秋の幸 −− 1 −− 秋も深まってきたので、そろそろ畑の成り物を処分することにした。 鍬で根元を掘って枯れかけたピーマンやオクラをひっこ抜く。 小さな畑だが結構な運動になる。 ふと目を上げると、山際の方に何か動くものがいる。 稲刈りが済み、囲んでいた電気索のなくなった田んぼに実装石が入っていた。 どうやら落穂をひろって食べているようだ。 −− 2 −− 「モシャモシャして食べにくいテチィ」 「この草の実はよく噛めば甘いデス ちゃんと噛んで食べるデス」 「モチャモチャ でもやっぱり固いテチ」 「ノドに殻が引っかかったテチ ケペケペッ」 しばらく晴れた日が続いてくれた。 ニンゲンが刈り取っていった切り株から、また新しい穂が生えて実っている。 落ちている穂と違って中身はほとんどスカスカだ。 でもオナカの足しになる。 村には厳しい間引きの掟があった。 去年の秋、はじめて産んだ仔供達は冬に備えて全部間引かれた。 掟と大ババ様の命令は絶対だ。 ウジちゃんは生まれかわりの穴に、仔供達は仔消し谷に連れて行かれた。 泣きじゃくる仔達を村の仲間たちと一緒に泣く泣く見送った。 谷底に落とされる仔供達の声が、冷たい風に乗って遠い村まで聞えてきた。 春にも仔を産んだ。 最後に生まれてきたけど、元気に尻尾を振ってプニフープニフーと嬉しそうにしていたウジちゃん。 でも、あのウジちゃんは大ババ様に献上された。 水辺で見張っていたオバさんにつままれて大ババ様の住む穴に連れて行かれた。 雨が続いたある日、一番小さい仔が水辺で溺れて流された。 その仔を助けようとしているうちに忍び寄ってきたヘビに一石が飲まれた。 一石は尻尾の大きな毛むくじゃらがくわえていった。 最後まで残った仔も、夜ウンチに出て夜の悪魔ホーホーにさらわれた。 夏が来るまで生き残った仔はいなかった。 夏が終わるころ、ワタシは胎にまた新しい命が宿ったことを知った。 あんな悲しい想いはもうしたくない。 大嵐が通り過ぎたころ、ワタシは奥山の故郷からこっそり抜け出した。 人里近くに下りてきたワタシが目にしたものは、見渡す限りの実りの大地だった。 たわわに実った穂がどこまでも風に吹かれてざわめいていた。 でもワタシは知っていた。 アレはニンゲンの縄張りだと。 あの豊かな大地はニンゲンの縄張り。 ビリビリする縄は警告。 ニンゲンは危険だ。 近づけば死。 喰い放題に見えるデス でもゼッタイ食っちゃだめデス 怒ったニンゲンが追っかけてくるデス みんな殺されるデス あそこに近づいてもならないデス 掟を破ったら追放デス 大ババ様はいつもそう言っていた。 ある晴れた朝、ニンゲンがやってきて穂を刈り取っていった。 あれだけあった穂が夕方には全部無くなっていた。 ビリビリする縄もなくなっていた。 ところどころ掘り返された地面には、食べられる穂がたくさん落ちていた。 ニンゲンはこの縄張りを去ったのだ。 ワタシは隠れていた笹薮から出て、川の近くにオウチを作った。 早く生まれてくるデス デッデロデー ママはアナタ達に早く逢いたいデスー ここにはシアワセがいっぱいあるデスー 今度こそママが守ってあげるデスー デッデロデー デッデロデー −− 3 −− 郷実装と呼ばれる実装石。 人間社会の廃棄物に完全に依存する野良実装ではないが、かといって野生の山実装でもない。 郊外の河川敷や田園地帯といった人間社会に近いところで暮らす半野生の実装石だ。 地方都市の郊外で暮らす郷実装は公園から渡ってきた元野良が多い。 しかしこのド田舎で見かける郷実装はたいてい山から下りてきた元山実装だ。 山実装は強い同属意識で結ばれた閉鎖的なコミュニティを作る。 しかし山での厳しい生活やコロニーの掟に耐えられず人里に下りてくる山実装がいる。 特に冬近くになると、仔の間引きを嫌がってコロニーを抜け出してくる親仔が多い。 地域によっていろんな呼び方があるが、この辺では元山実装を『お山流れ』か『お山崩れ』と呼んでいる。 ちなみに山実装の肉は高級食材として人気がある。 そして山から人里に下りてきたばかりの元山実装は肉質においてほとんど山実装と遜色がない。 要 す る に 今 日 の 晩 御 飯 み っ け ♪ ぜ っ た い に 逃 が さ な い よ −− 4 −− 寒くなるまでに食べものをたくさん集めておかなければならない。 仔供達にも手伝わせる。 この仔達には生きるための方法をしっかり教えておこう。 コオロギやバッタ、イモムシはその場で食べる。 ミミズは捕まえておき、晴れた日に岩の上で干し肉にする。 草の実と果物は早めに食べる。 腐りにくい木の実やイモはなるべくオウチに貯めておく。 「早く食べるデス。次は赤い実の落ちてるところに行くデス」 人里近くには大きな赤い実が成る木がたくさん生えている。 なぜか落ちた実を拾っていくニンゲンはいない。 誰一人興味がないように通りすぎていく。 たまに棒を持ったニンゲンが来る。 そしてわざわざ高い木の枝についた実をもぎ取っていく。 なのに落ちている実には見向きもしない。 「またオヤユビちゃんとウジちゃんにたくさんオミヤゲもって帰るテチ」 「この前ウジちゃんアレでウンチづまりしてたテチ 気をつけるテチ」 「でもウンチたれのウジちゃんにはいいおクスリだったテチ」 赤い木の実には種類がある。 底が平たく丸い実は甘い。あれを食べ過ぎるとウンチが止まらなくなる。 似ているけど先が尖った実がある。あれは実が固い時はシブシブで食べられない。 それがフニュフニュになると食べられるようになる。 落ちて潰れた柔らかな果肉は、丸いのよりも甘くてとっても美味しい。 でもあれを食べ過ぎると糞づまりになる。 オミヤゲを喜んで食べ過ぎたウジちゃんが夜中に泣き喚いて大騒ぎになった。 レピレピ泣くウジちゃんをこの仔達は寝ないで一晩中プニプニしてくれた。 ワタシの可愛い仔供達。 みんなこんなにイイ仔だ。 間引きなんかしたくない。 ここに掟はない。大ババ様もいない。 この仔達は必ず育ててみせる。 日が傾くと山から冷たい風が吹いてくる。 暗くなるまでに赤い実のある丘に行こう。 その時三女ちゃんが叫んだ。 「テッ?! ママ ニンゲンがコッチくるテチ」 棒を持ったニンゲンがこちらに向かって走ってくるのが見えた。 ここに来た時あのニンゲンはもっともっと遠くにいたはずなのに。 怒ったニンゲンが追っかけてくるデス みんな殺されるデス 大ババ様の声が脳裏に響く。 「デ!! 逃げるデス! 早く 早くあの笹薮まで走るデスッ」 「「「テチャー!!!」」」 −− 5 −− ゴム長を履いてきたのでクリーク(田畑の農業用水が流れる溝)を歩いて実装石のいる田んぼに近づくことにする。 かろうじて身を隠せる低い土手の陰に身をかかめて、水量の減った溝を歩く。 途中に水路と田んぼ道が交差するトンネルがあるので、そこまでしか隠れられない。 土手から身をかがめて様子をうかがうと、50メートル程先の田んぼで親仔がまだ落穂をかじっている。 稲刈りの後で伸びた稲の間にチラチラと動くものがいるのが見える。 仔づれだ。運がいい。 村民運動会の時(ムカデ競走)以上の気合をこめてダッシュ! −− 6 −− ニンゲンの足音が近づいてくる。 もうそこまでニンゲンの黒い影が迫っている。 茂った笹薮までとても逃げ切れない。 遅れた仔が悲鳴をあげた。 「おいてかないテ゛ェーーン テェーン テベッ テヂュゥッ!」 「ママー ママァァァー待っテェェーー チュベッ ヂャァァァッ!」 ニンゲンに捕まったら殺される。 せめて、せめて長女ちゃんだけでも逃がそう。 覚悟を決めて振り向いた。 長女ちゃんが逃げる時間だけかせげばいい。 お願い 生き延びて ニンゲンッ ここは通さないデスーッ 歯を剥き出して精一杯声を張り上げた。 次の瞬間、目の前が暗くなった。 −− 7 −− 天敵に襲われた時、普通の山実装なら四方八方へ逃げ出すから何匹かは逃げられるかもしれない。 しかし山実装ほど非情に徹しきれない郷実装一家ならたいてい親仔一団になって逃げようとする。 仔実装を鍬歯にひっかけて転ばしたら、鍬の背で腰骨を砕いて動けなくする。 足だけ潰そうとすると千切れやすい。 それに腰を砕いた方が捕まえた時にジタバタ暴れずおとなしくなる。 仔実装が最後の一匹になると、親実装が振り向いて威嚇してきた。 一匹だけでも仔を逃がすつもりのようだ… が 「デシャアアアァデ ボ ッ・・」 脳天を鍬でかち割り、最後の仔を踏んづけてコンプリート。 内臓を潰さないよう爪先で腰を踏み砕く。 「テチャーー テチィー テ チ ャーーッ テ テ テギィィィッ」 ブリュブリョっと糞を漏らすのが長靴ごしにもわかった。 「デ デェ・・・」 「テ…」 親実装と仔実装3匹を捕まえた。 大猟大猟♪ 気絶している親実装の背骨と腰骨の間に鍬歯を叩き込んでおく。 用水路で糞まみれの親仔と血まみれの鍬をざっと洗って持ち帰る。 禿にせず後ろ髪をひっくくると持ちやすい。 −− 8 −− テェーン テェェン と泣く仔供達の声が聞える。 頭を割られ背骨を折られた痛みに呻く。 目を開けると仔供達が乱暴に髪をつかまれて冷たい水に漬けられていた。 動こうにも腰から下が全く動かない。 次女ちゃん、三女ちゃん、それに長女ちゃんもいた。 決死の覚悟だった。でも何の役にも立たなかった。 ワタシもパンツを剥がされ漏らした尻を洗われた。 そしてニンゲンの棲み家に引きずられていく。 ニンゲンに捕まってしまった。 残してきたオヤユビちゃんとウジちゃんはどうなるだろう。 オウチには今まで蓄えた食べものがある。 でもオヤユビちゃんとウジちゃんだけで冬を越せるわけがない。 もうだめだ・・・ もうおしまいだ −− 9 −− 外の流し場で腹の内容物を念入りに濯ぐ。 本物の天然山実装や市販の食用石と違って、郷実装は衛生面に若干不安がある。 だから生食は避けた方がよい。用心して内臓も捨てることにしている。 万一都会からきてポイと捨てられた元飼いだったりしたら最悪だ。 しかし仔の腹を裂いた感じだと異臭もなく肉質も上等で安心した。 やはりお山崩れだったようだ。 これなら子供達も喜んでくれるだろう。 今晩は実装でお鍋だ嬉しいな。 一匹目を捌くと息子が学校から帰ってきた。 母さんお腹すいたー 晩飯なにー と玄関でお決まりのセリフを言う息子に 今日はいいもんが捕れたぞ、と声をかける。 裏口から出てきた息子に、脂がのっててうまそうだろ、と仔を一匹渡してやる。 −− 10 −− ニンゲンに服を奪われ、大量の水を無理やり飲まされた。 オナカが膨れてお尻からドバドバ水が噴き出した。 みんなオナカの中が全部カラッポになるまで許してもらえなかった。 捨ててきた村の掟のことを今さら思い出した。 あそこに近づいてもならないデス ニンゲンはワタシ達にイタイことをする。 ニンゲンは危険だ。 ニンゲンは恐ろしい。 「たチュけテェー ママー! ママーーー 」 グッタリしていると、ニンゲンの巨大な腕が伸びて三女ちゃんを摘まんで連れて行った。 「ヂィィィーーッ ポンポン切っちゃダメー イ タイ テチ イタ イテチイ タ イ テッ!チイタィィィ… ・・ ・ 」 三女ちゃんのかん高い悲鳴が上がる。 すぐにその声がかすれて消えていった。 動かない下半身を引きずって、なんとか体の向きを変えた。 精一杯の力で首を持ち上げたワタシが見たものは、オナカを裂かれハラワタを剥き出しにされた我が仔の姿だった。 やめるデスゥーッ!!! ワタシの叫びに手を止めることもなく、ニンゲンは三女ちゃんの体をバラバラに切り刻んでいく。 おっちょこちょいだけど、いつも明るくて踊りが大好きだった三女ちゃん。 その三女ちゃんが薄紅色の塊になっていく。 信じたくない光景にそこから目を離すことも動くこともできなかった。 三女ちゃんだったモノを見つめて唖然としているうちに、またニンゲンが腕を伸ばしてきた。 今度は次女ちゃんをつまんで連れて行く。 「イモウトちゃぁぁぁん」 長女ちゃんの叫び声がした。 そのとき別のニンゲンの声が聞えた。 目の前にいるニンゲンより高い声だった。 次女ちゃんをつまみ上げていたニンゲンが低い声で話しかける。 扉を開けて小さいニンゲンが出てきた。 あれはニンゲンの仔供、きっとこのニンゲンの仔だ。 仔供といってもワタシの倍の大きさをしている。 大きいニンゲンがワタシの仔を自分の仔に手渡した。 次女ちゃんは仔ニンゲンを震えながら見つめていた。 「イ・・・ いチ゛めないテ ゛テチ… もチかチて… オトモだチになっテくれるテピ? アタチうれチいテキュゥゥ イッパイ遊んテ ゛ェほしいテ チュ ・・ 」 内気でおとなしい次女ちゃんが引きつった笑顔で仔ニンゲンにおアイソしている。 あの仔ニンゲンに気に入ってもらえたら助けてくれるかもしれない。 昔ママから教わった言葉が浮かぶ。 ニンゲンに捕まったらママも助けてあげられないデス ニンゲンを見たらすぐ隠れるデス 見つかったらバラバラに逃げるデス 媚びてもゼッタイむだデス まちがいなく殺されるデス でも今は仔ニンゲンに媚びるしかない。 必死で次女ちゃんがたどたどしい媚声を出している。 声がガチガチに震えている。 山で育ったワタシ達はニンゲンに媚びたことがない。 ニンゲンはただ恐ろしいだけだ。 それでもニンゲンの気まぐれに祈る。 次女ちゃんはとってもやさしい仔デス 糞づまりしたウジちゃんを一生懸命プニプニ看病してくれた妹想いの本当にイイ仔なんデス カワイイ次女ちゃんのオトモダチになってほしいデスー アナタのイモウトちゃんにしてあげてデスゥ −− 11 −− 息子に手渡された仔実装はテキューテピテチェと変な声で鳴いている。 媚びてるような気もするが、普通の野良とちがって悲鳴をあげてるだけにも見える。 まあお山崩れの仔だからな。 息子は仔実装をオレに返して、ゴハンまでに風呂入ってくる、と言って家に入っていった。 オレに手渡されてヂャーヂャー鳴く仔実装の腹を裂いて内臓を取り去る。 腹の中を良く洗ったらひっくり返して首と手足を落とす。 胴体は背骨に沿って二つ割りにする。 鍋の具だから適当でいい。 鍋に入れる前に下ごしらえで熱湯をさっとかけると生臭みが少なくなる。 髪はその時に頭皮ごと全部剥ぐとカミソリで剃るより簡単に取り除ける。 大き目の仔一匹は明日使い道があるので生かしておく。 それでは本日のメインディシュ、親実装を捌くとするか。 おいおい、逃げても無駄だぞ。 −− 12 −− ニンゲンの仔供は次女ちゃんをしばらくフニフニと弄んでいたけれど、すぐ大きいニンゲンに渡してしまった。 ヂャァァーーッ!コワいニンゲンいやイヤい゛やテヂィィィィ はな ヂィィテ ェ ェ チにたくないチにたくないテチ゛ェーーッ 次女ちゃんを受け取った大きいニンゲンは、何のためらいもなく次女ちゃんのオナカを裂いた。 切り裂かれたオナカから中身がはみ出てくる。 ママーー! チ゛ャギャァァアアアァァァ もしもニンゲンのように腕が長ければ。 耳をふさぐことができるんだろう。 もうやめてデス・・・ お願いもうヤメてデスゥゥゥゥ ニンゲンが次女ちゃんのオナカに指をさしこんだ。 そしてハラワタを引きちぎった。 ァァァァ・・・ じきに悲鳴が消え、次女ちゃんもバラバラに切り刻まれた。 またニンゲンがこちらに来る。 次は長女ちゃんの番に違いない。 ニンゲンを相手に何もできないだろう。 だけどせめて最後まで長女ちゃんを抱きしめようとした。 長女ちゃんは青ざめてへたりこんだままだ。 まだ動かない下半身を引きずって長女ちゃんのそばに近づこうとした。 しかしそれより早くニンゲンの腕が来た。 お… お願いデス この仔だけは助けてデスゥ あなたも仔を持つ親ならわかってデス 殺すなら・・・・・・ 伸びてきたニンゲンの腕がワタシの背中を掴んだ。 仔供達の血に濡れた板に押さえつけられる。 冷たい刃が腹にあたるのを感じた。 −− 13 −− 翌日、一匹残しておいた仔実装を紙袋に詰めて出かける。 一緒にスコップとバケツも持って行く。 仔実装の実装服に簡単な細工をして、後ろ頭に白い紙を切って作った短冊をテグスで結びつけておいた。 紙袋を田んぼ道に置き、畦の陰に隠れて覗いていると、恐る恐る仔実装が紙袋から出てくる。 キョロキョロあたりを見回してから一声あげると、一目散に川の方へ駆けだしていった。 −− 14 −− アタチ… 生 き て る? コワい ニンゲン… ・・・いない ココはドコ? ア ・ ・ ・ アタチ 助かったんだ ママが助けてくれたんだ クツがないから走りにくい パンツがないとおマタがスースーする でも アタチ 帰ってきたんだ ママのにおいがするオウチに飛び込んだ レェェン オネーチャ どこ行ってたレチ? それにママはどこレチィ? レフーレフー オネチャおかえりレフ オネチャ オミヤゲ欲しいレフーン おルスバンしていたオヤユビちゃんとウジちゃんたちが泣きながらかけよってくる。 言うのはつらい でも言わなきゃならない オヤユビちゃん… ウジちゃん…… よく聞いテ ママと他のオネーチャン達は…… うそレチ そんなのうそレチィ ママァ ママァァァ レフ? ウジちゃんよくわかんないレフ??プニフープニフー オミヤゲないレフかー? ウジちゃんうれしくないレフーッ ウンチでるレフッ オヤユビちゃん わかって ママはもういないの これからは甘えてないでしっかりしないといけないの −− 15 −− ポテポテと走る仔実装の後ろ頭には白い短冊がピラピラしている。 目立つマークをつけてあるので見失うことはまずない。 用水路が流れ込む川の土手で仔実装は見えなくなった。 そこには昔の農機具小屋の壁に使っていた錆びたトタン板と廃材が重ねて置いてある。 草刈機のジャマになるので、その周囲だけ草が伸びている。 その下に穴を掘って実装石の一家は巣穴にしていたようだ。 近づくとテチューテッチー レチレフプニフーと仔実装達の声が聞えてきた。 −− 16 −− 泣きじゃくるオヤユビちゃんを抱きしめて背中をさすってやる。 プニフープニフーと転がったり、レピレピ鳴いてウンチ漏らしてたウジちゃん達もよってくる。 オネチャ? なんで泣いてるレフ? ずるいレフ ウジちゃんもダッコしてほしいレフー あったかい ポカポカしてたママの背中 今はもういない このチっちゃなぬくもりがアタチの全て 泣きたいのはアタチも同じだけど… アタチは 生 き て る ありがとうママ… アタチは 生 き る オヤユビちゃんとウジちゃんはアタチがゼッタイ守ってみせる。 だからテンゴクから見守っテ テ? −− 17 −− この時期、山実装が巣に溜め込んだ保存食をお宝と呼んでいる。 人間が食べられるものはムカゴやクリ・クルミ、こいつらが畑から盗んできたイモ程度だ。 しかし、ごくたまに越冬蛹になった蛆実装がいることがある。 越冬蛹の中身はエビミソのようにトロリと濃厚でクリーミーな味をしている。 あれが一番嬉しい収穫なんだが、残念ながらこの巣穴にはただの蛆実装しかいなかった。 まあ、これでもムカゴと一緒に串揚げにすると独特の風味がある。 今夜は揚げ物だな。 やや食いでのない親指も串揚げなら充分具材になるだろう。 ドングリや干しミミズは捨て、収穫をバケツに詰めて持って帰る。 田舎住まいでもたまにこういう楽しみもある。 住めば都、というか慣れれば都。 生きていればどこでも天国。 そんなことを思いつつ家路についた。 美味しいご飯とあったかい寝床。 人間っていいな♪ −− 終わり −−

| 1 Re: Name:匿名石 2014/09/27-21:40:02 No:00001387[申告] |
| 秋仔が旬ということでひとつ
生活感ゆたかな農村文化の描写と 実装視点の地獄っぷりとのギャップが素晴らしい |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/11/24-08:35:56 No:00002949[申告] |
| いいないいな
ニンゲンっていいな |