タイトル:【愛】 心配しても、いいですか?2
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2148 レス数:1
初投稿日時:2007/12/29-17:56:31修正日時:2007/12/29-17:56:31
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心配しても、いいですか? 2



【前回のあらすじ】

 高級飼い実装の長女として生まれ、天才的な勘ですべての躾とマナーを習得するほど
希有な才能に恵まれた仔実装「ぷち」は、生後一ヵ月半でようやくご主人様「としあき」に購入された。
 これまで学んだ事をフル導引して、一生懸命頑張ろうと誓いをたてるぷちだったが、
そんな彼女でも、飼い実装生活二日目にして四肢破壊という強烈なお仕置きを受ける
ハメになってしまった。
 だが実際には、ぷちには何の落ち度もなかった。

 飼い主のとしあきは、実装石飼い初心者な上、大変そそっかしい性格の持ち主だった。



              ※            ※             ※

 その日の晩も、としあきは卓上蛍光灯の明かりの下、パソコンで調べ物を続けていた。


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□実装石を飼う際の注意 初心者編 2:

 実装石は、あらゆるペット動物の中でも特に飼い易く素人向けだと良く言われますが、
これは大きな間違いです。
 実は犬や猫よりも遥かに育成が難しい動物で、飼い主の精神力と忍耐力が試されます。

 初めて実装石をお家に入れた日は、その可愛らしさにずっと愛でていたくなると
思いますが、その幸福感は、翌日には早速打ち砕かれるものと覚悟してください。

 たとえどんなに良い仔でも、初日こそ緊張してしっかりして見せますが、二日目には
緊張を解いて粗相をし始めます。
 お漏らし、泣き喚き、我が侭は当たり前、時には貴方のお部屋を汚してしまう
事もあるでしょう。

 ですが、そこで怒りに駆られてしまっては飼い主失格です。

 実装石は、人間に飼われるという事に特別な意味を見出します。
 自分が他の仲間とは違う特殊な存在になったと錯覚するからです。
 まずは、その認識を改めさせる所から始めなければなりません。

 
 「初心者編1」を読まれた貴方は、初日は最高の待遇を与えたことと思います。
 さあ、二日目からは大変です。
 なぜなら、貴方は実装石にとって「怖い」存在にならなければならないからです!

 以下の項目はどれも重要ですので、読み飛ばさず、内容に反発せず、じっくりと理解を
深めましょう。


2-1 実装石の叱り方
2-2 実装石への体罰とその重要性
2-3 手足の折り方・治療の仕方
2-4 お仕置きの厳しさレベルと適応について
2-6 叱った後に必ずすること
2-7 やってはいけないこと

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「あっ、しまったぁ……忘れてた!」

 モニターに表示されるブラウザの情報を読み進め、としあきは思わず声を出してしまった。
 項目2-6以降に記されていたアフターフォローを、完全に頭からすっ飛ばしてしまっていたのだ。

「うう、やっぱり難しいんだな、実装石を躾けるのって」

 独り言を呟きながら、更にページを読み進めていく。

 ここは、「実装石ドットコム」と示された、飼い方ハウトゥサイト。
 元優秀な実装石ブリーダーが作成した、正しい実装石愛好家を育む大変に有名なサイトである。
 二週間前、としあきにぷち購入を決意させたきっかけを作った所でもある。
 初心者の自覚充分のとしあきは、ここに記されている各項目を念入りに読み込み、その上でぷちを飼い始めたつもりだった
が、しょっぱなからつまづいた。
 頭でっかちではいけないんだ、と強く自覚を促され、もう一度最初から読み返していく。
 そして、今日までの自分の躾のあり方を反省し始めた。

「——よし、じゃあ次だ」

 深夜二時を回り、いつもならとっくに眠っている時間になったにも関わらず、としあきはサイト閲覧に集中し、「実装石を飼う
際の注意 初心者編 3:」というページに進む。

 だがうっかり者のとしあきは、前のページの最後にあった「2-7 やってはいけないこと」という項目を無意識に読み
飛ばしていた事に気付かない。
 彼は、長い解説文はほとんど斜め読みしかせず、しかもそれで充分理解したつもりになるという、大変問題のある性格
だった。

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2-7 やってはいけないこと

 実装石に限りませんが、動物を叱る時は「何が悪い事なのか」を充分に理解させる必要
があります。
 そしてそれは、人間の言葉だけでは決して伝わりません。
 相手が実装石とはいえ、きちんと筋道を立てて解らせる必要があります。

 ある程度以上の知能がある実装石は、人間の言葉を理解しますが、自分に都合よく
解釈してしまうため、犬や猫とはまた違う伝え方をしなくてはいけません。
 ですがその際、決してやってはいけない事があります。
 これらは、下手をすると飼い主とペットの間に深い溝を作る原因になりかねないこと
なので、充分に注意しましょう。


・実装石が一つの行為に真面目に取り組んでいる最中に、警告なくお仕置きを
 すること(余計な混乱を与えストレスを増長させてしまいます)
・同じお仕置きを立て続けに行うこと(虐待されていると解釈してしまいます)
・褒めた後にすぐ叱ること(正しい行為と間違った行為を混同してしまいます)
・問題を起こした時、その理由を確かめずに叱ること(事故を起こした可能性もあります)
・お仕置きをした後、実装石がそれを理解しているかどうかの確認を怠ること
・飼い主のミスで発生したトラブルを、実装石のせいにして叱ること
 (最大のタブーです。これにより、根深い不信感を植え付けかねません)
・身体を損壊させるお仕置きをした後、餌を与えずに放置すること
 (身体回復のために生命維持機能が酷使されるため、衰弱してしまいます)

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 テ……テチ……チィ……

 弱々しい鳴き声が、箱庭に響く。

 育ち盛りの上、四肢に深刻なダメージを受けた今のぷちには、大量の水分と充分な栄養補給が必要なのだが、餌は
明日の朝まで与えられることはない。
 そのため、ぷちは身体に蓄えられた栄養のほとんどを四肢の治癒に持っていかれてしまい、加えて大量の出血によって
水分も失われたため、瀕死の状態に陥っていた。
 もはやぷちには、自分のお仕置きの理由を反芻する気力など尽き果てている。
 今はただ、焼け付くような喉の渇きと、壮絶な空腹感に耐え続けるしかない。
 

 テェ……
 (お水……テチ……)


 せめて一滴でもと、蚊の鳴くような声でとしあきを呼ぶ。

 だが、その命を掛けた呼び声は、大音量のヘッドフォンをかけている彼の耳に届く事はなかった。
  


              ※            ※             ※



 翌朝、小屋の中で瀕死の状態になっているぷちに驚いたとしあきは、慌てて栄養剤を取り出し、注射器で与えた。
 ほとんど仮死状態だったぷちが回復したのは、結局その日の昼を過ぎた頃だった。
 額と腕は完治していたが、足はまだ半分ほどしか復元されていない。
 前日の朝、必要量の2/3しか食事をしていないのだから、それは当然のことだ。

 さすがに哀れに感じたとしあきは、その日はできるだけぷちにかまってやることにする。
 例のレクチャーサイトに従い、実装フードを温めたミルクで溶き、食べやすくして口に少しずつ運ぶ。
 意識朦朧状態のぷちは、それでも懸命に口と舌を動かし、ちゃぷちゃぷと舐め始める。
 たっぷり一時間もかけた食事が済むと、ようやくぷちの顔に温かみが戻って来た。

「よし、もう大丈夫だぞぷち」

 テチィ…

「でも、ほんの少し食事抜いただけでこんなにやつれるなんて、特異体質なのかな?」

 テチ…?

「まあいいか。今度から、お仕置きされないように気をつけるんだぞ。トイレで遊ぶのは絶対禁止だ、わかったな」

 テェェ…

 手の中に抱きながら、優しくぷちに話し掛ける。
 だが当のぷちは、としあきの言っている事の意味がよく飲み込めていない。
 というより、としあきの認識のズレを把握し切れず、戸惑っていた。


 妹チャン達がお仕置きされるの、たくさん見たテチ
 でも、こんなに酷い事はされなかったテチ
 ご主人様は、ワタチを虐待するテチ?
 ……それは、イヤテチ


 ぷちは、悲しげな表情を浮かべてとしあきの親指にそっと頬擦りをする。
 それは、かつてお仕置きで深く傷ついた妹達を慰めるために行っていた、彼女なりの愛情表現のつもりだった。
 これだけ不条理な痛めつけられ方をしたにも関わらず、ぷちの、としあきに対する忠誠心と愛情は少しも揺らいではいない。
 十万匹に一匹と言われる、珍しい仔実装ならではの意識だ。

 だが——

「どうしたんだ? 顔でもかゆいのか?」

 テ!!

 親指から顔を引き剥がすと、としあきは指の爪でぷちの頬をコリコリと掻き始める。
 その奇妙な行為に、ぷちはようやく確信を得た。

 ——このご主人様、ものすごく鈍いテチ!

 この発見は、ぷちにとって最大の収穫だった。
 彼女は今まで、自分達を飼う人間はいずれも完全無比の存在だと深く信じ込んでいた。
 母親も、店員も、そんな完璧なご主人様に尽くすようにと、常日頃からぷち達を教育していた。
 妹達はそれを決して受け入れようとはしなかったが、生真面目なぷちはそれを素直に信じ続けてきたのだ。
 だが、これまで一度もペットを飼った経験もなければ、幼少時から鍵っ子で親と距離を置いて生活してきたとしあきには、
他者の愛情表現そのものが伝わり難い。
 振り返れば、水槽の件、トイレの件、お仕置きの件といい、余りにも不条理かつ無頓着な事が多すぎる。
 ここに至り、ぷちはやっと深く納得する事が出来た。


 それからもとしあきは一杯ぷちを構ってはくれたが、まだ足が完治していないのに箱庭に立たせようとしたり、自力では
トイレに行けない事、手伝ってやらないと用足しすら出来ない事を頭から完全にすっ飛ばしていたりと、そそっかしい面を
見せまくった。
 おかげで、またも包帯の中で漏らしそうになってしまったが、必死でトイレを指差すことでようやく気付いてもらえた。
 だが不幸なことに、かの実装用トイレがサイズ過剰のためぷちには適さないという事には、とうとう最後まで気付いて
もらえなかった。

 テェェ……このご主人様は、ひょっとしたらすごく……ダメなニンゲンさんかもしれないテチ

 身体を支えられて用を足しながら、ぷちはそんな事を思った。
 だが、すぐに首を振って自ら否定する。
 ご主人様は、きっとまだ実装飼いに慣れていないだけだ、きっとすぐに完璧になる。
 あらためてそう強く信じ込む事にした。

 その後、用を足し終えたぷちの尻を拭いてやろうとして、うっかり足をトイレの段差に引っ掛けてダメージを与えてしまったり
したが、悪気のないとしあきはへらへら笑いながら、涙目のぷちをあやし続けた。
 この愚行のせいで、ぷちの足の回復がさらに半日ほど遅れてしまったのは、言うまでもない……。



              ※            ※             ※


 さらに翌朝、ようやく立ち上がって歩けるようになったぷちは、またいつものように布団と身だしなみを整えて、としあきが
起きてくるのを待った。
 残念ながら、まだ一人でトイレで用を足す事はできない。
 というより、ぷちはあの大きなトイレに対して、すっかり恐怖感を抱くようになってしまった。
 薄暗くて奥の方が良く見えず、吸い込まれるように感じるし、実際に転げ落ちて酷い目に遭ってしまったのだ。
 高級飼い実装の娘として恥ずかしくないようにと、徹底教育を授かってきたぷちにとっては、糞にまみれる事などとても
耐えられるものではない。
 それどころか、本来なら服や髪、肌が少しでも汚れる事を嫌うほどなのだ。
 ぷちは、足の怪我のせいで昨日から風呂に入っていない。
 ただでさえ不快感があるのに、これ以上汚れてしまう危険を冒す気にはなれない。
 だが、一昨日の誓いが、ぷちを迷わせる。
 ご主人様にこれ以上手間と迷惑をかけさせないためには、この苦境にあえて慣れなければならない。
 それはもはや、意地だった。
 あまり力の入らない足を無理矢理動かし、以前の2/3程度の速度でトイレに向かう。
 気合を入れて段差を昇り、穴の前に立つ。
 実装用トイレは、実装石の糞の悪臭を防ぐために強力な匂い消しが内部に仕込まれている。
 そのため、入り口付近に立つ程度ではまったく匂わないのだが、少しでも足を踏み入れると、突如籠もりまくった悪臭が
襲い掛かってくる。
 逃げ出したいが、ここまで来た以上、後には引けない。
 なるべく奥の方を見ないように気をつけながら、ゆっくりとパンツを降ろし、尻を出す。
 中腰になり、下腹部に気合を込める。

 テ…テ…テテ……テッテロケー!!

 母親譲りの「脱糞の唄」……という名の“叫び”を発する。

 こうすると、便意がなくてもウンチが出る……ような気がするのだ。
 起きたばかりだと便意に見舞われにくいぷちは、懸命に「出てくれ」と祈る。
 勿論、奥に転げ落ちないようにバランスをとり続ける事も忘れない。
 数分後、努力の甲斐があり、愛らしい子供の先端部分が、総排泄孔からちょぴっと顔を出した。

 出、出るテチ! このままぬるりと出るテチ! 一気に奥まで届けテチ!!

 重心を前にかければ、少なくとも後ろへは転げない事を感覚で学んだぷちは、勝利を確信し始める。
 テッテレーは既に数センチ程飛び出しており、このまま行けばうまく排泄出来そうだ。
 トイレに上がって既に十数分、そろそろ足も限界を訴えるという頃、ついに「難産」は終息の時を向かえた。

 ぷりゅん ——ポットン

 出た! ついに出たテチ! 一人で出来たテチーッ!!

 文句なしの大成功に感激し、ぷちは「成果」を確認しようと、無意識に後方を振り返る。
 と、その瞬間……

 テ?

 ぐらっ……

 テ、テ、テ、テチャアァァァァァァアアアァァァ?!?!

 ごろんごろん……ぼちゃん


 ——そのまま、ぷちは悪臭漂う暗黒地帯へと決死のダイブを強要された。
 だが、それは決して、ぷちの失態ではなかった。
 

「いやー、うっかりしてたな。なんか忘れてると思ったらウンコ処理してなかったよ。
 ……あれれ、ぷち? ぷちぃ? どこへ行ったんだーっ?」

 としあきに持ち上げられたトイレの中、ぷちは、口の中に飛び込んできた「難産の成果」のために返答する事すら出来ず、
喉の奥からこみ上げる嘔吐感と必死に格闘していた。

 数分後、としあきに救出されたぷちは、再び両腕をへし折られ、あげくに夜まで食事と水抜きというお仕置きを与えられた。 

「あれほどトイレで遊ぶなって言ったのに! 何回言えばわかるんだお前は! もうこのトイレは使用禁止だ!」

 ここに至って、としあきはようやくトイレを別なものに交換してくれた。
 新しいトイレは、お菓子の空き箱にちり紙を詰めた粗末なものになってしまったが、小さいぷちにとってはこちらの方が
よほどマシだった。


              ※            ※             ※


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□実装石を飼う際の注意 初心者編 3:

 ここまで読み進められた貴方は、もう実装石とのつきあい方がだいたい見えてきたと
思います。
 優しく接する事、時には厳しく躾ける事について触れて来ましたが、ここからは
実装石の本質的な部分についておさらいしていきましょう。
 彼女達の性格や態度を理解することで、より深く愛してあげる事ができるようになります。

 実装石を愛し、愛される最高のご主人様になるため、ワンステップ上を目指しましょう。


3-1 実装石の仕草で要求を理解する
3-2 どこまで許し、どこまで許さないか
3-3 甘えさせて良い時期と、突き放す時期の見定め
3-4 わがままな態度を取り始めたときはどうするか

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 ぷちがとしあきの家に来てから、早くも十日が経過した。

 最初の頃に若干のトラブルはあったものの、としあきとぷちの関係は良好に保たれ、お互い毎日がそれなりに楽しかった。
 としあきは、ぷちをテーブルの上に乗せてやり、小さなプラスチック製のブロックやスーパーボールを与えて一人で遊ぶ事
を教え始めた。
 当然ながら、高い所に乗せる時は、落下しないように縁に本や缶、瓶を置いて障壁にする。
 また、出来る限り目を離さないように注意をする。

 やがて、テーブルの一角はぷち専用の遊び場になり、日中のほとんどをそこで過ごすようになった。
 例のトイレの一件以降、ぷちはまったく粗相をしなくなった上、便意を催すと独特の鳴き声を立てて伝えるようになったので、
としあきはこれを「躾の成果」と判断した。
 勿論、それは全く見当ハズレの認識なのだが。

 箱庭に居る時よりとしあきの姿が間近に見えるので、ぷち自身もそこがお気に入りだ。
 寝る時はちゃんと箱庭へ戻されるが、それ以外はずっとそこに居たいと思った。
 ボールを転がす時も、ブロックで遊ぶ時も、ぷちは横目でちらちらととしあきの姿を見て、ポッと頬を赤らめる。
 あんな酷い目に遭わされたにも関わらず、彼に悪意がない事を感覚的に理解したため、ぷちは飼い主に対する愛情と
忠誠心を失う事はなかった。
 無論それは、百万匹に一匹と言われる希有な彼女だからこそなのだが。


 生活視点が変わった事で、ぷちは、ある事実に気付いた。
 それは、としあきがあまり食事をしていないという事だ。
 否、正確には一日三度きちんと食事は摂っているのだが、その分量が余りにも少ないのだ。
 15センチ程度の大きさしかないぷちにして「少ない」と思わせる食事量。
 例えば、今朝はバナナ半本に水だけ、昼は食パン一枚だけ。
 昨日の夕食は普段より少しだけ多めだったが、それでもコンビニのオニギリ一個に小さな野菜サラダが付いただけだ。
 ぷちには人間の食料についての知識はなかったが、彼の食生活が決してまともなものでない事は充分理解できる。
 実際、ぷちは食事を終えたとしあきが満足そうな顔をしている所を、いまだ一度たりとも見ていない。
 それに対して、自分には充分過ぎるほどの食料が毎回与えられている。
 本来ならこれは、実装石にとって望ましい状況であり、不満を述べるようなものではない。
 ごく普通の実装石なら、としあきの食生活と比較して「チプププ、ニンゲンは粗末な食事なのに、ワタシはこんなに豪家テチー♪ 
これからも奴隷はワタチに尽くすテチー♪」などどほざく所だろうが、そこは一千万匹に一匹という奇跡の実装石・ぷち。
 ペットショップの店員に比べると、余りにも痩せすぎなとしあきの体躯を見る度に心配し、強い不安に駆られるようになった。

 その日の昼食、いつものようにとしあきが餌皿に実装フードを盛ってくれる。
 ぷちが大好きな、半練りタイプのフードだ。
 これは、飼い実装用としてはかなり高級なレベルの商品で、材料には屑実装石肉やモツ、骨粉などの安価なものは一切
使われておらず、犬や猫の高級ペットフード同様、栄養バランスと味覚を徹底追求して作り出された、メイデン社自信の傑作
ロングセラー商品だ。
 縦3センチ、横1.5センチ、厚み5ミリの宝石型の粒で、成体実装でも10粒、仔実装なら3粒も食べると体内で膨らみ、適度
な満腹感を得られるようになっている。
 また、見た目はすべて同じだが内部に仕込まれているペーストの味がなんと18種類にも分けられており、味の好みに煩い
実装石が「次にどんな味が出るか」を楽しめるような作りなのだ。
 話によると、そのペーストの中には高級ステーキやちらし寿司の味がするフレーバーもあると言われているが、人間が
食べてもそれはよくわからないらしい。
 間違えて人や他の生物が食べても問題のないように、材料やカロリー値まで充分に計算された、現時点ではほぼ理想的
な実装フード……言わずともかな、その価格もかなりのものになる。
 仔実装約一か月分強の分量・300粒で、だいたい約10松牛※ほどの価格になる。
 そしてぷちは、初めてこれを食べた時からそれを感知していた。


 お店に居た時食べたフードは、これに比べたらもっとコリコリでまずかったテチ
 粉っぽかったテチ
 でもママは言ったテチ
 「貧乏なニンゲンさんに飼われた時のために、粗食に慣れておくのがたしなみデス」と

 ワタチだけ、こんなにおいしいご飯を食べるわけにはいかないテチ!

 
 実装石にあるまじき優しさを持つぷちは、フードを一粒両手に抱えて、自分の机で小さな容器のヨーグルトを食べている
としあきに呼びかけた。

 テチテチ、テチーッ!

「ん、どうしたぷち?」

 テチー、テチーッ、テチーッ!!
(ご主人様! ワタチのご飯分けてあげるテチ!)

「なんだ? 早く餌を食べちゃいなさい」

 テェェェ! テチーテチー!
(ワタチはもう充分テチ! ワタチよりも、ご主人様にお腹一杯になって欲しいテチー!)

「好き嫌いしたらダメだぞ。それ高かったんだから」

 テチー、テチー、テチテチ、テチー!
(ご主人様の所へ、届けテチ! ご主人様、受け取って欲しいテチ!)

 ぷちは、手に持った実装フードの粒を徐に放り投げる。
 彼女の予測では、投げ上げたフードはとしあきの手元まで届く予定だった……が、所詮は子供の実装石。
 フードは小さな放物円を描き、ほんの5センチほど手前に落下しただけだった。
 それはまるで、ぷちが餌を投げ捨てたかのようにも見える。

「ぷち! なんてことをするんだ! それは俺が生活費を切り詰めて買っているものなんだぞ!」

 テチ?! テ、テェェェッ!!!
(ち、違うテチ! 手元が狂っただけテチ!)

「ぷち、こっちに来なさい!」

 テ、テチャアァ———ッ?!


 胴体を鷲掴みにされ、ぷちはそのまま流し台まで連行された。
 服とパンツを奪い取られ、蛇口から口の中に大量の水を流し込まれて、腹の中を徹底的に空っぽにされる。
 涙目になっても、容赦はない。
 総排泄孔から濃緑色の水便が出なくなるほど完全に糞抜きされると、ぷちは雑巾で適当に身体を拭かれ、今度は押入れ
へと連行される。

 テ…テチ…?

 既に意識も絶え絶えになっているぷちは、服も着せてもらえぬまま両手足を太い紐でぐるぐる巻きにされ、見たこともない
真っ黒な箱の中に入れられる。
 そして、目を開くより早く……上蓋を閉じられた。
 生まれて初めて経験する完全な闇は、ぷちを一気に恐怖のズンドコへ叩き落した!

 テ、テチーッ!? テチーッ?!

『ぷち、毎日ご飯が食べられる事の有り難味を知りなさい! お前は、これから五日間、そこにいなさい!』

 テ、テチャアッ?!

『もちろんその間餌も水もなしだ! 徹底的に反省させてやる!!』

 テチャアッ! テジャアァァァッ!!


 黒い箱は、そのまま押入れの一番奥に詰め込まれた。
 襖を閉めると、もうぷちの泣き声は完全に聞こえない。
 としあきは、食べかけだったヨーグルトをはみはみしながら、また例のサイトを開く。
 夕べ読み込んだ、あのページの内容を、もう一度頭に叩き込むために。


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3-4 わがままな態度を取り始めたときはどうするか

 既に述べた通り、実装石はとてもワガママな生き物です。
 なんの躾もしないとどんどん要求をエスカレートさせてしまい、仕舞いにはとても
飼えなくなってしまうのです。
 これを避けるため、飼い主は「我慢の大切さ」を教えなければなりません。
 そのためには、時には残酷とも思われることをしなくてはならないでしょう。

 実装石が最初に不満を訴えるのは、だいたいが「食事」です。
 どんなにおいしい最高の餌を与えても、いずれはそれに慣れてもっとおいしい物を
要求します。

 この態度を見過ごしてしまったら、あなたはもう飼い主失格です!

 少しでも食事に不満を唱えたら、自分でもやりすぎと思うくらいにきついお仕置きを
しましょう。
 ただし、身体を損壊させたり激痛を与えるものではいけません。
 時間をかけ、じっくりと身体に教え込むようなものが、もっとも効果があります。

 一例を挙げてみましょう。

・実装石を押入れなどに閉じ込め、食事を与えない
・どんなに泣いても耳を貸さず、充分な時間が経つまであえて放置する※
・ワガママがきつい時は、体内洗浄をして強制的に空腹感を与える(ただし仔実装
以下の赤ちゃんには危険ですので、決してしないでください)
・ご主人様との接触を断たせ、一定時間構ってやらない

 断食をさせる時は、必ず体内洗浄をして服を奪い、身体を縛りましょう。
 さもないと、飢餓感を覚えた実装石は自分の糞や服、時には身体の一部を食べ
てしまいます。
 そうなると、もう飼い実装としては生きていけなくなってしまうのです。

 また、上記項目はあくまで一例です。
 これをすべて一度に課してしまうと、実装石は過度のストレスに見舞われてしまう
危険がありますので、細心の注意を払いましょう。

※これは、管理人の経験上五日間が限度です。

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 身長165センチ、体重90キロのとしあきは、ヨーグルトを空にすると、全然満たされない腹を擦りながら、「あ〜、そろそろ
ピザ食いてぇ〜」と泣き言をほざく。

 テェェェェェェン、テェェェエエエエン! テエェェェェェエエン!!

 ご主人さまぁっ! 暗いのイヤイヤテチ! 怖いテチィッ!!
 なんでこんな目に遭うテチ?! ワタチ、なんにも悪い事してないテチイィィッ!!


 暗黒の中に落とされたぷちはそのままとしあきに忘れられ、一週間と三時間後、半分ミイラになりかけた状態で解放され、
動物病院に緊急入院させられるハメになった。



 ちなみに、ぷちの居たペットショップの店員は、としあきより10センチ低い身長に大して1.5倍の体重を持つ、とっても
ふくよかさんだった。

 
 
※1松牛:「松屋」の牛めし並が一杯食べられる値段を基準にした金銭単位である。




 
 (続く)

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1 Re: Name:匿名石 2023/07/15-22:13:36 No:00007527[申告]
リンガルないのつれえなあ…
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