タイトル:【観察】 実装石の日常 おあいそ
ファイル:実装石の日常 17.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:8628 レス数:0
初投稿日時:2007/12/29-21:14:05修正日時:2007/12/29-21:14:05
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 実装石の日常 おあいそ




珍しくもない話だが、その実装石親仔は運が悪かった。
ダンボールの前で遊んでいた仔たちと見守る親であったが、運悪く少年二人に見つかったのだ。

「こう手を持ち上げるデス。そしてデプゥ〜ン♪デス」

媚びをやって見せた。
仔たちもそれぞれ小さな手を口元にやり、小首をかしげる。

「テチュ〜ン♪」

・・・・・・なんとか様になってきたようだ。もう少しすれば完璧なお愛想ができるだろう

この親実装、実はかつては飼い実装であったのだ。
公園に捨てられたものの何とか生きる術を身につけ、今は産んだわが仔を生かすため、媚びを教えているのだ。

・・・・・・お愛想が出来れば、またニンゲンさんに飼ってもらえるはず。せめて、我が仔だけでも

それなりに愛情と知性があるらしいが、根本からして間違っている。
お愛想なり媚びなりができるからと言って、飼い実装になれるわけが無い。
どこかで勘違いしたまま、熱心にこの親実装はわが仔に教え込んだ。
雨の日も風の日も・・・・・・。

そして自分なりに満足できる形にまで到達しつつある。

「ママ、ニンゲンさんがきたテチ」

ビクッと親実装が振り返ると少年二人がじっと一家を見ている。

襲われるか、と思った親実装だが少年たちは一家を眺めているだけだ。

・・・・・・そうだ、このちいさめのニンゲンさんで仔たちのお愛想のできを確かめよう

思い立つと、親実装ははじめて近くで見る人間に興味津々の我が仔に振り返って言い放つ。

「お愛想デス! いいお愛想をすぐするデス、うまくいけば、飼ってもらえるかも知れないデス!」

「テ?」

「テチ?」

「早くするデス、うまく行けば飼い実装デース!」

飼い実装、の言葉に仔たちは色めきたった。
散々親から飼い実装になればいかに良い暮らしができるか聞かされてきたのだ。

1匹が前に出ると意を決し、腕を持ち上げ首をかしげる。

「テチュ〜ン」

懸命にお愛想をした。

「なかなかいい出来に決まったデス!」

褒める親実装の横を少年が歩く。

「チベ!」

一瞬で踏み潰す。

「あれ、今日はもうしないんじゃなかったの?」

「媚びってなんかムカつくんだよ、そういうお前平気なんかよ」

「別に気にならないけど?」

普通に会話する少年を尻目に、親実装はシミになった我が仔を見て、
血涙を流し他の仔たちへ怒鳴る。

「何ぼさっとしてるデス! 早く、早く!!」

デジャアア、と必死でわが仔に大声をかけた。

「早くお愛想するデス———————! 出来が悪いからニンゲンさんが怒ってるデス!」

仔たちは地面のシミになった姉妹と、大声を張り上げる親に動揺しオロオロと視線を交わす。

「早くしないとお前たちまで殺されるデスー!」

ビッグな勘違いをしたまま、親実装は我が仔に自殺行為を命じた。

「テチュ〜ン♪」

「テチュ〜ン♪」

素早く少年が踏みつけた。

「チベ!」

「テッ」

汚い赤と緑のシミが二つ広がった。

「「「「テチャアアアアアアアアア!」」」」

悲鳴を合唱する仔実装姉妹。

家族が薄さ数mmにされては当然だろう。

さすがに、親実装も顔を真っ青にさせる。

「お前たち、何をしてるデス!殺されちゃうデス!」

唾を飛ばして怒鳴りつけた。

「早くお愛想するデス!」

「何か違う気がするテチー!」

すかさず賢い仔が反論するが、親は自論を曲げない。

「バカなことを言うなデス! 早くー、早くお愛想するデス————!」

4匹は動揺し、視線を交わすが親の言葉には逆らえない。

怯えながら、手を口元になる。
ちらり、と少年の顔を見上げると瞳には獰猛な殺意がちらついている。

「ママー、やぱりお愛想しないほうがいいテチッ!」

賢い仔が親へ振り返り涙を流して訴える。

「次にしないとママがお前たちを殺すデス!」

「テヒャ!」

我が仔を思う心から、我が仔を追い詰める親実装であった。
もうお愛想するしかない、と1匹が手を持ち上げると他の仔も冷や汗を滝のように流しながら追随する。

「テチュ〜ン♪」

「テチュ〜ン♪」

「テチュ〜ン♪」

「テチュ〜ン♪」

媚びが四連発だ。
少年は額に青筋立てて一呼吸で連続して足を振り下ろした。

「テベ」

「テベ」

「ヂイ」

「テベ!」

早業である、4匹は瞬時にシミと化した。

「すげえ早い!俺もあれくらい早く潰したいなぁ」

友人を尊敬の眼差しで見る少年。
尊敬される方はごしごしと親実装の前で靴の汚れを地面にこすり付ける。

「よし、じゃあ本当に帰ろうぜ」

「うん」

笑顔で二人は走っていく。



親実装は先ほどまで元気よく話していた我が仔だった7つのシミを呆然と眺めていた。






END

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