「おい、朝食だ、起きろ」 「…デェ?」 翌朝、ケージで寝ていた実装親子は男によって起こされた。 ちなみにケージは親実装が寝転がると仔達の入るスペースがなくなってしまうので親の上で仔を寝かせていた。 「デェ!?服が無いデスゥ!」 「テチャー!ワタチの大切な服がー!」 「つーか、もっとゆっくり寝かせろレチュ!」 「それより約束のコンペイトウを早く寄こせレフ!いい加減蛆ちゃんキレるレフよ!」 「服ならここだ、洗濯して乾かしておいたぞ」 男は親子をケージから出すと服を返す。 親子はピカピカになりいい匂いのする自分の服に感動していた。 「糞の匂いのしない服を着たのは生まれて初めてデスゥ!」 「やっぱり飼い実装は最高テチューン♪」 「可愛いワタチに相応しい服レチュ♪」 「おっと、早速漏らしてしまったレフ♪」 実装親子の言動に呆れながらも男は朝食を用意する。 「今日の朝食はラーメンだ、美味そうだろ?俺が作ったんだから当然だがな」 「ラーメン?」 「説明すんの面倒だからとにかく食ってみろ」 実装親子の前には大きなどんぶりに入った熱々のラーメンが。 どうやら実装用の食器に入れ替えるの面倒になったらしい。 それにしても朝から食うメニューではない気がする。 「ママー!どんぶりのふちまで届かないテチュー!」 「しかたないデスね、ほら」 親実装は仔実装を持ち上げる。 「テチューン♪いい匂いテチュ♪ママ、このままラーメンの中にワタチを下ろすテチュ」 「デ?大丈夫デス?」 「いいから下ろすテチュ!泳ぎながらラーメンを食べるテチュ!」 「分かったデス」 ボチャン 「ヂィィィエェェェェェェ!」 「デェ!?」 ラーメンの海に落ちた仔実装は絶叫を上げる! ラーメンは昨日入った風呂よりも遥かに熱かったからだ。 「あぢゅいいいい!ワタヂの体がぁぁぁ!」 仔実装はラーメンの海で全身を真っ赤に染めながら絶叫を上げる。 「ママーーー!助けてテヂューーーー!」 「デェ!でも熱すぎて…」 「ヂィィェェェエアァァァァァーーーー!」 スープの熱さに手を入れられない親、そして子供とは思えない重低音で叫ぶ仔実装。 「ア…ァァァァァ…」 そしてついに力尽き動かなくなる仔実装。 麺のおかげで沈むことなく無様な姿で小刻みに痙攣する仔実装。 「何やってんだよ、ったく…」 親の無様さに呆れた男は箸で仔実装を救出し水の入ったコップに放り込んだ。 「…エェェップププゥゥゥ…」 しばらくすると復活した仔実装がコップの中で溺れだす。 「親なら命を懸けて仔を助けるもんだろ?何だ、そのザマは!」 「デェ!?ち…違うデス!これは…」 「言い訳なんて見苦しいぞ、それでも親か?」 「デ…」 「まあいいや、それよりとっとと喰え」 「熱くて食べられないデス、冷まして欲しいデス…」 「冷めたラーメンなんかとても食えたもんじゃないぞ、熱いうちに食え」 「デ!?」 「食え」 「はいデス…」 男が実装タタキを振り回すのを見て頷くしかなかった。 「テェップ!テチャァァップ!テップ!テェェェップゥゥウウ!」 すっかり忘れられた仔実装はコップの中で溺れ続け、再び仮死を迎えようとしていた。 30分後 「た…食べ終わったデスゥ…」 「うむ、よくやった」 「デェ…」 親実装は空になったどんぶりの前で倒れた。 仔達はとっくに脱落しその辺に転がってピクピク痙攣している。 「そんじゃ俺仕事行ってくるからしっかり留守番してるんだぞ」 「…デ?」 「仕事だよ、仕事」 「そ…そうデスか、行ってらっしゃいデス…」 「うむ、それじゃそれまではケージで大人しくしているんだぞ、昼食用に実装フードをケージに入れておく」 「デ!?」 男は倒れている実装親子を掴むと次々ケージへ放り込む。 そしてその後に実装フードをケージに流し込まれ親子は悲鳴を上げた。 「いきなり何を!?」 「基本的にお前らはケージで過ごしてもらうと昨日言ったばかりだろ、もう忘れたのか?」 「デ…」 「んじゃ」 そういって男は出かけていった。 「…」 納得がいかなかったがケージの蓋はしっかりと閉められ開ける事は出来ない。 親実装は諦めて寝ることにした。 しばらくして… 「デ…」 寝苦しさに親実装は目を覚ます。 「暑いデスゥ…」 男は出かける前にエアコンを切っていった。 9月になったとはいえまだ暑い日が続いている。 しかも今日は特に暑かった。 それゆえ室内は相当な熱気が篭っている。 実装親子の体からは既にかなりの汗が流れていた。 そんな暑さに仔達も目を覚ます。 「暑いテチュゥゥ…」 「寝られないレチュ!何とかしろレチュ!」 「蛆ちゃんを暑がらせるなんて無礼にも程があるレフ!罰としてお腹プニプニとコンペイトウを…!」 一気に騒がしくなり親実装の機嫌も悪くなる。 「このくそ暑いのに騒ぐなデス!黙って寝てろデス!」 「そんなの無理テチュ!」 「涼しくなったら寝てやるレチュ!だからさっさと涼しくしろレチュ!」 「おい!お腹プニプニとコンペイトウはどうしたレフ!いい加減蛆ちゃんの怒りも臨界点を突破しちゃうレフよ!」 親の言葉で一層騒ぎ出す仔達。 「くっ!こんなガキどもに付き合ってられないデス!」 親実装は騒ぎ続ける仔達を無視し不貞寝してしまった。 「テェェェン!テェェェン!暑いテチューーーー!寝られないテチューーーー!」 「まだ涼しくならないレチュ!?何をモタモタしてるレチュ!」 「蛆ちゃんをこれほど怒らせるとは愚かレフ!ならば怒りの臨界点を突破した蛆ちゃんの力を見せてやるレフ!」 蛆は顔を真っ赤に染めながら尻尾を滅茶苦茶に振り回し糞を辺りに撒き散らす! 「テェ!?何をしてるテチュ!臭いテチュ!汚いテチュ!」 「この糞蛆がぁ!このクソ狭いケージで暴れるなレチュー!」 「レフレフレフレフーーーーーー!!」 この騒ぎは仔達の体力が尽きるまで延々と続いた。 夜になり男が帰宅する。 「ただいま〜」 疲れた声で部屋へと入ってきた男は早速エアコンを入れる。 「デ…アァァァァ…」 「テッチイィィィ…」 「レッチュゥゥゥ…」 「レヒ…」 蒸し風呂状態の室内で辛うじて生き残っていた親子は涼しくなっていく空気に息を吹き返す。 「お前ら凄い汗だな、それに臭い」 「デ…」 日中の地獄を耐え抜いた自分たちに非情な言葉を掛ける男を睨む親実装。 「何睨んでやがる、それが飼い主に対する態度か?」 「デェ…」 「そっちがその気なら仕方ない、夕飯は無しだ」 「デェ!?」 「今日は暑かったから冷やし中華にしようと思ったのにバカだな」 「デェ!デッスゥ!」 親実装は必死に頭を下げて謝罪する。 「ダメだ、躾の一環として今日は我慢してもらう」 「デ…!」 やがて男が冷やし中華を持って室内へ入ってくる。 「んー!美味い!冷えてて気持ちいいぜ!」 「デ…」 「テチィ…」 「レチィ…」 「レフゥ…」 実装親子はケージ内で男の食事を涎を垂らしながら凝視していた。 「…ちっ、しゃあないなぁ…」 ずっと視線を受けていた男は仕方ないといった感じで小皿に冷やし中華を盛って実装親子をケージから出した。 「俺1人分しか作ってないからそれを家族で分けて食うんだぞ」 「あ…ありがとうデス!」 「それより早く食わないと無くなっちまうぜ?」 「デ?」 親実装が小皿を見下ろすと我が仔達が奪うように冷やし中華に喰らいついていた。 「これは可愛いワタチのものテチュ!お前らは遠慮しろテチュ!」 「何を寝言ほざいてるレチュ!これはこの世で一番可愛いワタチのものと決まってるレチュ!」 「てめーら戯言はあの世でしろレフ!これは全てにおいて美しいこの蛆ちゃんのものと決定してるレフ!」 仔達は我先にと冷やし中華を口へ運ぶ。 喧嘩ならば仔実装が一番有利だが今回は何より冷やし中華を食う事が第一。 それゆえ姉妹と争うより少しでも多く冷やし中華を食う事にしたのだ。 「ちょ…お前達!その食べ物はママであるワタシのもの…!」 「美味しいテチューー♪」 「レェェップ!喉に詰まったレヂュー!」 「見ろレフ!今丸呑みしてる麺が蛆ちゃんの総排泄口から顔を出したレフ♪蛆ちゃんだからこそ出来る技レフ♪褒め称えろレフ♪」 親実装は何とか食おうとするが小皿は完全に3匹に占領されており手が出ない。 「このガキどもが…!」 親実装は我が仔を殴るため拳を振り上げる! だが バシィ! 「デギャ!」 男の実装タタキによって吹っ飛ばされる親実装。 「な…何でワタシを…?」 何故ぶたれたか分からない親実装は涙目で訴える。 「育ち盛りの仔に食べ物を譲ってやるのは親として当然だ、それをお前は己の欲求を満たすために仔を殴ろうとした、それが理由だ」 「デ…」 「お前は体力あるんだし一食抜いたって平気だろ」 「そ…そんな…」 結局冷やし中華は仔達に全て食われてしまった。 「デェ…」 腹を空かせた親実装の前では子供達が満足げに騒ぐ。 「次はコンペイトウが欲しいテチュね」 「食ったら眠くなったレチュ…」 「それよりお腹プニプニしやがれレフ!いつまで待たせる気レフ!?」 自分勝手な要求をする仔達を睨む親実装。 「さて、メシの後は風呂だが…今日は仕事で疲れたんでこれで寝るぞ」 「デフゥ…」 熱湯風呂に入らなくて済んだ事に安堵する親実装。 「んじゃ」 パチ 「デェ!?」 「テチュ!?」 「レチィ!?」 「レフ!?」 あっという間にケージに放り込まれ部屋の電気を消され、彼女達が文句を言う暇もなく男は部屋を出て行った。 一瞬で真っ暗になる室内。 「テェェン!真っ暗テチュー!」 「いきなり暗くするなんて酷いレチュー!」 「何故蛆ちゃんのお腹をプニプニしない!ニンゲェェン!」 子供達が騒いでるが親実装は無視して目を閉じた。 「無駄デス、あのニンゲンはワタシ達の言うことなんか聞いてくれないデス」 親実装は諦めたように一言呟くと眠りの世界へと旅立っていった。
