コンビニを出て数歩。 私は立ち止まる。 極めて自然に。 何にも焦点を合わせず、虚空を仰ぐ。 右手には空のビニール袋。 右手の握力を少しずつ弛める。 袋がだらしなく垂れる。 風を受けて、袋がさざめく。 片方の持ち手を引っかけた薬指を風の流れに合わせて解きほぐす。 袋の口は大きく開かれ、風になびいてせわしなく形を変える。 成体の実装石が背後から忍び寄る。 手にしっかりと仔を抱いて。 集中する。 全ての意識を成体実装の一挙手一投足に振り向ける。 まだだ、まだ早い。 焦るな、慎重に・・・そうだ、それでいい。 成体実装に、或いは自身に言い聞かせるように、私は内心で呟く。 成体実装はついに袋の真後ろに立つ。 刹那、一際大きな風が吹く。 袋が大きく暴れる。 私の右手を離れ、飛び去ろうとするかのように。 成体は躊躇う。 そうだ、待つんだ、慌てるんじゃない。 不意に風が凪いだ。 極度の緊張が私の全身を支配する。 袋は大きく口を開き、まさに託児を待ち構えている。 成体実装が、我が仔を、酷く緩慢な動作で、袋に落とし入れ・・・ 今だ!! 仔実装が袋の底に着地する僅か前。 私は袋から手を放す。 ガササッ ビチャッ 「チュベッ!?」 三つの音が殆ど同時に、私の鼓膜を、私の魂を大きく揺さぶる。 「デッ・・・デェェェエッ!?」 袋の中には瀕死の我が仔。 成体実装は狼狽し、自由になった私の右手と足許の袋とを交互に見遣る。 私は振り返り、成体実装を突き放すように見据える。 「風下に立ったがうぬの不運よ」 深い意味はない。
