タイトル:【虐】 実験モノのつもり
ファイル:実装石のJは実験のJ1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4582 レス数:0
初投稿日時:2007/07/02-10:39:49修正日時:2007/07/02-10:39:49
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俺の目の前のちゃぶ台の上には、深緑色のシックなデザインの箱が鎮座している。
箱には「ADULT SCIENCE MAGAZINE」の文字がしめやかに躍っており、
その下に小さく付け足す様に「BIO-TECH INVESTIVATION KIT」と書かれていた。
ここまで来ればもう解ると思うが、こいつはかの大人の子供心をくすぐって止まない
「自分だけでも、子供と一緒でも楽しめる、休日のひと時を満喫できる『大人の科学マガジン』」
……の外国版である。
もちろん、外国版とはいっても出版社は違うし、我等がGAKKENとはまったく関係の無い別製品なのだが。
だが、さすが外国と言うべきか、
その内容は日本で扱うにはいささかどうかと思われるようなラインナップで溢れかえっていた。
初めてホームページの製品紹介を見た時などは、
その過激な値段と内容の数々に『この出版社はキチガイじゃなかろうか……?』
と本気で疑ったものである。
ちなみにこれの値段は日本円にして約5万とちょっと。
もはや「MAGAZINE」の粋を大きく逸脱していると言わざるを得ない。

だが、今思えば「科学」とは本来そういったものではないか?
人々のあくなき好奇心に裏打ちされてきた昨今のカガク的発展の数々。
だが、その裏では「研究」と称して「あんなこと」や「こんなこと」が行われて来たに違いない。
そのお陰で、この宇宙に存在する事象の数パーセントは解明され、
俺たちはこうして豊かな生活を送っていられるのだろう。
つまり、俺が旺盛な好奇心を発揮して、
この外道とも言える「大人の玩具」を買ったことは実に理に適っているのである!
ああ! ビバ・サイエンス! 

ちなみに、「ビバ(viva)」はイタリア語で
「サイエンス(science)」は英語だ!

……と、生産性の欠片もないオタク風情のセルフジャスティファイはここまでにしよう。
ともかく、日々厚顔無恥にも生き恥を晒している社会の屑であるこの俺が
ここまで自己正当化しなければいけないような物なのだ、と言うことはご理解頂けただろう。
さて、気になるこいつの正体だが……

「デスゥ? デッデスゥ、デスデデスゥ」

ん? 
突然
おお、ここに現れたるは我が愛しの実装石・カランパーナじゃあないか!
土曜日のの朝っぱらだと言うのに、今日は随分と早起きだな。
おそらく先ほど、宅配便からこのブツを受け取ったときに起きてしまったのだろう。
それを証明するかのように、こぎれいな実装服は寝皺だらけだ。

「おお、おおお、よおお〜〜〜しよしよし、おはよう〜カラン!」
「デスゥ、デスゥデスデスデスゥ?」

俺が頭を撫で回すのを華麗に無視して、カランは左手を口元に当てて首を傾げた。
一見、いわゆる「媚び」に見えるこのポーズだが、そうじゃあない。
よく見てくれ。
「左手を使っている」だろう?
付き合いの長い俺はすぐにカランが何を意図しているのかわかった。

「そうか、三個か? ん? 甘いの三個欲しいのか!? 三個……いやしんぼめッ!」
「デスッ!!? デス!? デスデデスッ!」
「よーし、ちゃんと三個やるぞ! いくぞカラン!」

俺はちゃぶ台の上に常備している壜よりコンペイトウを「一個」取り出し、
カランの方へと投じた。
ドシューー!
コンペイトウはカランの頭にこつんと当たり、跳ね返って畳の上に転がった。

「んっん〜〜〜! ちゃんとお口でキャッチしなきゃあだめじゃあないか!」
「デスゥ! デスデスゥ! デスゥ!」

カランが抗議するかのように腕を振り回した。
あれ? なんか違ったみたいだ。
おっかしいなぁ、ひょっとして俺コマンド間違えた?
だが、さり気なくカランが畳の上のコンペイトウを拾って口に放り込んだのを俺は見逃さなかった。
いやしんぼめ……

「なに言っているのかよくわからないぞ。ちゃんと日本語を喋れよカランパーナ」

カランパーナはちゃぶ台を指差しながらデスデスと鳴いている。
正直付き合いの長い俺でも、何を言っているのかSAPPARIだぜ。
……ああ、そうか実装リンガルを起動していなかったのか
俺はカランの首輪にぶら下がっているそれを起動させた。

「……トウなんてどうだっていいデス! それよりご主人様、そいつは一体なんなんデスゥ!?」

ようやくカランの言葉が理解できたと思ったら、いきなりそんな言葉が飛び出した。
先ほどからちらちらと不思議そうな表情でちゃぶ台のほうを見ているから、
「ああ、コンペイトウが欲しいのネ」とか思ってしまったじゃあないか。
実際、コンペイトウの入った壜は、「ADULT SCIENCE」の箱に押しやられながらも
ちゃぶ台の端っこで懸命に踏ん張っていた。
俺の方向から見ると、ぎりぎりカランが壜を見つめている様に見えたのだ。

「おお、良くぞ聞いてくれたカランパーナ!」

ナイスな質問だ我が実装よ。
さて、すっかり放置してしまってすまないな、
俺の脳内を覗き込んでいる、どこの誰とも知らない諸君。
ようやくにして、諸君等の疑問に答えるときが来たようだ。
まあ、「BIO-TECH」と言うところから諸君等はすでに予想をつけているとは思うが……

「いいか、聞いて驚け! こいつはなぁ! 『生物工学研究キット』だ!」
「せいぶつこ……デスゥ?」

五文字しかトレースできてないぞ、カラン。
さて、知っての通り生物工学といえばアレだ、
生物のDNAとやらを組み替えたり、同じ遺伝情報を持つクローンを作ってみたり、
まったく新しい種の生物を誕生させてみたり……
果てには
「親友の許婚を寝取ったり、その親友に暴行を加えたり、人間を(間接的要因も含めて)1000単位で虐殺したり、何だかよくわからないマカデミアンナッツを割るだけで劇的にパワーアップしたりするの超(スーパー)人類」を誕生させたり……
そんな感じの素敵に夢的に快適なテクノロジィだ。
もはや人類の未来に欠かせない技術と言っても過言ではない。
そんなテクノロジィの一端に触れられるのがこの、生物工学研究キットだ!

ところで、分野って「ぶにゃ」で変換できるんだな。
初めて知ったぜ。

「まあ、実装石であるカランパーナにわかりやすく説明してやると、
 要するにこいつは実装石のDNAとやらを好き勝手いじくれるセットなわけよ? Savvy?」
「デスゥ♪ それは実に楽しそうデッスゥ〜ン♪」
「ああ、そうだな……」
「デッスゥ〜ン♪ デ……。……」

何かに気づいたのか。
突然カランパーナは、嬉しそうな表情のまま沈黙した。
俺もそのまま黙ってカランを見つめる。
そうして、二人の間に沈黙が訪れた。

「デジャアアアアアアアアア!!!!! イヤデスゥゥゥゥゥ死にたくナイデスゥゥゥ!!!!!」

最初に沈黙を破ったのはカランのほうだった。
半狂乱になりながら何かを恐れるように畳の上を転がりまわりはじめた。
一体何が恐ろしいと言うのだ。

当たり前のようだが、生物工学となれば実験に生物を使うことは珍しくはない。
と言うよりも、医学や生物学と言ったジャンルの研究に生物実験はまず欠かせないものだ。
例えば、ハツカネズミやらモルモットやらは実験動物としてはポピュラーな存在だろう。
だが、さすがに「商品」にそんな生物を同梱するわけにもいかない。
何せ、輸送している途中に死んでしまう確立が高いのだからな。
となれば、商品の購入者が自前で用意するのが筋と言うものだろう。
そこで、販売者が茶目っ気を発揮してくれたのが、この製品。
見た目(だけ)が人に近く、培養がアホみたいに容易な上に、
法律上の規制がほとんどなく、すんげー容易に手に入る身近な生物。
そいつを、研究対象に設定したのだ。
そう、すなわち実装石をなッ!

「ヘイ、カランパーナ! お前DNAって何だか知ってるかい?」
「あれデスゥ! とっても大切なモノデスゥ! なくなったら死んじゃうデスゥ! 
 前回のディスカバリーチャンネルでやってたデスゥゥゥゥ!!!!」

たしかに、先週見たケーブルテレビのディスカバリーチャンネルでは
『DNAの神秘に迫る!』という特集をやっていたな。
放映時に一緒に見ていたので、中途半端に記憶しているのだろう。

「ひょっとして、お前さん。DNAを偽石と同じようなもの程度にしか思っていないのじゃないか?」
「デデッ!? 違うデスゥ? どっちも無くなったら死んじゃうデスゥ」

カランは頭を押さえて蹲る間抜けな格好のまま、顔だけを俺に向ける。
いちいち説明してやるのも面倒なので、俺は要点だけを掻い摘んで教えてやることにした。

「要するに、生物の体の設計図なわけよ。Savvy?」

要約し過ぎかもしれないが、実装石に説明する程度ならばこれで十分だろう。

「設計図デスゥ?」
「おうよ。つまりなぁ、俺とお前がこの形でいられるのも体の中のDNAのお陰ってわけさ。」
「デスゥ、DNAってすごいデスゥ……」

ようやく立ち直ったカランが顔を輝かせた。
暴れたお陰で服の裾がめくれて純白のパンツが顔を覗かせているが、
あれだけの恐慌状態に陥ってもパンコンしていないのは偏に俺の躾の賜物だろう。

「つまり、だ。そのDNAを弄くっちまえば、お前の形を好き勝手に弄くれたり、特定の病気に罹らせたり出来るってわけだ!」
「デスゥ! テクノロジカルデスゥ! 技術の進歩デスゥ!」
「そして、こいつは実装石のDNAを好き勝手に弄くれる装置なのだアアァァァーッ!」
「すごいデスゥ! ご主人様かっこいいデスゥ!」

カランは満面に笑みをたたえ、両手でポフポフと拍手した。
俺はそれを受けて、仁王立ちでふんぞり返る。
そして一分ほど、そのままポフポフという拍手の音だけが部屋の中に響き、
閉め忘れたベランダの戸から一陣の風が吹いて、二人の間を通り抜けた。

「イヤデスゥゥゥゥゥ!!!! カランは何も悪いことしていないデスゥゥゥゥゥ!!!!」

唐突に、先ほどと同じ勢いでカランが暴れ始めた。
察するに、カランのこの行動は恐らく自分のDNAを弄くられるのを恐れているのだろう。
ってか、俺が
「実装石のDNAとやらを好き勝手いじくれるセット」
と説明した時点で暴れ始めていたという事は、
俺がこいつのDNAを弄くるとこいつは確信していたのか。
なんという信用の無さ。
俺たちの絆はそんなもんだったのか……悲しいぜ。
まあ、予定がなかったわけじゃあないがな。

「ヘイッ! カラン。俺は何もテメーのDNAを弄くろうと思ってるんじゃあないぜ」
「デェ? じゃあどうするんデスゥ?」
「簡単なことだ。そう、それは実にシンプルな答え——『替わりをつれて来い』だ」
「デェ……ご主人様の仰る意味がわからないデスゥ……」
「テメーのDNAを弄くられたくなきゃ公園にでも行って糞蟲を連れて来いって言ったんだよッ!Savvy?」

それでもしばらく考え込んでいたカランだが、
やがて頭上に豆電球が飛び出し、パリンと割れた。
……おい、光る前に割れたぞ。大丈夫か?

「なるほどデスゥ! では早速行って来るデスゥ!」

カランはそう長くない廊下をデッデッデと駆け抜け、玄関までたどり着く。
が、ドアノブまで手が届かず、ドアを開けられない。

「ご主人様ーッ! ドアを開けて欲しいデスゥッ!!」

おいおいおい、カランよ。
もっと考えてから行動しようぜ。
俺は親切にもドアを開けてやり、半ば放り出すようにカランを外の世界へと送り出した。


さて、カランが実験用実装石をつれて来るまでに機材のセットアップを終わらそう。
まあ、最悪の場合永遠につれて帰ってくることが無いかもしれないが……

俺はアダルト・サイエンス・マガジンの箱を開け、
その中の発泡スチロールで包装された機械を取り出した。
機械を畳の上に置き、箱の底に残っていたケーブルやCD、
そしてA4サイズの分厚い雑誌を取り出す。
この雑誌こそがASMの本体!
そして、今回は機械の説明書も兼ねているらしい。

「さーてと」

ちゃぶ台の上の箱をどかし、代わりにノートパソコンを載せてアダプタをつなぎ電源オン。
ペケピーが立ち上がるまでの間に、機械の方の準備をする。
機械は最近の市販プリンターサイズの代物で、
右端に小型の液晶画面とスイッチ類がついており、中央には葉書サイズの蓋がついているだけ。
そう、それだけのシンプルな物だった。
あとは、後ろのほうに各種ケーブルをつなぐための端子があり、
俺はそこに付属のケーブル類をすべて捻じ込んだ。

「ええと、あとは……」

ASMの後ろのページの説明書を読みながらセットアップを整えてゆく。
英語に苦戦しながらも、英和辞典を片手に進めていった。
説明によると、先ずはパソコンに付属のCDを使って
ソフトウェアとドライバをインスコしなければいけないらしい。
ノートパソコンのCDトレイにCDをぶち込み、
インスコウィザードのボタンを適当にクリックしてインスコ開始。
その間、俺は次の手順へと進んだ。

「ん? “physiological salt solution”だって? ……生理的食塩水、か」

つまり、機械の蓋を開けてその生理的食塩水とやらを線のところまでぶち込めということらしい。
所で、生理的食塩水とはなんだろうか?
アレか、豊乳手術で使われるアレか。
そんなもん持ってないぞ、どうしろってんだ!
こういう困ったときはグーグル先生頼みだ。
ブラウザを立ち上げ、ツールバーに入力。
生理的食塩水……っと。

……

要するに、0.9%の食塩水だろ?
俺は計量カップでボウルに一リットルほどの水を汲み、
計量スプーンで計った9グラムの塩をその中に溶かした。
よくかき混ぜて溶かす、これでOKのはずだ。

機械の蓋を開けると、そこには奇妙な空洞があった。
空洞は、鏡のような光沢を持つ金属の板で囲まれた四角いものであり、
その金属には微細な穴がびっしり開いている。
俺はその金属に描かれた線のところまで塩水を流し込んだ。
……一リットルも必要なかったな。
使用した食塩水はせいぜい200mlというところだ。
蓋を閉じて、完了っと。

「お、インスコが終了してる」

パソコンの方ではウィザードが終了を告げていた。
手順に従うと、次は機械の電源を入れ、USBでパソコンと接続すればいいはずだ。
幸い、機械の電源の規格は日本でも使用可能なものであり、
変圧器を別途購入するという煩わしいことをしなくても済んだ。
電源を入れると、静かな稼動音とともに機械が起動した。
USBを接続すると、ペケピーがそれを自動認識し、ソフトが立ち上がった。
あとは、実験に使用しそうな道具を準備して……全ての準備は完了だ。
ああ、実験の開始が待ち遠しい。


「それにしてもカランの奴、遅いな」

もしかして、今頃公園でぼろ雑巾のようになっているのだろうか。
まあ、別にどうでもいいが。
俺はとりあえず、しばらくはカランの奴を待ってやる事にした。


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