まず最初に… 「野良実装と子猫・アナザー」の作者様ごめんなさい。 そして、白保住人の方々 なにがなんだかさっぱりわかりません! 公園で野良実装を撲殺した少女が現れたのは数日前のことだ。 事情が事情だけに、少女が野良実装を殺したこと自体に関してはおもてむき不問に付されたが それでも周辺の住民はその行為に恐れおののいた。 考えてみるといい。 自分より弱い生き物を、感情に任せて蹂躙するその姿。まさにクソムシそのものではないか。 誰も正面からそれを指摘することなどしないが、実装石を撲殺した少女に対して、薄気味悪さのようなものは皆が抱いていた。 公園に駆除が入る、という話も流れていたが、そんな必要はないだろう、というのがもっぱらの評判だ。 もともと公園周辺のゴミ集積場は害獣避けがきちんとなされている。 それこそ、カラスですらゴミを漁れないようになっているのだから、いわんや実装石をおいてをや。 この公園の実装石は公園の木の実、あるいは愛護派の餌撒きによって生かされてきた。 実装石を撲殺する少女が出入りする公園。 キ印人間に、たとえそれが年端の行かない子供といえど近づきたがる人間が居るはずもない。 一般人の感覚から言えばじゅうぶんキ印寄りな愛護派といえど、殺しを厭わぬ危険人物がちょろちょろ出入りしている、 という噂のたった公園になどそうそう寄りつくはずもなく。 餌の供給源の絶たれた実装石たちは、解体刑のときに覚えた同属食いの禁忌にあっさりと手を染めた。 実装石を撲殺した少女は、あれ以来公園を訪れることなどなかったのだが、公園からは同属に食われる実装石の悲鳴や絶叫が響いてくる。 それがますます公園への人の出入りを遠ざけ、実装石自身の首を締めることになった。 連日続いた実装石の絶叫も、やがて途切れがちとなり、一週間もする頃には実装石の悲鳴を聞くこともほとんどなくなっていた。 ……そしてその月最後の日曜日。 ようやくのことで公園の実装石の駆除が行われることになった。お役所仕事は実に遅い。 というより、ほかにもっと実害の発生している(ゴミ漁りや人家の襲撃)地域は数多い。 たかが野良実装が、捨て猫を殺した、という程度の損害などでいちいち行政が動いてる余裕などはない。 駆除にも税金がかかるのだ。公園で見かけて「チッ」と舌打ちしたくなる程度の損害しか与えていない雑魚にかかずらわっているほうがバカだ。 優先度は最下位に近いこの公園の駆除が行われることになったこと自体、ちょっとした奇跡といえるだろう。 役所の委託を受けた実装駆除業者が公園で見たものは、あちこちに転がる実装石の欠片だった。 骨までしゃぶり尽くされたのか、ほとんどの死骸には肉はなく、五体満足の死骸などはどこにもない。 偽石カウンター(厨アイテム。偽石の発する毒電波を探知する代物だと思いねぇ)で探ってみても、公園内にまともな実装石は居なかった。 「どうします、班長」 「どうしますって言ったっておまえ、居ないんじゃ仕事になんないだろ」 二人の作業員はそう言葉を交わしながら、散らばっている実装石の欠片、骨とすら呼べぬほどにか細い白い枝をぱりぱりと踏み潰し歩く。 踏み潰しながら、同属食いでも食えなかったのであろう実装服の切れっぱしを拾い集める。 いちおう駆除の仕事はしましたよ、という格好を示す証拠品として、公園の全景と小骨の広がっている地面を撮影する。 最後まで生き残った実装石がかき集めて防寒に使っていたのだろう、トイレ裏の植え込みからは、実装服が大量に詰め込まれた段ボールが見つかった。 家の主はもうどこにも居ない。 年下の作業員は比較的きれいなその段ボールを抱え上げると、ライトバンの荷台にそれを押し込んだ。 年かさの作業員はそれを確認すると、後部座席の足元から小さなケージを取り出し、植え込みに隠れるようにセットする。 「駆除作業終了」 二人の作業員は公園の入り口から公園の中ほどを指差して腕を伸ばし、確認の合図を交わしてライトバンに乗り込む。 駆除業者が居なくなった公園から、人の気配が消えた。 植え込みにセットされたケージから、中実装が這い出て来る。 希望に満ち輝いた笑顔を浮かべる中実装。 ここでしばらく過ごしたあとは、またニンゲンさんと暮らせるのだ。 ニンゲンさんは安全なおウチ、あったかいお布団をおいていってくれた。 ゴハンは心配だけど、きっと大丈夫。 ペットショップで売れ残ったワタシを買ってくれた、やさしい、優しいニンゲンさん。 きっと、この公園で生き延びてみせる。 公園で生き延びて、逞しくなったワタシを迎えに来てください。 中実装は決意をその瞳に秘めて、公園のトイレへとそそくさと急ぐ。 すべては決意の脱糞をすませてからだ。 ……公園の実装石は、全部駆除してしまうといろいろと不都合がある。 実装石を虐待することでストレスを発散している(つもりになっている)危険人物を野に放たぬためにも、完全駆除は好ましくないのだ。 実装石だから駆除されて当然だと思うだろう。 実装石だから虐待されて当然だと思うだろう。 だが犯罪統計学は冷酷に物語っている。 小動物を虐待する性癖の持ち主が、やがて猟奇殺人犯へと至ることの多すぎることを。 小動物、分けても人間に類似する格好を持つ実装石を虐待する性癖の持ち主の自制機能が、著しく劣っていることを。 実装石を撲殺した少女が、この公園へ再び戻ってきた時。 彼女はまた、実装石を殺すのだろうか? 実装石を虐殺する暗い悦びに目覚めてしまうのだろうか? それとも…… 今はまだ分からない。 もしかしたら、彼女以外にも実装石虐待に目覚める人間が居るのかもしれない。 そうした人間を世に放たぬために、そうした人間の魔の手が人間に届かぬうちに摘み取るために、今日も公園に実装石は放たれる。 駆除されるために。 虐殺されるために。 E(N)D
