旅坊主の実斎が段を登りきり、境内をのぞき込むと そこには裸になってうずくまっている実装石がいた。 (はて…… 死んでいるのか?) と思ったが、よく見ると若干動いており生きているようだった。 しきりに頭を地面に擦りつけていた。 見ようによっては寺に向かって拝んでいるようにも見える。 近くまで近づくとこちらに気がついたのか立ち上がり口うるさく鳴き始めた。 先ほどまでうずくまっていたところには破れた服と抜けた髪。 (ははぁ。さては小坊主にでもイタズラされたな) 実斎はそう受け取った。 持っていた杖で地面に喝をいれ一度その裸を黙らせるとお寺の方を指さした。 「拝んでおれば御利益があるかもしれんぞ。」 木枯らしが吹いている。 (我ながら無責任だなぁ) と実斎は思った。 寺に入り一通りの用事が終わるとお茶でもと住職に誘われることとなった。 はじめはすぐにでも切り上げて帰ろうかと思っていたが、 なかなかどうして気が妙に合いついつい長居をしてしまう。 話の途中、先ほど境内で見かけた裸のことについて話になった。 「小坊主のイタズラですかな?」 「いやいや、あれは私がやったのじゃ。」 「ほう、それはなぜまた?」 「あの手の者は夜な夜な境内にある食べ物を狙いましてな。 見せしめであのように服を剥ぎ髪を剃ってやるのじゃ。 すると不思議なことにな、潮が引くようにやってこなくなるのじゃ。」 「ははぁ。」 「因果応報というヤツじゃ。」 カッカッカと小気味よく住職は笑う。 この後も話は盛り上がり、結局は住職の好意に甘え一晩泊まることになった。 実斎は久々の水行をこなすと朝食のもてなしを受けるとすぐに次の寺へと立った。 「近くとあらば、またお寄りくだされ。」 あの笑いで住職は送り出してくれた。 天は突き抜けるように蒼く寒々しい。 境内の中程で行く手に立ちふさがる者がいる。 あの裸だ。 やかましく鳴いている。 一応は威嚇の気迫なのだろうが、足は寒さに震え、 およそ勝てぬ相手に鳴く声はどこか哀愁めいたものがある。 「不憫だのぉ。」 実斎はしばらく立ち止まって考えていた。 「ふむ、仕方ない。」 ため息をつくようにそう言うと実斎は身をかがめる。 裸はそれに驚喜した。 (た、たすけてくれるんデスゥ!?!?) 実斎は裸の頭をしかと離れぬようにと強く握った。 キリキリと痛むほどであるが助けてくれるのだ。 裸は苦痛に歪んだ奇っ怪な笑顔をしている。 「フン!」 次の瞬間、実斎は懇親の力で裸を宙へと放り投げた。 その高さは境内に生える高い木を超えるか超えないかほどである。 「その高さならば痛みに苦しむことはあるまい!成仏せいよ!」 実斎はまた悠々と歩き出す。 後ろの寺からは小坊主たちの慣れぬお経が聞こえてきた。 「ヂッ」
