タイトル:【祭】 火の鳥
ファイル:火の鳥.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2972 レス数:0
初投稿日時:2007/11/16-23:57:42修正日時:2007/11/16-23:57:42
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祭り協賛スク・火の鳥

お題絵
http://nijibox.ohflip.com/jissou/hokan/src/1193366690634.jpg



これはまだ日本にちょん髷をゆったお侍が居た頃のお話です。

「ふざけやがって!お前らは楽には死なせん!禿裸で死ぬまで岩山をさまよっているが良いわ!」

「デシャッ!」。

「「テチッ!」」。

巨大な鼻をもつ男は、親山実装と二匹の山仔実装を次々に禿裸に剥くと、地面に投げつけました。どうやら
この親仔は、男を大層怒らせる事をしてしまったようです。

男が去った後には荒れた岩肌がゴツゴツとした岩山に、禿裸の実装親仔が残されただけでした。

「デェェンデェェン」。「「テェェンテェェン」」。

初冬の冷たい風は、泣き続ける禿裸の親仔に容赦なく吹き付けます。やがて寒さで体が冷えた仔実装が温もりを
求めて親実装に抱きつきました。

「・・・ママァ・・・寒いテチ・・・」。

仔実装の一匹が放心状態の親実装に話しかけます。

仔の親を頼る声に親実装は我に帰ります。そしてゆっくりと仔実装の顔を見つめると、涙で濡れたまぶたを
ほんの少し前まで、実装服の袖で覆われていた裸の腕でぬぐいました。

「二人ともこっちに来るデス」。

親実装は禿裸にされた、二匹の仔達を両腕でやさしく抱え込みました。

「お前達、よく聞くデス。あの男の薪小屋で冬を越す目論見は果たせなかったデス。それもこれも私達のウンチ
が臭過ぎて居場所がばれてしまうからデス」。

もちろん糞が臭い程度で、薪小屋の持ち主である男が、怒って実装親仔にこんな辛い仕打ちを与える訳はありません。
この親仔は薪小屋に勝手に住み着き、糞便でよく乾いた大量の薪を汚し、あまつさえ男が蓄えた冬の食料を
食い荒らしていたのです。

実装糞が付いた薪を燃やすと大層ひどい悪臭がして、とても使うことはできません。干し大根や干し柿の様な野菜
や果実も、量が足りなくなれば冬の間に健康を損ねる恐れがあります。

実装親仔は自分達でもそれと気づかず、大きな迷惑をかけていたのです。

仔達はじっと親実装の話す声に耳を傾けました。

「ワタシ達は実装石だからウンチが臭いデス。臭いから幸せになれないデス。だからニンゲンになるデス」。

「テェェ?ママ何を言ってるテチ?」。

「よく聞くデス。私達があの薪小屋に隠れているとき、あの鼻デカ男と村の人が、火の鳥の事を話していたデス」。

親実装は岩山の山頂を指し示して言います。

「この山の上には、火の鳥という不思議な、大きな鳥の巣があるデス。そして火の鳥は今、長い長い眠りに
ついているデス。そしてこの鳥の血をなめると願いがかなうというデス。だから私達はこれから火の鳥の巣に
向かって、血を分けてもらうデス」。

こうして火の鳥の血を求め、親仔実装は山頂に向けて、寒さに体を震わせながら歩きだしました。

幸運なことに、途中で他の動物に襲われることもなく、まばらに生えた草を食みながら幾日か歩き通して、
山実装親仔達は、山頂に連なる最後の急な斜面にまで到着することが出来ました。

「ママ・・・ここを登るテチ?」。

仔実装の一匹が、屏風のように立ちはだかる岩肌を見上げて言いました。

岩肌は人間でさえも登るのを躊躇するような急斜面です。

「ここまで来たら登るしかないデス。私達にはもう後がないデス」。

親実装は、比較的斜面が緩やかなルートを選びながら上へ、上へと進んでいきます。仔実装達も遅れを取っては
ならぬとばかりにテチテチとその後を追います。

やがて岩肌は垂直に近い状態になっていきました。それでももう後へは引き返せません。三匹の親仔は体中を
擦り傷だらけにしながら無言で登り続けます。

そして。

「テェテェ…テッ!?テチューン!テテテ?テチャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ...........」

極度の疲労で意識が混濁し、やさしい人間の幻影でも見たのでしょうか、一番遅れていた妹仔実装は岩肌を
つかむ手を離すと、何も居るはずのない岩肌に向かって媚びました。当然、遥か下界に吸い込まれるように
落ちていきました。

「ママッ!ママッ!妹ちゃん!妹ちゃんが落ちたテチィィィィィー!」

妹仔実装の悲鳴は空に吸い込まれ、残った親仔の耳にその最後の響きが届くことはありませんでした。

「私の仔ぉぉぉぉぉー!」

「妹ちゃぁぁぁぁぁーん!」

二匹の親仔は、愛する家族がもうこの世のものではないことを悟って血涙を流しました。しかし、実装石の大きな
頭で下を見ることは転落を意味します。実装親仔は家族の最後の瞬間さえ見ることは許されなかったのです。

それでも二匹は登り続けなければなりません。事此処にいたっては、諦めは即ち死を意味するのです。

しかし妹仔実装の死は、生き残った二匹にある意味、喝を与えることになりました。二匹は悲しみに打ちひしがれ
つつも気を引き締め、死んだ家族の為にもきっと幸せになると一層力をこめて登り続けました。

やがて努力の甲斐があって、とうとう親仔は頂上近くの岩棚に到着しました。岩棚の奥には目の奥が痛くなるほど
まぶしい光を放つ何かがいました。

「とうとう此処まで来たデス。あのまぶしいのがきっと火の鳥デス。お願いして血を分けてもらうデス」。

「ママ!ワタシがお願いに行くテチ!ママはここで休んでいて欲しいテチ」。

「お前は優しい仔デスゥ。かわいいお前の願いなら、きっと火の鳥も快く受け入れてくれるはずデス」。

親に褒められて嬉しいのでしょう。仔実装は顔を紅く上気させると、テチテチと鳴き声をあげながら光り輝く
ものに向かって走っていきました。

しかし仔実装は、それに近づくほど体が熱くなることに気が付きました。

「テェェ?さっきまで寒かったのが嘘みたいに暑いテチ?目の奥もズキズキするテチ?」。

それからほんの数歩、あゆみを進めると、仔実装の体に今まで感じたことがない激痛が走りました。

「熱いテチャァァァァッ!」。

強大な熱源である火の鳥に近づきすぎて、仔実装の体の表面が薄紫色の煙を上げ出したのです。

「ママッ!ママァァァァッ!体中が痛いテチャァァァッ!熱いテチャァァァ!」。

仔実装は全身を焼き焦がされる苦しみで、地面をのた打ち回ります。

事態を悪化させる事が実装石の業なのでしょうか。苦しむ仔実装は地面を転がりながら、さらに自分を
焼き焦がそうとする熱源へと近づいていきます。

「ママッ!燃えてるテチッ!アタチのお手々が!アタチのあんよが燃えてるテチァァァァァッ!」。

とうとう、熱で焼かれた四肢の端から炎が上がり始めます。まもなく仔実装は全身を食い尽くす炎を纏って、
その場でくるくるとコマの様に回り始めました。

「熱いテチ熱いテチ熱いテチ熱いテチ熱いテチ熱いテチァァァァァァァー!助けてテチャァァァァァァァァァァァ…
ママッ!ママァァァ...」。

仔実装は最後に大きく親実装を呼ぶ鳴き声をあげると、その場で動かなくなりました。

事の次第を呆然と見守っていた親実装は、急に我に我に帰ると叫びながら、かつて娘だったものに向かって
駆け出します。

「デェェェェッ!長女ちゃんが燃えてるデスゥゥゥッ!今すぐママが助けるデスゥゥゥッ!」

仔に比べれば少しは丈夫な成体実装ですが、耐熱性に関してはなんら変わるところはありません。仔実装だった
物に到達する頃には、親実装も禿裸の体に、新たな炎の服を纏っていました。

「デシャァァァッ?!ワタシも?ワタシも燃えてるデスゥゥゥー!!!!????」。

親実装も先ほどの仔実装と同じように、コマのごとく、くるくると回ります。

「熱いデス熱いデス熱いデス熱いデス熱いデス熱いデス熱いデス熱いデスゥゥゥゥゥッ!!!!!」。

まもなく苦しみで激しくのた打ち回る親実装の動きも、パタリと止まりました。

実装親仔たちの悲鳴が消えた後には、小さく真っ黒な二つの人型の炭の塊が転がっているだけでした。

かつて二色の眼球を収めていた眼窩だった穴からは、炎の舌がチロチロ出入りして、黒く炭化した顔を舐めています。

そしてその穴が見つめる先で、眠っているはずの火の鳥が静かに首を持ち上げました。

「あぁ、よく寝たわ・・・あら?また私の寝てる間にオイタした人間が居たのね」。

火の鳥は自分の巣の周りで、黒焦げに炭化した沢山の人間の死体を見てため息をつきました。

火の鳥の生き血を求めてこの巣を目指したのは、実装親仔だけではありません。転がっている人型の大きな
炭化した死体は、岩肌を登りきったものの、熱さで焼け死んでしまった人間達のものだったのです。

「人間が邪な気持ちを起こさないように、こんな断崖絶壁の上で復活の為の休息をとっているのに・・・それでも私の
生き血を求めてこんなところまで来るなんて・・・」。

火の鳥は燃え盛る炎で構成された肉体の中で、唯一熱を拒絶するような透明で冷たい瞳に僅かに憂いの色を映し、
ここで焼け死んでいった人間たちの事を思いました。

やがて火の鳥は思い立ったように立ち上がると、大きな翼を広げて一煽ぎしました。そして熱風を巻き起こし
一瞬で空に舞い上り言いました。

「さぁ、私の生き血を求めた人間達!生まれ変わる次の生でも精一杯生きなさい!」。

炭化した人間達の死体は、熱風であっという間にばらばらになります。そして山頂の岩棚から零れ落ちると山肌に
吹き付ける風に乗って、まるで火の鳥の言葉に従って次の生へ向かうかの様にかき消えて行きました。

火の鳥が去った後には、消えることの出来なかった、二つの小さな人型の炭欠けが残っていました。

それらはあたかも転生を拒絶されたかの様な、実装親仔の死体でした。

熱を発し続けていた火の鳥が去ってしまえば、ここは寒風吹きすさぶ岩棚でしかありません。実装親仔の死体は
燃え尽きるとゆっくりと冷え行き、再び温もりを帯びることはありませんでした。

そして、岩山の谷底に叩きつけられて、潰れた妹仔実装の肉体から零れ落ちたガラス玉のような瞳に、遥か上空を
飛び去って行く光る点となった火の鳥が映り、やがて消えていきました。

火の鳥の瞳には、あらゆる存在の輪廻転生を見渡す全知の視界が宿っています。しかしその瞳にさえも、実装親子の
死闘の顛末は全く映される事はなかったのです。

おしまい

鍋屋◆LCl66aXKxk

手塚先生ごめんなさいorz

実装トリビア
仔実装が自分の親をママと呼ぶようになったのは、鉄砲伝来以降の事と言われています。

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