DESU・Bar −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 最近、健康飲料として”酢”が大人気で、 健康酢をカクテル風にしてだす”OSU・BAR”なるものが人気なのだと言う。 国内産、外国産、自家製… フルーツ、野菜… 様々な素材をベースにしたり漬け込んだりして味付けされた酢を飲みやすく出すと言う。 そして、今、郊外に1件のバーが出来た。 その名も”DESU・BAR” 実装食品会社のキャンペーン用のテスト店だ。 新鮮!DESUジュースで夏を乗り切れ!! だそうだ。 はて…実装石にそんなに栄養価があったかなぁ? ひたすら安い肉とか、”珍味”ていどの認識しかないんだけど。 俺は友人と共に試しに、この新しい店を訪れることにした。 車を走らせると、国道沿いに、デカデカと”あの”特徴ある顔を模した巨大看板が回っている。 『金かかってるなぁ…オイ』 道路沿いでは、沢山の実装石が首輪で重りに繋がれ、移動できない状態で道沿いに並び、 サイズに不釣合いな大きい緑の昇り旗を2匹で1本、炎天下の元、必死の形相で振っている。 新店舗のガソリンスタンドでやってるアレのつもりだろうな。 既に泡を吹いて倒れているモノも居る。 旗を放棄して逃げ出そうとしているモノも居る。 暑さと疲労で、前のめりに倒れて、旗ごと車に轢かれる連中も居る。 車の通る風圧で煽られて、車道に倒れて車に轢かれるモノも居る。 ちっとも宣伝や集客効果Neeeeeeeee!! さらに、看板があり”駐車場はコチラ”と、同じイラストが指し示す立て看板もある。 妙にニッコリしすぎでコミカルにディフォルメされたイラストが、とにかくムカつく…。 車を駐車場に入れると、結構賑わっている様だ。 専用シャトルバスも大量に並んでいる。 客層も様々なようだ。 首輪を付けて着飾ったペット実装を連れている人間も多い。 車を降りて店に向かうと案内板がある。 「なになに…虐待が苦手の方の入り口は右。 虐待耐性のある方の入り口は左か…って、ペット連れでも左に入ってるぞ! 大丈夫か?表示は正しいのか?」 しかし、初めての訪問である俺達は表示に従うしかない。 そう言えば、あんまり案内チラシも読んでなかったな。 DESUジュースって何だよ…。 そもそも、何に惹かれてやってきたのやら…俺達。 あっ…この”お試し1日無料チケット”だったな。 店内飲み放題、食べ放題で無料と書かれていたら惹かれるのが貧乏人の性というヤツか…。 左から店内に入ると、いきなり「デギァァァァァァァァ」という実装石の悲鳴が幾重にも鳴り響いている。 俺達と一緒に入ったペット連れのペットたる親仔実装石2匹は、その音にブパァと盛大に漏らしている。 だが、誰も気にしていない様子。 実装石の悲鳴と共に「デププププ」という独特の笑い声も混じっている。 なんてカオスな空間だ…。 俺達は入り口で係員に無料チケットを渡す。 「コチラの入り口で間違いございませんか?」 「たぶん…」 係員が首から提げるパスを渡してくれる。 「清算は、入場時間から注文の品まで、全てこのカードの番号で記憶されます。 最後に出口のレジでカードを出せばお会計できます。 一般のお客様は緑のカードになりますが、 お客様は一日フリーサービスの赤色となっておりますので、最後には回収させていただきます」 俺達は、係員の説明もソコソコに、店の奥にあるカウンターを目指す。 テーブル席には、数匹の実装石をはべらせて談笑する人も居れば、 テーブルに1人で、黙々と何かを食べている人も居る。 実装石も結構居る。 まさに醜さの象徴とも言うべき、富裕実装が金ラメの服で肥えた肉体をソファーに投げ出して笑っていれば、 いかにも、そこら辺で拾った野良実装がゲージの中で泣き喚いている。 ステージもあり、その上では、何匹もの実装石が下手な踊りを踊り続けていた。 焼けた鉄板の上で、足元から湯気を立てながら…。 『ファイヤーダンスショー』と看板が立っている。 意味…微妙に違うよな? しかし、俺達は、すぐにそのカオスな光景の意味を知ることになった。 奥のカウンター席では、何名かのビシッとキマったバーテンダーが何名か居た。 キレイなカウンターには、何故か、網の張った穴が開いているのが気になる。 バーテンの後ろにはライトアップされた棚があり、 そこには、酒の代わりに、実装石が狭いクリアケースに入れられている。 酒場というより…ペットショップに近いな…。 スツールに腰掛け、穏やかそうな初老のバーテンを呼び止める。 何事も、しっかりした年長者に教えを請うのが、初心者としては安心だ。 「ご注文は?」 「ああ、俺達、この店初めてなんですよ。おススメとかありますか?」 「そうですか、このお店では実装石のカクテルと実装石料理をお出ししております。 苦手な方の為に、普通の飲み物もございますが?」 「んー…せっかくだし試して見るかな…DESUジュース」 「かしこまりました 初めての方の為に、ごく一般的な食用生後半年物を用意しておりますので、如何でしょうか? 失礼では有りますが、虐待派の方ですか?」 「ええ、まぁ」 「では、このような趣向がよろしいでしょう」 バーテンが、俺達の前に奇妙な機械を置く。 感じとしては、透明アクリルのケースの中にカキ氷の機械が入っている感じだ。 一応、色々と経験しているだけに、機械を見れば、バーテンの言った趣向が理解できる。 俺と友人とバーテンの口元は、同時にニヤッとしたことだろう。 「虐待には慣れて居られても、実装食には抵抗のある方も居られますので… DESUジュースは飲みやすい果汁で割ります。 慣れておられる方ですと、100%実装を指定されたり、素材を厳選される方も居ります」 バーテンが、棚から1匹の実装石を掴み出す。 食用実装なので、剥げ裸で肌のツヤは良く程よい肉付きだ。 その健康的な身体に反比例して表情が暗くまともな抵抗もしない。 特殊な薬品により、クソ抜きと共に胃の機能が殺され、 食べ物を消化することも、満腹感を味わうことも、糞をすることも出来ないのだ。 元気が無くて当然だ。 「開店間もないのですが、お客様にも様々な方が居られまして… できる限りお答えするために様々な素材を取り揃えております」 言われて見れば確かに… 棚には、剥げ裸の実装石でも様々な大きさが取り揃えられている。 さらに、明らかに野良という実装石が入れられた部屋もあれば、 数匹で固まって震えている山実装と思われる土に汚れた服の実装石の部屋もある。 バーテンは、実装石をカウンターに乗せ、剥き身のオレンジやバナナ、イチゴを差し出す。 その量は実装石の身体と同じだけ用意されている。 実装石は「デ…スゥ!?」と一度バーテンを見上げ、さらに俺達を見回すと、 テーブルの上で、ゆっくりと皿の果物に手を伸ばして食べ始める。 食用として育てられたコイツにとっては、生まれて初めての食事だろう。 最初は俺達をチララチラと伺いながら食べていたが、 何も言われないので安心したか、だんだんと貪るように食べ始める。 実にうれしそうに涙を流して「デフゥ・・・デグン…ムグゥ…ゲフ」と食い散らかす。 薬品処理で胃が働かないので、少しの量でも満腹になり僅かに膨らんだ腹を抱えている。 ゲプ…ゲプ…とすぐにこみ上げ始めている。 実に満足そうな表情だ。 バーテンが静かにソイツの前に食い残しのバナナ辺を差し出す。 何を思ったか、実装石は、ソレをペチッと手で叩き落とすと、 腹をさすり、足を投げ出して満腹の余韻を味わいだす。 バーテンは静かにソイツを片手で掴むと、グニッと無言で食い残しをヤツの口に押し込んでいく。 「デ!…デゲッ・・・ブッ…グボァ!」 もう食えないという意思を表すのか、両手を激しく暴れさせて抵抗するが、 結局はソイツの胃の容積と同等の果物を押し込まれた。 なにぶん胃が働かないので、普通の実装石なら楽勝な量も、 この食用に産み落とされた実装石には、未経験の苦痛となる。 詰め終わった実装石は、手早くケースに入れられる。 ついでに食い残した果物も詰め込まれた。 パタン… 天井が締められ、中の実装石は身動きも取れないスペースの中で暴れる。 「デスゥ!デスゥ!デッスゥゥゥ!」 口から咀嚼した果物を垂らしながら、”開けてくれ”と叫ぶ。 バーテンが「今回は初めてということで、私がお回しいたします」と、 機械の横のハンドルをクルクル慣れた手つきで回していく。 まさに懐かしのカキ氷器だな…。 実装石の押し込められた空間の底は回転する摩り下ろし器だ。 接している実装石の皮膚が、グジュグジュと削られていく。 「デギァァァァァデズベギペアギベ…」 延々と、しかもゆっくりと肉体が削られることで、 実装石は絶望と狂気に暴れ、狂い、泣き叫ぶ…。 糞の心配をすることも無い。 バーテンが箱の天辺の取っ手を手で押し込むと、2重天井の1つが下りて空間を狭めていく。 「コチラの方が速度をお客様のお好みで変えられますので、自動の物より人気なのですよ。 この他にも刃の目の荒さも選べますし、スライサー刃にも交換できます。 圧搾も可能ですので、お好みの絶叫を観察できます」 「デギベギビベバゲグボァァァァァ…」 「なるほど…確かにマニアを唸らせる機能ですね」 そうこうして居る間に、実装石は腹に溜め込んだ果物と一緒に摩り下ろされて行った。 容器に溜まった実装ジュースを攪拌して、カキ氷を半分ほど満たしたグラスに満たしていく。 とにかく青汁のような飲み物が出される。 「DESU・DE・フルーツミックス…当店人気一番の商品でございます 各種フルーツの風味で実装石らしさを和らげ、 シャーベットアイスがそれをさらに飲みやすく致します」 ゴク… 「うん、たしかに想像したより飲みやすい…フルーツが利いているなぁ」 「はい、食用実装として育てられていただけに、生まれて初めての食事と満腹感に、 幸せの絶頂を感じている所を絶望させ調理しているだけに、 その落差によって肉が柔らかくクセが無くなります。 飲みやすさという点では、やはり、食用実装が最高です。 これが、おつまみの”生摘み蛆”です。レモンソースとコチュジャンソースをお好みで…」 皿に数匹の剥げ裸の蛆実装が這い回っている。 缶詰なら食べたことはあるが、生は初めてだ。 軽く尻尾を持って摘み上げると「レヒレヒァ」と上体を振って抵抗する。 流石に、コイツらでも食われるというのは判るようだ。 塩と刻みバジルのレモンソースに浸そうとすると、懸命に上体を90度に起き上がらせプルプル耐えている。 缶詰の蛆実装は生き返らせても弱っているが、やはり、生は元気があっていい。 チャプ…「レヒァァァァァ」 マヌケにも、大口を開けて飲み込んだようで、むせながら暴れて、自分で身体にソースを絡めて行く。 それを、一気に舌の上に乗せ口の中に運ぶ。 舌の上でパタパタと転げまわる。 プチッ… 「うーん、この弾力と歯応えが堪らない…レモンが合うなぁ」 友人はコチュジャンソースを試す。 「ピリ辛と淡白な肉感もイケるよ…アルコールが欲しくなる… それに、この悲鳴と抵抗具合が、まさに珍味だよな」 ふと、横を見ると、先ほど入り口で一緒だった実装石連れの男が隣に座っている。 「マスター…いつもの…」 「はい、目の粗さは荒めでよろしいですか?」 「いや、今日はいい素材が手に入ったのでじっくり楽しみたい。 目の細かいのを用意してくれ」 「かしこまりました…」 男の前に、俺達と同じ機械が置かれる。 一緒に酒を満たしたショットグラスが置かれる。 男は、首輪付の実装石をグイッと引き上げると、何の躊躇いも無く機械に押し込める。 男の実装石は、やはり、何が起こるか理解していないようで、 機械の中で糞を漏らしながら何事か喚いている。 首輪が付いているのでペットかと思いきや、実に汚い服と肌の野良実装石のようだ。 それを服のまま機械に入れた。 男は無言で、自らハンドルを回す。 シュシュ…「デデ!デスデスゥ!デッスゥゥゥゥ」 パンパンと実装石はアクリルケースを叩いて、糞を自分の身体に浴びながら泣き叫ぶ。 男は最初は激しく、腹まで来るとゆっくりとハンドルを回し続ける。 攪拌された肉や体液、排泄物、消化しかけの内容物も混じって落ちていく。 男はそれを見ながらショットグラスをクイッと飲み干す。 「まったくいい素材だ…私の家に忍び込もうとするどころか、みつかると堂々と居座ろうとしやがった。 首輪と紐を付けてやると、ますます勘違いしたのでね。 これをやりながらのテキーラは最高だよ」 「はぁ、そうですか…」俺は思わず返事を返す。 やがて、首だけ残して摩り下ろされた実装石のジュースがグラスに注がれる。 糞も服も構わずに摩り下ろしたジュースを実装石の眼前に見せつける。 バーテンもグラスを掲げると、ほぼ同時に 「「お前には飲み物になる価値もネェ!」」 と、カウンターの穴にドボドボとジュースを投げ捨てる。 「デビァァァァァ」断末魔を上げて頭だけの実装石は動きを止めた。 これも上げ落としの一種なのだろうか…見事な止めの一撃だ。 「食用以外は衛生的にも味的にも問題がありますからね…これが儀式なのです 今ではコチラの方の用途も多くて…」 バーテンが男に、別の実装ジュースを男に出しながら言う。 「お客様のアイデアで、随分イベントも増えています」 イベントねぇ… ようやく、何の為の穴なのか判った。 男は、連れているもう1匹の仔実装をカウンターに上げて、頭だけになった親の姿を見せて、 パンコンして弱々しく震える様子を、目を細めながら見つめてジュースに口を付ける。 一応、特別な紙おむつを入り口で付けられたらしく、 臭いや身が漏れる心配は無いが、なんとも危なっかしい膨らみ具合だ。 「それじゃ、食用仔実装3ヶ月物のソテーと、DESU・DE・スクリュードライバーをもう1杯… あと、この頭を仔実装用に焼いてくれ」 男はスクリュードライバー(オレンジジュース+ウオッカ)なのに緑色の液体を飲み干していく。 実装ジュースは、何と混ぜても緑色なんだよな… 俺と友人は、複雑な気分になりながらも”摘み蛆”の手が止まらない。 確か、メニューにオススメ軽食ってのがあったな… 「マスター…この本日お勧めの軽食は何ですか?」 「はい、親指実装と生後2週間仔実装の野菜たっぷりシチューでございます」 初老のバーテン…マスターは、生きたままの仔実装の腹を割いて内臓を取り出しながら答える。 調理もするのか…この人、趣味と実益を兼ねてるんだなぁ。 腹から内臓を掻き出し、偽石を別の容器に落とすと、今度は頭を裂いて脳を小皿に掻き出し、 手際よく塩コショウを振りかけて熱した小さなフライパンに開きの状態で乗せる。 ジュゥゥゥゥゥ…手足がまだ動いて居やがる。 その間に、クリームソースを脳を入れた小皿に加えてミキシングする。 すると、何故か、身体がヒョコヒョコとまた、激しく動きを見せる。 その様子を、俺達も男もしっかりと注視する。 スグに偽石がパキパキと炸裂していく。 食用実装なんて、内臓や偽石の処理されたパック物か、缶詰の蛆実装ぐらいしか食べたこと無いだけに、 色々と参考になるなぁ。 両面を程よく焼いた仔実装を皿に載せ、オリーブオイルと先ほどのクリーム脳ソースをかければ完成だ。 別の若いバーテンがシチューを持ってくる。 デミグラスかクリームか判らない…緑だからな… それに仔実装や親指実装が野菜と共に浮かんでいる。 というか、野菜と実装石の区別が付かない。 「じっくり煮込んであるので骨までイケます」 生後時間の経っていない仔実装や親指は、元々、骨が小さく柔らかい。 骨とは呼んでいるが、実際には、身体を動かす都合上、肉組織が硬化しただけの物だからだろう。 俺達はシチューを、男はソテーに舌鼓を打つ。 実装肉は、淡白で味としては無いに等しい。栄養価も食べたものに左右されやすく、それほど高くも無い。 ”骨”を食べたところでカルシュウムなど殆ど含まれて居ない。 育てるために使う投入エネルギーの割りに栄養効率が悪いのも主食として売れない原因だ。 その上、どんな料理をしても緑色にしてしまう見た目の悪さもある。 それだけに、味の決め手は調理や味付けの腕に左右される。 実装肉の独特の美味さの肝は、その肉の特異な食感と、どんな味にも合い、染まるという所だ。 そこが、”珍味”としては重宝される。 独特の緑色の先入観を捨てれば、中々イケる。 男の仔実装が、いつしか、その姿を見て涎を垂らしている。 早くも都合よくショックから立ち直ったようだ。 見た目が大幅に変わっているので、食べられているのが同族とは理解できないようだ。 「テチュテチュテッチュ〜♪」 盛んに男に向かって小首を傾げたり、両手を振って媚びを売り、分けてもらおうとする。 もう、声質も成体に近いし、体格も大きいので、何をしてもまったく可愛くない。 むしろ、その仔実装口調がムカつく。 オムツが膨らんで、もはや自力で床に足を付けることも出来ない。 ソイツが動くたびに膨らんだオムツから身が漏れないかヒヤヒヤする。 そして、必死に媚びを売る仔実装の前に皿盛の実装石の兜焼きが差し出される。 この時の仔実装は見ものだ。 喜びのあまりコテンと兜焼きの方に倒れる。 すっかり、下半身の力よりオムツの中身の方が重いのだ。 それでも、その手足でなんとか這いずって兜焼きに到達する。 鈍い蟻を見ているようだ。 「デチデチィ…」 ホフホフと焼きたての兜焼きを頬張る仔実装。 その間に、すっかり意思疎通した、俺達はマスターを囲んで会話が弾む。 愛護派もコッチに来る。 自分の実装石に、同族が調理されていく様を見せ、それらを飲み食いさせて楽しむものも居るらしい。 愛護派とは微妙に違う、飼い実装愛好派も同様だ。 自分の実装石に、そうゆう優位を味合わせるだけでなく、 我儘になったペットを処分したり、戒めの為に利用しているという。 不思議と、ここでは…ここに来る様な客層の間では虐待派と愛護派では諍いは起こらない。 それに、どちらとも言えない飼い実装派など、様々な人間や実装石が入り乱れてカオスな空間と時間を楽しむのだ。 ここでは、誰も仮面を被る必要性が無い。 出される料理に不満は無いが、所詮食用でも実装石…”珍味”であって”一級品”とは言い難い。 ここは、素直に空気と時間を味わうために訪れるのが一番だろう。 そう、この実装石臭さ… ん!? 漂う異臭に目を向けると、兜焼きを食い終えた仔実装が、 無様に腹を投げ出して仰向けになっていた。 実に満足そうな顔をして「デゲプゥ…」とゲップをし、 その巨大化したオムツから糞がデロデロ漏れている。 それを察したバーテンと男がニヤリと笑う。 「満足したようだな」 「満足したようですな」 成体と殆ど変わらない仔実装を、バーテンが手早く持ち上げて、 カウンターの後ろにあるダストシューターに吊り下げてオムツを取り払う。 糞まみれのオムツがシューターに消え、垂れ落ちる糞もそのままだ。 「デチィ!デチィ!テッチュュュュュン!」 仔実装は、乱暴に吊り下げられ不満を言葉にしている。 「デベ!デヂイイイィィィィィィィィ…ゲベバァ!!」 ゴム手袋を付けたバーテンが胴体を掴んで、握って絞り始める。 ムチムチムチィ…と緑の糞が勢い良く搾り出されていく。 「デヂィィィィィ…ゲベァ…デチァァァァ…」 何度も何度も身体を絞る。 胴体だけが絞り雑巾の様に細くなる。 「デチュ!デチァ!テテテチィ」 抗議か怒り…そんな口調でわめきだす。 続いて、その口に錠剤をぶち込むと、手早く服を剥ぎ取る。 胴体が圧縮されているので楽なものだろう。 さらに、ブチ!と髪も毟って行く。 「テチィィィィィテッチィィィィィテッチァァァァァァ」 ここに来て、仔実装は自分が酷い目にあっている上に抵抗できない状態を悟ったのか、 すっかり成体と同じ声になっていたものが、高くてか弱い仔実装の声に戻る。 本能的に仔実装の精神に戻ることで、弱々しさを演出しようという防御機能だろう。 あるいは、本当に幼児回帰する事で、ショックを和らげようというのか…。 口調からして、”助けてください”とか”言うこと聞きます”という単語を含んだ懇願に変化しているだろう。 バーテンは、それを無視して、手早くシャワーを全身に掛け出す。 するとデタラメにも程があるが、絞り雑巾になった身体が、 とたんにムニムニと弾力を取り戻していく。 しばらく掛け続けると、仔実装は何を勘違いしているのか、 「デチュ〜デチュ〜ン♪」と嬉しそうになる。 許してもらえて、褒美にシャワーで洗ってもらっているとでも思ったのだろうか? 男の言った”いい素材”というのは、とんでもない超鳥頭と低知能と糞性格を備えた親仔だったという意味だろう。 「いつ頃が飲み頃になるかね?」 「はい、この記憶力では寝かせても旨味が少ないでしょうから薬の利く2日後が飲み頃かと」 飲み頃? 寝かせる? 俺達があれこれ詮索する間もなくヒントが提供される。 仔実装が突然、「ウブェェェ…」と込み上げ出す。 口に手を当てようと両手がヒクヒク動くが、 胴体を一度容赦なく絞られているので”骨”が砕かれて自由に動けないようだ。 仔実装は成すすべなく嘔吐する。 黄色い液体を激しく吐き出す。 ついでに股からもピュ〜っと緑の下痢というより水便をシューターに漏らしている。 やがて嘔吐は透明な泡に変化し、便は黄色い尿のみになる。 仔実装はどんどん血の気の引いた血色の悪い顔色になり、 いつしか、上下共に水滴すら零れなくなる。 シャワーがずっと上から掛けられたままだが、嘔吐が止まると、 バーテンは棚のケースを1つ開ける。 『「」様』と書かれたケースは半分ほど水に浸されている。 そこに、虫の息の仔実装を沈める。 飲ませた薬は、ゲロリやドドンパの効果を調整した薬のようだ。 食用実装を生産する際に使われる薬…。 胃の内容物を全て上下から吐き出させ、同時に胃の機能を停止させる薬だ。 普通に生活してきた実装石に使うと、 ある意味、高い確率で死に導くゲロリやコロリなどより、 遥かに苦痛を与える事だろう。 なにせ、ギリギリ死なない様にする極秘の薬品が含まれていると聞く。 それだけに普通なら出し尽くして干からびる肉体が、薬を飲む前と変化していない。 用法は難しいが、これを使えば、不衛生な野良でも短期間で食用の身体となる。 実装食肉業者直営だからできるといったところか…。 浸したケースの水は、おそらく洗浄と栄養補給を兼ねた薬剤だろう。 「実装石の肉感は、幸せ状態にすると途端に質がよくなる。 逆に、体液や脳、内臓は絶望すればするほど、偽石から肉体を保存しようと養分が溶け出して味が良くなる。 上げ落としは、見た目の楽しみだけじゃなく、味にも影響するんだ。 具合は難しいが、普通の食用では味わえないよ…」 男が言う。 へぇ…食感や味にも上げ落しが効果あるのか 「それに、普通の実装石を人間が食すには、糞などの余計な味や不衛生さもありますので、 余程の通の方で無いと、わざわざ食べようとは思いません。 我々なら、専門のノウハウを持つスタッフですので、 安全で、なるべく味を落とさずに楽しめます。 もちろん、この薬や機械はお売りできませんので、当店のみの楽しみということです」 バーテンが補足する。 なるほど…実装石にもこんな楽しみ方があったとはな…。 素人が糞抜きをしても、結局、取りきれない糞や不潔さの染み付いた肉を口にする。 かといって、市販のゲロリなどを使うと、食べる部分を少なくし味も悪くしてしまう。 時間を掛けて洗っても、やはり、鮮度が落ちて味が無くなる事になる。 と言う事か。 中々、食用実装業界も大変な苦労と技術を駆使して成り立っているのだと感心させられる。 俺達は軽く腹を満たし、のどを潤して店を出ようとした。 テーブル席のいくつかでは、 「「お前には飲み物になる価値もネェ!」」 という掛け声が聞かれ、実装石の独特の悲鳴が上がる。 俺の通ったテーブルでは、金ピカの衣装の実装石が服を剥かれ、 まさに先ほどの様に頭だけを残して卸されていく。 すでに摘出されてる偽石がパキパキ音を立てている。 「「お前には飲み物になる価値もネェ!」」 グラスの肉は大きな皿に捨てられる。 それを、複数の剥げ裸で汚れとアザだらけの実装石が寄ってたかって啜りだす。 余程、贅沢に育てられたのだろう。 そして、他者を見下す性格なのだろう。 偽石が砕けきらずに留まり、頭だけになりながらも、 けたたましい叫びで、皿に群がる薄汚れた実装石たちを威嚇する。 最初は恐る恐る啜っていた実装石達も、当人からも人間からも攻撃を受けないと判ると、 次第に見せ付けるように皿にダイブしたりする。 それを別の席の富裕デブ実装が「デププププ」と腹を抱えて指差している。 「本当にいい店ができたなぁ。 飲食しながら、こんなことを楽しめるとは」 「そうねぇ、次は、この中のどいつに贅沢させましょうか?」 やっていることは似ていても、楽しみ方は千差万別か…。 外にでると、店員によって旗振り実装が入れ替えられているところだった。 「たく、スグにバテて役に立たないなぁ…お前らショー用な」 ぐったりした実装石達は「デビァァァァ」と最後の抵抗をし、 入れ替えられた新しい実装石達は「デスゥゥ!?」と驚いて、一斉に大きな旗を懸命に振り始める。 なるほど、この炎天下に必死に旗を振っていたわけだ…。 俺達は、こんどは専用バスで来ることにしようと思った。 どうしてもアルコールを飲みながらというのが楽しめそうだからだ。 実装石には、人間に利く様な栄養価は何も無いがこれだけはいえる。 何かスッキリして、明日への活力が沸くようだと…。 貴方も新鮮!DESUジュースで”ストレスを解消して”夏を乗り切れ!!
