タイトル:【虐】 第一回Mayスレスク祭り
ファイル:家出.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4592 レス数:0
初投稿日時:2007/07/28-22:09:05修正日時:2007/07/28-22:09:05
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母さんと喧嘩をした僕は家出を決意した。
少ない小遣いを握り締め、家を抜け出す。
もうこの家には二度と戻らない。
時は夕暮れ。
当ても無く歩いていると、民家から夕食に匂いが漂ってきた。
そういえば、今日の晩御飯は僕の好きなロールキャベツを作ると母さんは言っていた。
一瞬家に戻ろうかと決意が揺らぐ。
僕は首を振って弱気な心を払った。
それでも体は正直で、腹の虫がぐぅと鳴る。
僕はポケットに入った小銭にそっと手を当てた。

少ない小遣いだ。
食べ物は慎重に選ばなくては。
迷いに迷った僕がコンビニを出る頃には、外はすっかり暗くなっていた。
買ったのは、おにぎり二つとスナック菓子、そして炭酸飲料。
近くにあったバス停のベンチに座り、僕はコンビニの袋を開けた。
街灯の光に照らされた袋の中には、いつのまにか一匹の仔実装が入っていた。
僕と目が合った仔実装は、手を振りながらテチチと鳴いた。
「お前……いつの間に袋に?親はどうした?」
仔実装を抱き上げて、ベンチの上に乗せてやった。
どうやら野良実装のようで、服や髪が薄汚れている。
テチチ、テチテチィ!(ニンゲン、かわいいワタチを飼わせてやるテチィ!)
何と言っているかはわからなかったが、一生懸命に鳴き声を上げる仔実装に僕は親近感を持った。

きっと、こいつは僕と同じだ。
僕みたいに嫌なことがあって、家出してきたに違いない。
根拠はないが、なんとなくそう思った。
僕はおにぎりの包みを開け、一口齧った。
こちらを見上げる仔実装にも少し分けてやる。
テェ?テチュテチュ(これはステーキじゃないテチ。しょぼい食い物テチ。仕方ないから食べてやるテチ)
おそらくお礼を言っているのだろう。
仔実装は僕に向かって鳴くと、おにぎりのカケラを口に入れた。
僕たちはしばらくの間、無言で食べ続けた。
遠くの方で、野良猫の鳴き声が聞こえる。
今、何時だろうか。
辺りを見回すが、あいにく時計は見当たらなかった。
母さんは僕が家出したことに、もう気が付いただろうか。
今頃、心配しているかな。
それとも、僕みたいな子供はもういらないと思ってるかな。

テッ、テチテチィ(おい、ニンゲン、ノドが乾いたテチ!飲み物をよこせテチ)
気持ちが沈んできた僕を慰めるように、仔実装が鳴いた。
「僕は大丈夫だよ、ありがとう」
仔実装の頭を指先でそっと撫でてやる。
テチ!テチ!(ナデナデはいいテチ!飲み物を出せテチ!)
僕は仔実装に手を伸ばし、胸元で抱きしめた。
テ?テチテチュ!(放せテチ!苦しいテチ!ノドが乾いたと言ってるテチ!)
もしも、母さんが僕をいらない子だと思っていたら、僕はもう家には帰れない。
その場合はこいつと一緒に生きていかないといけない。
こんな小さな生き物でも、側にいてくれるのは頼もしいと思った。
知らず、腕に力が入る。
テ……テェェェ……(苦し……息が出来な……)

いつの間にか、仔実装は目を閉じていた。
きっと抱かれているうちに、安心して眠ってしまったのだろう。
僕は仔実装を起こさないように、そっと立ち上がった。
これからどうしようか。
迷っていると、遠くの方に何かの影が見えた。
影は少しづつ僕に近づいてくる。
僕の側まで来たソレは、一匹の成体実装だった。
デスデスゥ……(やっと追い付いたデスゥ……)
僕を見上げる実装石の視線は、胸元の仔実装に向かっている。
デッスーン!(こ、これは……託児成功デスゥ?)

嬉しそうな顔をする実装石を見てピンときた。
こいつは、この仔実装の親に違いない。
きっと家出をした子供を心配して捜しに来たのだ。
デス!デエッス!(おい、ニンゲン!それはワタシのコドモデスゥ!ワタシと一緒に飼わせてやるデス!)
僕に向かって必死で何かを訴える実装石。
それは子供を心配して帰せと叫ぶ姿そのものだ。
デスゥ!デスゥ!(ワタシも抱っこしろデスゥ!オマエの家に連れて行けデスゥ!)
「そんなに鳴かなくても、子供は返してあげるよ」
僕は眠ったままの仔実装を手渡してやった。

デ?(抱っこしろと言ってるデス?)
仔実装を見つめる親実装。
デデ?デスゥ……デェェェン!(この子……息をしてないデス……。し、死んでるデスゥ!デェェェン!)
再会の喜びに感極まったのか、実装石は大声で泣き出した。
二匹を見て、僕は思った。
きっと僕の母さんも、今頃は帰ってこない僕のことを思っているのだろうと。
僕は二匹を残して、その場を立ち去った。
デデッ!デスー!(どこに行くデス!コドモを殺したお詫びにせめてワタシを飼うデス!)
暗い夜道を一人で歩く。
向かう先は数時間前に二度と戻るものかと思った我が家だ。
門の前に立っている母の姿が見えた。
僕を心配しているのか、それとも怒っているのかはわからない。
でも、僕を待ってあそこに立っているというのは間違いないだろう。
僕はすぅっと息を吸い込むと、母の方へ駆け出した。






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