日曜日 AM 06:00 1人の男が、実装公園として悪名名高い双葉市中央公園、通称『円卓』に入って来た。 身長170cm、ナップサックを背負ってジャンパー姿のどこでも居るごく普通の青年である。 「……」 男はズンズンと公園の入り口を潜り抜け、公園内へと侵入した。 数年前は朝のランニングや犬の散歩コースとして市民に愛された此所も、今はカオス空間と化していて一般人は寄り付かない。 僅かに、ドーベルマンを連れたりバールを隠し持ったり、実蒼石を連れた虐待派が早朝の蹂躙ランニングに来る位だ。 「……」 男はひたすら歩を進めていく。 普段は騒がしいほど溢れている実装石の姿はあまり見られない。 今は丁度、朝の食料調達に出ているからだろうか? 複数有る実装コロニーからも、残留した仔実装のテチテチという鳴き声程度しか聞こえない。 「……」 やがて男はこの公園唯一の男女共用トイレに辿り着いた。 本当は男女別だったのだが、公園が荒廃した為維持できなくなり片方(男)を閉鎖して男女共用としたのだ。 尤も、利用者は専ら実装石か尿意か便意を催した虐待派ぐらい。虐待派にしても、此所よりは近くにあるコンビニで用をたすだろう。 「……」 入り口の中を覗いて見る。 左右から入れる共通の出入り口が有り、男が覗いている側が男子用でベニヤ板が隙間無く張り付けられて閉鎖中。 奥の方が元女子用で今は男女共用のトイレ。コンクリートで作られた長方形がぽっかりと口を開けていた。 今の所、実装石の気配は……。 「レフーン?」 「……」 男の視線が、共通路の端に向けられる。 側溝でところどころに粘膜が付いた蛆実装が一匹レフレフと蠢きながら鳴いていた。 蛆実装は知性が全く感じられない表情でこちらを見上げ、媚びのような角度で首を傾げた後、 仰向けになり、尻尾部分を左右に振りつつこっちを期待するような眼差しで見つめて来た。 「レッフーン、プニプニ〜」 「……」 蛆の言葉は圧倒的に言葉と語彙が足りない。 だが、大体の事情は理解出来た。 恐らくは、出産時に未熟児として生み出された後親に『不要』と判断され置き去りにされた蛆実装だろう。 それも今朝生まれた頃合いか。生存能力が欠如している蛆実装が、保護のない状態で数時間も生き延びれる筈がないからだ。 他の実装が食料の調達に出かける時間帯に出産———つまり仔食いに襲われる危険性を下げる事を考えれる知性のある親実装。 出産後の貴重な蛋白源としてお持ち帰りしなかったのはそれなりに蓄えがあったのか、同族喰い癖を避ける為か微かな親仔の情か。 「……」 どちらにしろ、事実など男にとってはどうでもいい事だ。 だが、男はそれなりに興味を示したらしい。 「……」 男は蛆実装に向き直り、静かに笑って見る。 蛆実装も男に興味を示して貰ったのが嬉しいのか、寸詰まりな手足をピコピコ動かしてレフレフ鳴く。 「……」 「プニプニプニー」 男は、笑っていた。 だから、蛆実装も嬉しくて全身で喜びとプニプニの要求を体現した。 「……」 「レフレフプニプニー」 蛆実装はずっと喜んでいた。 男の靴の裏が自分の真上を覆った時も。 靴の裏が勢い良く降ろされ、自分の躰が側溝の染みと化した瞬間ですらも。 多分、自分が死んだという事すら知覚出来なかっただろう。 男が実装石に興味を持つ事。 それは即ち、虐待か虐殺の前兆である。 実装石達が夢想している『ニンゲンが自分達に興味を持つのは良い事』と言う甘っちょろい考えとは真逆。 しかしそんな酷薄な現実もむべなるかな。それが、虐待師という存在なのだから。 そう、男は実装石専門虐待師だった。 AM 06:30 蛆実装を潰した男は、何事も無かったかのように共用トイレの入り口に立った。 中を覗いてみると、パチンパチンという音と共に、室内灯の蛍光灯の1つが点滅している。 広さは八畳ぐらいか。入り口から見て左側に洗面台と鏡が2セットあり、右側にはトイレの個室の列がある。 個室は4つあり、一番手前には『清掃用具入れ』というプレートが貼り付けられ、ドアは閉ざされたままだ。 「デッデロゲー、デッデロゲー♪」 「……」 残りの三つの内、使用可能なのは2つ。 一番奥は使用不可能らしく、『使用不可』と乱暴にマジックペンで書き殴られた紙が貼り付けられドアは堅く閉ざされている。 何故か閉ざされたドアにはかなりの量の糞が擦りつけられたり投げ付けられた跡があり、紙の方も三分の一程が緑色に変色していた。 残りの2つはドアが開いた状態で、数少ない利用者と大多数の招かれざる客が来るのを待っていた。 「デッデロゲー、デッデロゲー♪」 「……」 個室の方から、耳障りな声が聞こえる。 言うまでもなく、実装石の歌声だ。どうやら出産中のご様子。 男が手前から2番目の個室を覗いて見ると、和式の便座に跨り尻を此方に向けて出産中の親実装が居た。 「テッテーレ♪」 「テッテーレ♪」 「テッテーレ♪」 ぽちゃん、ぽちゃん、ぽちゃんと微量の糞と共に蛆形態の仔が薄緑色の膜に包まれこの世に生まれ出る。 更に2匹が生まれ落ち、それで打ち止めのようだ。親実装はパンツを履き直した後、便器の中で蠢いている子供を取り出そうと身を屈めた。 「デ?」 すっと影が差したのに気付き、親実装が顔を上げる。 点いたり消えたりする照明の中で見えたのは、見知らぬ人間の穏やかな笑顔だった。 親実装が反応する前に人間は笑顔のまま、親実装の半分開いたままのミツクチにコンバットブーツの蹴りを叩き込んだ。 「デブベァァ!?」 砕かれた歯と血の筋が何本も宙を舞う中を親実装は飛び、タイルの壁に勢い良くぶつかった。 べちゃっと湿った音と共に床に崩れ落ちる。 親実装がよろめきながらも何とか起き上がると、目の前にある便器のレバーに黒くて分厚い靴底が乗っかった。 それは先程、自分の口を蹴り上げ歯と顎を粉砕した人間の靴だった。 便器の使用法を水調達の為ある程度理解している親実装は、人間の悪意に満ちた意図を察した。 便器の中には、まだ生まれたばかりの仔達が居る。 「デ、デシャアアアアァァァァ!!」 威嚇の声を上げながらヨロヨロと人間の靴にしがみつき、ポフポフと両手を叩き付ける。 当然ながら全く堪えていない。運次第ではあるが、便器に駆け寄って抱えれるだけの仔を連れて逃げた方がまだ助かる可能性がある。 尤も、一般人や駆け出し虐待派なら兎も角この男ではそれすら許されないだろう。 男は相変わらず穏和な笑顔のまま、親実装を見下ろしている。 靴がゆっくりとレバーを押し込み始めた。 「デェック、デェーク、デズアァァァァ!!」 泣き喚きながら親実装は靴に対する攻撃を更に強める。 流れ出る水音が強まったのと、出て来た水によって仔が金隠しの真下にある水溜まりへと押し流されるのが鳴き声で解る。 早くこの悪いモノをレバーからどけねば仔達が溺れ死ぬ。 親実装は渾身の力を込め、両手を振り上げて一度に叩き付けた。 「……」 靴がレバーを押し込むのを止め、すっと上に持ち上げられた。 親実装は歓喜した。自分の攻撃が効いた。人間はたじろいだのだと。 この勢いのまま人間を追い出して仔達を救い出さねばならない。 「デッスゥゥ!!」 強気の鳴き声と共に、大量の糞がパンツの中に放り出される。 親実装はその中に手を突っ込み、適量の糞を掴んだ。 親実装が糞投げの体勢を取った瞬間、男は笑みを静かに強め、 「……」 上げていたブーツをレバーの上に載せ直し、一気に体重を掛けた。 ゴポポ、ジャパ———…………。 「「「「「レピャアアアアアアアア———…………」」」」」 「デ、デデ…………デズアアアアアアアアアアア!!!」 親実装は、仔達が永遠に手の届かない場所に旅だったのを知った。 糞を投げるのも人間が側に居るのも忘れ、便器の脇に回り込む。 当然ながら、今し方産んだばかりの我が仔の姿は無く、些か勢いを失った水流が流れているだけだった。 「デェック、デェック……デブゥ! ゴポポポボボボボ!?」 血涙を流しながら便器を覗いていた親実装は、いきなり後ろから蹴り付けられ便器の中へと顔を突っ込まされた。 藻掻いている親実装の尻に男の靴が押しつけられ、そのまま力尽くで便器の奥に押し込まれていく。 「デボ、ガポ、ゲポポボ!!」 「……」 体格を無視して頭から便器の深みに頭を捻じ入れられた為、両肩が脱臼した状態だ。 激痛と恐怖でパンツが見る間に緑色に染まり糞で膨らみ始めるが、男は構わず力を更に強めた。 それでも尚、親実装は必死になって水面から顔を出す為に藻掻き続ける。 親実装を嘲笑いもせず、男は笑顔のまま実装石の努力を無為にしていく。 「カパパパパ! ガボッ、ゴッ……ゴ、ポ…………」 30秒程暴れ続けていた親実装は最後に小さな泡を水面に吹き出すと、足掻くのを止めた。 丁度『犬神家の一族』の水死ポーズのように、足をやや斜め上に天井に向けた状態で便器に突き刺さっている。 周りには親実装の放りだした糞が飛び散り、親実装の苦悶を示しているかのようだった。 男にも、少なからず糞がこびり付いている。だが、全く気にした様子もない。 「……」 男は、試しにレバーを押し込んで見た。 実装石の頭で栓がされている便器では水が排水される訳もなく、たちまち水が溢れ帰ってしまった。 男は満足げに頷くと、そのまま2番目の個室から出た。 AM 08:30 男は、3番目の個室で食事をしていた。 3番目の個室は洋式便器だ。和式の体勢で食事をしたとしても食欲減退著しくて敵わない。 普通の人間なら、こんな実装臭とアンモニア臭が立ち籠めた便所で食事など絶対にしないだろう。 だが、男は普通ではないようだ。ドアを施錠もせずに、開け放ったままコンビニで買ったサンドイッチをナップサックから出しては口に放り込む。 「……」 黙々と咀嚼し、手にしたパック牛乳で喉を潤す。 表情は無表情だ。先程まで親仔実装を屠っていた時に浮かべていた笑みは無い。 トイレの外、公園が段々とデスデステチテチ騒がしくなっているのが遠く聞こえる。 実装公園の、日常が始まろうとしていた。 AM 10:20 媚び声、悲鳴、絶叫、嘲笑、苦悶、断末魔、嬌声。 実装公園では、様々な鳴き声がBGMのように常に流れ続ける。 日中なので照明が消えた薄暗いトイレの中、実装公園のBGMを聞きながら男は便器に座り愛読本である『お芋畑で捕らわれて』を読んでいた。 集落から逃れて郷実装になった一匹の山実装が盗みに入った芋畑で人間に捕まり、仔を喰われ禿裸にされ出産石として悲惨な生涯を送るという虐待小説だ。 仔を産まされては喰われる母実装が悲痛と悲哀を叫びやがて壊れていく様、そんな実装一家を食材としてしか見なさず淡々と料理していく飼い主の非情な態度。 一番の見所はラストの実装どんど焼きのシーンだろう。 歳徳に放り込まれ最後の務めと言わんばかりに薪として焚かれながらも、餅と一緒に串に刺されて炙られる仔を求めて叫ぶ親実装の描写が何とも虐待魂に響く。 作者自らが山実装を捕まえて実際に体験し、それを元に書き記したので臨場感抜群。その体験を作者は後書きでこう振り返っている。 『山実装と仔はとても美味しかったです。焼きも良いですが揚げたり煮ても美味しいですよ』 男は食べる事に対し極めて不精だったので料理云々には興味がない。 だが、この作者が描く生々しい虐待描写は堪らなく好きだった。 そんな風に作品の世界にめりこんでいた所為だろう。 男がそれらの接近に気付かなかったのは。 「テチテチー!!」 甲高い声音で、男は本から顔を上げた。 個室の前に3匹の仔実装が居て、こちらを見ながらテチテチ鳴いている。 先頭に居る仔実装がこちらを指さし盛んに鳴いていた。 男はリンガルを起動させる様子すら見せなかった。 男の経験上公園内に居る人間に対して行う、野良実装の要求三原則(餌寄こせ、飼え、貢げ)を叫んでいるだけだろうと判断したからだ。 要は、ベンチの前や遊歩道で言うか、薄暗いトイレの中で言うか。その程度の違いだ。 「……」 だが、男にとって仔実装の登場は歓迎すべき事だった。 読書を邪魔されたのは不愉快にしても、それを差し引いて有り余るタイミングの良さだからだ。 脳内で生み出されたイメージを生かす絶好の機会。イメージを体現する存在が来たのだから拒む理由など何処にも無い。 男は仔実装達が癇癪を起こす前に、ポケットを探って色取り取りの金平糖を取り出した。 仔実装達の目の色が変わり、やや遠巻きにしていた仔実装すら男の足下に殺到してくる。 「テチュー!」 「テチーテチー!」 「チュチュ、チププ!!」 足をポフポフと叩いたり蹴りを入れたり頬ずりをしたりする仔実装を見下ろし、男は穏やかな笑みを浮かべた。 それを見た仔実装達は更に浮かれる。 このニンゲンは優しいニンゲンだ。 ワタチ達を可愛がってくれる、ワガママを聞いてくれる、ゲボクとして扱える『良い』ニンゲンだ。 はしゃぐ仔実装達の口に、手慣れた手つきで金平糖を一粒ずつ放り込み、優しく頭を撫でてやる。 「「「テッチューン♪」」」 これだけでもう、仔実装達の幸福回路はパンク寸前。 脳内では自分達は首輪と名前を与えられてニンゲンの家に連れて帰られ、飼い実装として贅沢三昧出来ると思い込んでいる。 3匹の仔実装は男が次々と差し出す金平糖を、無我夢中で平らげていく。 目を血走らせて餓鬼道の餓鬼のように金平糖を貪る仔実装達の浅ましさを、男は変わらぬ笑顔で見つめていた。 最初にその『感覚』が来たのは、先頭切って男に要求を連呼していた仔実装だった。 渡されるままに金平糖を食べ、もっと寄こせと横柄に鳴き、3匹の中で最も多くの金平糖(4粒)を平らげたからだろうか。 「テ、テチ、テ、ェ?」 夢中で囓っていた5粒目の金平糖が、痙攣を始めた口からこぼれ落ちる。 それを合図にしたかのように仔実装達は次々と泡を吹いて倒れた。 虐待師が野良仔実装如きにまともな金平糖を与える訳が無い。 金平糖の正体は身動きが取れない程度に調整された、実装シビレだ。 「……」 男は笑みを深め、トイレの床で全身を戦慄かせている仔実装の内、一番多く金平糖を食べていた仔実装をそっと掴んで持ち上げる。 仔実装は両目をかっぴらきながらミツクチをパクパクさせている。多分、何てモノを喰わせたんだと罵倒しているんだろう。 男は仔実装の声なき弾劾を気にした様子もなくナップサックからタバスコ瓶を取り出し、仔実装の緑色の目に点眼した。 「テ、テ、テ、テ」 両目が赤くなり、見る間に仔実装の腹が膨らむ。 男は男は手早く仔実装の糞まみれなパンツを脱がせ、汚物入れに放り込む。 タバスコ瓶をナップサックにしまい、代わりに百円ショップで買ってきたプラスチックのタッパを取り出し仔実装の総排泄孔にあてがう。 「テッテーレ(以下略」 次々と飛び出してくる蛆実装。偶に親指が混じって放出される。 仔達はタッパの上に緑色の膜を伴って着地し、ジタバタと蠢き始めた。 「テテ、テ、テ……………………テェ」 蛆を20匹、親指を2匹を出産し、仔実装は力尽きた。 パキンという音と共に痙攣し動かなくなったミイラ状態の仔実装の頭を、男は優しい笑顔を浮かべて労るようにそっと指先で撫でた。 まるで『お疲れ様』と言わんばかりに。 凄惨な光景を見た残りの内1匹はパンコンしつつガタガタ震えていたが、痺れているので逃げられない。 無造作に仔実装のミイラを汚物入れに放り込んだ男は、震え上がっている仔実装を掴んで持ち上げた。 必死に口をパクパクと動かして首を左右にぎこちなく振る仔実装。 声なき命乞いを笑顔でスルーし、男は子実装の口に金平糖を押し込んだ。 吐き出そうとする口を手で押さえ込み、無理矢理嚥下させる。 効果が現れる前に、パンツを脱がせてやはり汚物入れに放り込んでおく。 丁度ミイラ仔実装の顔にひっかかって変態仮面のようだった。 恐怖で両目をギョロギョロと動かしていた仔実装の顔色が、段々と真っ青になっていく。 そして腹の方からゴロゴロという凄まじい音が聞こえて来た。 男は便器から立ち上がると、便座を上げて便器に溜まっている水の上に仔実装を持っていく。 「テ、テチィ〜…………!」 「……」 ブリブリブリブリブリブリ——————!! 緑色の軟便が、便器の水溜まりを緑色に染め上げていく。 男が喰わせたのは、低圧ドドンパだった。 十数秒間、緑色の汚濁が便器の中に放出され、ようやくにして止まった。 仔から成体に至るまで須くだが、実装石の放り出す糞というのは個体の体積を考えれば出鱈目としか言いようのない量を誇る。 この仔実装も、その15cm程度の躰の何処に収まっていたのかと首を傾げてしまう程の量を出した。 大量の実装糞によってトイレの個室内が凄まじい汚臭に包まれる。 だが、男は汚臭を一顧だにせず糞を強制排出された所為でぐったりと痩せ細った仔実装をタッパに入れトイレの水を流す。 糞の量が膨大だったので一瞬便器から汚水と糞が溢れそうになるが、ギリギリのところで下水へと飲み下されていった。 男は便座を降ろして便器に座り直すと、ナップサックからピンセットを取り出した。 ピンセットの向かう先は、タッパの中で騒ぐ粘膜に包まれたままの蛆と親指。 呼吸困難にならないように、顔の表面を覆っている部分だけをピンセットの先でこそぎ落としてやる。 「レフーレフレフー」 「レチー」 「プニフー」 「レピ」 一匹の蛆の顔が力の加減をほんの少し間違えただけで、粘膜ごと刮ぎ落とされてしまった。 脆い、あまりにも脆過ぎる。そんな脆さ儚さも男にとっては愛おしく、思わず仔達に笑顔を浮かべてしまう。 そんな男に対し、レチレチレフレフ鳴く蛆と親指。 母親は逝ってしまったので男を親だと認識したのだろうか、早速残りの粘膜を取り乳とプニプニを与えるよう要求しているらしい。 尤も正常な妊娠出産とは異なり、この仔達は未熟児として生まれた。 粘膜を取ろうが決して仔実装や成体になれる訳はないのだが。 「……」 蛆や親指の要求を他所に、男はタッパの中で痙攣している仔実装を手にした。 前髪と後ろ髪を引き抜き、服を手早く破り捨てて禿裸にする。 何せこれは『調理』なのだ。産み立ての蛆や親指以外で、服を付けたまま調理する実装料理は存在しない。 目の前でいきなり同族が禿裸に剥かれた事で、蛆と親指達が騒ぎ始めた。 動揺したように鳴く、何処吹く風と言わんばかりにプニプニを要求する、禿裸にされた仔実装を見てレプフと笑う。 大半がろくでもない反応なのは、産んだ仔実装が典型的糞蟲だったからだろうか。 だが、男は委細構わず仔実装の総排泄孔を小型のフックで左右に広げると、タッパに入ったままの蛆をピンセットで摘んだ。 「……」 「レフー」 間抜けな面で男を蛆が見上げて鳴く。 男は静かに頷き、無造作に蛆を頭から総排泄孔にねじ込んだ。 「テッ」 仔実装は目を見開き躰を痙攣させ、何故か頬を僅かに染めたがそれだけだった。 弱り切っているので、反応したくても出来ないらしい。 「……」 男は、顔に笑みを貼り付けたまま、ピンセットでタッパに入ってる蛆実装を次々と総排泄孔へ押し込んでいく。 げっそりと凹んでいた腹が少しずつ膨らんでいき、死体込みで20匹の蛆が躰の中に挿入された頃にはまるで妊婦の様に膨らんでいた。 この時点になると、流石に苦しさと命の危険を感じたのか仔実装が躰を必死に動かして暴れ始める。 ささやかな抵抗など認識してない様子の男は仔実装の口を顎を外して開かせた後、手足をばたつかせる親指を栓の代わりのように口の中へ頭から突っ込んだ。 胃から押し出され、喉から顔を出して「レフーン」等と鳴いていた蛆が、親指の頭突きによって強制的に胃の中へ押し返されていった。 腹の中が忙しく蠢き、何やら潰れた音がしたが、男は気にとめる仕草も無し。 もう1匹の親指の頭を利用し総排泄孔に栓をしている最中だった。 仕上げに凧糸で親指達を口と総排泄孔に固定する。 「……」 威嚇状態の河豚のように膨らんだ仔実装。 口と総排泄孔から親指実装の下半身が生えているのが非常に不気味だ。 唸り声をウモウモ上げている仔実装をタッパに戻すと、男はナップサックから固形燃料とチャッカマン、宴会で出される小型コンロと小鍋を取り出した。 『お芋畑で捕らわれて』で紹介されている実装料理の1つ、仔実装の肉味噌詰め焼きの作り方。 作り方は山か食用の仔実装(糞抜き済み)を2匹用意。一匹を強制妊娠させ仔を産ませる。 産ませた後、ミイラになった仔実装は食えたものでは無いので捨てる。 生まれた仔達は粘膜を水洗いで取った後、水気を切り親指か躰の大きい蛆を2匹程度除いて残りは包丁で叩いてミンチにする。 強制出産で生まれた直後の蛆と親指の服と髪は極めて柔らかいので除かなくてよい。 胡麻油を引いた中華鍋に刻み生姜を入れて香りを出し挽肉を入れ、よく解しながら炒めて火が通ったら、酒味醂醤油赤味噌を加えて充分に肉へ絡めておく。 適度に煮詰まったら実装肉味噌の出来上がり。 肉詰め用の仔実装の方は禿裸に剥き水洗いを念入りに行った後で、程良い具合に実装叩きで痛めつける。 ダメージを与える事で調理中に暴れないようにし、痛みによるストレスで肉質を高める為だ。 ぐったりした仔実装の偽石を摘出し栄養ドリンクに漬け、四つ股を切り落とし内臓を取り除く。 腹の空洞部分と四つ股の付け根を調理用バーナーで軽く炙って傷の再生を封じてから、醤油ベースの下地に仔実装を潜らせて味を染みこませる。 充分に下味が染みこんだらタッパから引き上げ下地をきり、実装肉味噌と炒めて味付けした四つ股を詰め、開いた腹を凧糸で縫合する。 詰め終わったら具がはみ出さないよう仔実装の口と総排泄孔を、先程生かしておいた大振りの蛆か四つ股をもぎ取った親指を詰めて栓をしておく。 場合によっては詰め栓が暴れて抜けてしまうので、凧糸か爪楊枝で固定しておく。 後は、油を引いたフライパンで表面に焼き色を付けてからホイルで包み、オーブン焼きにする。 偽石を栄養剤に付け込んである為、仔実装は完成寸前か食べられる直前まで生きている事が多い。 焼き上がりまでの間壮絶な激痛と苦しみを受ける為か、焼き上がった仔実装の形相は凄まじいの一言に尽きる。 この形相で『仔地獄焼き』等とも呼ばれるが一口食べてみればその旨さに驚く事間違いなし。 仔実装の形相なんて気にならなくなり、カリカリになった顔の皮までペロリと平らげてしまうだろう。 「……」 男は、巻末に掲載されている作中に出た料理の紹介欄を見ながら、ジュウジュウと詰め仔実装を焼いていた。 男は、作中で飼い主が出産石の目の前でこの仔地獄焼きを作るシーンがお気に入りだった。 なので作ってみたいなーと思っていた。そしたら、丁度仔実装がやって来た。 良い材料がやって来た。いっちょ、真似してみるか? そんな、軽い気持ちで作ってみた。反省する必要は無い。 トイレの中に漂っている臭いは生ゴミを焼いたような吐き気を催す臭い。 勿論、こんなのは真似事に過ぎず料理ではない。臭みだらけの野良実装なんて食べれるもんじゃない。 肉味噌を真似るなら潰して仔実装に入れるべきだが、男は敢えて丸のまま押し込んだ。 理由は、そっちの方が面白そうだから。所詮、イマジネーションを実現させるだけのお遊びに過ぎない。 男は焼き上がった詰め仔実装をしげしげと眺めた後、惜しげも無く汚物入れに放り捨てた。 さて、後は残りの一匹。 一匹だけなのでシンプルに姿焼きでも再現してみるかと思い、仔実装が転がっている方を見てみる。 「チュア……ペロペロペロペチャ……ジィ、クチャペチャクチャカリカリカリ……」 呆れた事に、痺れる躰を這いずるようにしてまで床に落ちていた食いかけの金平糖にかぶりついている。 毒を盛られ、仲間を惨たらしく殺され、自分自身もピンチだと言うのにまだ食欲を優先させようとするその性根のさもしさ。 仔とは言え、業の深さでは成体に勝るとも劣らない。男の笑みはますます深まった。 「カリカリカリ……チィ?」 が、仔実装の洩らした鳴き声を聞いて、男は笑みを消しやや怪訝そうな面持ちになった。 シビレで麻痺した時とは明らかに違う痙攣が、仔実装をブルブルと震わせているのを見たからだ。 「ジュヂォォォォォォォォォォォ!!!!」 突如の絶叫と共に3匹目の仔実装は、見る間に内側から膨らんでいく。 やがて躰ははち切れんばかりにパンパンに膨らんだ状態になってしまった。 分かり易く言えば、カートゥーンアニメで空気入れを口に入れられて膨らまされ人間バルーンになったやられ役だ。 「……!」 男は自分のミスに気付いた。 実装シビレだけを渡したつもりで別のモノが混ざっていたのだ。 これは、コロリのようにあっさりと実装石を死に追いやりたくないという加虐好きな虐待派用に作られた『実装あべし』だ。 摂取から数分後に効果を発揮し、体内に発酵ガスを急激に発生させて実装石を内側から破裂させるという凶悪な代物。 その死に様は、まるで某世紀末救世主に躰のツボを突かれて爆死するモヒカン強盗にそっくりである。 タイミングからして、最後の1,2粒のどちらかがあべしだったのだろう。 見る間に仔実装の躰がポンポンに膨らんだかと思うと、 「ヂ、ベ、ジィ!!」 決め台詞と共に仔実装が木っ端微塵に炸裂。 男の居る個室と周囲に仔実装の皮膚や肉、臓物から脳髄やらが飛び散った。 無論、男にも一杯かかった。このまま外に出たらお巡りさんに即時職質され交番に同行願われるの確実。 「……」 だが、男は血塗れ肉まみれになりながらも笑っていた。 いやぁ、ちょっと失敗しちゃったかな?と言った苦笑じみた笑みでペロっと舌先を出しながら。 PM 13:40 デギャアアアアアアア!! ギュオオオオオオオオオオ!! ヒギャヒァアアアアアアア!! 公園内に、無数の実装石の悲鳴が上がる。 同時に無数の『ヒャッハー』というイエローピーポーな嬌声が上がる。 「……」 「テヒィィィィィ!!」 男は便器に座り表の喧噪を聞きながら、悲鳴を上げている中実装を靴の裏でこね回していた。 先程このトイレに逃げ込んで男に助けを求めて来たのを、こうして歓迎しているのだ。 個室の対面にあるトイレの壁には血の筋と波紋状に広がった血飛沫。床には、成体実装が一匹と仔実装が数匹潰れて死んでいた。 中実装より先に来て男に保護を願い出て、笑顔と共に壁に蹴り付けられたなれの果てである。 一ヶ月に一度は、このランチキ騒ぎが起きる。それが虐待師と実装石の饗宴の舞台、通称『円卓決戦』だ。 この双葉市中央公園は、元々は『市民の交流と癒しの場』をコンセプトに造園された市民公園である。 公園の中央にある円状の大噴水と、公園自体が円状に一段高くなっている事から『円卓』公園と呼ばれていた。 この公園も数年前まではごく普通の公園だった。 しかし、実装石ペットブームの終焉によって大量の飼い実装が捨てられ、それを憂いた愛誤派達の考え無しな餌やりが元凶となり連鎖的に大増殖。 行政の腰が重かったのも手伝って、気が付いたら手が着けれない程公園は荒廃化。 通常の駆除程度では全く減った様子が無い程数が増え、周辺住民に対する糞害や家宅侵入等の被害は洒落にならないレベルに達した。 今では元凶の愛誤派達ですら、恐れて近寄らないような悪夢と混沌と退廃の園。 だが、そんな場所に喜んで近付いていく猛者達も居る。 そう、虐待派と虐殺派と駆除派達だ。 「野良実装狩りだ。一匹残さず墜とすぞ」 「「「「ボクボクー!」」」」 眼鏡を掛けた知的な背広姿の男がバールを片手に持ち、逆V字陣形で走っている4匹の実蒼石を従えて実装石のコロニーへ突入していく。 彼はこの街にある双葉大学の歴史学の教授だ。 そして腕っこきの虐待師でもあり、実装ハンターチーム『蒼いツバメ』のオーナーでもある。 彼が率いる4匹の精鋭実蒼石は、遠距離からの正確無比な鋏の投擲と高機動力による白兵戦を得意としていた。 度々、虐待紳士協会内のPR放送や宣伝にオーナーと共に出演している位に有名でもある。 他にも選りすぐりな虐待師達が野良実装石を相手に、壮絶な虐待や虐殺を行っている。 実装石の中にはコロニーのボスらしい実装さんも居たが、中山服を着た老年の中国人が胸元を指先で突いたらパキンという音を立てて死んでしまった。 「ほっほ、まだまだ若いもんには負けられんのぅ」 「デギャアアアアアア!!」 編傘を被り日本刀を携えた着流し姿の男が、飛び掛かってくる覚醒獣実装を擦れ違い様に抜刀して斬り付ける。 「今日の斬実剣は———ひと味違うぞ?」 「デェェェェ!!」 男が刀身を鞘に収めチンと音を立てた瞬間、獣実装の爪が根本から斬り飛ばされ、服がバラバラになってしまった。 それだけではない。何と、躰には傷1つ付けずに体毛だけが一本残らず剃り上げられている。 即ち、今居るのは覚醒獣実装などではなく単なるみずぼらしい禿裸。 「デ、デブァ!?」 禿裸にされた獣実装は、着流しの男が親切に見せてくれた姿見で己の姿を確認した直後、ショックの為か全身の穴から体液を吹き出して絶命した。 「鋏を放て!」 ミサイルの如き勢いで投擲された細長い鋏が、必死に糞を投げていた実装石の頭部を貫通し側に居た別の国宝石のどでっぱらに穴を開けた。 細長い鋏を大量に背負った2匹の実蒼石が精悍な顔立ちのオーナーの指揮に従い、次々と鋏を投げ付けていく。 その後ろで2匹の実蒼石が、背中に鋏を背負ったまま音叉のようなものを叩いている。 これは、実装音叉の派生装備で『実装五感音叉』と呼ばれるもの。 対実装石用に調整されているこの音叉は、通常の音叉の様に偽石を砕いたりしない。 その代わりに音波の影響内に居る実装石の五感を著しく狂わせてしまう。 近くにいれば歩行すら危うくなり、幾らか離れていても音波の範囲に居れば強烈な目眩と耳鳴りを受けると開発した実研はコメントしている。 おかげで、ただでさえ弱いのに更に弱体化させられた実装石は、ひたすらに殺されるだけだった。 物凄い勢いで実装石達は蹴散らされ、蹂躙され、切り刻まれ、踏み潰され、 『ジックス、ジックス!』 ところにより一時ジックス愛好家達に犯されていた。 戦線は既にコロニー内部まで及び、成体の悲鳴だけでは無くテヂャアだのレヂィだのレピャアだの仔達の断末魔が混じり始めた。 トイレの中からは見えないが、外に出ればダンボールハウス群が蜂の巣にされたり焼かれたり空高く打ち上げられたり爆破されたりするのが見えただろう。 尤もこれだけ散々に殺されておいても、次の月にはまた元通りになっているのだから、実装石の生殖力は出鱈目にも程がある。 とは言え、個体としては各々が生き延びたいと思うのは当たり前。 しかも実装シリーズでは一番死にやすい割には飛び抜けて『生きたがり』な実装石の事。 何が何でも生き延びようと醜態を晒しまくる実装石の滑稽さを見るのも、この円卓決戦での楽しみの1つだ。 虐待派達に対する抵抗を諦めた大半の実装石達は、コロニー内にある家や物陰、自分で作ったシェルターの中に隠れる。 それらが満員であぶれてしまった実装石達は、公園の茂みや遊具、園内施設へと逃げ込むのだ。 公園外への逃亡は不可能。全ての出入り口は一般人に扮した虐待派達によって閉鎖済み。 公園を囲んでいるフェンスに開いていた穴や綻びも、いつの間にか鉄条網で補修されていた。 「無駄な抵抗は止め、大人しく其処から出て来て虐待されなさい」 「今なら比較的楽に禿裸になれるぞ〜」 コンクリートで作られたボールを逆さまにしたようなプレイハウスに立て籠もった実装石の群れに対し、降伏勧告が出される。 包囲されて絶望的な状況にも関わらず、籠城している実装石に降伏の気配は無い。 プレイハウス近くにあるジャングルジムに、荒縄で絞首され『糞蟲』等と書かれた看板と一緒にぶらさがっている十数匹の実装石達。 降伏したその場で虐待され、悪罵が書かれた看板と一緒に絞首刑に処せられる一部始終を見ていれば誰だって降伏なんかしないだろう。 ———「可愛い自分ならあんなブスとは違って助かるデス」と良い具合に頭が湧いた馬鹿が数匹、媚びながら出て来て同じく吊されはしたが。 ベチョリ。 返答は自分達の遙か手前に着弾した投糞だった。 メガホンを手に実装石の説得を担当した、某第三帝国憲兵スタイルの虐待師が楽しげに口の端を歪めた。 そうだ、そうでなくては面白くない。煙幕花火に火を付けた憲兵虐待師は、プレイハウスの側面に居る仲間とアイコンタクトを取ってから投げた。 プレイハウス唯一の出入り口付近に転がった煙幕花火は緑色の煙を吹き出し、糞を投げようと身構えていた実装石達の視界を完全に奪う。 「では、糞蟲に虐待紳士魂を教育してやれ!」 「ヤヴォール、ヘルコマンダン!」 アイコンタクトを合図に長いプラスチックパイプに突っ込まれた禿裸の口に爆裂ドドンパを大量に押し込み、業務用ホチキスとクラフトテープで口を厳重封印。 軍用ポンチョを着用し、フリッツヘルメットとガスマスクを装着したその虐待師はパイプを腰だめに抱え弾頭———実装石の頭をプレイハウスの方へ向けた。 「情け無用、無反動糞蟲弾頭パンツァー・ファウスト、フォイアァァァァ!!!」 ブリブポォォォォォォン!! 擬音ではなく、凄まじい発泡音と共にプラスチックパイプから突き出ていた頭が、パイプの後ろから糞の噴射を吹き出しながら前へ飛んでいく。 四つ股を千切られた胴体が後に続き、パイプ口から一直線に糞の帯を描きながら成体実装弾頭はプレイハウスの入り口目掛けて飛んでいく。 入り口付近で煙幕から顔を出そうとしていた糞投げ実装に頭からぶち当たった実装弾頭は数匹の実装石を巻き込みながらプレイハウス内に突入。 数秒後に体内に押し込まれた爆裂ドドンパの効果によって爆散した。 「パンツァーファウストって対トーチカ用に絶大な効果を示したんだよなぁ」 「RPGの先駆けですもんねぇ」 壊滅したプレイハウスの内部を覗き込み、2人の軍ヲタ虐待師はニンマリと笑った。 笑う2人の視線先では、滑り台の上に追い込まれた実装親仔が竹竿で突きまわされ、強制的に投身させられていた。 こんな地獄絵図の最中、実装石達は必死になって有りもしない逃げ場を探して園内を彷徨っては狩られて逝く。 無論、トイレにも逃げ込んでくる奴は居る。 安全な筈のトイレに、とてつもなく悪意に満ちた存在が潜んでいる事にも気付かずに。 例えば、分厚いコンバットブーツの靴底でゴリゴリと練るようにこね上げられている中実装のような運の悪い奴が。 「テ、ヒ、ヒィ、ピ……ピ」 粘土の塊のように絶妙な足の力加減によって丸められた中実装が、パキンという音と共に動かなくなる。 男は労りの篭もった笑みを浮かべ、中実装の塊を爪先で蹴り飛ばした。 ベチャリと湿った音を立てて塊は壁に張り付り、肉と血の筋を付けながら床へとずり落ちていった。 中実装を潰した男は、便器に座るとまた本を広げて読書に戻った。 少し経ってシザーマンがジェニファーという飼い実装を追ってトイレに乗り込んで来たが、中に居るのが男だけなのを見ると黙礼だけをして帰って行った。 PM 15:55 『決戦』が終了し『掃討戦』と『二次会準備』に移行すると、公園内はだいぶ静かになる。 実装石の気配と鳴き声が激減した事と、時折実装石の絶叫と虐待派の奇声が聞こえる以外は何時も通りの公園だ。 そんな最中、トイレに初めて男以外の人間が入って来ていた。 「ふんふんふん〜♪」 「テチィ、テチチチ—!!」 「チャー、チチチィー!!」 じゃばじゃばと何かを洗う音と青年の鼻歌と、2匹の仔実装の悲鳴が聞こえる。 男が聞き耳を立てる以上の興味を持たず、本を読み続けたままだったので、それが誰なのか男は知り得なかった。 この青年は、男と同じ虐待派だった。 とは言え派手に成体を殺したりするのは苦手なようで、主に仔実装をターゲットとしていた。 公園や街角で親実装が差し出してくる仔実装を預かったり。 コンビニで親実装がビニール袋に放り込んでくる『託児』された仔を虐待対象としていた。 本日は公園近くのコンビニでわざと託児を誘発させ、一匹の親実装からダブルで託児された帰りである。 「こらこら、そう泣き喚きなさんな」 手荒な歓待に泣き喚く仔実装2匹を洗面台で乱暴に流し洗いしつつ、頭から液体の薬品をかけてやる。 無味無臭透明の液体。別にかけられても痛みや痒みは無かった為、パニック状態の仔実装達はそれをかけられた事すら気付かなかった。 そんな事よりも『ニンゲンに託児されて飼い実装になった自分達が歓待どころか何でこんな仕打ちを受けるのか』と言う不条理を嘆くので精一杯だった。 なので、唯一にして明確な『異常』にまだ気付いていなかった。 「お前等色々と臭いしな。こうして洗わないと家に上げられないんだよ」 これは嘘だ。臭いだけならコンビニ袋を縛って臭いを封じ、そのまま家の風呂場なりに行って仔実装を洗えばいい。 成体なら兎も角、10cm程度の仔実装なら問題ない筈だ。なのに、わざわざ公園で洗っているのかと言うとそれには訳がある。 (と言うか、お前の親にまで来られちゃ追い返すのも面倒なんだよ。俺がいたぶりたいのはお前等なんだからさ) 青年が仔実装達にかけたのは、実装消臭剤。 家宅侵入や粗相が激しい飼い実装に汚された部屋の匂いを取る薬剤だ。 野良成体のキツイ臭いですら断ち切ってしまうこの薬。 成体に比べれば臭いのきつくない仔実装にかければ、どうなるかは言わずもがな。 これはつまり、託児した親が尾行する為の仔実装の『臭い』が消えてしまうと言う事だ。 どんな知性が低い糞蟲親実装でも、数㎞離れた場所の託児先まで正確に到達した実例は極めて多い。 それは、親実装が託児前に仔実装の臭いを記憶しておくからだ。 そしてその臭いを頼りに親実装は仔実装が託された場所を探り当て、自分も飼われるべく『訪問』するのである。 しかし、こうして臭いそのものが消去されたらどうなるだろうか? 唯一のナビゲーションを失った親は仔の臭いが断ち切られた場所でオロオロするしか無い。 もしくは託児した相手の人間を見失わないように尾行するしかないのだが、実装石の鈍足具合では人間の尾行なんて無理の一言だ。 「ふんふんふん〜♪」 鳴き声で位置がばれないように洗い終わった仔実装達をビニール袋に入れ、炭酸ガスエアダスターを噴射し仮死させる辺りも抜かりなし。 こうして青年は必要な仔実装(虐待用)だけを手に入れ、トイレの入り口に停めてあったママチャリに載って悠々と家路についた。 PM 16:28 「……」 男は日が落ちた為薄暗くなった個室の中で本から顔を上げる。 センサーの反応で点いた電灯がパチンパチンと音を立てる中、何やら喧しい声が聞こえる。 何やらに一匹の実装石がトイレに入ってきてデスデス喚いているのだ。 「デース、デスデース、デェース!!」 あちこちに自分の鼻を押し当ててはスピスピと臭いを嗅ぎ、慌てて別の場所の臭いを嗅ぐ。 特に念入りに洗面所の周りの臭いを嗅いで回っていたが、いい加減痺れが切れたようだ。 「デギャース、デシャアアアアア!!!」 足を踏みならし、緑色に染まったパンツ一杯に糞を洩らして激怒している事を示す。 どうやら、あの仔実装達を託児した親実装のようだ。仔の臭いを辿り此所までやって来たのだろう。 尤も臭いは完全に断ち切られ遮断されたので、これ以上の追跡はどう見ても不可能のようだ。 「デ、デギャア、デギャア!」 しかし、見切りと諦めが下手な実装石の事。 怒鳴り声を撒き散らしながら、親実装は仔を押し付けた人間がトイレに隠れているかもとトイレの個室を覗き始めた。 洋式の個室の覗き込む親実装。便器に座ったまま本を読んでいた男と目が合った。 「デス?」 「…………」 「デスデスデス、デース!! ……デブギャア!!」 実装石の質問に893キックで答える男。 蹴りを食らった親実装がタイルにぶつかって床に崩れ落ちる。 中実装や仔実装の死体の上を転がりながら、陥没した顔を押さえ喚き散らす。 男は薄笑いを浮かべつつ、愛読本『虐待のススメ』に栞を挟み込む。 そろそろ時間かな。 そう思った男は本を閉じてナップサックにしまうと、ナップサックを背負いトイレの個室から出た。 デスデス鳴く親実装を針金で縛り上げメスで偽石を摘出し、栄養ドリンクの瓶に入れた実装活性化剤にポン。 落ちていた角材(緑と赤の染み付き)の先端を総排泄孔に突き刺し、適量の灯油を実装服に湿らせ点火すれば実装松明の一丁上がり。 円卓決戦の日に敢えて直接参加せずに、実装公園のトイレで実装虐待小説を読みまったりと過ごす。 そして最後に虐待派の打ち上げパーティーに参加する。 それが、この虐待師の休日の過ごし方。 仲間に良く『温い』と評されるが、本人としてはこんな虐待師が居ても良いんじゃないかなと思ってたりする。 男が歩いて行く先、円卓公園の中央にあるのは、巨大な火柱。 積み上げられたダンボールハウスと実装石の死体が轟々と火を吹き上げる中、男達は輪になって歌い、踊り、酒を酌み交わしていた。 そこには、日常における一切の諍いも不和も無かった。実装虐待という絆を持って、男達は今1つになっていた。 彼らの中に、知り合いが居た。知り合いは男の姿に気付き、笑顔で実装松明を左右に振ってはしゃいで見せた。 「……」 男は初めて本当の意味で柔らかい笑みを浮かべる。 そしてデギャアデギャアと喚きながら燃え盛る実装松明を手に、円卓の中心部へと近付いていった。 終わり 偶には、こうやってひたすら虐待でもいいかなと思いました。 この街のお巡りさんは仕事しているのかという突っ込みは無しで。
