タイトル:【虐】 季節の風物詩『山実装の友狩り』
ファイル:季節の風物詩『山実装の友狩り』.txt
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初投稿日時:2007/12/02-18:34:47修正日時:2007/12/02-18:34:47
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季節の風物詩『山実装の友狩り』


−− 1 −

 早朝から山に鉄砲の音が何度か響いている。
 今日は足元もいい。猟師さん達が大喜びで山にわけ入っているのだろう。
 猟師さんが山を走り回るから師走、ではないよな。
 家も近所に住んでいる鉄砲撃ちの爺さんからおすそ分けを貰えるようになる。
 猪、鹿、ムジナ(穴熊)、それに何より山実装が楽しみだ。

 そうなると我が家の食用出産石もお役ごめん。
 産みたて仔実装の肉は充分美味しいが、それでも山実装の旨みに比べたらブロイラーと鴨ほどの違いがある。
 週ごとの出産で偽石もだんだん消耗してきたし、禿裸の出産石に冬越えはきつい。

 今日は週日だが休みをとった。
 近所に住んでいる鉄砲撃ちの爺さんに電話して、予定通り廃出産石を昼過ぎにもって行くことを伝えておく。
 アレにも春から仔実装肉の世話になったが、それも今日で終わりだ。
 しっかり最後のお勤めをしろよ。



−− 2 −−

 デーデロデッスン

 デーデロデスン

 デーデロデスンデスン・・・ 


 ワタシの仔ぉぉぉぉ ワタシのオヤユビちゃぁぁん ワタシのウジちゃぁぁぁん

 ワタシのカワイイ仔供たちぃぃぃ  ドコにいったデスゥゥゥゥゥ

 どれだけ産んでも食べられちゃうデス〜

 コワいニンゲンにオイシクされちゃうデス〜

 生まれてきてもシアワセになれないデス〜

 ママのオナカにずっといるデス〜
 
 そこから出たら イタイデス〜 アツイデス〜 クルシイデス〜

 ずっとずっとママといっしょデス〜

 それがいちばんシアワセデス〜


 デーデロデッスン

 デーデロデスン

 デーデロデスンデスン・・・ オロロオロローン



−− 3 −−

 出産石が今日も調子外れの胎教の歌を歌っている。
 毎年春に農協で買ってくる食用出産石。
 今年のも充分役にたってくれた。
 しかし冬越しの手間をかけても仕方がないので年越しの石は持たないことにしている。

 檻に近づくと出産石が外を見つめてデスーデスーと悲しげに鳴いていた。
 昨日の晩からエサをやっていないので胃の中は空のはずだ。
 腹がへったんだろう。高い枝に残った柿の実を眺めていたようだな。

 出産石を檻からつまみ出して外の流しに連れていく。
 いつもの強制出産で胎の仔をとられると思ったのか出産石が暴れだした。
 面倒だから長靴を履いた足で首を踏んずけて両目に緑のインクを落とす。
 こうして分娩できないようにしておかないと出産石がショックで強制出産モードに入ることがある。
 そうなると胎仔が糞袋の方に押し出されてしまう。

 きっちり緑インクを点眼できたので下腹部を踏んづけて固定する。
 いつもとは違うパターンに出産石もとまどい気味のような感じだ。
 腹に包丁を当てられるのを見た出産石が恐怖のあまりブリョブリョと糞を垂れ流す。

 デスゥデシャア命乞いする出産石の腹を出刃包丁で一気に切る。



−− 4 −−

 あのオヤマに行きたいデスー

 アマい木の実がたくさんあるデスー

 やさしいオトモダチもいっぱいいるデスー

 自由になりたいデスー シアワセになりたいデ?!
 ・・・な なんデデス?いつもより早いデス?オナカの仔をまたとられちゃうデジャァァ 
 やめるデスゥ はなすデスゥ この仔たちはずっとずっとママとイッショにいるんデムュデギョギョ…… 

 デェェェンデェェェン ムリヤリ産ますのやめてデヒィィィン    
 デてきちゃダメデスーー オナカからデちゃだめデ …? デ? …??  ・・・仔がデて こないデス?

  へんデスゥ… なんだかいつもとちが ぅ デ?・ ヒ ッ !

 も、 もしかして・・ ワタシがオイシクされるんデシャァァァーーっ!?!?

 いやデスーーッ イタイのイヤー アツイのイヤァアァー クルシイのイーヤーァーデーェスーゥー!!

 た す け て デスーーッ オイシクなるの い や デ ギ ャ ァ ァ ァ ー ーッ!!



−− 5 −−

 糞抜きをしなかったのは別にコイツを食うわけではないからだ。
 使い古した出産石の肉など食えたものではない。
 だが胎の仔は晩飯にできる。
 もったいないから最後まで無駄なく有効利用させていただく。

 痛みと恐怖で気絶した出産石の胃を縦に切る。
 実装石の胃は子宮を兼ねた臓器になっている。
 胃袋の中にピンポン玉を半分に割ったような半球が何個か見えた。
 半透明の膜の中に実装石の胎仔がいる。
 どれもずんぐりむっくりした蛆実装の形をしている。

 暗い体内から明るい外界の光にさらされた胎仔実装達が目をパチクリさせている。
 驚いて丸い膜の中をクルクルと回っている元気な仔もいる。
 もう2、3日したら自力で膜を破れるかもしれない。
 しかしこの成長段階では母体からの強制出産シグナルが送られてこないと膜が破れない。

 胃壁からスプーンで胎をえぐり出して冷やした炭酸水を満たしたボールに入れる。
 温かい母胎から無理やり引きはがされた胎仔実装が膜の中で何度かピンピンと痙攣して動かなくなる。
 窒息による仮死状態に一気にもっていくと鮮度が落ちない。
 仮死状態の胎仔はこのまま調理してもいいし、2、3日の間なら高濃度酸素入りミネラルウォーターに浸けるとすぐ生き返る。

 胎仔実装は蛆実装以上に脆弱な体構造で液体中でなければ自力で体を支えることすらままならない。
 蛆実装を実装海老(ジソエビ)と言い換えるように、そのフニャフニャした姿から胎仔実装は実装牡蠣(ジソガキ)と呼ばれることもある。
 見た目の雰囲気に似通った部分があるのと、ウジ実装で印象の悪さに苦労した食実業界がつけたネーミングだ。
 呼び名の通り牡蠣の代用品として使われることが多い。
 成長に必要な養分を未熟な体にたっぷり含んだ胎仔実装は卵黄と牡蠣を合わせたような食味でふくよかな甘味がある。
 それに蛆実装と違って出産プロセスを経ない胎仔実装は生食用として衛生的にも安心安全だ。
 問題は帝王切開に似た摘出方法になるので手間と母体に負担がかかること。
 業者の専用無菌プラントでするならともかく、家の出産石でこれを食うのは廃棄する最後の時だけになる。

 一番小さい胎仔だけは取らずに残しておく。
 全部とると出産石の妊娠状態が解除されてしまう。
 最後のお勤めに使うには妊娠状態のままでいてくれた方がよい。



−− 6 −−                 
                       ・

                       ・

                       ・


                                             ・・・・・・ずっとずっとムカシ

                            … … ママとイッショにいたころ…

                     あのころは・・ オネーチャンも イモウトも いたデス

 
                                         家族がいる
 
                           それがアタリマエのことだと思ってたデス


                     はじめて産んだ仔をあのニンゲンにとられるまでは・・・・

 

−− 7 −−

 晩飯用の胎仔をとったついでに出産石の偽石を見てみる。

 出産石の偽石は少々黒ずんでいたが、まだヒビも入っておらず充分に原型を保っていた。

 多孔質の特殊樹脂でコーティングされた偽石が心臓を兼ねた太い血管の近くにある。
 趣味で実装石を扱う人の中には偽石を瞬間接着剤で表面硬化して自壊を防ぐことが多いと聞く。
 その場合偽石表面を完全に接着剤で覆ってしまうと心身の各種能力、特に再生能力と出産能力に悪影響を及ぼすことが知られている。
 しかしこの出産石のように業務用専用樹脂でコーティングされた偽石だと養分補給、また出産に必要な偽石成分の溶出を妨げない。
 だから偽石の寿命も長持ちするし、生まれてくる仔実装の肉質にも悪影響を及ぼさない。

 心臓を兼ねた太い血管に偽石保護用のもう一つのギミックが見える。
 小さなカプセルが血管に縫合されている。
 カプセルからは棒が突き出していて血管に刺さっている。
 あの棒の先には血流で回る歯車がついていて、このカプセルは一種の水車仕掛けのオルゴールになっている。

 耳を澄ますとカプセルからチーチー極々小さな音がかろうじて聞える。

 何年か昔、これを集音リンガルで翻訳してみたことがある。

  スシー ステーキ コンペイトウ オヨウフク オフロ トンカツ プニプニ フォアグラ オハナ チョウチョ イベリコブタ イチゴケーキ… … ・・ ・  

 と実装石の好きそうなものがエンドレスで流されていた。

 このカプセルは何度も仔をとられる出産石のストレスを軽減する精神安定剤の役割を果たしている。
 また絶望した出産石は胎仔の成長に悪影響を与えるような胎教の歌を歌うことがある。
 これから生まれてくる世界への絶望を聞かされた胎児は生育阻害を起こし肉質が悪くなる。
 そればかりか生まれてきた瞬間に偽石が自壊することすらある。
 だが胎内では胎教の歌以上にこの装置の発する内容が大きく影響する。
 このギミックのおかげで出産石の母胎で育まれた仔は皆これからの実装生に期待満々で生まれてきたのだ。


 この偽石処置に見られるように、近年の食石業界の業界努力は大きい。
 まず品種改良によって糞の問題が大幅に軽減された。
 ペット用石並みの洗脳教育と徹底した個体選別によって飼育の手間もかなり省けるようになった。
 その上でちゃんと肉質も向上している。
 最初に食用出産石を飼った時には春から梅雨まで持たなかった。
 糞を投げてくるヤツ、こっそり糞喰いしていたヤツ、仔喰いするヤツ、腐った蛆しか産まないヤツもいた。
 今は楽してズルして美味しい仔実装がいただける。
 ありがたいことだ。


 だがどんなに品種改良と飼育技術が進歩しても大地の恵みにはかなわない。
 元気があるうちに最後のお勤めを果たしていただこう。

 偽石の状態確認も出来たので、裂いた出産石を木綿糸で適当に縫い合わせる。
 栄養状態のよい実装石なら腹を裂いた失血くらいで死にはしない。
 頭を潰したり腸抜きをしたならともかく、この程度の切り傷なら1日もあれば再生する。

 胃の上下から縫ってきた糸を真ん中で結んで締めようとしたら、残してやった胎仔と目があったような気がした。

 お前の姉妹は産声をあげることもなく今夜の晩飯になる。
 なのにお前は一番チビすけだったから食われずにすむんだ。
 運命なんてわからんもんさ。
 もう会うこともないかろうが、せいぜい元気でな。

 胃を縫い合わせたら途中省略して外を縫う。
 縫うというより千枚通しで開けた穴にビニールロープを通して結ぶだけだ。これで充分。

 全部縫い合わせたら糞で汚れた尻を洗ってバケツに入れる。
 飼ってた檻で布団代わりにしていた仔実装服を入るだけ押し込んで詰め物にする。


 さて準備はできた。昼飯を済ませたらさっさと出かけるとしよう。



−− 8 −−

            いつもいつもいつも産んだ仔をもっていかれたデス

           みんなあんなにうれしそうに生まれてきたのにデス… …

        カワイソウな仔供たち・・・ シアワセにしてあげたかったデス・・・

             なのにニンゲンに服をとられて髪をむしられて
            みんなみんな泣きながらオイシクされちゃったデスゥ
                                             
                       ・

                       ・

                       ・
 
                 イタイテチィー アツイテチィー クルシイテチィィィーー 



−− 9 −−

 爺さんの軽トラで小一時間山道を登る。
 林道の脇に車を停め、そこから30分程歩いて山中に分け入る
 ここは鉄砲撃ちをしているこの爺さんの持ち山だ。

 戦後に杉を植えたもののろくな手入れもされていない。
 木を切り出す労賃の方が高くつくから切っても仕方がない。
 金にならない杉が毎年無意味に太くなっていく。

 薄暗い杉林に野苺が赤く色づいていた。
 下草が枯れてきた藪の中で赤い実はよく目立つ。
 子供のころオヤツ代わりによく食べていた。
 行きがけの駄賃に摘まんでみたが… すっぱいな。
 それに食える部分より種のカスのほうが多い。

 杉林の向こうに出ると、近くに谷川が流れる見晴らしのよい場所についた。
 ここは昔は段々畑だったところだ。
 草ぼうぼうの平地(ひらち)にところどころ灌木が生えている。

 爺さんが鉈でその辺のススキと灌木をバシバシ切り出した。


 その間にオレはいつもの仕込みをすることにする。

 持ってきたスコップで平地(ひらち)の一画に円形の浅いくぼみを掘る。
 中心を深く掘り下げて太目の塩ビパイプを切った管を埋めこんでおく。

 そこに爺さんが潅木の幹を切って作った棒とススキを持ってきてくれた。
 ススキは適当な長さと太さの束になるように上下を紐でくくる。

 ススキの束が適当にできたら爺さんはまた柴刈りに戻っていった。
 まったく元気な爺さんだよ。

 さて次は、塩ビパイプに灌木の棒を突きさしてはめこむ。
 一本では頼りないので何本かまとめてしっかりした支柱にする。
 支柱に紐でススキの束をくくりつけ、くぼみに合わせた円錐形になるよう立てかけていく。
 実装石用の掘っ立て小屋だな。
 8割程できたら床にバケツに詰めて持ってきた仔実装服を敷き詰める。
 その上に車の灰皿に入れる芳香ビーズをばら撒いておく。

 準備ができたので持ってきた出産石の具合を見る。
 まだ気絶していた。

 出産石を中に置いたら、『土産』を忘れないように入れておく。

 白菜一玉と底に細工して穴を開けたミニバケツだ。
 ミニバケツの中には塩気の辛いサバの糠漬け(福井県の名物でご当地では「へしこ」と呼ばれる)が糠ごと入っている。

 残りの隙間をうめて、出入り口を杉林の落ち枝をたわめて作って完成。

 細工は上々と思うが念のため爺さんに声をかけて出来上がりの確認をしてもらう。

 爺さんは出入り口の地面をちょっと掘り下げただけで「よっしゃ」と言ってくれた。

 オレもだんだん慣れてきたな。


 この時期は一年で一番日が短い。
 今は3時をまわったぐらいで明るいが、それもあっという間に日が暮れる。
 さっさと帰ることにした。


 今まで世話になったな出産石。うまくやれよ。



−− 10 −−
                  チニタクナイテチィィィ ママー タチュケテーー
                    
                       ・

                       ・

                       ・

              何もできなかったデス 何もしてやれなかったデス
                  形見の服を渡されるたびに
                 いつもいつも泣いていたデス・・・


              でも・・・ これでもう・・・ 終わるデス・・

                なにもかも  終 わ っ た ん デス


               カワイソウな ワ  タ  シ ・・・ ・・ ・


              シ ア ワ セ に なりたかったデ ス  ゥゥゥ ゥ



−− 11 −−

 山を降りだしたころはまだ明るかったのに村についたころにはかなり暗くなっていた。
 爺さんと次の日曜日の打ち合わせをして帰るころにはもうすっかり日が沈んでしまった。
 まだ6時にもなっていないのに真っ暗だ。寒い寒い。


 家に帰ると胎仔実装とブロッコリーたっぷりのクリームシチューが待っていた。
 今年の出産石からとれた最後のごちそうだ。ありがたくいただこう。

 いただきます。


−− 12 −−                   
                       ・

                       ・

                       ・

                死んだんじゃなかった…  デス


              ニンゲンに    捨  て られた デス…………

 

            自由 デス・・・・・・ ずっとユメ見てたデス・・・


 オリの中からずぅーっと見てたデス
 あそこにいけたらシアワセになれると思ってたデス…


 ・・・でも…ゲンジツは厳しかったデスゥ……


 アマい木の実なんてぜんぜんなかったデス
 ちっちゃな草の実しか見つからなかったデス
 とろうとしたらトゲトゲいっぱいでチクチクしたデス
 ガマンしてがんばってとったデス
 見た目は赤くてキラキラしてコンペイトウみたいだったデス
 とったらベッチャリつぶれちゃったデス
 食べたらスっぱくてジャリジャリしてペッペしたデス…

 おミズが近くに流れてたデス
 キレイなオミズだったデス
 飲みにおりたらアカいコウラのヨコバシリがいたデス
 つかまえようとしたらハサミでチョッキンされたデス
 イタかったデス
 ブンブンしたら岩がヌルヌルしてたデス
 落っこちてドボンしたデス 
 すごくチベたかったデス
 死ぬかと思ったデス
 アカバサミにも逃げられちゃったデス…

 ずぶぬれデスゥ・・・
 とってもサムいデス
 だんだん暗くなってきたデス
 今日はオウチに戻るデス
 ひもじいデス かなしいデス
 菜っぱとクサくてショっぱい変なのしか食べものがないデス
 あのニンゲンいないデス
 これからはゴハンもらえないデス…


 …… おヤマはつらいところだったデス
 
 見てるだけならキレイだったデス
 ユメを見てるだけなら楽しかったデス
 でもこれがホントの世界だったんデス
 これからはここで生きるんデスッ
 オナカの仔のためにもぜったいあきらめないデスゥ



−− 13 −−

 仕事から戻った後、長らく使った檻をざっと流し洗いしておく。

 この前吊るし干しにした仔実装が夕暮れの冷たい風に揺れている。
 そろそろいい感じに乾いてきた。

 西の方に夕日の沈む山が見える。
 爺さんと昨日いったあたりはあの辺かな、
 廃出産石はどうなっただろう。
 うまくやってくれればいいが。



−− 14 −−

 デッデロゲー
 デッデロゲー

 ママはアナタ達に早く逢いたいデス〜
 ぜったいシアワセにしてあげるデス〜


 デッデロゲー

 コワいニンゲンはいないデス〜
 もうオイシクならなくてすむんデス〜


 デッデロゲー

 ママはもう泣かないデス〜
 ガンバってオヤマで暮らすデス〜


 デッゲロゲー 

 ムカシのコトは忘れるデス〜
 シアワセもとめて生きるデス〜


 デッデロゲロンゲ〜〜♪ 

 アナタ達が生まれてきたらママもシアワセデス〜
 カラダもココロもポカポカになるデス〜
 だから早く生まれてくるデス〜


 デッデロゲッス〜〜ン♪

 生きてるってすばらしいデス〜
 つらくてもあきらめないデス〜
 生きてたらシアワセになれるデス〜

 いつかオヤマをワタシの仔でいっぱいにするデ …

               デッデロ・・・ ゲ・・・



−− 15 −−

 鉄砲撃ちの爺さんと廃出産石を置いてきた場所に行く。

 今日は爺さんが飼ってる3匹の猟犬も一緒だ。
 夏場のグータラを汚名返上すべくワンワンキャウキャウ大喜びしている。

 途中、前に通った野苺の茂みがすいぶん荒らされていた。
 廃出産石が見つけて喰ったのかもしれないな。
 アイツはうまくやってくれただろうか。
 そんなことを考えながら足を進める。


 ススキで作った掘っ立て小屋は消えていた。
 中に敷き詰めていた仔実装服は一枚もなく、「へしこ」を入れたバケツも無くなっていた。
 ついでにススキの束まで持ち去られて全く残っていなかった。
 址には灌木の支柱だけがつっ立っていた。
 廃出産石はどこにもいなかった。

 血まみれの地面に廃出産石のちぎられた腕と耳が転がっていた。
 この付近に住む山実装にここを追い出されてどこかへ逃亡したようだ。


 同じ実装石でありながら野良実装と山実装のイメージには雲泥の差がある。
 片や野良実装はその醜悪な生態と周辺住人へ及ぼす迷惑な行動によって最悪の不快害蟲として嫌悪される。
 しかし山実装は子供向け絵本や肉のパッケージにも鹿やリス、野ウサギのような森の仲間たちとして描かれる。
 温厚で争いごとを避け、ずうずうしく人間に媚びてこない。
 仔喰い、同属喰いをほとんど習慣にしていないことも彼(女)らの印象を良いものにしている。

 実のところ争いごとを避けるのは闘争に使う労力を食料確保などの生存努力にむけた方が効率的であり、
人に媚びないのは食われるリスクを犯してまで媚びるメリットがないからだ。

 安易な仔喰い、同属喰いは山実装のコロニーを破滅に導く危険性が高い。
 それに同属喰は自身の体臭をきつくするので肉食獣に襲われやすくなる。
 また伝染病のリスクに加え、元飼いや野良の偽石情報を自身の偽石に獲得してしまうことも危険だ。
 野良や飼い実装の知る人間世界の贅沢が山実装コミュニティの価値観を崩壊させることがあるからだ。
 なぜか蛆実装だけは仔として認識せず同属喰のダブーにしていないらしい。
 これは蛆実装の小さな偽石なら偽石情報への影響が極めて小さいためと考えられている。
 付け加えるなら成体より仔、仔より蛆の方が体臭へ及ぼす影響が少ないことが知られている。

 山実装は優しい山の妖精ではない。生存にシビアなだけだ。
 もともと山実装は排他的で余所者を歓迎しない。
 山の生活は厳しい。まず食料が充分ではない。


 他の季節には同属間の闘争を避けようとする山実装だが、この時期だけは餌場確保のために縄張り意識が極端に強くなる。
 積雪前の山実装は最後の食いだめと越冬用食料の確保に走る。
 食料の豊富な時期には争う労力を食料の確保に向けた方が効率的だ。
 しかしその時期が過ぎ去ると限られた餌場を巡る縄張り争いが生じる。
 もしも越冬に充分な食料が確保できなかった場合、その集団は他のコロニーを襲撃して越冬巣を略奪することもある。

 これは生存の為の本能なのだ。


 『山実装の友狩り』は山実装の本能を利用した狩りだ。

 縄張り意識が強くなるこの時期、余所者が自分達のテリトリーに侵入しただけでも敵意をかきたてる。
 まして定住して仔まで産んで増やそうとしたらどうなるか。
 叩き出されるに決まっている。
 余所者の巣は完全に破壊。貯めこんだ食料はもちろん略奪していく。
 厳しい冬を生き延びようとする本能が山実装達を極端に攻撃的にさせてしまう。

 そして山実装が欲しがるものは嗜好品、贅沢品ではない。生存の為に必要な実用品だ。
 越冬に役立つ仔実装服、そして甘味以上に塩が手に入らない山中で魚の塩漬けはコンペイトウより貴重な宝。

 おとりに使われる実装石、「おとり実装」を襲撃した山実装のグループは戦利品を略奪して揚々と自分達の越冬穴に持ち帰る。
 『土産』として入れてある芳香剤をまぶした仔実装服、底に穴を開けたバケツからこぼれる「へしこ」の強い魚臭さ。
 この臭いを頼りに猟犬に跡をつけさせれば山実装の越冬穴まで案内してもらえる。
 そこを一網打尽。当たれば10匹程捕れることもある。



 地面に散らばる出産石の血の跡が外に続いている。
 血の跡は谷川の側で途切れていた。 
 川に逃げて流されたか、山実装に放り込まれたんだろう。

 同属に襲撃された野良ならまず喰われるか、それともドレイとして巣に連行されるのが普通だ。
 しかし山実装はもともと同属喰いを嫌うし、ドレイを使役する風習が少ない。
 使役の手間や食い扶持、居住環境への悪影響を考えるとメリットが少ないからだ。
 だから「おとり実装」は半殺しにされて縄張りから追い出されるだけで直接殺されることは少ない。

 付近を調べるが廃出産石はいなかった。
 「おとり実装」の再利用はしにくい。
 次は放置した場所からすぐに逃げ出そうとする。
 もし廃出産石を見つけたら始末するつもりだった。

 もっとも最後は同じことだろう。
 あの廃出産石は元々禿裸だったが「おとり実装」はたいてい禿裸にして山中に放置する。
 理由の一つは与えた巣から勝手に離れて出て行きにくくするため。
 もう一つは山実装の襲撃の後で生き残った「おとり実装」が人里におりて迷惑をかけないようにするためだ。
 山で生きる知恵を持たない家畜がこの時期の山中を生き残ることはまずできない。


 猟犬達が騒ぎ出す。
 廃出産石の血の跡が続く方向とは別の方向に続く臭いを嗅ぎつけたようだ。
 スコップと実装石をひっかける鉤棒を持って爺さんと猟犬達についていく。
 今年もうまく獲れるといいな。




−− 終わり −−


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