 仔実装にしてみれば行く場所が無く、偶然入り口で座っていただけだがそれが幸運を呼んだ。 「チュワ!?」 『驚いたかい、君を僕の家で飼ってあげるって言ったんだよ』 「チュワワァァァア!!チュワワァァァァア!!」 仔実装は自分の手を擦る男の手にもう二度と離さないといった感じでしがみついた。 そして涙を流し大声で泣いた、仔実装の心には今まで感じた事が無い不思議な感情が湧いてくる。 『しかし変わった泣き声だな、普通仔実装ならテチだろうに』 男は暫く考え込むと『そうだ、君の名前は今からチュワワだ』と告げた。 仔実装はキョトンとした顔をしている。 男はチュワワと名づけられた仔実装を拾い上げ自己紹介をした。 『僕の名前は健太って言うんだよろしくな』 『チュワワのご主人様は今日から僕だ、だから僕の事はご主人様と言うんだぞ』 チュワワは健太を見つめ「ご、ご主人様、チュワワがんばるテチュ」と恥ずかしそうに呟いた。 △ チュワワが健太の家に来てから一週間の時が流れた。 その間チュワワは健太や健太の母親に好かれようとがむしゃらに頑張ってきた。 その甲斐もあってか、トイレの躾、食事の躾、言葉遣いと色々と憶えた 元々チュワワは賢い個体だったので、そういった事は得意だった。 今では誰よりも早く起きて、家の者を起こして回るほど活発な性格になっていた。 今日チュワワは日課にしているシャワーを健太にせがんだ。 「ご主人様、シャワーの時間テチュ、またチュワワの髪を洗って欲しいテチュ」 仔実装は短い手足のせいで自分で自分の体全てを洗えない。 普通は親実装に洗って貰うのだが、親実装のいないチュワワは健太にそれをお願いしている。 野良時代はシャワー所か水浴びすらさせて貰えなかった、 健太の家で初めてシャワーを浴びた時の感動は今でも憶えている。 暖かく清潔な湯が自分の体にこびり付いた汚れを流れ落とした。 そして良い匂いのする石鹸の泡、シャンプーでふわりとした髪。 洗い終わると自分の姿がまるで違ったように見えた。 チュワワにとってシャワー室は健太が自分に接してくれる特別な場所でもあった。 『チュワワは本当にシャワーが好きなんだな、 きれい好きなのは良いけど毎日服も洗わ無くても良いだろうに』 チュワワはシャワーを浴びる際、必ず自分の服も洗う。 今の服はビリビリの服を可哀相に思った健太が買ってくれた物だ。 デザインは元の物と変わらない既製品だが、着心地もよくチュワワのお気に入りである。 そんな事より健太が自分の為に与えてくれた、それだけでチュワワの宝物だった。 「大切なお服テチュ、いつもきれいにちたいテチュ」 チュワワは石鹸を付け健太に体を洗って貰う。 その際に服にも石鹸を付けてもらうとチュワワは押すようにギュ、ギュ、と大事そうに洗った。 最後に髪の毛を洗って貰う、大好きな健太が優しく髪をなで洗ってくれている。 チュワワの気持ちは天にも昇る気分だった。 「気持ち良かったテチュゥ・・幸せテチュ」 シャワーを浴びた後のチュワワは、必ず放心状態になる。 △ そして一ヶ月が過ぎると、チュワワも人間の暮らしに慣れ家事をしている母親を手伝うようになった。 そんなチュワワだが健太は一つだけ頭を痛めていた事があった。 賢いと言ってもチュワワは実装石である、元の性質は実装石らしい所がたまにだが出る。 チュワワには日に三回、人間と同じ時間に餌を与えている。 家に来た頃は三回の餌に感動すらしていた、野良時代は一日に一回すら食べさせて貰えなかったからだ。 だが実装石の食欲はそれに慣れてしまうと、それすら少ないと不満を漏らすようになった。 そして健太が出勤した後、母親にせがんで餌を貰っている事が分かった。 しかも実装用のフードではなく、母親の食べている物を好むようになる。 健太は母親に小言を言った。 『母さん、チュワワに決まった時間以外餌をあげるのは止めてくれないか』 健太の母親は今年還暦を迎え、今まで勤めていたアルバイト先を辞め、 今は貯金と健太の給料で家を切り盛りしている。 母親は健太の食事や洗濯、その他色々と世話を焼いてくれていた。 そんな時、健太が連れてきた仔実装は母親にとって初めて接する動物として奇異に映った。 人間に似た容貌と行動、その小ささとチュワワの持って生まれた可愛さが母親の目にとまる。 チュワワは健太が家を出た後、母親にべったり甘えた。 家の中で母親の後ろをいつもチュワチュワと言いながら追いかけた。 母親にしてみればペットを可愛がる程度に考えている。 だが健太はチュワワを飼う際、実装石についての本をいくつか購入してその生態を知り尽くしていた。 甘やかせる事は決してチュワワの為にはならない、 どんなに賢い実装石でも甘やかせるとどこまでもつけ上がってしまう。 実装石の欲望は底なしなのだ、それは全ての個体必ずある事だった。 『息子のあなたに言われる筋は無いわよ、ほっといて頂戴!』 母親は明らかに気分を害したようで、健太から顔を背けた。 『母さん・・』 その日から事あるごとに母親と健太は衝突を繰り返した。 お互い譲る事も無く日が経つと、何となく気まずくなる。 そして原因であるチュワワへの対応もどこと無くよそよそしくなり、 家の中がギスギスした雰囲気となっていく。 チュワワは健太にいつもの様にシャワーをせがんだ。 「ご主人様・・シャワーの時間テチュ」 チュワワもどこと無くおかしくなった二人の雰囲気を察して、言いにくくなっている。 健太にしてみればチュワワの顔を見るのも最近は嫌になってきていた。 『うるさい!シャワーぐらい一人で浴びろ!』 「テチュ!」 チュワワは頭を抱えてうずくまると、片目をそーっと開けた。 そこにはもう健太はいなくて、風呂場の扉が開けられているだけだった。 楽しいはずのシャワーも一人で浴びると寂しかった、チュワワはその日服を洗わなかった。 健太が出勤するとチュワワは母親の所へと駈けて行く。 チュワワはそうっと母親のいる台所に顔だけ出して様子を伺った。 母親はキッチンテーブルに座り無言でテーブルを見つめていた。 「ママさんも最近なんだかおかちいテチュ」 「前はチュワワに優しかったのに、今は顔を見てもくれないテチュ」 「チュワァ・・」 いつもの様に餌をねだる所か甘える事すら出来る雰囲気ではない。 チュワワは自分の居場所がこの家に無くなった事が何となく分かっていた。 だからと言ってこの家以外に行く所も無い、その原因が自分にある事も知らず。 そんなある日、チュワワが珍しく粗相をした。 猫用トイレがチュワワ専用のトイレになっている。 最近は出したウンチを誰も掃除してくれず、チュワワも困り果てていた。 ウンチを踏まない様に無理な姿勢でしたのが間違いだった。 チュワワはバランスを崩しウンチを撒きながら転げた。 そして粗相が見つからないようにウンチを掴んで何とかトイレに戻そうとした。 ウンチまみれのチュワワとウンチの散乱したトイレが置いてある廊下、異様な臭いが家中に広がった。 『チュワワ!僕が怒っているのは粗相をしたからじゃ無い』 『その粗相を隠して黙っていた事に怒っているんだ』 チュワワにしてみれば今の状況は、どんな些細な事も飼い実装としての命取りになりかねない。 それ程、家の中がギスギスとしてチュワワにとっても、針の筵に座っているように感じた。 隠せる物なら隠したかった、だが所詮は実装石である。 ごまかしもすぐにばれてしまい、チュワワは更に傷口を広げてしまった。 チュワワは黙ってこの場をやり過ごそうと考えた。 だが健太はそれを許さなかった。 チュワワの体を掴むと平手で顔を打ち据えた。 パァーン!と、渇いた音が響くとチュワワの顔に熱い痛みが走る。 久しぶりの痛み、この家に来た頃は躾の為に良く殴られた。 それでもチュワワは泣き声所か一言も声を出さない。 健太はそんなチュワワがとても憎く感じた。 『自分が何をしたのか分かっているのか!』 目に涙を貯めチュワワは答える。 「チュワワは、チュワワはウンチを掃除しただけテチュ」 「何も悪い事はしてないテチュ」 強情なチュワワに健太は増長を咎めるちょうど良い機会だと思った。 『今回だけじゃない、母さんに餌をねだって困らせた』 「チュワ!」 健太にばれていた、チュワワの心臓がドクドクと高鳴る。 「で、でも、ママさんがチュワワにって・・テチュ」 健太の顔が更に険しくなった。 『自分からねだった癖に母さんのせいだって言うのか!』 『いい加減にしろ!』 健太はチュワワを掴み上げると床に叩き付けた。 「ジュワァ!!」 背中を叩きつけられ、チュワワは悲鳴をあげる。 「クハァ・・カハッ」 野良時代から痛い目を見てきたチュワワだが、自分より遥かに大きな人間から本気で暴力を受けた事は無かった。 痛みは鋭く痛いものだと思っていた、後から来る鈍い痛みはチュワワにとって味わった事が無い痛みだった。 チュワワは海老ぞったままの姿勢で「ケホッケホッ」と咳を繰り返し転げ回る。 「チュワワ!チュワワ!ケホッ!い、息が出来ないテチュ!ケホッ」 見上げると健太は仁王立ちをして、今まで見た事が無い形相で見下ろしている。 「こ、怖いテチュ・・」 ブリブリ・・プリュ チュワワは恐怖のあまり糞を漏らした、この家に来て初めてのお漏らしだ。 慌ててお尻を押さえたが、パンツの脇から後から後から糞がひり出てきた。 『ちっ』 健太は舌打ちをする。 『一から躾のやり直しだな』 『今まで生ぬるかったんだ、これからは厳しく躾けてやる』 四つん這いで震えるチュワワの腹を健太は軽く蹴り上げた。 「チョベッ!!」 一瞬の事でチュワワには何があったのか理解できない。 宙を舞うチュワワの目に天井が近づいて来たかと思うと遠ざかる。 「チュバッ!!」 床に落ちたチュワワはまた背中を打ちつけた。 ビュワァ!ビュッ!ビュゥ!! チュワワの背中は自分の糞で緑色に染まっていく。 固形物を出し切った排泄腔は、最後に残った液状の汚物で廊下を汚した。 「チュワァァ・・チュワァァァ」 チュワワは痛みと情けなさで泣き出した。 今まであんなに優しかった健太の仕打ちに、自分は実装石なんだと改めて思い知らされる。 実装石の言い訳なんて主人にとってはどうでも良い事なのだ、何かしらの理由があればそれで良かった。 いや、チュワワはまだましな方だろう、本来なら理由付けすら必要は無い、 実装石を虐待するのに理由なんて物はいらない。 理由をつけるとすれば、実装石だからで良い存在そのものが理由なのだ、ただそれでだけで良かった。 『泣いてる場合かチュワワ!こんなに汚しやがって』 『汚した所を舐めろ』 「チュワ?舐めるって・・これはウンチテチュ」 「ウンチは舐めるもんじゃ無いテチュ」 『うるっさい!』 健太はチュワワの頭を鷲掴みにすると、糞溜まりに顔をぐちゃぐちゃと押し付けた。 『食え!食え!きれいに舐めろ!』 「チュワァ!チュワッ!チュワワワァァァァア!!」 続く なんか中途半端ですが始まりと言う事で・・・ 見張り
