共食い 私は世間では善き夫、善き父、善き社会人で通っているサラリーマンです。 しかし私には世間様にお見せする事のできないもう一つの顔があります。 それは実装石を虐待することに生きがいを見出す、虐待派としての顔なのです。 実は今日は特別の日です。 私は家族には仕事で帰りが遅くなると伝えて、虐待派の友人であるとしあきといつもの 牛丼屋で落ち合いました。 私たちは今夜、同じ虐待派の同志にさえも言えない目的を持って、此処で会う約束をして いたのです。 ご存知のように、数年前から実装石の間で流行り出した奇病のせいで、実装石の数は減る 一方です。 私どものように糞蟲・・・いや、失礼、実装石ですね・・・実装石達に苦痛を与えて、 その見苦しい様を鑑賞することで精神の浄化を図る虐待派にとって、被虐の主体となるべき 実装石の極端な減少は、精神的に健やかな生活を送る上で大きな問題となっていたのです。 もう、この町には野良実装なんて草の根をかき分けても見つけることなんて出来ません。 また、実装石を飼う人間がもともと少ないこともあって、飼い実装の存在も期待できません。 そこで私は唯一信頼できる虐待友人のとしあきの誘いに乗って、ショップの実装石を 盗み出すことにしました。 さて、としあきが見つけ出してきたその標的は、この町で一番大きなペットショップに 居ました。事実上のこの町最後の個体と考えて差し支えないこの実装石は、残念ながら 売り物ではありませんでした。 ショップのオーナー自身が愛護派だったので、奇病にやられないように厳重に エアフィルターで空気清浄された部屋に、オーナーのペットとして飼われていたのです。 奇病の病原体の正体が一切わかっていなかったので、オーナーもこの部屋に入るときには シャワーを浴びてからにしているようでした。 こんな隠された様な実装石まで見つけ出してくるとは、流石にとしあきはニート・・・、 いや自由人です。 私より年上なのに、独り身で自由を謳歌しているだけのことはあります。 さて、私達は現地で予想外のトラブルがあったものの、ショップに忍び込んで目的の実装石を 奪取し、オーナーが外出用に使っている特性ケージに閉じ込めて、としあきの家に運び込む ことに成功しました。 としあきはケージの中で震えている実装石を引っ張り出して、両目を緑に染めました。 そう、私達はこの町最後の実装石を孕ませて、仔実装を生ませて二人で分ける算段にして いたのです。 しかし、この実装石の腹はいつまで待っても膨らむ様子を見せません。不審に思った としあきは、実装石を裸に剥くと全身をくまなく調べだしました。 そして、彼は両目を大きく見開いて言いました。 「こいつ避妊処置済みだ・・・」。 彼は何か驚いたりすると両目を大きく見開いてこちらを見る癖があります。 正直、この癖だけは未だに好きになれません。 実装石を飼うときは、避妊処置をするのが理想的と言われています。 ご存知のとおり自己中心的で、親姉妹でさえも飼い主の愛情を独占するためには平気で 食い殺しかねない実装石です。自らを模範的な飼い主たらしめんと望む飼い主は、 そのコストに臆することなく積極的に避妊処置をしていました。 そして、ショップのオーナーも自身を模範的な飼い主と思っていたのでしょう。 私たちは床の上で震える実装石をしばし無言で見つめました。 先に口を開いたのはとしあきでした。 「・・・悪いね。このペットショップの件は俺が見つけ出したものだし、前準備の調査も 俺がほとんどやった様なもんだから、今回は俺がこいつをいただくよ。次回に機会があれば あんたに優先的に回しても良いけど」。 冗談ではありません。私だって今回はサラリーマンとして、家族を持つ社会人として、 出来る限界を超えて協力したのです、私にも彼と同様にその実装石の所有を主張する権利が あるはずです。 そもそも、としあきの調査が行き届いおらず、ペットショップのオーナーが毎週この日に 深夜まで事務所に居るという、重大な事実を知る事ができなかったからこそ、実装石一匹を 奪取するために結局人間一人の命を奪うことになってしまったのです。 これは他ならぬ彼のミスです。彼のミスのおかげで私たちは今夜、殺人を犯すことになって しまったのです。 私は彼のミスのおかげで、サラリーマンとして、家族を持つ社会人として、出来る限界を 超えてしまっていたのです。 かわいそうな、あの模範的な飼い主であったショップオーナーは私達の手にかかって死んで しまいました。 オーナーの死も、としあきがきちんと事前調査をしていなかったからこそ発生した、 殺す方、殺される方、お互いに不幸なトラブルだったのです。 そう思うと急にとしあきが憎くなりました。彼はいい年をしてニートのくせに、いつだって 自分勝手で私を振り回していました。 今日この日の襲撃だって、明日は見たいアニメがあるから今日じゃないと駄目だと強固に 主張するとしあきのわがままに付き合ったからです。 しかも実況スレッドで暴れたいから録画じゃ駄目だと訳の判らない事を言っていました。 そういえば、私は愛用のバタフライナイフで実装石の体を薄く削いでいく、「スライス」 という拷問が好きでした。 一枚肉を削いではナイフをカチャカチャと鳴らす。こんなことを繰り返すと、その音を 聞いただけで実装石は恐慌に陥り、心地よい悲鳴を聞かせてくれるからです。 そして私自身さえも憶え切れないほど沢山の実装石の血を吸わせた愛用のナイフの刃は、 今すっぽりと、としあきの腹に突き刺さって殆どが彼の肉体の中に沈み込んでいます。 私は人間の体にあまりに簡単にナイフが飲み込まれていった事に少々戸惑いながらも、 手首のスナップを効かせて刃先を上に上げ、さらにその柄を90°捻りました。 こうすると確実に内臓に傷を与えられて、その上傷口が開いて大出血しやすいと、 何かの本で読んだからです。 としあきはウグッと小さな悲鳴を上げて自分の腹と私を交互に見つめます。 そして耳障りな呻き声を漏らし、大きく開いた両目で私を真っ直ぐ見据えたままで その場に崩れていきました。 彼は最後まで私が嫌いだった癖を直してくれようとはしませんでした。 これで、この町に残った最後の実装石は私のものです。私はとんでもないことをして しまったと思うと同時に、これからこの実装石をどう虐待しようか想像するだけで、 頭の中心部がジンジンとしびれるような眩暈じみた快感を憶えました。 きっと人を殺めてしまった興奮が、実装虐待への期待を高める効果を奏していたのでしょう。 私が全てを成し遂げた余韻に浸っていると、としあきの苦痛に満ちた呻き声が消え入り 静かになりました。 私は実装石をケージに閉じ込めて、事の後始末の為に血溜りに倒れたとしあきの腹から 愛用のナイフを引き抜こうと身を屈めます。 しかしその瞬間、私は不意に衝撃を受け、直後に熱さとも痛みとも言いがたい苦痛 を感じました。 としあきは腹から私の愛用のバタフライナイフを生やしたまま、彼の愛用のバールで 私の喉仏を突き潰していました。 彼は致命傷を負いながらも死んだ振りをして、無防備になった私が近づくのを待っていた ようです。 彼の好きなものに対する並外れた執念深さを思い出したのは、彼が残された最後の力を 振り絞って自身の愛用のバールを私の眉間に深々と突き立てる直前の事でした。 おしまい 鍋屋◆LCl66aXKxk お付き合いありがとうございます。 次回作は他実装物か山実装物の予定です。

| 1 Re: Name:匿名石 2025/04/25-21:30:15 No:00009624[申告] |
| 実装石同士のそれかと思いきや人間同士とは。まさに「実装石に関わる者は不幸になる」を地で行くお話でした。乙です、素晴らしい。 |