タイトル:【観】 実装のいる風景7 後編
ファイル:実装のいる風景7 実装大自然 後編.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4560 レス数:0
初投稿日時:2007/07/06-18:45:26修正日時:2007/07/06-18:45:26
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実装のいる風景7
実装大自然 梅の木を巡る実装コスモス 後編


 5月、ゴールデンウィークが過ぎた頃。

 池のほとりに生えた一本の梅で新しい命が誕生します。


 ほら、クソウジミの幼蟲が卵から孵化しようとしています。

 「テッテレー」
 「テッテレー」「テッテレー」
 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」
 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」
 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」
 「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「テッテレー」「………………………………………………

 鳥の糞のような卵塊から次々と幼蟲が殻を破って出てきました。

 孵化したばかりのクソウジミの大きさはダニくらい。

 小さな蛆実装を縦に潰したような緑色をした丸い生き物です。

 幼蟲の腹部についた手足にはマジックテープのような毛が生えています。

 この毛は樹皮にペタペタくっつくので幼蟲は樹上でも自由に移動できます。


  
 周りを見ると、クソウジミとよく似た緑色の生き物がいっぱいいます。
  
 アブラムシです。アリマキともいいます。

 アブラムシは植物の汁を吸って生きる小さな生き物です。

 この時期にアブラムシは植物の汁を吸って爆発的に増殖します。

 アブラムシは小さく脆弱な昆虫ですが、それを上回る繁殖力によって生き延びてきました。

 アブラムシは単性生殖でも繁殖できる昆虫です。

 新しく伸びた緑色の柔らかい枝にはびっしりとアブラムシが張りついています。


 クソウジミはクロヤマアリの巣に寄生する実装生物です。

 そのクロヤマアリもアブラムシのいるここにやってきます。

 もちろんお目当てはアブラムシが分泌する甘い汁です。

 アリがアブラムシのお尻を触覚で叩きました。

 アブラムシは軽い刺激を受けただけでお尻から甘い汁を排泄します。

 ほら、アブラムシのお尻から風船みたいに丸い滴が出てきましたね。

 アリは嬉しそうにこの汁を飲んでいます。

 この液体には糖分が多く含まれていて、甘露とも呼ばれます。 

 少し滴が足元に落ちました。

 その滴にクソウジミの幼蟲がよってきます。


 「アマアマジルおちてきたレフー」
 「ナメナメするレフッ おいちいレフー」
 「レフレフッ あっまいレフ ちあわせレフ」
 「アブラムシさん しばらくゴハンおセワになるレフー」
 「アリさんもヨロシクレフ たよりにしてるレフ」
 「かよわいウジちゃんをまもってレフー」


 孵化してからしばらくの間、クソウジミの幼蟲はアブラムシが落とす甘い汁を吸って大きくなります。

 そしてもう少し大ききなったらクソウジミの幼蟲はアリにしがみついて巣まで持ち帰ってもらおうとします。



 どの枝にもアブラムシがうじゃうじゃいます。

 アブラムシがびっしり張り付いて枝が見えないほどです。

 葉っぱがみんな萎びてしまった枝もあります。

 こんなに汁を吸われたら木が枯れてしまいそう。

 でも大丈夫。

 そうならないようアブラムシはとんでもない方法で増えすぎた数を調整します。


 その方法とは、なんと自分をエサにする天敵をここに招待するのです。

 増えすぎて生息密度が過密になったアブラムシはカイロモンという物質をだします。

 このカイロモンはアブラムシの天敵であるクサカゲロウという昆虫を引き寄せます。

 アブラムシは増えすぎた個体数を調整するために自分たちを捕食する天敵を自ら呼び寄せるのです。


                       ●


              『ちょぉーっと待つデェース デェデェ』


         さっきダルマにされただけじゃ気がすまないんですか。デス婆ァ。


     『どうしてそんなことをするんデス? せっかく仔供が増えたのにもったいないデス』


    増えすぎたらゴハンがなくなるんですよ。みんな飢え死にしちゃうんですよ、いいんですか?


                 『それわぁー 困るデスゥ』


            アブラムシは条件がよければいくらでも増えることができます。

       過密になるということは、もうこれ以上ここで増える必要がないということです。

    天敵がアブラムシをいくら捕食したところで増えたアブラムシ全部を食べ尽くすことはできません。

              その生き残りだけで充分世代をつなげるのです。

   しかし良質の食料源になる樹木をこの世代で枯らしてしまえば、次の世代の食料を奪うことになります。

            それは長期的に種族全体の利益を損なうことになるのです。 

                  わかりましたかデス婆ァ


      『デ? あわてる仔ウジはもらいが少ないってことデスか? なんちてデスー』


               ……… わからないようですね。


              シアンちゃんお願い、服もとっちゃって。

                   『わかったボクー』
                   『デキ゛ャーーー!』
 

                       ●


 クサカゲロウはカマキリとトンボを合わせたような外見をした昆虫です。

 肉食性で鋭いアゴを持ち、その外見からヘビトンボとも呼ばれます。

 クサカゲロウの卵は木の葉の裏などに産みつけられることが多く、長い柄の先についた白い卵が花のように見えます。

 そのためこの卵は優曇華(うどんげ)の花と呼ばれます。


 クサカゲロウの幼虫を見てみましょう。

 親そっくりの大きなアゴをしてますね。

 ところでこの幼虫、何か見覚えがありませんか?

 軒下など乾いた地面で見られるすり鉢のようなもの。あの中にいるアリジコクに似ています。

 アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫でクサカゲロウとは近縁種です。

 食事方法もアリジコクに似ていて、アブラムシの体に鋭いアゴで噛みついたら、消化液を注入し中身を消化して啜ります。

 クサカゲロウの幼虫には変った習性があります。

 クサカゲロウは獲物の中身だけ消化して食べるので外骨格が残ります。

 このアブラムシの食べかすをクサカゲロウは背中に生えた毛に引っかけてゴミの山のような姿で歩き回るのです。

 これはアブラムシを天敵から守ろうとするアリをアブラムシのにおいでごまかそうとしているのです。



 クサカゲロウの他にもアブラムシにはたくさんの天敵がいます。


 テントウムシ。成虫も幼虫も肉食性昆虫です

 テントウムシはテントウムシのサンバで知られるように可愛らしい虫です。

 しかし黒い装甲車のような幼虫はお世辞にも可愛くありません。

 グロテスクな怪獣のようなテントウムシの幼虫はアブラムシにとって文字通り怪獣です。

 アブラムシは食欲旺盛なテントウムシの幼虫にバリバリムシャムシャと食べられてしまいます。



 ヒラタアブの幼虫。成虫は花の蜜を吸う小さなアブです。ちなみに人を刺すアブではありません。

 ヒラタアブの幼虫はウジ虫そのものの形をしています。

 ただのイモムシのような見た目ですが、獰猛にアブラムシに襲いかかって体液を吸い取ります。


 ほら、ヒラタアブの幼虫が獲物を求めて頭を伸ばしています。

 あれれれ。アブラムシじゃなく手近にいたクソウジミの幼蟲に噛りつきました。


 「大っきなウジさん プニプニしてくれるレフか? ウジちゃんうレェェレレレレレレェェェーーッ?!」


 アブラムシの天敵達にとって、本物のアブラムシであるか擬態しているクソウジミの幼蟲であるかは関係ないことです。

 どちらも大きさの手頃な獲物でしかありません。

 アブラムシは食欲な天敵達に次々と食べられています。

 それに巻き込まれるクソウジミの悲鳴もあっちこっちから聞えてきます。

 「レッピャァーーァァアッ!」「チガウレフチガウレフ ウジチャンハチガウンレフーー」「レェェェーーン」「プニプニー」「アリサンタスケテレフーー」




 この日は梅の木に変ったお客さんがやってきました。

 実装石です。

 こうした人里に近い水辺には実装石が好んで住みつきます。

 野生の実装石に見えますが、原野や山林に住む山実装とは根本的に異なります。

 どちらかといえば公園に住みつく野良実装が仔育ての時期だけ郊外で生活するというパターンがほとんどです。

 仔実装にとって一番の天敵はなによりも他の同属です。

 比較的知能の高い実装石の中には実装密度の低い郊外に移住して仔育てをする個体が見られます。

 季節によって生息地を変える行動を渡りといいます。

 この実装石もそういった渡りの野良実装と思われます。


 実装石自身は小さなアブラムシを捕って食べるには大きすぎます。

 なら何故ここに来たのでしょう。

 実装石の手が届く下のほうの葉を見てみましょう。

 濡れたようにベタベタとした染みがついています。

 これはアブラムシの汁が下に落ちて乾いたものです。

 一匹一匹のアブラムシの出す汁の量は霧粒のように小さなものです。

 しかしアブラムシは数千匹数万匹といるのでこれが無視できません。



                      ●


             『虫だけに無視できない なんちてデス』

               シアン、前髪剃っちゃいなさいっ

                  『はーいボクー』
              『デデェッ?! デェエエエーー!』


                      ●



 数千数万のアブラムシの汁が上から降り注ぐので、下のほうの葉は飴でコーティングされたようになります。

 実装石はこの甘露とも呼ばれるアブラムシの汁を舐めに来たのです。

 それではここで当番組で独自に開発した超高感度集音リンガルを使って親仔の会話を盗聴してみましょう。


 「仔供達 よく覚えておくデスよ このテカテカした葉っぱを舐めたら甘いデス」

 「ほんとテチ 甘くておいしいテチ 天からの贈りものテチ」

 「あまいテチ うれしーテチ もっとペロペロするテチューン♪」

 「きっとコンペイトウってこんな味レチか? いつか食べてみたいレチィ」

 
 この仔実装達は野生に近いところで育てられたようです。

 まだ贅沢の味をしらないようですね。

 公園で産まれた野良の仔実装はたいてい最初から生ゴミを食べて育ちます。

 そのため大きくなっても人間社会に餌を依存するようになります。

 しかし仔実装の時から自然で得られるものに舌を慣らせておけば人間への依存心を小さくできます。

 渡りの実装石は実装密度の低い郊外で仔実装に教育を施し、適切な間引きをします。

 そうして選別された仔を連れて再び公園に戻っていきます。

 他にも渡りのパターンはいくつかありますが、比較的知能の高い実装石に見られるのがこのパターンです。



 この一家には仔実装と親指実装の他にも家族がいるようです。

 木の下の茂みに蛆実装が4匹、レフレフ嬉しそうにはしゃいでいます。

 カメラに連動した超高感度集音リンガルの焦点を合わせてみましょう。

 何か食べています。下に落ちたアブラムシのようですね。


 「レフレフ ウマウマがいっぱいいるレフ  モグモグ」

 「ノロマだからすぐ捕まえられるレフ 逃げてもムダムダムダレフーン」

 「弱肉強食はウチュウの真理レフ おとなしくウジちゃんの肉になるレフ」

 「がおーレフ 泣け喚け叫べ苦しめそして喰われろレフーー♪」


 蛆実装にとってアブラムシはちょうど手ごろなごちそうです。

 ときどきいっしょくたにクソウジミの幼蟲も食べられています。


 「ウジさんウジちゃん食べちゃダメレフー セカイのウジちゃんはミナ兄弟レヒャーー!」


 この実装石の一家には仔実装が2匹、親指実装が1匹、そして蛆実装が4匹もいます。

 仔実装が少なく、親指と蛆実装の割合がずいぶん多い家族です。

 このような家族構成は冬の間の栄養状態が悪かった実装石によく見られます。

 仔供達は親から厳しい自然の中で生き抜く方法を教わっています。


 自然は非力な実装石にとって脅威になることが余りに多いのです。

 アブラムシの甘露を求めてくる昆虫はアリだけではありません。



                      ●


          『アリだけにアリだけではありません。なんちてデス』

                   シアン… 頃合です。

                    『了解ボク』
                  『デ? デェェ?!』


                      ●


 
 アシナガバチやススメバチといったハチもこの甘露を求めてやってきます。

 しかし肉食性を持つアシナガバチやススメバチはそれ以上にイモムシや蛆実装が大好物なのです。


 「レフ? キイロいオオアゴブンブンさんがキタレフー」

 「チャーーッ!あぶないレチッ! ウジちゃん逃げるレチーッ!」

 「追っかけてくるレフー」

 「コッチくんなレフーー」

 「レビャァァァァッ! ウジちゃんさらわれちゃうレフーッ!」

 「ウジちゃん ウジちゃぁぁぁーーん!」

 「オネーチャッ いっちゃダメテチッ」

 「このこのー! ウジちゃん離すテチーッ!」

 「長女ちゃんやめるデスーー! 刺されるデスー!」

 「テ チ゛ャ ー ー ー ッ!」


 蛆実装を助けようとした長女らしき仔実装がススメバチに刺されました。

 それでも仔実装の敢闘によってススメバチをなんとか追い払いました。


 「イ タ゛ イ テ チ゛ィッ ! イタイのとおりこしてビリビリするテチ゛ーーッ!」
 
 「レチャーー オネエチャン!オネエチャーーン!」

 「長女ちゃん少しガマンするデスッ!」

 「ママッ? なにするテチッ?!」

 「毒が回る前に腕をちぎるデスッ」

 「テチ゛ャーーッ!!!!」

 「池のお水をいっぱい飲むデス ウンチといっしょに体の毒を抜き出すデス」

 「テェェェン テェェェーン」

 「お前達もついてくるデスッ」

 「ママー 待っテェーー」

 「ママー オネエチャーーン 待つレチーー」

 「「「レフレフッ おいてっちゃイヤレフー」」」


 麗しい家族愛ですが、いざという時には食料でしかない蛆をかばって本命の仔を失っては本末転倒です。

 親実装は必死で仔を助けようとします。

 親実装は毒針を刺された仔実装をかかえて池のほうへ駆けて行きました。

 無事だった方の仔実装が手近な蛆実装を一匹つかんで追いかけます。

 親指と3匹の蛆実装もモタモタ追いかけます。

 それぞれ脚のリーチが違うのであっという間に距離が離れていきます。


 「ルトルトッ このチャンスを待ってたルトー」


 その様子を梅の葉の陰に隠れて上から覗いている影がいます。

 ツバメくらいの大きさをした翼を持つ黒い影。

 実装石を狩る生き物は数多いのですが、中でも蛆や親指実装だけを狙う実装生物がこの『とっくり実燈』です。

 実装燈は花の蜜や果物の汁を吸う実装生物ですが、繁殖のために実装石に卵を産みつけます。

 とっくり実燈は実装燈の亜種の一つで蛆実装や親指実装を捕獲して、巣に持ち帰って卵を産みつけます。

 とっくり実燈は通常の実装燈と同じく大きさがツバメくらいです。

 特有の毒剣を持つとはいえ腕力はあまり強くありません。

 大きい仔実装が妹を守っていたらなかなか狩りは成功しないでしょう。

 成体の実装石を相手にしたらウェイト差で返り討ちにされる可能性すらあります。

 親と姉から離れた今は絶好のチャンス。

 先を走る親実装と仔実装が草をかき分けて行き、見えなくなりました。

 そこへ実装石の隙をうかがっていたとっくり実燈が蛆実装に襲い掛かります。


 「レレッ?!」

 「またなんか飛んできたレフ」

 「ウジムシかくごルトぉ チクチクしてやるルトー」

 「こっちくるレフッ!オネエチャーーン助けてレフーー!」

 「おばさんウジちゃんになにするレチ?! ウジちゃんをいじめるなレチィー」


 とっくり実燈は蛆実装を前にしてわざとらしく剣を振り回します。

 なんだかセリフも棒読みです。

 とっくり実燈を変なオバサンだと思い込んだ親指実装が妹を守ろうと駆け戻ってきます。


 「へんしつしゃレフッ ウジちゃんこわいレフー」

 「チクチクおばさんレフッ」

 「きっとコーネンキしょうがいレフッ」

 「ぬわぁんですってー ぶっころしてやルトー」

 「オバサンやめるレチッ いい年して弱いものイジメなんて最低レチー」

 
 蛆の罵声に声を荒げたとっくり実燈が剣をブンブン振り回します。

 狩りというよりふざけているようにしか見えません。

 しかしこれはとっくり実燈の罠です。

 とっくり実燈はこの実装石の親仔が愛情深い一家であるところを見ていました。

 もちろんとっくり実燈が本気を出したら親指実装などすぐに狩られてしまうでしょう。

 しかし一目散に逃げる親指を止めるのは手間がかかります。

 手間取っている間に悲鳴を聞きつけた親や姉の仔実装が戻ってくる可能性があります。

 蛆を相手にふざけていたのはハンターとして獲物の特徴を見極めた上での演技です。

 相手の危険性を知らずにノコノコ近づいてきた親指実装こそメインターゲット。


 「ウジちゃんはアタチが守るレチィーッ!」

 「おバカさーん♪」

 「レ レ? なんじゃこ… リ… …・・ ・ 」

 
 とっくり実燈が冷酷な狩人の本性をあらわにしました。

 後ろから殴りかかってきた親指に振り向きざま毒剣を突き立てます。

 親指実装はとっくり実燈の毒剣に深々と刺されてしまいました。

 この剣にはとっくり実燈の毒液がついています。

 深手を負った親指実装はすぐに体が麻痺して動かなくなってしまいました。

 後は動きが鈍い蛆実装を一匹ずつしとめていくだけです。

 無言で毒剣を振るうとっくり実燈にあっさり残りの3匹も捕まってしまいました。

 ここに親と仔が戻ってきた時には毟られた服と髪しか残っていないでしょう。


 引き千切られた仔実装の腕にはススメバチやアシナガバチがたかっています。

 抱えて持って帰るには大きすぎるので肉団子にして巣に持って帰ろうとしています。


 蛆実装を守ろうとした仔実装の愛情はかえって多くの姉妹を失う原因になりました。

 自然は非常に厳しく、非力な仔実装にとって成体になれる可能性は非常に僅かです。

 そのため実装石の多くは人間という強力な保護者を欲しがります。

 実装石は人間の幼児に似せた『媚び』と呼ばれる行動で、人間の保護欲をかきたてて保護下におかれようとします。

 しかし複雑な精神構造を持ち、理性による本能の統御を行える人間に対し実装石の媚びはほとんど効果をもちません。

 実装石から変異した実装生物クソウジミ。

 クソウジミは実装石と比べてもさらに小さく非力な生き物です。

 しかし大きな人間より小さなアリを新たな扶養先として選んだクソウジミの選択は賢い選択だったのかもしれません。




 6月。梅雨入り前の晴れ間が続く頃。

 そろそろ梅の新枝も色が濃く変わりました。

 アブラムシに樹液を吸われ、梅の新芽の多くは萎びて散ってしまいました。

 それでも梅の木は枯れていません。

 あれだけたくさんいたアブラムシがほとんど見られなくなっています。

 代わりに梅の葉、枝にオレンジ色のテントウムシの蛹がたくさんついています。

 大量増殖したアブラムシはその後集まってきた多くの天敵に食べられてしまったのです。

 アブラムシは捕食されるより繁殖率を大きくすることで生き延びてきました。

 しかし際限のない増殖はエサとなる植物を枯らし自分自身を破滅に追いやります。

 アブラムシは天敵に捕食されることで適切な個体数を調整しているのです。

 生き残ったアブラムシの中に羽が生えているものがいます。

 アブラムシは条件の良いところで数を増やした後、自分が生きる世界を食べつくさないよう旅立ちます。

 非力なアブラムシに自分で遠くまで飛翔する力はありません。

 なんとか風に乗って飛んでいくのが精一杯です。

 それでも数が多いアブラムシは新天地へむけて風に吹かれて飛んでいきます。



 地面を見ると一匹のクソウジミの幼蟲がアリの脚にしがみついているのが見えます。


 「ウジちゃんのしょうありがかかってるレフッ ゼッタイはなさないレフーッ」


 この幼蟲は幸運に恵まれたのかうまくクロヤマアリの脚にしがみつくことができました。

 でも中にはこんな幼蟲もいます。


 「アリさん… おウチ… おウチはまだレフか?…… ウジちゃン もウ ツ… カ レタ レフ ネム イレ フ…・・ ・ 」


 残念。これはアリによく似ていますがアリグモというクモです。

 クロヤマアリの巣に寄生できなかったクソウジミは飢えて死ぬか、昆虫などに捕食されてしまいます。

 またクロヤマアリ以外のアリや他の昆虫にくっついても、ただの邪魔者として扱われ死んでしまいます。

 一匹のクソウジミは約1000個の卵を産みます。

 その中でクロヤマアリの巣に寄生できるものは4〜5%程度であるといわれています。

 これは公園の野良実装が飼い実装になれる確率に比べてはるかに高い数字です。

 来年の春、アリの巣から出たクソウジミは風に吹かれてアブラムシのいるところで卵を産みます。

 
 初夏の太陽のもと

 アブラムシは風に運ばれ

 クソウジミはアリに運ばれ

 仔供を半分に減らした実装石は自分の足で

 それぞれ新しい運命へと旅立っていきました。


 池のほとりに生えた一本の梅の木。

 その下で営まれた小さな命の営み。

 こうして命のドラマは続いていくのです。










 次回より、出荷されたデス婆ァに代わって新しいマスコットキャラ『テス姉』が登場します。
 「よろしくしてやるテス〜」
 中実装だからちょっと小生意気なテス姉。
 次の出荷までよろしくね。
 アシスタント実蒼のシアンちゃんと仲良くできるかな。
 次回もお楽しみに。
 「さよならボクー」




                      
                       ・

                       ・

                       ・


 番組を見終わった後、実装紅が「アタシもテレビに出たいのダワ」といっていた。

 あれはCG合成なんだよと教えてやる。

 実装紅はCGって何?とよくわからないようだった。

 まぁ… 実写でやってもたいして変らんか。
  


−−  終わり  −−

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