タイトル:【な無】 【血統書付仔実装ⅩⅠ】
ファイル:【血統書付仔実装ⅩⅠ】.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:655 レス数:4
初投稿日時:2008/06/02-05:19:40修正日時:2008/06/02-05:19:40
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 【血統書付仔実装ⅩⅠ】


 

 空になった水槽を力なく見つめるお袋達を尻目に、俺は自室へ戻り追跡の準備をする。
 
 階下では《 》がお袋をなだめていた。 


「きっとクミちゃんは外で生む事を選んだんですよ、元々野良だったかたらそう言う選択も有るんです、躾の途中だったから情緒不安定だったかも知れないし・・・
 とにかくクミちゃんは自分から出て行ったんです・・・」

 するとお袋が「いずれ居なくなると思ってたけど・・・自分から出ていくなんて・・・」 と呟いた・・・





 あれから既に一週間。

 約束通り《 》は二日に一度は来てくれていた。

 クミの腹も日一日と大きくなり、ますます喚き散らす様になっていた。

 そして一週間後の日曜日、今日も《 》が来ている、休日と言う事もあって今日は「ユキ」同伴だ。

 しかしクミはユキにすら涎をまき散らしながら喚き散らし、狂った様に水槽のガラスを叩きまくる・・・

 傍目には気が触れたのかと思うほどだ、 何を喚いているのかとリンガルで拾ってみると、ただ要求が通らないので癇癪を起こしているだけだったのだが・・・


 俺の部屋でTVに映し出される「クミ」の姿を《 》と「ユキ」が見ていた・・・クミも少し落ち着いた様だ

 まあ元々ただの癇癪だから誰もいなくなれば静かになるのだが・・・


「明日あたりどうだろう?」と切り出すと

「そうですね、頃合いでしょう」と《 》

「なるべく本人に気づかれずに済ませたいんだけど」

「大丈夫です、手は考えてありますから・・・」

 と話す二人の足下でTVを見ながらユキが 

「クミチャンもうすぐママになるデスゥ、ママになればきっと我が儘も言わなくなるデスゥ、最近のクミチャンには参るデスがクミチャンの仔デスゥ
 きっと可愛い仔が生まれるデスゥ・・・・少し羨ましいデスゥ・・・・」

 最後の方は消え入る様な声だったが首に巻かれたリンガルにはしっかり拾われていた

 それを見止めた《 》がユキを抱きかかえ

「クミちゃんはね、まだママになるのは早いの、お腹の仔達は生まれる事は無いのよ」 

「デッ?! ご主人様・・・それはどう言う意味デス?」

 《 》はそれ以上は話さなかった、相手は実装石だと割り切っている様に見えても・・・やはり女の子には辛い所行だろう・・・

 お袋が《 》を独り占めするなと文句を言いに来たので階下へ降りる、ユキは・・・クミの水槽のそばで再び喚くクミを見つめていた。

 リビングであーだこーだと話が弾むお袋と《 》を見ているとちょっと意地悪がしたくなって

「母さん、今日は貴方の娘は何処へ?」と聞いてみる

「友達と誰かのコンサート見に行くって言ってたわよ」

「誰の?」

「知らないわよ、でね・・・」 と再びお喋りに戻る・・・・ 俺要らねーんじゃない?




「なにミテルテチュカーー!お前ナンカニ用は無いテチュ!この役立たずがテチューー!!」 相変わらず喚き続けるクミにユキが語りかける・・・

「クミちゃん、ママになりたいデスか?」

「テッ?! 当たり前テチュ! 可愛い仔を産んでワタチ共々人間に可愛がらせるテチュ! こんなタイグウも今だけでテチュ 仔供が産まれれば・・・」

「お腹の仔達が生まれる事は無いデス・・・」

「テテッ?! 何言ってるテチュか? お前バカテチュ? もうすぐ可愛い仔供タチが生まれて来るテチュヨ? そうなれば人間達は又ワタチタチにメロメロにナルテチュ!」

「落ち着いて聞くデス、クミちゃんのご主人様・・・『 』さんと私のご主人様が・・・その・・・お腹の仔を始末する事に決めたみたいデスゥ・・・」

「・・・・ナンテチュカーーー?! そ・そんなこと許されりウワケッリ・・・」

「落ち着くデス! たとえ仔共を産んでも待遇は変わらないデス、 一度糞蟲の烙印を押されたら、もう何をしても無駄デス、 
 その内クミちゃんも悲しい事をされて居なくなるデス!」

「チュベーーー?! ナ・ナントカシロテチューーー!!」

「逃げるしかないデス・・・逃げて外で産んで育てるしかないデス」

「外テ? 外へ行ったら野良になるテチュ! ナンデ可愛いワタチが・・・」

「じゃこのまま殺されるのを待つがいいデス! その時が来て後悔するがいいデス! ニンゲンの怖さが解らない奴はもう知らないデス!どうとでもなるがいいデス!」

「・・・ナンデこんなことになったテチュカ? ワタチはママから教えられた通りにしたテチュ・・・ママに会いたいテチュ・・・」

「どうするデス? もう時間が無いデスよ? 今逃げなければ次の機会など無いデスよ?」

「ワカッタテチュ・・・仔共タチに会いたいテチュ・・・逃げるテチュ・・・」


 その言葉を聞き、ユキは自分の頭巾を解き水槽の中に片端を投げ入れた、クミがそれに掴まり這い上がって来る。

 クミは水槽の上端まで這い上がると外で待つユキの腕の中へ飛び降りた。

「やっとお外へ出られたテチュ、コレデワタチは自由テチュ〜♪  オイ!オマエ!ご苦労だったテチュ! もう用は無いから消えるテチュ!」

 やはりと言うか何というか・・・糞蟲とはこうでなければ・・・と言う発言である。

「予想は付いていたデス でも一度決めた事はやってもらうデス!」

 と言って手に持った頭巾の端をクミの口の中へ押し込み騒げなくなったクミをくるんで脇へ抱えた、そして玄関で靴を履きそのまま引き戸の扉を開け駆け出し

 歩道へ躍り出て全力で走る。

 今見つかったら最悪二匹ともご主人様に殺されるかも知れない・・・
 
 クミちゃんが居なくなった事に気づかれる前に、クミちゃんを安全な所へ離して私はあの家に戻らなければ・・・安全な所・・・安全・・・

 サラサラの長い髪を揺らしながら走るユキの足が止まった。

「安全な所なんて・・・何処にあるデス?」

 実装石にとっての安全な場所・・・それは飼い主の比護下意外あり得ないのだが ユキはクミをその比護下から連れ出してしまったのだ。

 周りを見渡してみる・・・一組の親子実装が道路の反対側をフラフラと歩いていた。

「あの親子に聞いてみるデス、取りあえずは安全な場所で暮らしてる筈デス」

 通り過ぎる車の間隙をぬって道路を渡ると親子の元へ走る、

「ハアハア・・ちょっと待つデス」

 親子に後ろから声を掛ける。

 振り向いた親をみてユキは一瞬たじろいだ・・・げっそりと痩せていたからだ。

 この親子は近くの公園に暮らす野良だった、しかも、かなり要領の悪い親の溜に餌が確保出来ず、3匹の仔も相当飢えていた

 この時もこんな時間に有るはずもない餌を探しにゴミ集積所へ仔を連れて行ってきた帰りだ、結局口に入る物は見つからず親子共ヘロヘロになっていた。

 そこへ、何故か頭巾は被っていないが首からリンガルを下げ血色も髪艶も良い身なりも綺麗な同族が話しかけてきたのだ 

「なんデス?」

「あなた達はこの辺で暮らす野良デスね?」

「野良で悪かったデスね! お前も私をバカにしに来たデスか?! ちきしょうデス! 今に見てろデス! 必ず飼い実装になって見返してやるデス!!」

「ちっ・違うデス、バカになんてしてないデス、ちょっと教えて貰いたい事があるデス」

「教える? 私がお前に? ・・・その脇に抱えてるのはなんデス?」

「コレは・・・・私のズキンデス」

「何で被らないデス?」

「この中には・・・大事な物が入ってるデス」    あ〜あ・・・所詮ユキも実装石だったか・・・

「大事な物って・・・ゴハンデス?」

 ゴハンという単語に目一杯反応する仔実装達・・・

「テェ?! ゴハンテチュ?!」  「何処テチュ?ゴハン何処テチュ?!」「ママ!ゴハン早く寄越すテチュ! ドコに有るテチュ!!」 

 と親の服の裾を引っ張り3匹の仔実装が大騒ぎを始めた。

「ちっ 違うデス コレはゴハンじゃないデス コレは大事な物デス」

「ゴハン意外に大事な物なんてある訳ないデス! ソレを寄越すデスー!」

 突然凶暴化し、ユキに襲いかかる野良親、ユキが大切に抱える頭巾に手を伸ばし奪い取ろうとする・・・

「ゴハンじゃないデスーー! 離すテデス! クミちゃんが・・・潰れちゃうデス!」 

 もはや何を言っても無駄だった、目を血走らせ涎を垂らしユキの頭巾を掴んで離さない野良親、その足下では野良仔達が

「なにシテルテチュカーー!  早く奪い取れテチュ!」「ワタチにもゴハン頂戴テチューー イイコになるテチュカラーー テェーーン」「オマエラに食べさせるゴハンは無いテチューー!カワイイワタチが一人占めテチューー!」

 と手に入れてもいない食べ物を巡り取っ組み合いを始めた・・・ 

 口中に頭巾を詰められた為に窒息し、軽く仮死していたクミが蘇生してようやく口中から布を引き出した、がその直後、

 頭巾の引っ張り合いが始まった為締め上げられる形となってしまい

「テチャーーー!? ナ・ナニが起こってるテチュカーーー!?  イタイテチューー! ヤメロテチューーー!!」

 と叫びながら頭巾の外に出ようと必死にもがいた、ようやく頭を出そうとした時、ユキと野良親が一層力を入れて引っ張り始めた為

「オ・オマエラナニシテルテチュカーーー! イタイテチュ! ヤメルテチュ! テェーーー」と泣き叫んでいる・・・

「 ク・クミちゃん? 」

 苦しそうにもがき泣くクミに気づいたユキが一瞬力を緩めた、途端野良親に頭巾を奪われてしまう、火事場の糞力と言うやつか?

「クミちゃんを返すデスー!」

「うるさいデスー! お前は飼い実装のくせに施しの精神ってもんが無いデスかー?! 」

「だからソレはゴハンじゃないデスー!」

 野良親はユキの話しなど聞いちゃいない・・・ようやく手に入れた食料をすでに本気で姉妹を殺そうと争う仔共達に与えるべく頭巾を解いていく

「チベッ?!」

 解かれた頭巾からクミが地面に落ちた、幸い実装石の手の高さからなので大した怪我は負わずに済んだが・・・

「テェェェェーーン! イタイテチーー!」

 しこたま打ち付けた腰をさすりながらクミは慌てて股間を確認する・・・幸い糞が少し漏れただけでお腹の仔は無事な様だ

「?? ココハ何処テチカーー? ワタチを何処に連れて来たテチカーーー?!」
 
 

 頭巾を解き終わっても落ちた仔実装以外何も無い事に気づいた野良親が

「コイツはナンデス? ゴハンは何処にあるデス・・・?」 と手の頭巾とクミを交互に見やりながら頭の上に?マークを描く



「・・・?? お前は何者テチュ?! 」 

 親の手から落ちてきたクミを食い物と勘違いし、我先にかぶりつこうと争いの手を止めて駆け寄って来た仔実装が親を見上げて叫ぶ

「ママー!  ゴハンは? ゴハンはーー?! 」

「ゴハンは・・・そいつが全部食っちまったデス!!」 野良親がクミを睨んで答えた

「ナンノハナシテチュ? オマエラは何者テチュ?」

 残りの二匹の仔実装も加わりクミを睨み付ける・・・ 三匹共クミより一回り小さい、が、生まれはほとんど変わらない、これが飼いと野良の栄養の差なのだ

「コイツがゴハンを食べてしまった・・・ワタチタチのゴハンを・・・」

「テッ?! ナンテ目で見てるテチュカーー?! オマエラ如き野良に・・・」

「ママッ! 代わりにコイツを食べるテチュ!! ワタチタチのゴハンを横取りしたコイツをゴハンにするテチューーー!!」

 普段なら同族食いは即間引き対象になるのだが親も既に理性が雲の上へ飛んで行ってしまっている

「そうデス! この親子を今日の糧にするデス! みんな、ゴハンの時間デスゥー!」

「テチャーーーー?!」 悲鳴を上げるクミ

 涎を垂らしながら野良仔達がクミに詰め寄る

「ウソテチュ・・・コレハ悪い夢テチュ・・・」

 クミは首を振りながら譫言の様に繰り返し後ずさりする、その時、突然便意?が襲って来た・・・いや、便意ではない、これは・・・

「 テッテレーー♪ 」

 クミの下着の中から場違いな陽気な声が聞こえた、クミにとってあまりに異常な状況ゆえ脳がオーバーヒート、出産モードに入ってしまった様だ

「 何か聞こえたテチュ? 」 「 ウジチャンの声テチュ! 何処テチュ?! ウジチャーーーーン!! 」 「 コイチュ、オメメが両方赤いテチュ? 」

「テエェェェェーーーー?! 生まれちゃ駄目テチューーーーー!! 」 総排泄口を締め止めようとするが一度出産モードに入ってしまっては産み切るまで止まりはしない

「 テッテレーーーー♪ 」 「 テッテレーーー♪ 」  三匹分の産声が聞こえクミの両目がオッドアイに戻った・・・

 突然の出産劇に時間が止まってしまった野良実装一家だったが、野良仔達が一斉にクミに突進して時間が動き始めた・・・

 野良仔達は生まれたての親指を手に入れようと我先にクミの下着にダイブする、そして下着の中に手を突っ込み 糞まみれで蠢く三匹のウジ状態の仔を掴み出し

「 コレハワタチのウジチャンテチューーー! 」 「 イヤテチュ! 全部ワタチノテチューーー!」 「 ハナシヤガレテチュ!! オマエラにやるウジはナイテチュ!! 」

 仲良く分ければ一匹ずつ手に入るのだが・・・奪い合いを始めた

「 イタイイタイレフーーー 」「 ママ? 囓っちゃイヤテチュ、イタイテチェーーー!」 「 ママレフ? はじめまちてテベゲ?! 」

「 ヤメルテチューーーーーーー ワタチノカワイイ仔共タチテチューーーーー!! 」   

 クミの悲痛な叫びがユキの背中を押した、涎を垂らしクミを見降ろしていた野良親に懇親のタックルをかます。

 思わぬ攻撃によろけて倒れる野良親、その隙にクミを拾い上げ脱兎のごとく(あくまで実装基準)走り出した。 

「 テェェェェーーー? マツテチューーー  ワタチのの仔共タチがーーー 」

「 仔共は諦めるデスーー! このままじゃ私たちも彼奴らのゴハンになるデスーー! 」

「 ダメテチューーー オイテカナイテチューーー テェエエエエエーーーン 」

 パニック状態で闇雲に走るユキ・・・ご主人様の居る家の場所などとうに見失っていた、限界まで走った所でへたり込む

「ハア ハア ちょっと休憩するデス・・・」 クミを地面に降ろす、と、クミがユキの手にガブリと噛みついた

「痛いデス! 何するデス!」

「 オマエノセイテチューーー! マダナメナメもしてなかったテチューーー! イイコイイコしてないテチューーー! 一杯してあげるって約束したテチューーー! テェエエエエエーーーーン テェエエエエエーーーン 」

「クミちゃん・・・・デェ・・・デェェ・・・デェエエエエエーーーーン! ご主人様ぁーーー 」

 ユキは闇雲に逃げ走る課程で近くの物流団地へ入り込んでしまった、二匹の泣き声は人気のない倉庫街に木霊する

 が、今日は休日、泣きじゃくる仔実装を連れた頭巾の無い飼い実装の叫びを気に止める者は居ない・・・。


















  久しぶりに覗きに来たら過疎ってる・・・・(笑)    一話上げときます(笑) 












 

 

 


 

 

 







 




 

 



 

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1 Re: Name:匿名石 2020/09/04-20:37:50 No:00006274[申告]
急に気になって探したが一応区切りのあるところまで投稿されていてモヤモヤが晴れた
楽しかったです
2 Re: Name:匿名石 2021/01/26-16:07:37 No:00006309[申告]
ホント名作だよなあ…
3 Re: Name:匿名石 2021/05/26-23:31:45 No:00006337[申告]
続きが楽しみ。何年でも待てるわ
4 Re: Name:匿名石 2021/05/31-04:23:47 No:00006341[申告]
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