タイトル:ティファニー3
ファイル:ティファニー3.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2303 レス数:0
初投稿日時:2007/07/22-23:23:10修正日時:2007/07/22-23:23:10
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                                    「ティファニー3」




『それではお二人の旅立ちを祝し、皆さん暖かい拍手でお出迎え下さい』

ウエディングマーチが流れると、スモークマシンから出た煙の中から二人は現れた。
スポットライトが二人を追いかけて、辺りからカメラのフラッシュ光が何度も何度も光る。

ウエディングドレスで着飾るティファニーはツンとすまして、まるでお姫様の様な面持ちだ。
高価な宝石をふんだんに煌めかせたドレスは、ティファニー用にあつらえた特注品である。

鉄夫と言えば半開きの口をパクパクとさせ、もはや彼の意識は現実にはいない様だった。
鉄雄は考えていた、これは夢だ、きっと夢に違いない・・現実なんかじゃ無いと。
朝起きればいつもの様に一日が始まって、いつもの様に普通に一日が過ぎていく。
これは飽き飽きとした日常が見せる突飛な夢で、精神の奥底にある無意識体がそう見せているんだと。

ティファニーは鉄雄の顔を見上げると、こう言った。

「しゃんとするデス!」

鉄雄はその言葉で条件反射の様に気を付けの姿勢をとると、
『す、すいません』とこれも条件反射の様に答えた。

「分かってるデス?アナタは今日から熊野小路家の鉄雄なんデスよ!」

鉄雄はビデオのコマ送りの様にゆっくりティファニーを見ると、ティファニーは幸せそうな顔をした。

「今夜が楽しみデスゥ・・・テ・ツ・オ♪」

その言葉を聞いた時、鉄雄はこれは夢では無く現実だと知り凍りつく。
回りを見ると両親が泣いている、隣には熊野小路秋子もハンカチで目頭を押さえている。
それだけではない、テレビでしか見た事が無い様な芸能人や政界の重鎮すら手を叩いて祝っている。
これはただ事では無い、結婚式ゴッコでもすればそれで開放されると甘い考えでいたのだ。

もう引き返せない所まで来ている事を、この仰々しいほど豪華な結婚式は物語っている。
そして我に帰り全てを思い出した鉄雄の脳裏には、
熊野小路家に来てからの悪夢が走馬灯のように甦っていた。

     






                   △





鉄雄は熊野小路家屋敷の苔むした門の前で、その門を見つめている。
けっして豪華ではないが、それが返って重々しく見えた。
金満家の屋敷とは全てにおいて別次元の雰囲気がある。

『これが旧家ならではの歴史と言う奴か・・・』

父親である金満会長は贅沢が好きな男だった。
あらゆる物を金色にする事が好きな男だった。
とにかくヒカリ物が好きな男だった。
だが所詮一代で築いた成金趣味の安っぽさでしかない。

腕時計を見て約束の時刻を確認する。
腕に巻いている時計はダイヤが散りばめられた、金ピカのロレックスである。
この時計は父親から大学の入学祝いに買って貰った物だが、大学でも良く見せびらかせた自慢の時計だった。

今歩いてきた門に繋がる、熊野小路家の私道を鉄雄は振り返った。
100mはあろうかと言う私道には塵一つ落ちていない。
門の前の階段を上がると、目の前の門は木製で所々に大きな鋲が打ってある。
鉄雄は門に付いてあるであろうブザーを押そうと思ったが、どこにもボタンらしき物は無い。
閉めきった門の前で鉄雄はウロウロとボタンを探した。
だがどう捜してもやはりボタンは見つからない。

腕組をすると暫し考えたが何も思いつかないので、とにかく適当にノックをしてみた。



コンコン!!



しんと静まり返って何の反応もない。

『おかしいな・・門の前まで来たら出迎えるって約束なんだけど』

ふと上を見ると、門の横の小さなカメラが鉄雄を見ていた。
鉄雄はそのカメラに手を振り『金満鉄雄です、約束どおりやってまいりました』と馬鹿面を晒した。

その時鉄雄の携帯電話が鳴った、かけて来たのは熊野小路秋子だ。
鉄雄は慌てて携帯を手に取ると、震える手で携帯を自分の耳に強く押し当てた。

『き、金満、金満鉄雄です!』
『お早う御座います秋子様、こ、この度は私の様な若輩者を雇って頂くとは夢にも・・・』

鉄雄は携帯を耳にあてがいながら、何度も何度もお辞儀をした。
その姿は金満家と熊野小路家の立場の縮図をそのまま表している。

『あ、あのー・・正門の前に来いと言う話でしたよね・・』

秋子が電話の向こうで馬鹿にした様な口調で話した。

『・・・あのね、あなたのいる所ってそこ裏門よ』

『えっ?・・この門が裏門って・・』

『まったく・・あなたは約束事も満足に守れないようね』

初っぱなから失敗してしまった事を知ると、鉄雄は恨めしそうに門を何度も見た。
そして今から何をすれば良いのか考えてみたが何も浮かばず、携帯を握り締めたまま立ち尽くしている。

ここで下手な事をすれば金満デパートの未来は無い。
熊野小路家の力を持ってすれば金満デパートなど一溜まりもないのだ。
それに放って置いても金満デパートの行方は暗いと、鉄雄自身も大学で経済学を学んだ事で知っていた。



鉄雄の脳裏に両親の顔と良く家に遊びに来てくれる役員達の顔が浮かぶ。
両親や従業員やその家族、それに金満デパート関係する業者の未来すら今自分の肩に掛かっている。
実装石のお守りでもしていれば大丈夫だろうと、鉄雄は軽く考えていたがそれは甘い夢でしかなかった。

『い、今から走って正門まで行きますので、少しばかりお待ち下さい!!』

携帯から聞こえる秋子の声は冷たかった。

『裏門から走って来るって正気で言ってるの?』
『良い事、何時間も待っていられないから裏門から入って来なさい』


暫くすると正門ではなく裏門であろう門が開いた。


 



              △






『お早う御座います秋子様、私が金満鉄雄です』
『早速で御座いますが、今日お呼び頂いたのはどう言ったご用件でしょうか』


金満鉄雄は約束の日より3日早く熊野小路家に呼び出されると、直ぐに秋子の前まで連れて来られた。
秋子は鉄雄を値踏みする様に上から下へ下から上へ視線を移した。

そして顔の所まで来ると『挨拶は合格です・・良くってよ』と口を開いた。
良くってよの意味は言葉使いは勿論、服装のセンス、髪型、細部に渡るまで監察した答えだ。
鉄雄にはその意味は単なる挨拶程度に考えていたが、
当の秋子には、この鉄雄なる男がどれ程の物なのかを、まずは表面的に値踏みをしただけに過ぎなかった。

『勘違いしないで頂戴、いきなり我が熊野小路家に入れると思わないでね』
『まずはあなたがここに相応しいかどうか、ティファニーが決めます』

ティファニーと聞いて鉄雄の心が乱れた。
表面には出さないが、大学院まで行った鉄雄は社会ではエリートであると自負していた。
そのエリートの自分がなぜ実装石のお守りなんかをと、心の奥底では考えている。

しかも自分の将来や金満デパートの未来すらその実装石が握っている。
鉄雄はティファニーに対し少なからず嫌な印象を持っていた。

『すいません』と謝ったがなぜ自分がティファニーの為に謝らなければいけないのか?
不条理に感じたが元来の性格が大人しい鉄雄は、その感情をおくびにも出さない。

『あら?その手に付いている物は・・』秋子は鉄雄自慢のロレックスを見て言った。
鉄雄は腕を捲り上げると『父さんに大学の入学祝いに買って貰ったんですよ』と自慢げに話した。

秋子は首を捻ると『下品ね・・』と一言だけ告げた。
鉄雄は恥ずかしそうにロレックスを外すと、自分のポケットにこっそりとしまった。




秋子は執事を呼ぶと、鉄雄へこれからのスケジュールを話して聞かせる様に指示を出した。
執事の腕には何かの冊子を抱えられている、良く見るとタイトルに鉄雄指示書と書いてある。
そして執事からはティファニーへの接し方や、挨拶、果ては上下関係まで詳しく説明された。

勿論、鉄雄の順位はティファニーより下である。
鉄雄は執事の話を聞いていく度に、顔の神経がヒクヒクと脈打った。

『良いですか鉄雄様、あなたの存在はティファニー様があって初めて成り立っているのです』
『少なくともここではそれが絶対の条件です』

鉄雄に対し厳しい言葉を投げかける執事も、実は少々気が引けていた。
心の中では執事もティファニーの事を、たかが実装石がと思っている。
自分は先代の代からずっと執事を続けていた為に、全ての事は仕事と割り切る事が出来る。
だが鉄雄はまだ若くそう言った感情を持つほどの人生経験がない。
執事は鉄雄が何かのきっかけで、感情が爆発してしまうのではと危惧していた。

あらかたの説明が終わると執事は、冊子になった鉄雄指示書を鉄雄に渡し最後はこう付け加えた。

『その指示書以外の行動はおつつしみ下さい、
 屋敷内にはティファニー様専用の屈強なSP数名が控えております』

執事が下がると秋子はそれを確認して、奥からティファニーを呼んだ。

『ティファニー!もう良いですわよ、入ってらっしゃい』

ティファニーSPの一人だろうか、大きな男を一人引き連れてティファニーは鉄雄の前まで歩いてくる。
視線を少しばかり下に向け、目を細め、頬を赤らめ、その表情はまさに乙女の恥じらいのそれである。

スカートをふわりと浮かせる様に沈み込むと、少し膝を曲げ、ティファニーは鉄雄に挨拶をした。

「良くいらっしゃいましたデス、ワタシは熊野小路ティファニーデス」
「鉄雄様・・・これからも末永く宜しくデス」

言い終わるとティファニーは顔を真っ赤にして、両手で顔を隠し恥ずかしがった。
秋子はその様子をまるで自分の娘でも見る様な目で見守っている。
鉄雄は目の前のティファニーにどう反応すれば良いのか分からずにいる。

秋子は鉄雄に鋭い目を向けると言い放つ。

『ティファニーは挨拶をしたのよ!何をボーっとしてるのよっ』
『あなた!それで熊野小路家に取りいろうなんて、本気で思っているのかしら』
『権藤!鉄雄に自分の立場って奴を分からせて上げなさい』

権藤と言われてティファニーに付き従っていた、ゴリラの様な筋骨隆々とした大男が動く。

『はい秋子様、仰せの通りに』

権藤と言われた大男は左手で鉄雄の胸倉を掴んで持ち上げると、右手を振りかぶった。
いきなりの剣幕に鉄雄は慌てふためいたが、ティファニーは場の空気を静める様に鉄雄を庇った。

「権藤!それ位にするデス!」
「お母様、怒らないでやってデス、鉄雄様は所詮、下賎な出の者なんデス」
「これからたっぷり、上流階級を教育をするデス」

秋子はティファニーの言葉で思いだした様に頷くと。

『そうねー・・そう言えばあの金満の息子なんだしね』
『良い事!金満デパートを潰したく無ければ、ティファニーに相応しい男になるんですよ』

鉄雄はティファニーに助けられ、また貶められ人間としての尊厳も見失ってしまう。
もはや冷静な考えも出来なくなっていた。
鉄雄の答えた返事は『い、一生懸命ティファニー様の為、頑張らせて頂きます』だった。


秋子はニヤリと不遜な笑みを浮かべると執事を呼び。
これから教育を自分とティファニーでやる事を告げた。




        

続く




              





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