− Gの旋律 少年 − 「実装石は糞虫だ」 なぎ払うバールによって成体実装石の頭は消し飛んだ。 べちゃりと崩れる成体実装石の後ろに、子と思われる仔実装達が盛大にパンコンしてへたり込んでいる。 「仔実装は糞虫だ」 カタカタと震えながら媚のポーズをとろうと右手を・・・ 頭をなぎ払うバールに遅れて虚しく添える仔実装。 鞭がしなるようにバールが走るたびに、水気を含んだ小さな音と共に仔実装が消し飛ぶ。 「蛆も、親指も、糞虫だ」 逃げ出す仔実装達に遅れてあたふたとしている親指が2匹、「ぶじゅり」「べちゅん」と生の名残りを汚いシミに変えてゆく。 残るは仔実装2匹、脱糞の量が少なかったのであろう身軽そうな仔実装が、一回り小柄な仔実装を引きずって茂みに 向かって逃げて行く。 「賢い仔実装は・・・ 将来の糞虫だ」 高々とバールが振り上げられ、後わずかで茂みに到達できるはずだった仔実装2匹は禍々しい鉄塊を網膜に焼き付ける。 テッ! 姉であろう脱糞の少なかった仔実装は最後の気力を振り絞り、小柄な妹仔実装を茂みの中へ突き飛ばした。 姉仔実装は届かぬ手で頭を抱え蹲った、妹だけでも生き延びる事を祈って。 ・ ・ ・ 姉仔実装は、生きていた。 いつまでも来ない最後の時を不思議に思った姉仔実装は、怖いニンゲンが虐殺に飽きて帰ったのかと、恐る恐る顔を上 げた。 高々とバールを振り上げた悪鬼の如き影は、公園の歩道灯を背面から受け、微動だにせず立っていた。 そして、姉仔実装の前にもう一つ小さな影が立っていた。 茂みの中に逃げて行ったはずの妹仔実装が、恐怖のあまりに今にも逝ってしまいそうに顔を引きつらせて、姉を庇う様に立 っていた。 バールはゆるゆると下ろされ、影は黒いシルエットの中に双眸を薄く光らせて佇んだ。 「エサの取り方は、親に教えてもらったか?」 不意の問いかけに2匹はビクリと跳ね上がり、寸刻をおいて姉仔実装が慌ててコクコクと頷いた。 「・・・・・服と体はいつも綺麗にしておけ」 「糞はもらすな、決められた場所でしろ」 「人間の撒く金平糖は毒かもしれない、用心して食べろ」 影の言う事に、姉仔実装は痙攣したかのようにコクコクと頷き、妹仔実装は影と姉を見比べて震えながら頷いていた。 「・・・・家族・・・・・・・・・・」 最後の言葉は仔実装達には聞き取れなかった。 影は最後の言葉を残すと、踵を返し公園内の歩道を出口に向かって歩き始めた。 歩道灯が正面から影を照らすと、面立ちはまだ中学生のそれであり、ジーンズにトレーナーの小柄な少年の姿があった。 「実装石は糞虫だ」 「仔実装は糞虫だ」 「蛆も、親指も、糞虫だ」 「賢い仔実装は、将来の糞虫だ」 「僕は・・・ 僕は・・・・・ ・・・・・・・」 怨嗟の如く独り言を残し、少年は公園を後にした。 その後の少年はこの公園を訪れる事は無く、公園の実装石にとっては一人の虐殺・虐待派が町を去り、別の恐ろしい 人間に殺される、それだけの事であった。 実装石に深く関わると、堕ちて行く。 そのようなジンクスがまことしやかに噂されるが、この少年の末路もそうなるのであろうか? 行方が気になる方は、しばらくお付き合い願いたい。
