空が綺麗なのでドライブに出た。 雲ひとつ無い青空。 今日も暑くなりそうだ。 人通りは少ない。 することも無いのでコンビニへ寄り、アイスを食べつつぶらぶらしてる途中 耳障りなカナキリ声が響いた。 「テッチューン!」 「こら!クルマ危ないでしょ!」 「テッギャァー!!テギャァー!!テキャァァァァァァ!!!!」 「テッスゥ!」 「レフー!レッフーン!」 文字にすると大間抜けだが、今の俺にはこれ以外に伝える方法が無い。 最近、放し飼いの実装石が増えた。 当然、放し飼いにされる実装石は賢い個体だ。 そうだったの数年前までだ。 放し飼いが少しずつ広まるにつれ、 言葉は悪いが糞蟲レベルの実装石を放し飼いにする愛護派も増えてきた。 散歩の時ぐらいいいでしょ? という極めて糞蟲の飼い主らしい思考で、首輪と紐も付けずに散歩する。 幸い、それとは逆に公園にはそれほど実装石や仔実装がいることは無くなった。 とある虐待派が、 公園でスカッとバールのような(ryだかバットだかで大虐殺をかましたはいいが どうやら買ったばかりの仔実装すら飼い主の目の前で惨殺してしまったようで、 かなりの大問題になっていた。 愛護派たちはここぞとばかりに「実装石が安心して遊べる公園」設立を叫びつつも、 やはり第二の仔実装・いきなり虐殺大作戦!は怖いと見えて 公園にほったらかしにして遊ばせることは滅多に無くなった。 が、しかし見事なまでに実装石としか言えないほどのお間抜け楽天思考で、 こうやって道端には住民に媚びた野良だの、 飼い主付きだの親付きだのの しっかり愛護され、調子に乗ってしまった仔実装が溢れている。 どんなに高い金を払って躾済みの実装石を買った所で、 その後の生活が悪ければ、あっという間に糞蟲に戻ってしまう。 そう、「賢い実装石」はただの都合のいい幻想だ。 愚痴が長くなった。 とにかく俺はそんな事を一気に考え、 咳払いをした。 無視された。 なので騒がしい声の主を見た。 普通サイズの仔実装に、まだ小さな、蛆から成長したてぐらいの仔実装、 そして愛護派とみられる女性の実装ベビーカー(歩くたびにデスデスと鳴ってうるさいのだ)には 小さな蛆実装がピンクのタオルケットに包まれていた。 花柄の……お揃いの色違いのバカでっかいリボンを、ご丁寧に2匹の仔実装に付けてやがる。 花を召しませ仔実装。 メールを見るフリをして、携帯アプリの実装リンガルを起動した。 便利な時代だ。 「テチィー! テッヂャァァァァ!!(ワタチもアイス食べる!とっとと買えテヂュウ〜〜!)」 黄色の花のリボンを付けた仔実装が、顔を真っ赤にして叫ぶ。 先ほどから、もはや奇声としか呼べない鳴き声だ。 地面に座り込んで悲鳴をあげる様子には殺意しか浮かばない。 泣き叫ぶ顔には醜いシワが出来ている。 「もう!ミィちゃんはこないだもお腹壊したからだーめ」 お姉さ… いや、正直にいこう。 うっすら化粧したおばさんが、甘やかした声でミィちゃんとやらをたしなめる。 上品な印象を受ける。 まだ20代前半と言っても通るかもしれない。 3匹も実装石を飼うには、虐待派やブリーダーはともかく 愛護派ならばかなりの支出だ。 リンガル無しでも仔実装の言葉は彼女に通じている……というより、 ミィちゃんは俺の手を見てテチテチ泣き叫んでいるのだ。 分からない方がどうかしてる。 どう見ても保健所やペットショップでは真っ先に殺される糞蟲の部類だ。 躾も出来ない、そのくせ甘やかすのは限度を知らない 一番タチの悪い愛護派。 あの様子だとアイスを買ってやってしまうだろう。 それが可愛いペットを更に糞蟲化させるとも自覚せず。 その様子を横目に、 「テスゥ……テププッ(ママったらこまっちゃう…テププ)」 と、どうやらお姉さんらしき、 緑の花のリボンを付けた仔実装が呟く。 こちらはそこそこは賢い個体のようだ。 だがしかし、所詮は糞蟲の姉、目の色と顔に 「ミィちゃんが食べるんならワタチも当然アイス食べられるテス♪」 と、いかにも自分に都合のいい欲望と想像を隠しきれていない。 「レヒィーッ! レッピィー!!(解読不能)」 「ホラ!ミィちゃんが騒ぐからミントちゃんも起きちゃったわよ?」 「テキャァァァァァァァァァァァァ!!!!(うるさい!知らない!蛆ちゃんなんて死んじゃえばいい!)」 「テステスゥ!(こら!そんなこと言っちゃイケナイんだから!)」 「テギィィィ!!」 ボグッ。 スイカを叩いた。 水の音がこもった濁音。 湿った木魚だ。 黄色のミィちゃんが思いっきり姉の顔を殴ったのだ。 仔実装の腕力などたかが知れたものの上に、たいして腰も入っていないパンチだったが 緑のリボンの姉実装は大げさに騒ぐ。 仔実装の声は耳がキーンとするよ 「テチャアアアアアアアアアアアア!!!!!!(痛いテス!ぶったテス!死んじゃうテスゥ!!)」 「テッキィー!(うるさい!だまれ!バカァ!!)」 「レッッッピィィィィィ!!!!!!!!(翻訳不能)」 「いい加減にしなさい!」 「テキャァ!(うるさいテチュゥゥゥー!ママのバカァー!)」 「テギャァ-!(痛い痛い死んじゃうテス)」 爽やかな朝はどこに消えた? キチガイ実装屋さんのティーパーティーはいつ始まるのかしら? あやうく現実逃避しそうになるのをグッとこらえ、 俺はある「テスト」を試みた。 そっとコンビニの前にある、ポストの上に携帯を置く。 ポストはあかいろ夕日色。 逃避は続くよどこまでも。 セミがもう鳴いている… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「あら?」 手の付けられないほどに泣き叫ぶミィちゃん、ミントちゃんに疲れ、 ふと泣き止んだミドリの方を見ました。 この子は私の目から見てもしっかりした子で、 妹たちの面倒も良くしてくれる自慢の子です。 ミドリは怒ると黙って、後で感情を爆発させてしまうのが困った子ですが ヒステリーを起こすよりはいいかなって。 話がずれてしまいました。 正確には、ミドリは怒って黙っているのではありませんでした。 何かをじっと……先ほどミィちゃんが欲しがっていたアイス。 それを食べていたお兄さんがいた方を見ていました。 そう言えば不愉快な思いをさせてしまったかも知れないと思い、 謝ろうと探しましたが、いつの間にかいなくなっていました。 そこで初めて気付いたのです。 ポストの上に携帯がありました。 先ほどのお兄さんが持っていた物のようです。 忘れていったのでしょうか? まだそこまで遠くへ行ってはいないでしょう。 「あらいけない!ママちょっとこれ渡してくるわね」 ミィちゃんが、今度はミントちゃんをほっぺたをつつきだしたのを見て、 私はミィちゃんを動かすのを諦め、ミドリちゃんに言いました。 「ちゃんと妹たちの面倒見てたら、みんなにアイスかったげる」 「ハァイ!」 ミドリちゃんはもうニコニコ顔です。 それを聞いたミィちゃんは、お姉ちゃんのおかげで(と、言っていいのでしょうか?) アイスがもらえるという事にますます腹を立てたらしく、 今度はミドリの髪を引っ張りだしましす。 それよりも携帯を早く渡さないと、あの男の人が困るだろうと思ったので 私はコンビニの角を曲がり、ちょっとだけ振り返り、また進みました。 あの子たちを見たのはこの時が最後でした。 先ほどから何度もお話しているはずです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「うーむ……愛護派にしてはなかなかいい人だな」 「デ?」 飼い主がいなくなるなり、 お互いの髪を引っ張り合いだした仔実装ちゃんズの後ろに突然俺が立った。 この伝え方だと俺は三人称だ。 「テストは合格だ。俺が貴様らを教育しなおしてやろう」 「テテテテテッ?? ・・・テケボッ!?」 「テッスゥ!? テギャッ」 「レム〜…レム〜…」 未だに状況が飲み込めないバカ2匹の腹を次々に蹴ると、 小さな仔実装の柔らかなお腹に蹴りこんだ方向に素直にぶっ飛ぶ。 コンクリに頭を打ち付けたのが効いたのか 仔実装共はおとなしくなった。 「テースートーはーごーうかーく きーさまーらシッカーク!!」 「テチィ!?」 「テスゥ!??」 「レム〜〜…スピー…レムゥ〜〜」 いや、具体的には「ヤバイ状況だと感じた」 が正しい。 ある程度の躾は受けているのか…… この悪知恵が処分を免れた秘訣か。 だが長続きはしなかったようだ。 「テ…テチィ…」 黄色のリボンのミィちゃんが、どこかにいる飼い主を呼ぼうとしたが、 姉の 「オマエは黙るテス!オマエのせいでワタチまで殺されちゃうテス!」 という視線(と、歯ぎしり)で黙った。 わずかな知性が得なのか致命傷なのか。 そういうわけで俺はおとなしくなった糞蟲×2をもう一度蹴り飛ばして後部座席に突っ込んだ。 とたんに 「デゲロロロロロロロロロロロオ!!」 と元気のいい音を立てて姉のミドリが朝ごはんの実装フードを吐く。 緊張が限界に達したのか? それとも強く蹴りすぎたか。 本来なら、きちんとここで躾けなければ、 車内で嘔吐してもよいと勘違いしてしまう。 しかし今はしっかり教える時間は無い。 服が汚れたテス〜〜!!吐いちゃったテス〜!ワタチかわいそうテス〜〜〜!!! ご丁寧に「ワタチタチ」では無いあたりが、幼くとも実装石の本性が出ている。 泣き叫ぶ仔実装の眉間に裏拳をブチ込み、 エンジンをかける。 泣きつかれて眠っている蛆実装を 実装ベビーカーから引きずり出して助手席に乗せ、 先ほどのおばさんが戻ってくる前に我が家へと帰った。 途中、ミドリちゃんが泣いたままパンコンしやがったので ミィちゃんさんに「殴れ」と言ったらちゃんと殴ってくれた。 さぁ!君らも僕もおばさんに恩を返さなきゃ! 車に実装石の糞とゲロの匂いがとれなくなった。
