この町内には実装ハウスというものがある。 とある空き地に建っており、屋根の上の看板に幼稚園児がクレヨンで書きなぐった様な カラフルなぐちゃぐちゃの文字で『じっそうはうす』と書かれていることからそう呼ばれている。 だが実際には誰が何の目的で建てた物なのかは不明だ。 それはプレハブ小屋より一回り小さな建物で、実装石が出入りできる扉がついている。 家に勝手に住み着く習性を持つ実装石のこと、すぐにここをねぐらにする実装石が現れる。 今は子連れの実装石が住んでいた。 一度住処を見つけると実装石はいろんなものを持ち帰るようになる。 プラスチックの椀、ボール、綺麗に輝く金属や石などだ。 外に出るのはいつも母実装のみ、仔実装はいつも家の中で留守番をしている。 ある晴れた日にハウスの中にパタパタと滴が落ちた。雨でもないのに。 滴は家具のお椀にも落ちた。すると途端にジュッという音と共に白煙が上がり、穴が開く。 「デスッ!」 異変に気がついた母実装が子どもを呼ぼうとするがそれより先に滴が仔実装に落ちる。 「テチィッ!」 仔実装の滴に触れた部分の皮膚が焼けたようにただれた。 この滴は強酸だった。それが天井から落ちているのだ。 パタパタパタパタと、落ちる滴の量が増え、ハウスの中のものを溶かしてゆく。 「テチュゥ!」 「テチィー!」 「テテチュゥー!」 恐慌状態に陥った仔実装たちがばらばらに走る。 母実装がたまたま近くにいた子を引き寄せ、他の子どもたちに呼びかけるがその声は届かない やむなく母実装はその一匹だけを抱え、外へ出ようと出口に走った。しかし扉は開かない。 ノブを回してもバンバン叩いてもぶつかってもびくともしない。 そうしているうちにも滴はどんどん落ちる。 仔実装たちは滴から逃れようとめちゃくちゃに走りまわる。 しかし滴はどこにでも落ちてくる 走る仔実装のすぐ目の前に滴が落ちる。 「テチュッ!」 それに驚いた仔実装は慌てて反対方向に走る。 逃げた先にも滴がポタリ 「テヒィ!」 どこまで逃げても滴は追いかけるように落ちてくる。 やがて滴は逃げる仔実装の腕にポタリと落ちる。 「テチュウッ!!」 滴に焼かれた仔実装が痛みに悲鳴を上げて悶絶する。 痛みに動きを止めた仔実装にさらに滴が落ちてくる。 「チュァァッ!!」 今度は背中が溶かされる。 あまりの激痛に転げまわる仔実装。 そのうえにも滴は降り注ぐ。 ポタ 「テヂァッ!!」 ポタ 「デヂィッ!!」 少しずつ、溶かされて、仔実装はゆっくりと液体になっていった。 「デヂュゥー!!」 足を焼かれた仔実装が助けを求めて母を呼んだ。母実装も助けようと手を伸ばすが その目の前で仔実装の背中にポタポタと滴が落ちる。 「デ・・・ヂュー・・・」 みるみるうちに服が溶け髪が溶け首が溶け、胴から離れた頭がコロリと転がった。 一方、部屋の隅に避難していた仔実装の元に、半身が溶けた姉妹がふらふらと歩いてきた。 「テチュー!テチュゥウゥー!!」 「テチー・・・」 来るな来るなと手を振るが、かまわず姉妹は覆いかぶさる。体についた酸が相手も焼く。 痛みに耐えかねて仔実装は姉妹にくっつかれたまま転がり仰向けに倒れる。 上に乗った姉妹を退かそうとするがもう死んでいて動いてくれない。 見上げる天井からはその顔に向けて新たな滴がポタリ。 「デェヂュゥゥウー!!」 ジュッ また、穴の開いたお椀を被って助かろうとした仔実装もいた。しかし滴は椀も溶かす。 すぐに穴だらけになって頭を抱えた仔実装がむき出しになる。その上に滴は降り注ぐ。 「テ エッ チュー・・・」 ジュゥー 滴はなおも止むことなく降り続く。 せっかく集めたボールも綺麗な石も溶かしてゆく。 そして今もまだ逃げ回り、もしくは服や体に穴が開き苦しみもがいている仔実装たちも。 母実装は唯一手元に残った子を抱いてうずくまった。その背中も焼かれて溶けて爛れてゆく。 ポタポタ ポタポタ・・・ ジュゥー ジュジュゥー・・・ 三十分後、半分以上溶けた母実装の下から仔実装が一匹モゾモゾと這い出してきた。 テチュー、と鳴いても誰も来ない。姉妹はすべて液体になってしまっていた。 しばらく鳴いてから、仔実装は生まれついたこの部屋を出ることにした。 出入り口はいつも母親が出て行っている場所だと知っていた。何とか扉をあける。 扉の開いたその先に、待っていたのは実装石。仲間だと警戒を解いたのが運の尽き 頭からガジュリとかじられて、仔実装は絶命した。 そしてこの実装石も実装ハウスの中へと入る。 「デスーゥ?」 がらんとした空間、丈夫そうな屋根と壁。すぐにこの場所を気に入った。 「デッスゥ♪」 こうしてまた新たな実装石が実装ハウスの住人となる。 カチャンと、その扉が閉められた。
