タイトル:【観察】 実装石の日常 渡り
ファイル:実装石の日常 渡り 12.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6834 レス数:1
初投稿日時:2007/10/31-20:34:19修正日時:2007/10/31-20:34:19
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双葉白山神社の境内には早朝から散歩に訪れる人が意外と多い。

秋のある朝、彼らは少なからず手水舎(てみずや)の元で水を飲んでいる実装石一家を見かけたことであろう。

・・・・・・なんで実装石なんかがいるんだ

そう思うものの、朝、しかも神社で殺生する気にもならず、なるだけ見ないようにして行く。

どこかで、カラスの鳴き声が聞こえた。



 実装石の日常 渡り

ここまでのお話
双葉児童公園は愛護派の餌付けと放置で野良実装の増加と飢餓が起こる。
親実装は生き延びるため今の公園を捨て、家族を引き連れ新天地となる公園を目指す「渡り」を決行。
だが公園はあまりに遠く旅路は危険が多い。

しかしあと2km余りの距離にまで一家はたどり着いた。

渡りの一家
親実装:仔実装を生き残らせるため非情に徹する…?
長 女:生存
次 女:6女を救うため轢死
3 女:生存
4 女:生存 親実装への反抗を隠そうともしない
5 女:渡りに参加できない蛆ちゃんとダンボールに残って生き延びようとするが、わずか数分で食い殺される
6 女:猫に襲われた傷が元で死亡
7 女:猫の連れ去られて死亡
8 女:はしゃぎすぎて体力を浪費、渡りから脱落
9 女:レストランのゴミ捨て場に残留して死ぬ
番 外:蛆ちゃん 5女と共に家族から見捨てられたがそれも理解できず食い殺される


「ごちそうさまテチ」

4匹は食事を終えたところだ。手水舎(てみずや)で水を飲み洗顔して気持ちを引き締める。

が、3女は気落ちしていた。一度は助かった7女があっさりと命を落としたことがよほど辛かったのだろう。

彼女らの感情は人類なみに発達している、連日家族をいともあっさり失っていくのに平気なわけがない。

だがその感情を押し殺さないと生きていけない、死ぬ。

親実装は生涯を通じてそれを学んでいたし、長女も感情を抑えている節がある。

それらがどう転ぶかが問題だ。

「そろそろ出発するデス」

「ママ、聞きたいテチ」

時間がないが親実装は聞いてきた長女の質問に答えた。

「お前の言うとおりここは住みやすいかも知れないデス」

そう長女はこの双葉白山神社に住めないかと言い出したのだ。

大きなニンゲンさんの家があるのに、誰も住んでいないし、土地は広いし静か。

一見、好条件に思えるだろう。

「でもこういうところは危ないデス。公園と違ってなぜかすぐ白い悪魔がやって来るデスー」

神社に営巣した不届きな野良実装は、どこでも町内会の方々が月に1回以上のペースで駆除していた。

公園住まいと比べるとなぜか人は神社に住もうとする野良実装に容赦ない。

親実装も生まれ育った場所近くで、公園からあふれ出て寺社に住み着き、そして駆除されるのを見たことが再三である。

1泊くらいなら問題ないかもしれないが、長期間となると、もう、話は別である。

「判ったら出発デスー」




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親実装・長女・3女・4女の順番で隊列を組んで歩き出す一家。

最初の9匹からなる行進と比べるとわずかに半分以下、それでも到着が近いと思えば足取りは軽い。

・・・・・・早く何とかしないといけない

家族3匹の後姿を見ながら4女は黒い気持ちを顔に出していた。

彼女は親にも姉たちにも愛想が尽きていた。

どうしてもっと自分に快適な暮らしをさせないのか?

歩き通し、飢え、恐怖と、このところろくな事がないのは家族のせいだった。

何より親との関係悪化はもう修復不可能だと彼女は理解していた。

野良実装では親と仔の関係が悪化していけば行き着く先は間引き。

仔もそれを知っているからそうそう反抗しないものだが、度重なる苦労で4女は地が出てしまった。

今は渡りの最中でトラブルを避けたいであろう親実装は手を出さない、と踏んでいた。

だが、安住の地を得ればそうではない、他の仔に精神的負担となる間引きも躊躇しないだろう。


・・・・・・もう、もう時間がない!


4女にしてみれば新しい公園到着は自分の理不尽な間引き、と思っている。

避けるには姉たちを始末するのが最も良い。残された唯一の仔となれば、今度は親も妥協する。

少々愚かだろうと我がままだろうと、他にいないのであれば不承不承育て上げる。


4女はそれを狙っていた。



一家は静々と国道沿いの歩道を歩いて行くが、まばらに人家があるだけでとくに何もない。

時々カラスが飛んでいるが、幸い何もしてこなかった。

秋の朝方、空気はひんやりとしているが心地よく一家はスムーズに歩き続ける。


1kmほど歩いたであろうか、ピタリと立ち止まる親実装。

「ママ、どうしたテ、テチャア!!」

聞こうとした長女、親の影から前をのぞいて悲鳴を上げる。

前にある人家の入り口に大型犬が寝そべっているではないか。

歩道は幅が1mばかりあるものの、彼女らの恐怖が減るものではない。

「マ、ママァ」

「大丈夫デス、寝てるデス、そっと行けば大丈夫デスー」

運よく犬は寝ているのを確認した親実装、その前を歩いて行くことにした。

大きく迂回しては時間をロスするばかり。危険も多くなるだろう。

しかし、目の前の猛獣は寝ているのだ、そっと歩いていけば大丈夫。

「お前たち!」

親実装は仔実装を前に強く言う。

「そっと歩いて行くデス。それだけで行けるデス!公園はもうすぐ、ここでがんばるデス!」

3匹はそれぞれ答えたが4女の意味合いは違っていた。

・・・・・・良かった、これで始末できる

「さあ!靴を脱ぐデス」





*************************************





作戦は簡単だ、4匹は抜き足差し足、なるだけ静かに犬の前を歩いて行く。

彼女らは気がついていない、飼い犬の鎖は到底歩道にまで届かない長さであることを。

しかも犬はダルメシアン、温厚な気質で知られる犬種である、それほど心配することはなかった。

とにかく4匹はそっと、歩いていった。わざわざ靴を脱いで音を立てないようにする姿は滑稽だ。

実際それを見かけた通行人はその異様な光景に息を呑んだが、

・・・・・・見なかったことにしよう

とあっさりと追い抜いた。それにも気づかず一家は犬の前を通っていく。

最後尾はやはり4女。

・・・・・・今がチャンス!

どん、と前の3女の背中を押す。胴体の割に大きな頭部をもつ仔実装、バランスをすぐに崩して前のめり。

長女、背中にもたれかかる3女でバランスを失う。

「死ねテチ!」

とうとう声に出して、もつれ合う姉2匹の背中を蹴飛ばした4女。

「「テヒャアアアアアアア!!!!!!!!」」

悲鳴をあげて、犬の前に転がる2匹。

「長女!3女!」

気がついた親実装、真っ青な顔だ。犬に襲われたら猫の比ではない、実装石などひとたまりもないのだ。

「はやく、はやく起きるテチ!」

「あ、足が痛くてテ」

2匹は犬の鼻先でもつれ合っている。

「早くこっちにくるデスーッ」

生きた心地がしない親実装であるが、傍らでは

「チププププ」

4女が笑っている。

目の前には巨大な犬。2匹はもたもたと立ち上がることも出来ない。

ぬ、と犬が目を開け近くの2匹に気づく。

「早く逃げるデーーーーーーース!!!!!!!」

大声を張り上げる親実装、本当は大きな声など動物を刺激するだけでよくないのだが。

「チプププププププ!」

論外な4女。

この喧騒にとうとう、ダルメシアンははっきり覚醒して、立ち上がった。

「テヒャアアアアア」

「テチャアアア」

上から見下ろしてくる犬に長女と3女は抱きしめあった。犬は口をあけて近づいてくる。

恐怖に目を閉じて強く抱きしめあい・・・。


ペロッ


大きな舌でひと舐め。

「テヒャ?」

恐る恐る目を開けると、ダルメシアンは黒檀のような美しい目でじっと長女たちを見るだけだ。

しばらくすると飽きたのか、寝そべり、昼寝を再開するダルメシアン。

「しっかり立つデス!」

親実装、意を決して飛び出すと2匹をひっつかみ、歩道へ戻る。安堵の息をはく3匹。

「ママ、あのわんわん怖くなかったテチ」

「大きいだけテチ」

「大人しいわんわんで良かったデス!さあ、もう行くデス」

めいめい靴をはき、歩き出す一家。

いや、1匹真っ赤な顔で残る4女がいた。彼女も靴を履いたが怒り心頭、渡りどころではない。


・・・・・・どうしてどいつもこいつも言うとおりにならないテチ


4女の狙い通りなら今頃姉たちはばらばらのひき肉である。

そしてショックを受ける親実装を慰める自分。

「ママ、もう仔は私だけテチ。でも一番いい仔が残って良かったテチ。

ゴハンも私だけで沢山食べられるテチ、新しいお家も広く使えるテチいいことばかりテチ」


どの辺が慰めなのかはさて置き。

「テチャアアアアアアアアアアアア!」

怒り狂った4女、赤面して喚き散らす、地団太を踏む。

うるさくて眠れない犬はいい迷惑だ、ゆっくりと起き上がると、ワンとひと吠え。

プリ。

それだけで硬直しパンコンする4女だ。

だが、4女は気がついた、鎖に繋がれてそれ以上近寄れないダルメシアンの姿に。

「チププププププ」

嘲笑する仔実装に、心なしか嫌な顔をするダルメシアンだった。

「なんてことないテチ、そこから動けないテチ、ただの役立たずテチー」

仔とはいえ実装石、相手が動けないと知ると態度が激変。

「お前なんかこうテチ!」

漏らした糞を掴むと、飼い犬めがけて投擲し始めた。ノーコンな上腕力もないから犬の手前で地面に落ちる。

それを繰り返すとさすがに悪臭が漂い、心なしか顔をしかめるダルメシアン。

「チプププ手も足も出ないテチ」






*************************************





「お前なんか私の奴隷にしてやるテチー」

喚き散らす4女の姿がずいぶん遠い。3女は親の手を引き

「4女ちゃんが遅れてるテチ」

「・・・・・・あの仔はあれでいいデース」

3女、長女を見るも顔を横に振られる。

「さ、急ぐデス、騒いでいると危ないデス」

わが仔2匹を急かす親実装であった。またどこかでカラスの鳴き声がする。



完全にためらいもなくあっけない見捨てられ方をされた4女であるが、興奮していてそんな大事な事に気づきもしない。

あれほど恐ろしい猛獣が、「自分の脅威ではない」というのが愉快でしょうがなかった。

鎖で縛られている、という姿に腹を抱えて笑う。

ワン!

イラついたダルメシアンがほえるとびびって動きを止める4女。しかし、数秒後にはニヤリ、とあざ笑った。

「お前はどうせここまで来れないレチ!」

レチレチ罵詈雑言を並べ立て、糞を投げ、挑発の踊りをする。

ワンワン!

からかわれている、とわかったダルメシアンも興奮し始め吠えるが、もう4女に効果は薄い。

いや、かえって4女をエキサイトさせるだけだ。

「お前なんかデカイだけテチャ!」

奇怪な踊りをしながら嘲笑をやめない。

ガチャガチャ!

かなり興奮したダルメシアン、鎖から音を立てている。

それでも頑丈な鎖はびくともしない、安心した4女は一層図に乗った。

「チププププー。鎖に繋がれた哀れな奴テチ、自由な私とは世界が違うテチー」

ワンワン!ワンワン!

「テヒャヒャヒャヒャ!」

ガチャガチャと鎖が鳴る。

「チプププーーーーーーーーーー」

ワンワン!ワンワン!ワンワン!ワンワン!

「チププププププ」

一層鎖が音を立てる。

鎖に繋がれた姿が滑稽なのか、4女は地面を叩いて笑い転げる。

「チププププププ!無様テチ、無様テチー!」

さらに鎖から音が出るが、それは微妙に変わっていた。

「テヒャヒャハ・・・・・・」

犬小屋に繋がれた鎖が外れた瞬間、ダルメシアンは4女に飛び掛った。

4女は自分の頭部が噛まれ、持ち上げられ、地面に叩きつけられたことがわからなかった。

辛うじて、地面に横たわりながら上から無情に見下すダルメシアンの目が見えた。


・・・・・・え!こいつなんで・・・・・・。に、逃げないと!


立ち上がろうとするが、もろい両足があっさりと砕けていたので地面に顔からぶつかる。

頭部の噛まれた傷口からどっと血が流れる。痛みで悲鳴を上げようとした口から吐血して咳き込む。

これでもかなり加減して甘噛みだったのだが。

「テヒャアアアアア・・・・・・」

なんとか出た悲鳴もか細い。目を限界まで見開き、ダルメシアンを恐怖に慌てふためきながら見上げる。

ダルメシアンは黙って血まみれ仔実装を見、そして。


「・・・・・・・・・・・・」


哀れに思ったのか、そのまま何もせずくるりと自分の犬小屋の前に行くと穏やかな表情で昼寝を再開した。

テヒャア、テヒャア、と惨めな声をあげ、這って逃げだす4女。圧倒的優位のはずが気もつかない間に叩きのめされ、いまや重体だ。

パンツから漏らしながら這うので、地面には緑色の線がだらだらと続く。

服が破け、歯がこぼれており恐怖で顔はゆがっみぱなし。


・・・・・・ママ!ママ!


最後に頼るのは自分の親だったが、そんなものはとうに見えないほど離れている。

後を追って歩道をはっていくが、その速度は微々たるものだ。30センチほど移動したところで息が切れた。

バサッと羽音をさせて黒い影が前に舞い降りる。カラスだ、無言で満身創痍の4女を見る。

「テヒャアッ」

悲鳴をあげて、ずるずると反対方向に逃げようとするとそこへも羽音と黒い影。

「テヒャア!」

違う方向に逃げようとすると、そこへも違うカラスが降り立った。

あわてて周囲を見る4女だったが、10羽ほどのカラスが取り囲み跳びながら近寄ってくる。

「テヒャアアーーーーーー!」

盛大に血涙を流す4女。


「ママ!助けてテチャア!

ニンジンの盗み食いはもうしないテチ!姉妹を殺そうとしないテチ!

私はただ生きたかっただけテチ!!だから助」


             カラスは一斉に襲い掛かった。はたから見れば蠢く黒い塊であったろう。


「テヒャ!」

口ばしで生きている4女の肉をえぐる。

「テヒャアアアアア!」

容赦なくえぐる。

「テヒャアアアアアアアアアアアア!」

手でかばおうとするが、その手をついばまれる。もろくついばまれる4女の肉体。

「テヒャアーーーーアアアアーーーアアア!!!!!」

泣き叫ぶ間に後頭部を突かれて顔面をアスファルトにぶつけ、血と肉が飛び散る。

「ハ、ヒ、テヒィイーーー!」

這って逃げようとすると背中から胸まで貫通するカラスの口ばし

「痛い!痛いテチャアアアアア!!!!」

血涙を流す眼球をえぐる。

「テヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

顔を庇おうとした壊れかけの手足を引き裂く。

「テヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

悲鳴を上げる喉をえぐる。

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ばさばさと黒い塊はしばらく蠢いた。



・・・・・・ものの2分もすると、カラスたちは歩道を飛び去っていく、路上に汚いシミ一つ残して。






実装石の「 渡り 」の成功率はおおよそ5%とされている。

END











あとがき
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1 Re: Name:匿名石 2016/11/16-22:59:33 No:00002815[申告]
4女が不様で苦痛に満ちた死を迎えてくれてすっきりした
あと、神社はね
人間より偉い神様のお社なんだからそりゃね
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