遊園地の実装石 双葉市内にあるこじんまりとした遊園地。 某鼠ランドとまではいかないがそれなりに客も入り地元と市外周辺の人間が良く訪れる。 娯楽施設としてはそこそこの広さとアトラクションの種類が多かったのが客を呼び込んでいた。 園内ではピエロの格好をした従業員が子供に風船を配っていたり、飲食店ではいかにも遊園地らしいメニューが並んでいる。 そんな園内にもあの生物が潜んでいた。 園内の隅っこで茂みの中に実装石の親仔がダンボールに暮らしている。 彼女達は開園前の朝には動かない。 なぜなら、ゴミ箱や園内に人間の食べ残し等が落ちていないからである。 その為、彼女達が活動し始めるのは昼頃であった。 平日は客が少ないために餌も十分に取れない。 週末の土日が彼女達にとっての執念場だ。 土日で平日を生き延びる分の餌を取れなければ空腹が続く日がきてしまう。 園内では土日になるとそこらの茂みから野良実装が出始める。 最初の内は客から苦情が何件か来ていた。 しかし、愛護派の客からは好評だった。 それもそのはずである。 この遊園地の経営者が筋金入りの愛護派であった。 そのため園内に実装石がいるという事を素晴らしい事と認識してしまい実装石の存在を肯定していた。 おまけに野生の実装石がいる遊園地と題名うって広告を出してしまったので従業員達にとってはいい迷惑になっている。 だが、監視カメラの死角を知り尽くした従業員達の中には隠れて虐待をしている者もいた。 そんな園内でよく見られる風景があった。 「あ、アメリカンドッグ落しちゃった」 園内に来ていた親子の子供が手に持っていたアメリカンドッグを地面に落してしまった。 子は落したアメリカンドッグを見て泣きそうな顔になる。 「ほらほら、新しいの買ってあげるから泣かないの」 親が新しいのを買ってくれると聞いた子はパアっと表情を明るくする。 そして、親子は手をつないで売店へと向かっていった。 そんな落ちたアメリカンドッグを見ていた実装石。 人間がいなくなったのを確認すると茂みから走り出す。 「今テチ!」 出てきたのは仔実装が2匹だった。 「「テッチテッチ」」 2匹の動きは息がぴったりと合い、走る時の手足の動きまで一緒だった。 遊園地内での餌取りはまさに命がけだ。 人間に見つからない様に目当ての餌を自分の巣へと持ち帰らなければならない。 もし、人間に見つかったら何をされるかわからないからだ。 愛護派の人間だったら見逃してくれる上に更に餌をもらえるかもしれない。 だが、もし相手が虐待派や実装石に嫌悪感を表す人間だったら命が無くなったも当然だ。 餌を見つけても油断はできない。 この園内では開業中は常に清掃スタッフが園内を巡回している。 落ちている餌を見つけたらすぐに拾わないと清掃スタッフに持っていかれてしまう。 スタッフも経営者からは落ちているゴミはそのままにしろとは言われていないので見つけ次第清掃していく。 ゴミ箱を漁ろうとしても蓋付きの箱型ゴミ箱なので実装石が開けるのは不可能だった。 この2匹も必死に走って餌へと向かう。 遅い足で数分かけてやっとアメリカンドッグまで到着する。 食べかけとはいえ二口程しか口つかられていない。 その為仔実装一人では持っていくのが大変だった。 そこでこの仔実装は2匹で運ぶ事にしたのだ。 「妹チャンはそっちを持つテチ!」 「わかったテチ!」 妹と呼ばれた仔実装は齧られた部分の方を両手で担ぎ上げた。 おそらく姉妹なのだろう2匹は背が高い姉が齧られた部分を担ぎ、妹が棒の部分を持って歩き出した。 「「テッチ!テッチ!」」 歩幅を合わせる為の掛け声なのか走るときよりもはっきりと声に出して左右の足を動かす。 茂みまであと少しという所で安心感が出てきたのか、2匹は涎を垂らし目をギラギラと輝かせて速度を上げた。 「もう少しテチ!」 「ご飯テッチューン」 残り30cmというところで急に持っていたものが軽くなった。 いや、正確には無くなったのだ。 「「テェ?」」 これには2匹同時に声をあげてしまう。 見上げると一人の人間が先ほど手に入れた餌を持ち上げていた。 「ワ、ワタチのご飯ー!」 「テェェェン!」 その男はこの遊園地の清掃員だった。 「あー、ゴミがここにもあったか」 男はただゴミを拾ったという認識しかないようだ。 下でテチテチと騒ぐ存在に気がつく。 「何だ?お前達」 2匹の仔実装がこちらに向かって何か叫んでいる。 しかし、この男はリンガルは持っていないので何を言ってるかはわからなかった。 「返すテチャー!」 「それはワタチ達の物テチー!」 必死に男の手にあるアメリカンドッグを指差して地団駄を踏む。 男も仔実装達が何を言ってるのかがわかった。 「お前ら、これが欲しいのか?」 その言葉を聞いた姉妹は首を縦に振る。 「そうかそうか」 そういうと男はアメリカンドッグに手をやる。 「ほら、くれてやるよ!」 アメリカンドッグから抜いた串を仔実装の頭上から突き刺す。 「テビョ!?」 「テェェェェェ!?」 串刺しにされた仔実装は数秒間痙攣をしていたがすぐに動かなくなった。 「仔実装の串刺しの完成ー」 男は手に持った串刺しになった仔実装をぶらぶらさせてもう1匹に見せつける。 「テェェェェェェン!!」 串刺しにされた妹の死体を見て泣き出す。 男はそんな仔実装を鬱陶しく感じた。 「うるせぇな…、こいつやるから大人しくしろ」 そう言って串刺しにされた妹を投げ捨て。 そして立ち上がりどこかへと去っていった。 後に残された姉はただ呆然と立ち尽くしていた。 「何でテチ…?」 泣く泣く妹の死体に刺さった串を持ち上げて茂みへと消えていった。 肩に担いだ串から妹の体重が伝わってくる。 姉は今まで妹と暮らした思い出を思い浮かべながら我が家へと泣きながら帰っていった。 「テスン…テスン…」 涙がこぼれるのを我慢しながら姉は家に到着する。 丁度そこへ別の場所で餌探しをしていた親実装が帰ってきた。 「デ?どうしたデス?」 母親の姿を見て安心したのか我慢していた涙が一気に出てきた。 「ママァァァァー!!」 串を放り投げて母親へと抱きつく。 そんな仔をあやすように頭を撫でながら抱きしめてやる親実装。 「妹チャンガァ!妹チャンガァァァァ!」 泣きながらも串刺しになった妹を指差す。 「デデ!?いったい何があったデス!?」 姉は先ほど起きた出来事を母親に説明する。 説明に力が入って周りが見えなくなっていたが話し終えて気がつく。 先ほどまでそこにいた母親がいなくなっていたのだ。 「テェ?ママ?」 仔実装が先ほどまで母親のいた周りを見るがいなかった。 ふと、後ろの方からガツガツと音が聞こえてくる。 振り返るとそこには串にささった妹の体を貪り食らう親がいた。 「テェェェ!?ママなにしてるテチ!?」 「うまいデッスーン」 この遊園地では確かに人間や外敵に襲われる危険性の高い公園よりは安全である。 しかし、餌に限っては自力で取ってくるか人間に恵んでもらう必要があった。 全ての人間が餌をくれるわけではない。 おまけに虐待派だったら尚更危険なのだ。 その為、餌が手に入らない場合は同族の肉体は食料にもなるのである。 特に肉親の遺体は簡単に手に入るので、ある意味貴重な食料になった。 しかし、姉はそんな風習は知らずに育っていた。 その為、目の前で妹を食べる親を見て震え始めた。 「お前も食べるデス?」 そう言って串挿しの妹の手を千切って姉の前に差し出す。 「テ、テ、テ、テ、テ…」 小刻みに鳴き、体の震えが大きくなっていく。 そして乾いた音が響くとそのまま倒れてしまった。 「デ?」 親は倒れた姉の体を2,3回突くと死んだのを理解した。 そして、姉の死体を持つと家へと入っていく。 「デー、また子供作るデス」 そう言い、辺りに生えていた雑草の花を摘み取った。 そしてまた仔を作るのだった。 —終—
