タイトル:【馬】 愛誤派を虐待してみる
ファイル:禿裸の群れ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4073 レス数:0
初投稿日時:2007/08/22-00:05:45修正日時:2007/08/22-00:05:45
←戻る↓レスへ飛ぶ

ある日の昼下がり、俺は久し振りに駅の東口に来ていた。

もう半年振りにもなるだろうか?

自分のアパートがある西口の方が駅前も賑やかで種々の店も多いため、
よほどのことがない限り、こちらへ足を運ぶことはない。

例えば、今日のようにこちらのスーパーで食品の大安売りがあるなど。
毎年のことだが8月は物入りなため、非常にありがたい。

ただ、出かける段になって自転車がパンクしていることに気づいた。
そのせいで予定よりだいぶ遅れている。
急がないと、目当ての米が買えないかもしれない。


駅から目的のスーパーまでの間には大きな公園があり、
ここを通り抜ければ、かなりの近道になるのだが……

これがマズかった。




「可愛い実装ちゃんをいじめるなーッ!」

カピバラに眼鏡を掛けさせたようなオッサンが何やら声高に叫んでいる。

「公園は実装ちゃんのものだーッ!」

その一方で、以前よく見かけた、見境無しに野良実装どもに
餌をやっていた愛誤派連中の姿はない。

「行政による実装ちゃんの虐殺を許すなーッ!」

まあ、”自分だけが頼りの弱い生き物”や”野良実装ちゃんに優しい自分”が好きなだけの、
並みの愛誤派なら、このオッサンみたいな真性には引くよなあ……


とにかく関わるのはマズイ。

足元にまとわりつく野良実装を蹴り飛ばしたくなるのをグッと堪え、
足を速める。

「ちょっとおッ!?そこの君ィイイイッ!!」

「うおっ!?」

大音量で呼びかけられ、思わず振り向いてしまった。

あーあ……オッサンと目が合っちゃったよ……


「君、かわいい実装ちゃんを虐めるなんて、どういう神経しているんだねッ!?」

「え?」

俺、何かやったっけ?

「せっかく実装ちゃんたちがオアイソしているのに、無視するとは何事かねッ!」

うわあ……やっぱり本物だあ……

言葉を失った俺の答えなど待たず、カピバラみたいなオッサンは矢継ぎ早にまくし立てる。

「餌の持ち合わせがないなら、それはそれで仕方がないだろう。
  まあ、本来はそれも厳重に注意されて然るべきことではあるがねェ……
  しかしだね、それならそれで、撫でるなり抱きしめるなりしてやるべきじゃないかね?」

冗談だろ、とツッコミたいところだがオッサンの目は完全にマジだ。
このオッサンにとって、実装ちゃんの愛らしい媚を無視するのは、
人としてあるまじき虐待行為であるらしい。

「無視することが、実装ちゃんたちにとってどれほどの虐待かも知らんのかねェ?
  全く、最近は君みたいに無自覚に虐待する人が多くて困るねェ」

……ここまでイッちゃってたら、家族とかは辛いだろうなあ。


とりあえず、30分ほどでオッサンからは解放された。

逃げたわけでもなければ、オッサンの御高説が終わったからでもない。

段々と自分の言葉に興奮し始めたオッサンは、自説をふるう相手を、
目の前にいる俺1人から公園にいる全ての人に切り替えたのだ。

「あの……もう行ってもいいですか?」

「……然るにッ!
  駆除の名を借りたっ、行政による虐殺行為はッ!……」

もう俺のことなど目に入っていないようだ。


慌ててスーパーに向ったが、目当ての特売品は既に売り切れていた。

おかげで、これからしばらくの食生活はかなり悲惨なものになるだろう。




あー……腹が立つ。

何とかして仕返ししてやれないものだろうか?

アパートに帰宅した俺は、自転車のパンクを直しながらそんなことを考えていた。


オッサンの嫌がりそうなこととなると……

食用仔実装をばら撒いて共食いショーでも見せてやるか?

論外である。まるっきり予算が足りない。
野良実装どもに食わせるぐらいなら、俺が食う。

どうやら諦めるしかない……

いや、待てよ?

必ずしも禿裸が食われる、と言うか、襲われる必要はないんじゃないか?

逆でもいいのでは?




早速、準備に取り掛かることにしよう。

玄関のドアにサンダルを挟んで半開きにし、自分は隅の壁に身を預けて息を潜める。

すると……

『デプププププ。ニンゲンはいないようデス。今日からここがワタシたちのオウチデス』

『やっぱりママはすごいテチ!さすがワタシを産んだだけのことはあるテチ!』
『ごはん、ごはんはどこテチー!泡々のお風呂はどこテチー!』
『ママ……ニンゲンさんのオウチに勝手に入っちゃ駄目テチ……怒られるテチ』
『ニンゲン出て来いテチ、ウンチつけて奴隷にしてやるテチ。チプププププ』

30分もしないうちに、野良実装の親仔が半開きになったドアから侵入してきた。

彼女たちは、ドアに挟まれたサンダルに紐が結び付けられていることを
不審に思わなかったのだろうか?

バタン!

勢いよく紐を引くと、実装石の背後でドアが閉まる。

『デ!?』

「うーん、困ったもんだなあー。
  人間の家に勝手に入ったら駄目だろう?」

公園のすぐ向かいのアパート、それも1階となると、
ちょっと油断すると、こうして野良実装どもに侵入されてしまう。
ウチの向かいの公園も、東口の公園には及ばないが糞蟲率は高いのだ。

いやあ、本当に困ったものである。




『デギャアアアッ!』

『テチャア!服返せテチ!髪にさわるなテチィッ!』
『か、可愛いワタシが醜い禿裸になったら困るのはオマエテチ……テチャア!』
『お願いテチ、ニンゲンさん。許してくださいテ……チャアッ!?』
『奴隷の分際で何するテヂャアアア!』

まともな仔実装もいるようだが、情けは禁物だ。

手早く親仔を禿裸にし、とりあえず浴室のバスタブに放り込んでおく。


断っておくが、俺は虐待派ではない。

人間の住居に侵入した実装石は必ず処罰しなくてはならないのだ。

もしも、こいつらを無罪放免にでもしようものならば、
”あの家のニンゲンは馬鹿だから騙しやすい”とレッテルを貼られ、
こいつらばかりではなく、伝え聞いた他の野良にまで狙われることになる。

かと言って殺して生ゴミとして捨てるのも間違いであり、
”あの家に行ったヤツが帰って来ない。きっと飼われることになったんだ”と
勝手に思い込んだ野良たちが、我も我もとばかりに押し寄せて来ることになる。

手っ取り早く言えば、”ニンゲンの家に勝手に入るとヒドい目に遭う”と、
他の野良どもへの見せしめにする必要があるのだ。

そのためには、禿裸にするなり、片目を焼き潰すなりして、
そいつらが根城にしている公園にリリースするのが効果的だと
一般には言われている。

だから……仕方なくだよ?




そして、夜もすっかり更け、日付もとうに変わった頃。

東口の公園の入り口に自転車を停め、荷台からダンボールを下ろす。
ダンボールの中身は言わずもがな、である。

それにしても重かったなあ……


植込みの陰で親仔をリリースする。

『オマエは虐待派デス!ヒャッハーデス!』

『責任取ってワタシを飼えテチ!』
『お詫びのしるしに新しい服持って来いテチ』
『ニンゲンさん、お願いテチ。助けてくださいテチ』
『今すぐ土下座すれば飼わせてやるテチ!』

うるさないなあ……

駅のすぐ側の公園ということもあり、終電の時刻を過ぎたこの時間でも
道には疎らながらも人影がある。できるだけ静かに事を運びたい。
こんなところを誰かに見咎められたら、あまり面白いことにはならないだろう。

「ねえ、あんまり騒ぐと……みんな起きてきちゃうよ?」

『デ!?』『『『『テ!?』』』』

デギャデギャ、テチャテチャと騒いでいた禿裸たちだが、
さすがにその意味がわかったようで、ピタリと静かになる。

「かわいそうにねえ……
  集団リンチされて食べられちゃうんだろうなあ」

『デエエ……ワタシは幸せになりたかっただけなんデス……』

『尊いワタシは幸せになるべきなんテチー!』
『テェエエーン、テェエエーン!』
『食べられちゃうの嫌テチー!』
『テェエエーン、テェエエーン!』

「ほらほら、声が大きいよ?静かにした方がいいよ?」

『デー、デスー……デス……』
『『『『テ……テ、テヒッ……テヒッ……』』』』

禿裸の親仔たちは身を寄せ合い、必死に声を抑えてすすり泣いている。

さて、ここからが肝心だ。

「でもね、もしも。もしもだよ?  
  他のみんなも禿裸だったら?」

『デ?』

「みんな禿裸だったら、禿裸だからってヒドイ目に遭うことはないかもよ?」




10メートルほど先、通路を塞ぐようにポツリと建てられたダンボールハウスがある。
何を考えてこんなところに建てたのか、ここまで不用心なものも珍しい。

『デー……』『『『『テー……』』』』

壊れたような呻き声を漏らしながら、そのダンボールハウスを目指して
よろよろと歩を進めていく1匹の禿裸と4匹の禿裸仔実装。

どうやら、俺の言ったことが理解できたらしい。


禿裸たちがダンボールハウスを取り囲んで一斉にポフポフと叩き始めると、
ハウスの中から親仔たちの驚きの叫びが上がる。

『何するデ……デプププププ』

寝ているところを叩き起こされた実装石が怒り心頭で飛び出してくるが、
やはり禿裸の群れを見れば予想通りの反応を示す。

『デプププププ。寝てるだけで奴隷がやって来たデスゥ♪
  御馳走もいっぱいデスゥ。
  やっぱり神様は美しいワタシにメロメロな……デ?』

『デー……』『『『『テー……』』』』

禿裸たちは実装石の言葉に耳も貸さず、群がって服と髪に手をかけた。

『デ、デギャア!?
  か、髪を引っ張るなデス!
  高貴なワタシの服に汚い手を触れるなデス!』

寝ているところを叩き起こされ、しかも相手が禿裸だからと油断している実装石と
やる気満々の禿裸とで勝負になるはずもない。

ブチッ、ビリビリ

『……デ、デエエーン、デエエーン』

瞬く間に禿裸にされ、へたり込んで泣き出す実装石。

『テェエエーン!怖いテチー!』
『ママは役立たずテチー!』

親実装の悲鳴と泣き声につられ、ハウスの中に残っていた仔実装たちが泣き出し、
禿裸たちはその声に誘われるようにして再びハウスを襲う。

『『テヂャアアアッ!』』

仔実装たちの泣き声が悲鳴に変わった。




目的を果たした禿裸の群れは、次なる獲物を目指してその場を離れた。

そして、それを追う3つの影。

『デー……』『『テー……』』

今しがた禿裸にされた親仔である。

”禿裸にされた自分たちはもう終わりだ。
  あの禿裸たちについて行ってみよう。
  どうなるかわからないが、それしかない。”

そう考えたのだろう。


これで禿裸の群れは戦力を増やしたことになる—————そう!

動かぬはずの死者の群れが生者を襲い、襲われた者もまた動く屍と化す!

っと、違った。

禿裸が髪服有りをひん剥き、ひん剥かれた実装石もまた禿裸と化す!

言うまでもなく、ゾンビ映画から思いついた作戦だ。


禿裸を髪服有りが集団リンチするというのは見慣れた光景だが、
禿裸の群れが髪服有りを襲うというのはどうだろう?

共食いショーほどではないにせよ、イカれた愛誤派には刺激的なものであるはずだ。

あのカピバラみたいなオッサンがどんな顔をするか楽しみだ。

クックックックッ……




それから2時間も経つ頃には、禿裸の群れは成体だけでも10匹を超えていた。


ここまでのところは順調だ。

今晩はもう帰ることにしよう。

騒ぎに気づいて起きてくる実装石もポツポツと出始めているようだ。
この分だと、周りの住民が起きてくる可能性もある。

後は成り行きに任せることにしよう。


それにしても……何なのだろう、この違和感は?

何か大事なことを忘れているような気がする……

いいや、俺の立てる作戦に穴などあるはずがない。
きっと気のせいだろう、うん。




翌朝、公園は大騒ぎになっていた。

『『『『『デー……』』』』』

『テチャアー!髪むしるなテチー!』
『デェエエーン!服返せデスー!』

『『『『『デー……』』』』』

『髪があーっ!?ワタシのきれいな髪があーっ!?』
『服に触るなテチィイイイッ!』

公園の広場に実装石が溢れている。

これ自体は珍しくないことなのだが、およそ3割ほどのものが禿裸であり、
その禿裸どもが数に勝る普通の実装石を追い回している。

俺にしてみれば、期待通りの光景だ。


髪と頭巾を奪われた仔実装を大事そうに抱えて逃げる実装石がいる。

一緒に逃げていた実装石が叫ぶ。

『その仔はもう駄目デス!さっさと捨てるデス!』

『そんなの嘘デス!この仔はワタシに似て優秀な仔デス!
  この仔をダシにしてワタシはニンゲンを奴隷にするんデ……』

ブチッ

『……ス?』

親実装の額から前髪がなくなる。

『チプププププ』

親実装の腕の中で、その前髪を握り締めて仔実装が笑っていた。

『デプププププ。だから言ったデス……デギャアアア!?』

『オマエも道連れデスゥウウウ!』

前髪を失った親実装が、一緒に逃げていた実装石に襲い掛かる。

……本当にゾンビじみてきたなあ。


「やめなさい!やめなさい!
  オトモダチにそんなことしちゃ駄目だよッ!」

件のオッサンが、大声を張り上げて禿裸たちを制止しようとしている。

いや、聞かんと思うぞ?

このオッサンも愛誤派の常としてリンガルを使用していない。
リンガルを使っていれば、話が通じる状態でないことぐらいはわかるだろうに……

「やめなさいッ、禿裸ちゃんッ!
  君たちの服と髪は必ず用意させますからッ!
  行政にはその義務があるッ!」

それはともかく、オッサンの声は激しく震え、動揺の色が濃く見える。
やはりオッサンにダメージを与えるには十分だったようだ。


腹を膨らませ、両目が緑になった妊婦実装が滑り台の上に追い詰められている。
階段からはジワジワと禿裸が迫り、スロープの側では何匹もの禿裸が
登ろうとしては滑り落ち、登ろうとしては滑り落ちを繰り返している。

『デェエエーン!これは何かの間違いデスゥ!
  糞ニンゲンども、さっさとワタシを助けろデスーッ!』

『『『『『デー……』』』』』

泣き叫んでいる間にも階段側の禿裸は確実に迫って来る。

『デ、デ……デシャアアア!』

逃げ場を失った妊婦実装はパニックに陥り、柵の隙間から身を投げ出した。

ベチャッ、ブピピピピピ

腹を地面に打ちつけ、その衝撃で胎児が勢いよく排出される。


「だ、誰かッ! 何とかしなさいッ!」

確かに、口で駄目なら実力行使が普通だとは思うんだが……他人頼みで、命令調かよ。

「我々にはッ、実装ちゃんを助ける義務があるッ!」

だったらオマエがやれよ、と思わずにいられない。

どうやらこのオッサンはそういうタイプの人だったらしい。

それにしても、この行動パターンはどこかで見たような?


『『『『『デー……』』』』』

『オマエたち、絶対に外に出ては駄目デス。ここにいれば安全デス』

『テェエエー、怖いテチー』
『ママは役立たずテチ!』
『テェエエーン、テェエエーン』

愛誤派が与えたらしい見るからに頑丈そうなハウスに立て篭もっている親仔もいる。
実際のところ、禿裸たちの攻撃にもまるでダメージを受けていないようだ。

しかし———

『もう嫌テチー!』

恐怖に耐えられなくなった1匹の仔実装がハウスから飛び出してしまう。
仔実装は1メートルと行かぬうちに捕まり、抵抗も空しくあっさりと
禿裸にされてしまった。

それだけではない。せっかくの頑丈なハウスもこれで無防備になった。

『『『『『テー……』』』』』

『『テチャアー!?』』

仔実装が飛び出してきた入り口から続々と禿裸仔実装たちが侵入し、
中から仔実装たちの悲鳴が上がる。

狭いハウスの中では親実装もろくに身動きがとれず、反撃もままならない。
身体中にまとわりつく禿裸仔実装を必死に振り払おうとするが、
少しずつ服が千切られ、少しずつ髪が毟られていく。

『デシャアア!』

ついにはたまらずハウスを飛び出し———

『デギャアアア!』

最初の仔と同じ運命を辿ることになる。


「きッ、きッ、君たちィいいいッ!
  なッ、なッ、何とかしたまえェえええッ!」

ただの通りがかりの人に向かって、オッサンは白目をむき、
口から泡を飛ばして怒鳴り散らしている。

この人、本当に……あ!

何かに似ていると思ってたら、実装石だよ!


『奴隷ィイイイッ!かわいいワタシの危機テチィイイイッ!』
『さっさとワタシを助けろテチィイイイッ!』

親とはぐれたらしい2匹の仔実装がオッサンの方へ逃げて行く。

「え、え、え?」

足元をチョロチョロと駆け回る仔実装たちにオッサンは慌てふためき、
その様はまるでネズミ花火に追いかけられているかのようだ。

『チュベッ!?』

「わ!?」

運悪くオッサンの右足に1匹が巻き込まれた。
下半身がすり潰されただけのようで、まだ息はある。

『呪ってやるテチ……恨んでやるテチ……』

「……」

リンガルを使っていないオッサンに仔実装の言葉などわかるはずもないのだが、
それでも恨みは伝わったのだろう、オッサンの顔色が見る見る青ざめていく。

んー……

”これは事故テチ、ニンゲンさんは悪くないテチ、もう悲しまないでテチ”
とか手前勝手に解釈するタイプだと思ってたんだけどなあ。

イッちゃってる愛誤派ではあっても、行き先はお花畑ではないようだ。

……このオッサンみたいなタイプって、どこへ行ってるんだろう?


『このニンゲン、虐待派テチー!?』

それを見た残りの1匹が慌ててオッサンから離れようとする。

『チブッ……』

『げっとデスゥ♪』

禿裸がその仔実装を素早く踏みつけて捕まえ、嬉しそうにオッサンに向って微笑む。

そいつにしてみれば、上手に捕まえたことを褒めてもらいたかったのだろうが、
オッサンはそうは思わなかったようだ。

”これが今、オマエのしたことデスゥ”とでも聞こえたのだろう、
オッサンの顔色がさらに青くなる。


狂気の宴はさらに続き、オッサンはどんどん憔悴していく。

今やカピバラよりもハダカデバネズミと形容した方が良さそうだ。




野良どもにはちょっと可哀想なことをした気もするが、
これでオッサンもしばらくは大人しくなるだろう。

じゃあ、そろそろ切り上げるか……あ!?


やっと昨晩の違和感の正体がわかった……


この状況を収拾する方法を考えていなかった!!

増えた禿裸をどうするんだ、これ!?


いや待て、冷静になれ、俺!

そう、ゾンビから思いついた作戦なら、同じように収拾すれば良いだけだ。

えーっと……ゾンビ映画のラストって言うと……


町ごと爆弾で吹っ飛ばすとか、都合よく軍隊が現れて鎮圧するとか、
ゾンビ発生の原因を排除するとか、どう見ても人類滅亡とか、
主人公たち少数のグループだけが脱出するとか……


……最後のしか使えそうにない。

『髪だけは!髪だけは許してデスゥウウウッ!』
『テェエエーン!テェエエーン!』

狂乱の色を更に深めていく野良実装たちの悲鳴と怒号に背を向け、
俺は公園から逃げ出した。

『オマエも道連れテチィイイイッ!』
『デェエエーン!デェエエーン!』

これ、しばらくは収拾つかないだろうなあ……




話はこれで終わりではない。

ゾンビ物には、1つのお約束がある。


ゾンビを利用しようとした愚かな人間、その多くは悲惨な最期を遂げる—————

—————そう!

禿裸をゾンビに見立てて利用した人間!

まさに、この俺!


帰宅した俺の目に映ったは、アパートの廊下をビッシリと埋め尽くした
野良実装の群れであった。

既にアパート中が大騒ぎになり、住民たちも何事かとドアから顔を突き出している。

『あんなヤツより、このワタシの方がずっと美しいデスゥ』
『さっさと土下座すれば飼わせてやらんこともないデス!』
『ニンゲンさん、この仔を、この仔を飼ってあげて下さいデス。本当に良い仔なんデス!』


ここに来て自分がもう1つの失敗を犯していたことに気づく。


人間の家に侵入した実装石は、どうするべきか?

そう、見せしめのために禿裸にして”そいつが住んでいた公園”にリリースだ。

それに対して、俺がしたことは?

”アパートの向かいの公園から来た”実装石を、”駅の東口の公園”にリリースした。

向かいの公園の糞蟲度はわりと高めで、幸せ回路も絶賛稼働中だ。

”あの家に行ったヤツが帰って来ない。きっと飼われることになったんだ”
と思い込んだ野良実装も少なくなかっただろう。



『デギャ!髪をつかむなデス!』
『デシャアア!蹴れなんて言ってないデス!土下座しろと言ったデス!』
『ぼうや?ぼうやああああ!?』
『ワタシは女の子テチィイイイイッ!』

ああ……大家のバアサンに怒られるだろうなあ……

ここを追い出されるとヤバイよなあ……

野良実装どもを追い払いながら、そんなことをボンヤリと考えた。


(終)

■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため6475を入力してください
戻る