タイトル:【な無】 飼い実装のチュチュちゃん最終話
ファイル:チュチュ02.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:472 レス数:1
初投稿日時:2008/05/04-11:06:48修正日時:2008/05/04-11:06:48
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『チュチュちゃん 最終話』
 
 
 親指実装のチュチュちゃんは、利男パパと明子ママの若夫婦の飼い実装。
 きょうはおうちで積み木遊び。
 お休みのパパさんはソファに寝そべって新聞を読んでいます。
 ママさんはテーブルに向かって雑誌の懸賞葉書を書いています。
 二人がそばにいてくれるので、チュチュちゃんはご機嫌でお歌を唄ってます。
 パパさんとママさんがおうちにいないと寂しくて「ピキン(偽石にヒビが入る音)」しちゃうのです。
 
「レチレチィ〜レッチュ〜ン♪ レチレチレ…デ…デチ…デ…?」
 
 あらら、チュチュちゃんのお歌が急に調子外れになりました。
 パパさんとママさんもびっくりして、
 
「どうした、チュチュ?」
「どうしちゃったの、キモい声出して?」
「デヂデヂ…デェェ…(ピキン)」
 
 自分の声に驚いて、チュチュちゃんちょっぴり「ピキン」しちゃいました。
 
 
 パパさんはチュチュちゃんを動物病院に連れて行ってくれました。
 ママさんは懸賞応募の締切りがあるのでお留守番です。
 チュチュちゃんを一通り診察して、お医者さんがパパさんに言いました。
 
「声変わりですね」
「声変わり? でもまだチュチュは親指ですよ。こんな成体みたいな声なんて……」
「稀にあるケースなんですよ。仔実装を通り越して成体になってしまうことが」
「はあ……」
「赤ん坊の蛆でさえ妊娠可能なのが実装石ですから。つまりは不思議生物ってことですね」
 
 パパさんは釈然としない様子でチュチュちゃんを連れて病院を出ました。
 
「デヂデヂ…デェェ…?」
(パパさん、チュチュは病気レチ? お声、元に戻るレチ?)
「少し静かにしてくれないか、チュチュ」
「デッ…(ピキン)」
 
 
 おうちに帰ってチュチュちゃんはすぐリビングに置かれた水槽へ入れられてしまいました。
 そしてキッチンで夕食の仕度を始めていたママさんに、パパさんは深刻そうな様子で話をします。
 水槽の中からその様子を見て、チュチュちゃんは、また「ピキン」してしまいました。
 
「デェェェ…」
(チュチュはきっと難病デス。成功確率五パーセントの手術を受けないと治らないデス……)
 
 ママさんと一緒に観たテレビドラマの影響でしょうか、余計な想像を働かせるチュチュちゃんです。
 
 
 やがて夕食の時間になってもパパさんもママさんもチュチュちゃんに話しかけてくれませんでした。
 
「デェェ…(ピキン)」
 
 寂しくて声を上げたら、ママさんがエサを持って来てくれましたが、視線を合わせてくれません。
 悲しくて「ピキン」が進行してしまいます。
 
「デッ…(ピキン)」
 
 
 やがて夜遅くになって——
 パジャマに着替えたママさんが、ようやくチュチュちゃんに声をかけてくれました。
 
「ねえ、チュチュ?」
「デッ…?」
「そろそろ『パキン』しちゃっていいよ?」
「…デゲッ!?(ピキン)」
「うちは親指が飼いたくてアンタを飼ってるのに。まあ仔実装までは我慢してやろうと思ったけど」
「デェェェッ…(ピキン…ペキパキッ)」
「庭の隅にちゃんとお墓作ってあげるから。猫の通り道だからオシッコされるかもだけど」
「デッ…デッデッ…(ピキパキピシッ…)」
「あしたの朝、またその汚い声を聞かせてくれちゃったら公園で野良のエサだからね」
「デ…(パキンッ!!)」
 
 何かが壊れる音がして、ことんとチュチュちゃんはその場に倒れました。
 赤と緑の眼の色が次第に薄まり、やがて真っ白になります。
 チュチュちゃんはお空の星になってしまったのでした。
 
 
 それでもチュチュちゃんは幸せだったといえるでしょう。
 世間では御主人様に飽きられ、捨てられてしまう実装石も多いのに。
 チュチュちゃんは明子ママに見守られて最後まで飼い実装のまま逝けたのです。
 もっとも、あしたは生ゴミの日。
 お墓を作る約束まで守ってもらえるかは、わかりませんけどね。
 
【終わり】

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1 Re: Name:匿名石 2020/08/01-01:49:20 No:00006258[申告]
糞蟲夫婦
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