このダンボールの中には親仔の実装石が横たわっていた。この親は比較的人間と距離を置いて生活していたため、愛護派のフードに 完全に依存することなく、ここまで暮らしてきていた。食べ盛りの子供を抱えた状態でフードを断たれたのは正直痛かった。しかし 『あれは何時でも貰える物ではない。あれが無ければ生きていけないのであれば死ぬしかない。』 と仔に教え、一方で内心では 『それが理解できない仔なら必要ない。間引かなければならない。』 と心に決めていた。 「ママァ、何でワタチタチはゴハンを食べに行かないテチ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「タベホウダイテチ?おとなりのオチビちゃんも、お向かいのオバチャンもみんな行ったテチ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「きっと今頃みんなでゴチソウ食べてるテチ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「ワタチもゴチソウ食べたいテチ・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「ママ?何で黙ってるテチ?」 仔実装は母の顔を覗き込んだ 「・・・・・・そんなのデタラメデス。ニンゲンのオウチに入って大丈夫なわけ無いデス。」 母実装は眠そうに答えた。明日も朝早く日が昇らないうちから食べ物を探さなければならない。 日中はまだ暑い。日が昇ってから動いていたら死んでしまう。 「さっきのオバちゃんたちは大丈夫だったテチ?だからみんなでゴハンを食べにいったんテチ?」 「それこそ何かの間違いデス。だいたいニンゲンのオウチに入ったヤツが『ここ』まで帰ってきたら・・・!!!」 母実装は自分が重大な事を忘れていた事に気付いて飛び起きる。 「ママ?どうしたテチ?」 「起きるデス!!」 「ゴハン食べに行くテチ?!」 仔実装は期待に目を輝かせる。 「ちがうデス!!ニンゲンのオウチに入ったヤツが帰ってきたら・・・。」 親実装はガクガクと震え出す。なんで自分はこんな命に関わる事を忘れていたのだ? 「?」 「みんな殺されてしまうデス!!!」 親実装はダンボールから這い出ると仔実装の手を引いて走り出した。親実装の只ならぬ様子に仔実装は不安を隠せない。 「ギャクタイハが来るテチ?」 「チガウデス。来るのは普通のニンゲンデス。」 仔実装は理解できなかった。今まで普通の人間は何かくれるか何もしてくれないかのどちらかで、特に恐ろしい目に合わされた ことは無い。 「何で普通のニンゲンがコワイテチ?」 「ギャクタイハは大勢で来ないデス。他がやられてる隙に逃げられるデス。捕まっても運がよければ命だけは助かるデス。」 (*注:これは死んだほうがマシな目にあった事が無い実装石の証言です。) 「普通のニンゲンを怒らせると大勢でやって来るデス!みんな殺されてしまうデス!」 『こてん』「テチャッ!!」 母について行けない仔実装が足をもつれさせ転んでしまう。 「…テェ…テエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェン…テエエエエエエエェェェェェェェン!!」 状況も理解できないまま大声で泣き叫ぶ仔実装 「泣いてはダメデス!!」 「おい!!泣き声がするぞ!!」 仔実装の泣き声を聞きつけて人間が集まってくる。 「デエエエエエエエ!!」 「ムグッ!!」 親実装は仔実装の口を押さえつけるとそれを抱えたまま走り出した。 親仔の実装石は公園の側面に向かっていた。前後の主要道路に面している側と違って公園の側面はフェンスによって 外界と仕切られておりそのフェンスの外は両方とも対面通行の路地となっている。そのフェンスに1箇所、実装石が 通行可能なサイズの綻びが放置されていた。 穴が有る筈の場所の前には数匹の実装石が集まっていた。 「どうしたデス?」 「出れないデス!穴が塞がれてるデス!!」 見るとそこには大きな板が貼り付けられていた。今回の襲撃に参加したのは単に虐待を目的とした人間ばかりではない。 襲撃の意図を理解して、事前にこういう仕事が出来る人間も居るのである。 「デェッ!!」『バシン!!』 分厚いベニヤ板を0番の針金で厳重に固定したそれは、実装石の体当たり程度では破壊,突破出来るような物ではない。 「ニンゲンがイッパイいるデス!!」 「やっぱりあいつらのせいで普通のニンゲンがワタシタチを殺しに来たデス?」 「チガウデス!!ワタシ見たデス!!みんなギャクタイハデス!!」 「!!」 「ワタシの仔もオモチャにされて殺されたデス!!」 『虐待派の大群』妄想は出来るくせに一般的な想像力に乏しい実装石だが、『虐待派』,『イッパイ』この2つの言葉の 組み合わせから、今自分達が置かれている絶望的な状況を理解した。 「おーい、やっぱりこっちに集まってるぞ。」 「デデッ!!」 普段ここが出入り口として利用されていることを知っている虐待派達はここに実装石が集まってくる事を予想していた。 頭の悪い実装石の特徴として、『ダメな物に見切りを付けられない』ことが上げられる。その結果、間引きをせずに糞蟲を 増やし、今回も使えもしない出入り口に固執したために生命の危機を招いてしまった。 「ママァ」 「デエエエエエエエエエエエエエ」 そう叫ぶと親実装はフェンスの下の土を掻き出した。そして手を血みどろにしながらも何とか仔実装1匹分の空間を作ると 「オマエだけでも逃げるデス!!」 仔実装をそこから公園の外に押し出した。 「ママァッ!!」 その次の瞬間 「デギャッ」 母実装の頭にバールが振り下ろされていた。 虐殺劇が始まって早一時間、『コンビニ食べ放題』を鵜呑みにしてノコノコ出歩いた実装石はその殆どが 空に(笛ロケット)散り,陸に(地面の染み)散り、地獄の獄卒もかくやと言うほどの虐待を受けてその命を散らした。 (*注:水不足と地理的条件のため残念ながら海に散る事は出来ませんでした。) 公園で生まれた物,飼われていたが捨てられた物,逃げて来た物、それぞれに背景は有ったのだが、そんな事は関係ない。 殺す側にとってはこの緑地公園の実装石を今夜の内に全滅させなければならない理由があるのだ。 「デギャアアアァァァァッッ!!」 「おい、あったぞ!!地図のとおりだ。」 先生が地図を渡してから15分ほどしか経っていないにも関わらず次々と実装石の隠れ家が暴かれてゆく。 それだけ先生の地図は正確だった。 親実装は首根っこをつかまれ人間の肩の高さまで持ち上げられた。 「デギャッ!!デギャッ!!」 「ダンボールの下に仔を隠す親も居るらしいぞ!!ちゃんと調べてくれ。」 もう一人の男がダンボール箱を暴きにかかる。 「デギャッ!!デギャッ!!デスゥ!!」 (やめるデス!!ここにはコドモなんていないデス!!ワタシしか居ないデス!!) ダンボールの底に敷いてあった新聞紙を剥がすとダンボールに穴が開けられておりさらにその下には2匹の仔実装が息を潜めていた。 「デス!デスデスデスデス!!」 (お前たち!!ワタシに構わず逃げるデス!!) 「テチャ——————!!」 1匹は糞を漏らしながら腰を抜かしているが。もう1匹は 「テッチュ———————ン」 (待ってたテチ) 「テチテチテチテチィ!!テチテチュテチ!!」 (なんでゴハンを持って来なかったテチ!!この糞ドレイニンゲン!!) 「!!」 仔実装の糞蟲発言に青ざめる母実装をよそに男は仔実装を摘み上げた。 「チプププププププ」 (ゴチソウテチ!タベホウダイテチ!) 男が実装石の虐待を始めたのは2ヶ月ほど前の事であった。 この公園の近所に家を構えるこの男が庭でゴルフの練習をしていた際、庭に一匹の仔実装が現れた。男は当時実装石を犬,猫程度 にしか考えておらず。ゴルフボールを興味深そうに眺める仔実装にボロボロの練習球を1つ与えてしまった。 その翌朝、彼は「デ———ッデ———ッ」とうるさい声に起こされた。 庭に出た彼が目にしたものは、荒らされた庭とその中で大声を張り上げる親実装と「テチテチ」「チプチプ」と遊び回る10匹あまりの 仔実装であった。親仔の実装石は彼が開けた窓から堂々と家内に侵入を果たし・・・(以下略)。 男は全ての実装石を捕まえた後、親の前で全ての仔実装を地面に固定、次々とその首を粉砕して見せ、そして親実装の服と髪を 没収し、右手,左足を切り取って公園にリリースした。 「デーデー」あえぎながら這いずる実装石。 その一連の過程の中で彼は『目覚めて』しまったのだ。 男は仔実装を地面に押さえつけるとポケットの中から取り出した『ロングティー』で地面に固定する。 「チブッ」 (な!何するテチ!!) そしてわざと仔実装の鼻先を掠めるようにフルスイングの素振りをしてみせる。 『ブンッ!!』 「テチャ———————ッ!!……」 恐怖のあまり血涙を流しパンコンする仔実装。 どうすれば良い!?どうすれば助かる!?そうだ!! 仔実装は思い切り上体を反らして人間の顔を見た。そして左手を下ろし右手を曲げて自分の顎に当て首を右にかしげ 「…テ…テッチュ——————————————ン」 『媚び』た。 男に向かって最高に可愛い(と自分で思っている)ポーズをとり、最高に可愛い(と自分で思っている)笑顔を向ける。 (どう?ワタチはこんなにカワイイのテチ?) その目の焦点は合わず、口は引きつっている。 (このカワイイワタチにヒドイコトするわけないテチ?) 額には脂汗が浮かぶ。 (だからオネガ『ブンッ!!』『カシュッ』 あの状況から次の一手へと切り返せたのは仔実装としては上出来と言えるだろう。 しかしやはりこの程度の支払いに見合う結果が仔実装の期待に副うものであるわけが無い。 チタンヘッドドライバーの渾身のスイングに仔実装の頭は腐ったトマトのように叩き潰された。 跡に残った胴体が音も無く糞を垂れ続ける。 「デエエエエエエエエェェェェエエエエッェェェェェェ!!!」 (ワタシの!!ワタシの仔が!!!) もう一人に首根っこを押さえられたまま泣き叫ぶ母実装の前で 『カシュッ』 もう1匹が首を飛ばされた。 「デエエエエエエエエェェェェエエエエエエエえええぇぇぇぇえぇエエエ!!」 (ワタシの仔が!!ワタシの仔が2匹とも!!) 「ねえ、仔実装もう居ない?」 ドライバー男はまだ打ち足りない様子だ。 「もう居ないよ…。親指じゃダメかい?」 「親指でもいいよ。いるの?」 「ちょっと待ってね・・・・・・。はいこれ。」 ドライバー男は手渡されたものをまじまじと見詰めると。 「ああ、なるほどね。」 納得した様子で親実装を持ち上げた。 「デシャアアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアア!!!」 (今度はワタシデス?殺すがイイデス!!一思いにやるデス!!) 「はいはい、子供が居なくなって寂しいよねぇ。でも大丈夫。すぐににぎやかになるよ。」 そう言うと男は親実装の顔に『赤スプレー』を吹きかけた。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 激しい違和感と共に親実装の腹が膨れ上がったかと思うと次の瞬間 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 次々と産み落とされる親指・・・ではない。親指だったのは最初の2匹だけであとは大量の蛆実装だった。 「あれ?」 「ごめん、確実に親指が欲しいときは一旦両目を緑にして少し待たなきゃいけなかった。」 「まあいいや、もう興がそがれたな。次行こう。」 「ああ。」 二人は親実装に止めを刺さずによそへ行ってしまった。 命拾いをした親実装だがこの強制出産から解放されなければ衰弱死は免れない。だが顔の赤スプレーはそう簡単には落とせないだろう。 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」 「アカチャン・・・ワタシの・・・アカチャン・・・。」 親実装は地面を這いずりながら集められるだけの我が仔をかき集めた。 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」 「ずっと・・・いっしょデス。」 程無くして「テッテレー」の声は聞こえなくなった。 開始から2時間後。コンビニ前。 >仕留めた。 「先生、今ので成体49匹と仔が21匹、もう十分じゃないですか?」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「…そうですね、数的に問題ありませんし、これ以上は必要ないでしょう。」 「デエェ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「分かりました、みんな呼び戻して良いですか?」 「デェ——————————————————————ッ、デ————————エエエエ——————————ェッ」 「…はい、乱痴気騒ぎはここまでです。いい加減引き上げないと、ところで…。」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「心配しなくても大丈夫です。」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「そうですか?」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「実装石の虐待してるなんてバレたら身の破滅ですからね、心配しなくてもみんな口は堅いです。」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「それもですけど、『これ』・・・。このさっきからウルサイ『これ』です。どうするんですか?」 「デ——————————————————————ッ、デェ——————————————————————ッ」 「ああ、『これ』ですか?」 『これ』とは1時間前にヘッドギアを付けられ、視覚,聴覚,嗅覚を奪われた実装石の事である。 捻じ曲がった足のまま辺りをウロウロと歩き回り「デーデー」と泣き叫ぶ 体中に擦り傷を作り、前歯の折れた口からはダラダラと涎を垂らしている。 実装石はヘッドギアの隙間から血涙を滲ませながら、リンガルでも解読できない叫びを吐き続けている。 最初に3回蹴りを喰らわせた後、男は実装石を完全に無視した。人間と生活空間を共有するタイプの実装石は、人間に無視されること に過剰なまでのストレスを感じる事が知られている。 『自分達は裕福かつ安楽な生活を送るのが当然』で『自分達が裕福かつ安楽な生活を送るためには人間に飼われるしかない』 だ・か・ら 『当然人間には自分達を飼う義務がある』 という強い糞蟲思考を持って人間に近づいた実装石にとって『無視』とはそれを根底から否定されることに他ならず よって幸福回路に強いストレスがかかりその結果パニック状態に陥ってしまうためという説が支持されているが、中には 実装石は元々が人形だったから人間を離れては生きて行けないという都市伝説も実しやかに語られている。 実際に人間の側に居ながら無視され続けた事が原因で偽石崩壊によるストレス死を迎えたという報告は多数で、 このヘッドギアはそれを応用したものである。視覚,聴覚,嗅覚を遮断することによって孤独感を増幅し、死に至るまでの時間を大幅に 短縮する事に成功した。 実装石が『壊れる』までに見せる様々な苦痛,苦悶の表情を短時間で楽しむ事が出来、尚且つ死の直前まで地獄を見せ続けるこのアイテムを 男は非常に気に入っていた。 最初の内こそ反撃を試みていた実装石であったが20分後には急に大人しくなり、30分後には大声で人間に媚び、さらに45分後には意味のある 言葉を発する事は無くなって、そのまま現在に至る。ちなみに最後に発した意味のある言葉は。 『ニンゲンさん、オネガイデス、ワタシを、ワタシqwertyuiopp@[///////////////////////////』 彼女が助けてくれと言ったのか、それとも殺してくれと言ったのか、男にはそんなことは関係ない。 『こつん』 「デスゥッ!!」 コンビニ前のゴミ箱にぶつかった彼女は目の色(?)を変えその涎塗れの口でゴミ箱にしゃぶり付くとベロベロと嘗め回した。 「デッスゥ———————————ン、デッスウゥ———————————ン」 気味の悪い猫撫で声を上げながらゴミ箱に股間を擦りつけ、さらに総排泄口から糞と共に汚らしい粘液を垂れ流す実装石。 「…もしかして、君に欲情してるんじゃないですか?」 「…ストレス死まで後30分と言った所でしょう。この仔は僕が貰ったんですから余計な口出しはしないで下さい。」 「じゃあせめて静かに殺してください。深夜なんですから…。」 「…分かりましたよ。」 男は鞄の中からヘッドギアの追加パーツを取り出すとそれを実装石の口に当てた。口まで完全に塞がれて実装石はのたうち回る。 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「…さて、全員に連絡は付きましたか?」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「今メールを打ったところです。少し待ってください。」 「!!!!!!!!!!!———!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!———!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「可能な限り後片付けもお願いします。」 「!!!!!!!——!!!!!!!—————!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!—————!!!!!!!!!!!!!!」 「はい…、あ、全員から返信です。みんな帰って来ます。」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!————————————————」 「ご苦労様です。バイト料を受け取ったら気をつけてお帰り下さい。ところで・…」 「————————————————————————————————————————」 「何です?」 「————————————————————————————————————————」 「『これ』、死んでませんか?」 「あ」 実装石は絶命していた。 「しまった、口と鼻同時に塞いで何やってんだよ…。」 男は自分が犯した凡ミスを激しく悔やんだ。ヘッドギアと無視によって崩壊寸前のダメージを受けていた彼女の偽石は、窒息によって あっけなく砕け散った。 「…成体50匹目ですね。」 そして 「死骸こっちでいいんですか?…」 「死骸はこちらに……」 「バイト料受け取ったらこちらにサインを…」 「店長処理袋を…」 「こいつまだ生きてるぞ!コロリを…」 こうして深夜の虐殺劇の幕は降り、公園は静寂を取り戻す。 確認されただけで成体実装50匹,仔実装21匹がその命を落とした。 もうフタバックスが襲われる可能性はほとんどゼロになり、『先生』達の目的は達せられた。 フタバックスの伝で系列企業の民間ゴミ回収業者に連絡をし、コンビニ前の実装ゴミの山は夜明け前に内密に片付けられた。 しかし実装石たちの話はこれで終わりではない。 テッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチテッチ 暗闇の中、1匹の仔実装が走っていた。行く当ても無ければ頼る物も無い、しかしただ一歩でも良いからあの地獄から遠ざかりたい。 その一念が血まみれの彼女の足を前へ前へと送っていた。 「テチャッ!!」『こてん』 仔実装は足がもつれ、アスファルトに倒れこむ。顔には砂や小石が突き刺さり、所々出血もしている。 「………………テェ…テェ……テエエエェェェェン」 (イタイ、イタイ、アンヨがイタイ、お顔がイタイ、オテテがイタイ、のどがイタイ、) 「テエエエェェェェン、テエエエェェッェェッェン……ママァ…ママァッ!!」 (ママ!助けて!イタイの!!お腹が空いたの!!のどが渇いたの!!) するとそこに1匹の成体実装が現れた。背中にはビニール袋を背負っていて、身なりはボロボロ。張りの失われた顔の皮膚が彼女の生きた 年月を物語っている。 「泣いてはダメデス」 「テェ…?」 「あの公園から逃げてきたデス?」 (こくん) 「ママはどうしたデス?」 「……テェ…テエエエェェェェン・・・テェェェェン…」 「…そうデスか…」 老実装は背中の荷物を下ろすと水の入ったペットボトルを取り出し、仔実装に飲ませた。 「…んっ…んっ…」 「落ち着いたデス?」 (こくん) 「オバちゃん…ダレテチ?」 「ワタシはこの辺に住んでいる物デス。」 成体実装は自分が公園から少し離れた路地裏に住んでいること、エサを探しに来る仔実装たち親仔を知っている事 コンビニでの一件を終始見ていたこと、虐待派が大勢来たので今まで身を隠していた事を話した。そして… 「オマエは公園にもどるデス」 「!!!イヤテチ!!殺されるテチ!!」 「ダイジョウブデス。これだけやればニンゲンはしばらく来ないデス。」 「イヤテチ、コワイテチ。」 「良く聞くデス、もうオマエにはゴハンをくれるママも守ってくれるママもいないデス。」 「…テェ…」 「泣くんじゃないデス、泣いたら泣いただけ悪い事を呼び寄せるデス」 「!!」 「ママもいないデスが、かわりにオマエを食べようとする糞蟲ももういないデス。今オマエにとって一番安全なのは公園デス」 「テェ…」 「オマエのママはゴハンのある場所も、水のある場所もその取り方も教えてくれたはずデス。」 「……」 「親仔はいつか別れる時が来るデス。それが今日デス。分かったデス?」 「……」 仔実装はまだどうして良いか分からかった。 「ワタシに言ってやれるのはココまでデス」 老実装石は立ち去ろうとする。 「待つテチ…」 「なんデス?」 「助けてくれないテチ?」 「他人を助ける余裕のある実装石はこの町にはいないデス!!死にたくなければ自分で何とかするデス!!」 そう言い残して老実装は今度こそ居なくなってしまった。 「テエエエェェェェェェエエエエエエエエン…テエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエン…」 仔実装は泣き叫ぶ。喰われないだけマシだったのだが仔実装にはそんなことは分からない。 まだ猛暑は続いている。日が昇るまでに自分の飲み水と食糧を確保できなければ仔実装に未来は無い。 「テエエエェェェェェェエエエエエエエエェェェェェン…テエエエエエエエエエエエェェェェェェエエエエエエエエエエン…」 「レチュ・・・」「レチ・・・」「レフ」「レフ・・・」「レフィ」「レリュ・・・」「レフン」「レフレフ」「レフィ」「リュリュ」「レフレフ」 ムシャ ムシャ プチ ムシャ ブチ ブツ ブチ ブチ ムシャ 「レチレチュ」「レフン」「レフレフィ」「レフ」「レッフ」「レフイ」「レチュン」「レッチュレッチュ」「レリュ」「レフンレフン」 ムシャ ブチ ムシャ ブチン ムシャ ハグ モグ ブチュ ブチ 「うわア…」 そこにあったのは干からびた母親の脇で、自分の姉妹の死骸を貪る親指実装石と蛆実装石の姿だった。 母親の顔は塗料で真っ赤に染まり、総排泄口には最後に強制出産によって産ませられた蛆実装の死骸が詰まっている。 「先生ぇ…生き残りですよぉ」 8月Z日午前5時、 先生と男は後片付けのために公園の中を歩き回っていた。虐殺劇の証拠,痕跡はなるべく残さないほうが良い、 大規模な虐殺が報じられれば愛護派が息を吹き返しかねないし、何と言ってもここは子供の遊ぶ公園なのだ。 だが報告と死体の数が合ってないためその確認をしなければならないし、可能であれば計算上居るはずの成体実装3匹, 仔実装1匹の生存者の顔も見ておきたい。 「今行きまぁす」 少し離れた所から先生が走ってくる。 「うわぁ…これは数の内には入っていないですねぇ。とりあえずこれで成体50匹、死体の数は合いましたね。」 「どうします?」 「持って帰りたいですか?」 先生が尋ねると男はあからさまに嫌な顔をして首を横に振った。 「先生、mercyもらえます?」 「…相手は親指ですよ、窒息死させたいんですか?」 そう、mercyの粒はコンペイトウより一回り大きく親指実装石に食べさせるには無理がある。 「ありゃ、バレてましたか。」 「君達にはこっちだね…。」 そう言うと先生は通常サイズのコロリを取り出して親指達の前にばら撒いた。 「レリューン」「レッチュレッチュ」「レフーン」「レフン」「レフィー」「レチューン」 親指達の本能に訴えるものが有ったのだろうか?彼女達はそれまで齧っていた蛆実装の尻尾を吐き捨ててコロリに群がった。 「レッチュン」「レフン」「レピー」「レチャ!」「レチレチ!」「レヒーン」「・・・・・・」「・・・」「・・・」 コロリを飲み込んだ物から次々と目を白くして倒れてゆく。 「先生…、こんなの見てて良く平然としてられますね。」 「君達の様にこれを見て興奮するよりは大分マシだと思ってはいるんですけどね。」 「そうじゃなくて、良いにせよ悪いにせよこれをやって眉一つ動かさないのは人としてどうかと…。」 「…帰りますよ!!それを片付けておいて下さい。」 先生はそう吐き捨てると公園の出口へと向かっていった。男は自分が先生を怒らせてしまったことを悟ると無言で親仔を袋の中に入れると その後を追った。 「成体実装3匹のほうは?」 「フェンスの下に大穴が開いてました。すごかったですよ。」 「どういうことです?」 「前もって掘っておいた穴を軟らかい土で埋め戻して隠していたようです。逃げ道として用意していたとしか思えませんね。」 「こちらが見落としても仕方ないか。そいつらこの後どう動くと思います?」 「帰って来るでしょう、ニッチを食い荒らす競争相手は殆ど居ませんからね、敢えて危険な渡りに踏み切る事は無いと思いますよ。」 二人は公園の入り口で別れるとそれぞれの生活へと帰って行く。 消えてしまった緑地公園の実装石を気にする者も無く、この夜の一件は誰にも語られる事無く闇に葬られた。 外の実装石を守るために本当にここまでの事をやる必要が有ったのか? 今となってはそれを知る事は出来ない。 ただ、もし必要だったというのであれば。外の世界に居る何千何万という実装石を一斉駆除という生命の危機から救ったのは 昨夜緑地公園に集まった『虐待派』と言うことになる。 8月Y日朝の死亡実装石数は仔実装1匹、これは8月に入って最少であった。 8月Z日朝までの死亡実装石数は成体実装50匹と仔実装21匹、これは8月に入って最多である。 遊びの時間は終わらない—完— ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 駄文に御付き合い頂き有難うございます。 前スク 遊びの時間は終わらない—前,中編 託児?①②③ 早朝 夏の蛆実装

| 1 Re: Name:匿名石 2016/10/04-19:31:09 No:00002569[申告] |
| パニック系の駆除モノはやっぱいいなぁ。 |
| 2 Re: Name:匿名石 2016/10/07-16:30:57 No:00002570[申告] |
| 過去作掘り起こすのは良いんだけど連続でやられると現行作品が見づらくなるから勘弁して
もう来ないって言ってたのはこの際置いておくけど何度も何度も何作品も一気にやられるとひたすらウザいし挙句作品批判まで始めるし自重して欲しい |
| 3 Re: Name:匿名石 2016/10/08-07:44:59 No:00002571[申告] |
| いや構わない
誰がいつの作品を評価しようと問題ないだろう 昔の名作を知れるし原稿作品ならスクアップローダーの方で探すから大丈夫だよ |