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山実装の四季
06/01/22(Sun),01:55:54 from uploader
「デデッ…デッスーーーーヴ!!」
む゛りゅん
「テフー♪」「テフー!♪」「テッチューーーゥ!♪」
山奥の渓谷を流れる小川で、いままさに1匹の山実装が出産の時を迎えていた。
片耳が食いちぎられた形のままなので、この個体をミミカケと呼ぶ事にしよう
すでに数匹の仔実装が生まれ落ち、テフテチュと産声をあげ水の中でうごめいている。
ばちゃばちゃばちゃ
「テッフーッ♪」
ばちゃっ「テッフーン♪」「テッチューン!♪」「デッ…デッスゥー…」
全部で6匹を無事生み終えたミミカケは、安堵した表情で子を水中から取り出して舐めはじめた
4匹、5匹と舐め終わり、最後の6匹目を手にとって…ミミカケの表情は不意に曇った。
「テフーテフー、テッチーー♪」
緑色の粘液が取れた仔の下半身、そこには…醜い肉の棒が付属していた
6匹目の仔はマラ実装だった。
しばらくの間、苦悩する表情でその仔を見つめていたミミカケだったが…
「デッスーーーッ!」ぶんっ
「テッフーーーーッ」ぽちゃっ
突然、仔マラを小川の流れに向けて投げこんだ。
「テッフー!テッフーー!テフテフテチーーーー!!」
水流に揉まれて流されていくマラ仔実装…
しばらくばちゃばちゃと藻掻いていたが、やがて姿は水中に消え…
ぷくぶく
こぽっ「テフ゜………」
水面下に鱗の反射がきらめくと同時に沈んだきり見えなくなった
「デス…」
複雑な表情で川面を眺めていたミミカケだったが、思い直したように残りの仔にむきなおった。
「テチュテチュテチー」「テッチューゥ♪」「テフテフテチィー」
生まれて数分で、仔実装はすでに立ち上がり歩き出している
「デッスーーー!」「「「「「テッチューウ♪」」」」」
ミミカケは子供たちに号令をかけて小川を立ち去った。
生まれたばかりの仔実装を狙うのは飢えた同族だけではない。
野生動物、特に犬科の獣やカラスなどは仔の味を占めて何度も狙ってくる天敵だ。
生まれたばかりの仔はすぐにでも巣穴に隠さなければ、あっという間に全滅しかねないひ弱な存在である。
ミミカケはその事をよく知っていたので、足がもつれる仔実装たちを急かして巣穴へと急いだ。
季節は未だ肌寒い春。
山実装の一年、その過酷な四季はまだ…始まったばかりである
実装石は生まれてから最短2ヶ月程で成体にまで成長する。
しかしそれはタンパク質を多く含んだ生ゴミ等人間のおこぼれを食べる野良実装の話であり、
山菜や果実などを主食とした山実装ではその限りではない。
ほとんど必要最低限の栄養しか取れない山実装の仔は、成体になるまで半年あまりも必要とする。
その長い成長期間において、実に7割近くの仔実装が儚く命を落とすのである
誕生から1ヶ月あまり経過した初夏、ミミカケの仔もやはり数を減らしていた
まず1週間目にして、好奇心旺盛なあまり巣穴からこっそり外へ出た仔が食われて死んだ。
山実装のコロニーにおいては共同生活と言えるレベルの互助が見られるケースが多い
もっとも親の保護のない仔が、即座に他の同族にエサにされる点では町の実装と変わらないが…
とはいえミミカケの仔は同族にではなく、数羽のカラスに襲われて死んだのだった。
さんざん突かれて穴だらけの仔の死体を前に、ミミカケは『言いつけを守らない子はこうなるデスゥ!』と
他の仔たちを脅した。
「テ…テチュー」「テチューッ!」「テッチューウ!」「テ…テチィ」がたがたぶるぶる
親の教えを理解しない、あるいは無視する仔実装は結果的に長生きできない。育てるだけ餌の浪費である
本能的にその事を知っているミミカケは、悲しみをこらえながら残りの子たちに教訓を伝えようとした。
4匹の子たちの中でも、2番目に生まれた仔実装は特に優れた資質を持っていた。
体はよその仔実装と比べても大きく、教えた事を理解する能力も高い。姉妹たちを助ける優しさもある
この仔実装を2番と呼ぶことにする。同様に他の仔実装を1番・3番・4番と呼ぶ
2番はなぜ姉妹が死んだのか、ずっと考えていた。
…あの子は外を見たがった。…
…でもママは、外は『あぶない』ことがたくさんだから出たらダメって言った。…
…『あぶない』って何か、ワタシにはなんとなくわかったけど…
…あの子はよくわかってなかった。だから黒いのにつつかれてたべられた。…
…『あぶない』がわからないとダメ…
姉妹の無惨な屍を前に、2番はその教訓をしっかり覚えこんだ。
35日目には、3番が消えた。仲間から外れて1匹でいたところをトンビにさらわれたのだった
ある程度、仔実装が成長し巣穴から出ても大丈夫になると群れの親実装たちは集団で食料採集に出かける。
成長した仔実装と言っても15cm程度なので、まだまだ単独では儚い。
そこで、群れで同時期に生まれた仔実装たちは大人のいない時には子同士でルッカリーを形成する。
仔の集団の中で危険に敏感な個体がいれば、他のやや鈍い個体も危険から逃れやすいからだ。
といってもあんまり鈍すぎれば必然として、敵の餌食となり淘汰されてしまう
3番は元気はよかったが危険に対して鈍感すぎた。仲間でまとまって巣穴のある山腹付近を離れようとしない
他の仔実装たちを「テフ゜フ゜フ゜〜」とあざ笑って冒険をくりかえしていた。が…
「テチュエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーー ッ!!」
仲間が聞いた3番の声はそれが最後だった。空にサッと影が通り過ぎた瞬間、仔実装は鋭い爪に引っかけられ
空高くつかみあげられていき…二度と巣穴へ戻ってくることはなかった
「デー…デッス…」
帰ってきたミミカケは、また1匹の子が失われた事を悟った。
…仲間といっしょはあぶないことから逃げやすい。…
…仲間がおそわれてもワタシはその間に逃げられるから…
…それがわからなかったあの子は、空をとぶもののエサにされた。仲間といっしょは大事…
2番は恐怖に震えながら、そのことをしっかりと覚えた。
仔実装の誕生から3ヶ月程経過した6月。ミミカケの子たちは身長30cmほどに成長していた
「テチュテチュ〜」「テッチューーーーゥ!テチュ、テーーッチュ」「デッスゥー」「テチィィィー」
親子が仲良く食事にいそしんでいる夕方、山実装コロニーで事件がおきた。
「デッギャアアアアーーーーー ッス!!」「デ、デス!?」「テッチュウウーー!!テチ゛ェエエーッ」
巣穴の一つから唐突にあがった悲鳴。外敵の侵入かと、群れ全体が緊張した…しかし。
2番が見たものは、奇妙な光景だった。
動かなくなった子たちを前に泣き崩れる親実装。
粘液にまみれて地面に転がる仔実装たち…その体は奇妙にねじ曲がっていた。
そして群れの大人たちに取り押さえられた1匹の仔実装。
「テッチュウーーーーッ!テーーーーッチュ!」
なぜこんな仕打ちを受けるのかわからない、と叫ぶその股間には奇妙な物体が生えていた。
まらデスゥ、とミミカケが呟いたのを2番は聞いた。
マラは育ててはいけない、それはこの群れの掟だ。
流れてきたマラ実装が群れを支配する事はあっても、群れで生まれ育ったマラ実装というのはいない。
山実装の仔にマラが生まれた場合、大抵はミミカケがしたようにすぐ親によって殺される。
性欲を最優先して行動するマラ実装は、群れの秩序を乱すだけの存在であるからだ。
「テッチュアーーーーッ!テチュテチュテチ゛ィイイイーーーー!!」
「デッス!デスデスーーーッ」「デジャアアア!!」
マラ仔実装は2番もよく知っている遊び仲間だった。
昨日まで、不審な行動はなにもしてはいなかった。
しかし…今目の前で叫んでいる仔は、まるで別人格のようだった。
凶暴な何かが取り憑いたように。
ワタシは悪くないデスゥ、そいつらは勝手に動かなくなったデスゥと叫んでいる。
おそらく突然マラ実装の本能が目覚めたのだろう…本能に突き動かされるままに姉妹を犯し死なせた仔実装。
大人たちは群れの長老実装の前にマラ仔実装を引き出した。
悲しげな表情で仔マラを一瞥した長老実装は…
「デス…デスデェエー…」仕方ない…悲しいことにするデスゥと呟いた
その言葉を聞いた群れの大人たちは手に手に石を取ると、マラ仔実装に向けて一斉に投げつけた。
「デスー!デス!」「デーッス!デスー!」「デス!デス!デェッ!!」
「テチ゛ィイ゛イ゛イ゛ーーーッ!?テッチ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーッ!!テエ゛エ゛エ゛エ゛ーーーーーーーッ」
びしばしばしばし
石に打たれて、たちまち血まみれになるマラ仔実装…必死に叫び続けるが、止めるものは誰一人いない。
2番の横でミミカケも、石を投げつけていた。その横顔は硬く無表情に見えた
「テェ…チ゛ィィ…」
地面に倒れぴくぴくと痙攣するマラ仔実装に長老実装が近づくと、胸に尖った石をあて…
「デェ!」「テチェッ」ごきりっ
偽石を砕いた。それを最後に、マラ仔実装は動かなくなった
「デェア゛ア゛ア゛ーーーーーッ!デッズゥヴヴヴーーーーーッ!!」
仔マラも含め、全ての子を失った親実装が完全に錯乱して泣き出した。
それを慰めるものもなく、同族たちは自分の巣穴へと帰って行く。
巣に戻った2番は、今の出来事を考えた。
…あの子は、じぶんの姉妹にしてはいけないことをした。だからかなしいことにされた。
…『まら』はあぶないもの。群れにいてはいけないもの。
…じぶんのこどもでも。
同族であっても危険な存在というものについて、2番は実感した。
死んだマラ仔実装は誰一人食べる者もなく、その夜のうちに小川まで運ばれて捨てられた。
錯乱した親実装は次の日の朝、偽石が砕けて死んでいるのが見つかった。
こちらは誰かの胃袋に収まった。
約半年が経過した、ある日の山実装コロニー。
「デッスー!」「デスーッ」「デスッ」
ミミカケは、2匹の子供たちを引き連れて食料収集へと赴いていた。
生き残った仔実装、2番と4番は既に成体同様のサイズにまで成長しておりミミカケの後に
ついて山道を登っている
結局、1番は大人になることはできなかった。
狐かタヌキ、野生動物に捕食されたからだ。
残りの子供たちはすくすくと成長し、鳴き声も甲高い仔実装のそれからデスゥと
しっかり響く様になっている
「デーッ…デスデッス」「デスッ」「デーッス」不意に、ミミカケが子供たちを呼び寄せた。
周囲にいた山実装たちもそれぞれ物陰に隠れて息を潜めている。
その視線の先には…「デー…」イノシシがいた。
鼻の先で土を掘り返し、キノコか何かを食べている。
あいつが暴れたら手が付けられない、だからやりすごしなさい。
ミミカケは小声で子供たちに教えた
イノシシが山実装を捕食することはないが、何かの拍子に怒らせたら大ケガをするのは山実装の方である。
幸いイノシシは山実装に気づくこともなく雑木林へと駆け去った。
「デーー ッ…」ホッと息をつき、食料採集を再開する山実装たち。
ミミカケはイノシシの食べ残しがないか、掘り返された跡を調べている。
そして1時間後…
「デッス!デスデス!」「デッスゥー!」
仲間たちはもうそろそろこの場所を離れようとしていたが、ミミカケは執拗に探し続けていた。
2番は母親に、ここを離れようと告げるが彼女が動き出す気配はない。
4番もその横で母親のする事を真似してキノコを両手に抱えている。
「デッスー、デププ☆」
あぶない、と2番は思った。
仲間たちはニンゲンの気配がするといっているのに、ママは動こうとしない。
風に乗って甘い香りの煙が漂ってくる。
それはニンゲンの使うクルマというものの出す煙でニンゲンがやってくる事を感じる証拠だ。
それを教えてくれたのはママなのに…
2番はイライラしながら母親と妹をみつめた。
もうそろそろ帰らなくては危険だ。
『あぶない』なのに!
ミミカケは何度か冬を乗り越え、山実装としては経験を積んだ賢い個体であったが…
しかし世界には彼女の知らない危険がまだまだたくさんあった。
突然…「デッギャアーーーーッ!!」ばちーーーー ん
枯れ葉の上に足を踏み入れたミミカケは、そこから飛び出してきた罠に体を挟まれて絶叫した。
竹で出来たトラバサミがその胴体と足に深々と食い込み、彼女はそこから逃れようともがく
「デエーーーーッ!デスゥウウーー!?」
「デッギャアーーーー!デスデスデギャアアアアーーーーッス!!」
突然の事に驚いた4番は、必死にもがく母親に駆け寄って助けようとするが…
「デーッ…デデェエー!?」
山実装の力では、バネ仕掛けの罠を押し開いて逃れる事は出来ない。
挟まれたのが胴体では引きちぎって逃げる事もできない。
山実装捕獲のために作られた、精巧な仕掛けだった。
これまでミミカケが人間の使う罠について知らなかった訳ではない。
しかし彼女が知っている危険な存在とは大抵が金属製であり、
その存在を感知するのは難しいことではなかった。
しかし今ミミカケの自由を奪っているものは竹で出来ており、
オマケに周囲の土に馴染んで匂いなどの予兆はまるで与えないように工夫されていたのである。
「デデーッス!デスデスデッスゥー!!」お姉ちゃん何してるデスゥ、早くママを助けるデスゥ!
必死に罠を外そうとあがきながら、4番は2番に呼びかけた。しかし2番は手伝おうとはしない
何をやってるの、あの子は…ママはもうダメだって何故わからないの?
『あぶない』なのに。今もまだ『あぶない』なのだ。ニンゲンはもう、そこまで来ているのに!
彼女は考え続けた。
ワタシはもうオトナ、ママがいなくても仲間に食べられたりなんかしない。
隣の巣穴の子は、自分の親に追い出された。その親に新しいコドモができたからだ。
ワタシもそのうち、自分のコドモを持てばそうするだろう
でもその前に今、逃げられないと生き残れない。
そんなのイヤ!『あぶない』から早く逃げないと!!
「デッ!」「デッスゥ!?」2番は母親と妹を残して、脱兎のごとく逃げ去った。
ニンゲンの気配は既に、彼女にもはっきりわかるほど近づいていた。
足音、匂い、そして話し声。
そして…「おっ、かかっとるかかっとる。この時期の山実装は肥え太っとるから最高じゃわい」
「おりょ、子供もいるのぅ。こりゃ一石二鳥じゃい」
必死で逃げていく2番の耳に、「デェエエエーーーーーーッ!!」妹の悲鳴が小さく届いた。
そして冬がやってきた。
地面も森も雪に覆われて白く凍り付き、冷たく眠り続ける。
そんな凍える山肌で、「デッス、デッスー」1匹の山実装がいまだ活動を続けていた…
かの2番である。
今は完全に成体となり、山実装の平均よりも大きなボディを誇っている。
既に群れの同族は冬の到来に、いやおうなく冬眠せざるを得なくなっていた。
そもそも熊などの生理的に冬眠する機能を備えた生物とは異なり、実装石に冬眠という習慣はない。
再生機能も高いが生命維持で消費するカロリーも異様に高い実装は、本来は通年で活動するものだ。
事実、都市部に生息する野良実装は人間の廃棄するゴミを年中食することができるので冬眠しない
山実装が冬眠の真似をするのは、純粋に食糧事情が通年の活動を許さないために他ならない。
そして、長期間食物を摂取せずにひたすら眠り身体機能を維持していくのは実装石にとっても苦行だ
もし春の到来が遅れれば、再生能力の限界を超え目覚める事のないまま死を迎えることになる。
無事冬を乗り切り目を覚ませるかどうかは多分に運次第。
目覚めた時に、食料を探しに行く体力があるかどうかが問題となってくる
さらに目覚めが他の個体より遅ければ、空腹の同族によって最初の食事にされてしまうだろう。
2番もまたその事実を認識していた。
母親のミミカケから受け継いだ知識と、それを理解する能力のおかげで彼女は群れの仲間より、
危険に対してうまく立ち回ることができた。
既に十分栄養をその体内に蓄えてはいたものの、まだ不十分だと彼女は感じていた。
目を覚ました時すぐ食べられるモノがあれば、寒くない時期がやってきた時に役に立つ
仲間は雪の下に埋もれた食べ物を見つけられずにあきらめてしまったけれどワタシは違う。
どこに何があったか、覚えておけばいいだけのこと。
雪を掘る木の枝もちゃんと用意している。
デプププと笑いながら、2番は雪に覆われた山の稜線を登っていく。
彼女は確かに賢かった。
おそらく実装石としては、望める限り最高の知能を持っていたと言える。
しかし…やはり経験は足りなかった。
いや知識に対する謙虚な姿勢に欠けていた。
単独行動が危険だという知識は、既に仔実装のころに得ていたにもかかわらず、
成体になったことでその知識を軽んじてしまっていたのだ。
以前、彼女が外敵から逃れられた理由は身代わりになる同族と一緒に行動していたからだが、
成体となり仔実装に比べて段違いの体力と行動力を得た2番はその事実を軽視し
単独行動してしまった。
結局はそれが…彼女の命取りになるのであった。
「デッスゥ!デッススゥー♪」山の稜線に鳥の死骸を見つけ、思わず2番はそこに足を止めた。
ゆっくりと照準がスコープの中で2番の姿に合わせられ、そして…
「…デギッ!?」突然…2番は体を貫いた衝撃と激痛に呻いた。そっと、その場所に手をやると…
「デェッ!?」胴体の真ん中には大穴が開いていた。体液が止めどもなく流れだし、意識が遠のく。
なんで、何故?なにがおきたの?痛い、痛い痛い!なんでこんなことに、なんで!!
遠くでダーンという音が聞こえたが、もう2番にはその音と激痛との関連を考えている力はなかった。
「デッ…ギャアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ッ !!」
絶叫とともに…2番は雪の斜面を転げ落ちていった…
「おお、当たった。流石にオジイは名人じゃのう」
「バラ弾35年、ライフル20年。山実装撃ちは40年やっとるからのう、年期が違うて」
2番を射倒した猟師は、満足げにショートピースに火を付けて言った。
冬はますます厳しさを増している。例年になく降り続く雪は野も山も白い重みで埋め尽くしていく。
いったい何匹の山実装が凍てつく季節を生き延びられるのか…それは誰にもわからない。
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注釈. 及び後記.
*1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。
*2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。
*3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。
*4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。
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山実装の四季
06/01/22(Sun),01:55:54 from uploader
「デデッ…デッスーーーーヴ!!」
む゛りゅん
「テフー♪」「テフー!♪」「テッチューーーゥ!♪」
山奥の渓谷を流れる小川で、いままさに1匹の山実装が出産の時を迎えていた。
片耳が食いちぎられた形のままなので、この個体をミミカケと呼ぶ事にしよう
すでに数匹の仔実装が生まれ落ち、テフテチュと産声をあげ水の中でうごめいている。
ばちゃばちゃばちゃ
「テッフーッ♪」
ばちゃっ「テッフーン♪」「テッチューン!♪」「デッ…デッスゥー…」
全部で6匹を無事生み終えたミミカケは、安堵した表情で子を水中から取り出して舐めはじめた
4匹、5匹と舐め終わり、最後の6匹目を手にとって…ミミカケの表情は不意に曇った。
「テフーテフー、テッチーー♪」
緑色の粘液が取れた仔の下半身、そこには…醜い肉の棒が付属していた
6匹目の仔はマラ実装だった。
しばらくの間、苦悩する表情でその仔を見つめていたミミカケだったが…
「デッスーーーッ!」ぶんっ
「テッフーーーーッ」ぽちゃっ
突然、仔マラを小川の流れに向けて投げこんだ。
「テッフー!テッフーー!テフテフテチーーーー!!」
水流に揉まれて流されていくマラ仔実装…
しばらくばちゃばちゃと藻掻いていたが、やがて姿は水中に消え…
ぷくぶく
こぽっ「テフ゜………」
水面下に鱗の反射がきらめくと同時に沈んだきり見えなくなった
「デス…」
複雑な表情で川面を眺めていたミミカケだったが、思い直したように残りの仔にむきなおった。
「テチュテチュテチー」「テッチューゥ♪」「テフテフテチィー」
生まれて数分で、仔実装はすでに立ち上がり歩き出している
「デッスーーー!」「「「「「テッチューウ♪」」」」」
ミミカケは子供たちに号令をかけて小川を立ち去った。
生まれたばかりの仔実装を狙うのは飢えた同族だけではない。
野生動物、特に犬科の獣やカラスなどは仔の味を占めて何度も狙ってくる天敵だ。
生まれたばかりの仔はすぐにでも巣穴に隠さなければ、あっという間に全滅しかねないひ弱な存在である。
ミミカケはその事をよく知っていたので、足がもつれる仔実装たちを急かして巣穴へと急いだ。
季節は未だ肌寒い春。
山実装の一年、その過酷な四季はまだ…始まったばかりである
実装石は生まれてから最短2ヶ月程で成体にまで成長する。
しかしそれはタンパク質を多く含んだ生ゴミ等人間のおこぼれを食べる野良実装の話であり、
山菜や果実などを主食とした山実装ではその限りではない。
ほとんど必要最低限の栄養しか取れない山実装の仔は、成体になるまで半年あまりも必要とする。
その長い成長期間において、実に7割近くの仔実装が儚く命を落とすのである
誕生から1ヶ月あまり経過した初夏、ミミカケの仔もやはり数を減らしていた
まず1週間目にして、好奇心旺盛なあまり巣穴からこっそり外へ出た仔が食われて死んだ。
山実装のコロニーにおいては共同生活と言えるレベルの互助が見られるケースが多い
もっとも親の保護のない仔が、即座に他の同族にエサにされる点では町の実装と変わらないが…
とはいえミミカケの仔は同族にではなく、数羽のカラスに襲われて死んだのだった。
さんざん突かれて穴だらけの仔の死体を前に、ミミカケは『言いつけを守らない子はこうなるデスゥ!』と
他の仔たちを脅した。
「テ…テチュー」「テチューッ!」「テッチューウ!」「テ…テチィ」がたがたぶるぶる
親の教えを理解しない、あるいは無視する仔実装は結果的に長生きできない。育てるだけ餌の浪費である
本能的にその事を知っているミミカケは、悲しみをこらえながら残りの子たちに教訓を伝えようとした。
4匹の子たちの中でも、2番目に生まれた仔実装は特に優れた資質を持っていた。
体はよその仔実装と比べても大きく、教えた事を理解する能力も高い。姉妹たちを助ける優しさもある
この仔実装を2番と呼ぶことにする。同様に他の仔実装を1番・3番・4番と呼ぶ
2番はなぜ姉妹が死んだのか、ずっと考えていた。
…あの子は外を見たがった。…
…でもママは、外は『あぶない』ことがたくさんだから出たらダメって言った。…
…『あぶない』って何か、ワタシにはなんとなくわかったけど…
…あの子はよくわかってなかった。だから黒いのにつつかれてたべられた。…
…『あぶない』がわからないとダメ…
姉妹の無惨な屍を前に、2番はその教訓をしっかり覚えこんだ。
35日目には、3番が消えた。仲間から外れて1匹でいたところをトンビにさらわれたのだった
ある程度、仔実装が成長し巣穴から出ても大丈夫になると群れの親実装たちは集団で食料採集に出かける。
成長した仔実装と言っても15cm程度なので、まだまだ単独では儚い。
そこで、群れで同時期に生まれた仔実装たちは大人のいない時には子同士でルッカリーを形成する。
仔の集団の中で危険に敏感な個体がいれば、他のやや鈍い個体も危険から逃れやすいからだ。
といってもあんまり鈍すぎれば必然として、敵の餌食となり淘汰されてしまう
3番は元気はよかったが危険に対して鈍感すぎた。仲間でまとまって巣穴のある山腹付近を離れようとしない
他の仔実装たちを「テフ゜フ゜フ゜〜」とあざ笑って冒険をくりかえしていた。が…
「テチュエエエエエエエエーーーーーーーーーーーーーーーー ッ!!」
仲間が聞いた3番の声はそれが最後だった。空にサッと影が通り過ぎた瞬間、仔実装は鋭い爪に引っかけられ
空高くつかみあげられていき…二度と巣穴へ戻ってくることはなかった
「デー…デッス…」
帰ってきたミミカケは、また1匹の子が失われた事を悟った。
…仲間といっしょはあぶないことから逃げやすい。…
…仲間がおそわれてもワタシはその間に逃げられるから…
…それがわからなかったあの子は、空をとぶもののエサにされた。仲間といっしょは大事…
2番は恐怖に震えながら、そのことをしっかりと覚えた。
仔実装の誕生から3ヶ月程経過した6月。ミミカケの子たちは身長30cmほどに成長していた
「テチュテチュ〜」「テッチューーーーゥ!テチュ、テーーッチュ」「デッスゥー」「テチィィィー」
親子が仲良く食事にいそしんでいる夕方、山実装コロニーで事件がおきた。
「デッギャアアアアーーーーー ッス!!」「デ、デス!?」「テッチュウウーー!!テチ゛ェエエーッ」
巣穴の一つから唐突にあがった悲鳴。外敵の侵入かと、群れ全体が緊張した…しかし。
2番が見たものは、奇妙な光景だった。
動かなくなった子たちを前に泣き崩れる親実装。
粘液にまみれて地面に転がる仔実装たち…その体は奇妙にねじ曲がっていた。
そして群れの大人たちに取り押さえられた1匹の仔実装。
「テッチュウーーーーッ!テーーーーッチュ!」
なぜこんな仕打ちを受けるのかわからない、と叫ぶその股間には奇妙な物体が生えていた。
まらデスゥ、とミミカケが呟いたのを2番は聞いた。
マラは育ててはいけない、それはこの群れの掟だ。
流れてきたマラ実装が群れを支配する事はあっても、群れで生まれ育ったマラ実装というのはいない。
山実装の仔にマラが生まれた場合、大抵はミミカケがしたようにすぐ親によって殺される。
性欲を最優先して行動するマラ実装は、群れの秩序を乱すだけの存在であるからだ。
「テッチュアーーーーッ!テチュテチュテチ゛ィイイイーーーー!!」
「デッス!デスデスーーーッ」「デジャアアア!!」
マラ仔実装は2番もよく知っている遊び仲間だった。
昨日まで、不審な行動はなにもしてはいなかった。
しかし…今目の前で叫んでいる仔は、まるで別人格のようだった。
凶暴な何かが取り憑いたように。
ワタシは悪くないデスゥ、そいつらは勝手に動かなくなったデスゥと叫んでいる。
おそらく突然マラ実装の本能が目覚めたのだろう…本能に突き動かされるままに姉妹を犯し死なせた仔実装。
大人たちは群れの長老実装の前にマラ仔実装を引き出した。
悲しげな表情で仔マラを一瞥した長老実装は…
「デス…デスデェエー…」仕方ない…悲しいことにするデスゥと呟いた
その言葉を聞いた群れの大人たちは手に手に石を取ると、マラ仔実装に向けて一斉に投げつけた。
「デスー!デス!」「デーッス!デスー!」「デス!デス!デェッ!!」
「テチ゛ィイ゛イ゛イ゛ーーーッ!?テッチ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛ーーーーッ!!テエ゛エ゛エ゛エ゛ーーーーーーーッ」
びしばしばしばし
石に打たれて、たちまち血まみれになるマラ仔実装…必死に叫び続けるが、止めるものは誰一人いない。
2番の横でミミカケも、石を投げつけていた。その横顔は硬く無表情に見えた
「テェ…チ゛ィィ…」
地面に倒れぴくぴくと痙攣するマラ仔実装に長老実装が近づくと、胸に尖った石をあて…
「デェ!」「テチェッ」ごきりっ
偽石を砕いた。それを最後に、マラ仔実装は動かなくなった
「デェア゛ア゛ア゛ーーーーーッ!デッズゥヴヴヴーーーーーッ!!」
仔マラも含め、全ての子を失った親実装が完全に錯乱して泣き出した。
それを慰めるものもなく、同族たちは自分の巣穴へと帰って行く。
巣に戻った2番は、今の出来事を考えた。
…あの子は、じぶんの姉妹にしてはいけないことをした。だからかなしいことにされた。
…『まら』はあぶないもの。群れにいてはいけないもの。
…じぶんのこどもでも。
同族であっても危険な存在というものについて、2番は実感した。
死んだマラ仔実装は誰一人食べる者もなく、その夜のうちに小川まで運ばれて捨てられた。
錯乱した親実装は次の日の朝、偽石が砕けて死んでいるのが見つかった。
こちらは誰かの胃袋に収まった。
約半年が経過した、ある日の山実装コロニー。
「デッスー!」「デスーッ」「デスッ」
ミミカケは、2匹の子供たちを引き連れて食料収集へと赴いていた。
生き残った仔実装、2番と4番は既に成体同様のサイズにまで成長しておりミミカケの後に
ついて山道を登っている
結局、1番は大人になることはできなかった。
狐かタヌキ、野生動物に捕食されたからだ。
残りの子供たちはすくすくと成長し、鳴き声も甲高い仔実装のそれからデスゥと
しっかり響く様になっている
「デーッ…デスデッス」「デスッ」「デーッス」不意に、ミミカケが子供たちを呼び寄せた。
周囲にいた山実装たちもそれぞれ物陰に隠れて息を潜めている。
その視線の先には…「デー…」イノシシがいた。
鼻の先で土を掘り返し、キノコか何かを食べている。
あいつが暴れたら手が付けられない、だからやりすごしなさい。
ミミカケは小声で子供たちに教えた
イノシシが山実装を捕食することはないが、何かの拍子に怒らせたら大ケガをするのは山実装の方である。
幸いイノシシは山実装に気づくこともなく雑木林へと駆け去った。
「デーー ッ…」ホッと息をつき、食料採集を再開する山実装たち。
ミミカケはイノシシの食べ残しがないか、掘り返された跡を調べている。
そして1時間後…
「デッス!デスデス!」「デッスゥー!」
仲間たちはもうそろそろこの場所を離れようとしていたが、ミミカケは執拗に探し続けていた。
2番は母親に、ここを離れようと告げるが彼女が動き出す気配はない。
4番もその横で母親のする事を真似してキノコを両手に抱えている。
「デッスー、デププ☆」
あぶない、と2番は思った。
仲間たちはニンゲンの気配がするといっているのに、ママは動こうとしない。
風に乗って甘い香りの煙が漂ってくる。
それはニンゲンの使うクルマというものの出す煙でニンゲンがやってくる事を感じる証拠だ。
それを教えてくれたのはママなのに…
2番はイライラしながら母親と妹をみつめた。
もうそろそろ帰らなくては危険だ。
『あぶない』なのに!
ミミカケは何度か冬を乗り越え、山実装としては経験を積んだ賢い個体であったが…
しかし世界には彼女の知らない危険がまだまだたくさんあった。
突然…「デッギャアーーーーッ!!」ばちーーーー ん
枯れ葉の上に足を踏み入れたミミカケは、そこから飛び出してきた罠に体を挟まれて絶叫した。
竹で出来たトラバサミがその胴体と足に深々と食い込み、彼女はそこから逃れようともがく
「デエーーーーッ!デスゥウウーー!?」
「デッギャアーーーー!デスデスデギャアアアアーーーーッス!!」
突然の事に驚いた4番は、必死にもがく母親に駆け寄って助けようとするが…
「デーッ…デデェエー!?」
山実装の力では、バネ仕掛けの罠を押し開いて逃れる事は出来ない。
挟まれたのが胴体では引きちぎって逃げる事もできない。
山実装捕獲のために作られた、精巧な仕掛けだった。
これまでミミカケが人間の使う罠について知らなかった訳ではない。
しかし彼女が知っている危険な存在とは大抵が金属製であり、
その存在を感知するのは難しいことではなかった。
しかし今ミミカケの自由を奪っているものは竹で出来ており、
オマケに周囲の土に馴染んで匂いなどの予兆はまるで与えないように工夫されていたのである。
「デデーッス!デスデスデッスゥー!!」お姉ちゃん何してるデスゥ、早くママを助けるデスゥ!
必死に罠を外そうとあがきながら、4番は2番に呼びかけた。しかし2番は手伝おうとはしない
何をやってるの、あの子は…ママはもうダメだって何故わからないの?
『あぶない』なのに。今もまだ『あぶない』なのだ。ニンゲンはもう、そこまで来ているのに!
彼女は考え続けた。
ワタシはもうオトナ、ママがいなくても仲間に食べられたりなんかしない。
隣の巣穴の子は、自分の親に追い出された。その親に新しいコドモができたからだ。
ワタシもそのうち、自分のコドモを持てばそうするだろう
でもその前に今、逃げられないと生き残れない。
そんなのイヤ!『あぶない』から早く逃げないと!!
「デッ!」「デッスゥ!?」2番は母親と妹を残して、脱兎のごとく逃げ去った。
ニンゲンの気配は既に、彼女にもはっきりわかるほど近づいていた。
足音、匂い、そして話し声。
そして…「おっ、かかっとるかかっとる。この時期の山実装は肥え太っとるから最高じゃわい」
「おりょ、子供もいるのぅ。こりゃ一石二鳥じゃい」
必死で逃げていく2番の耳に、「デェエエエーーーーーーッ!!」妹の悲鳴が小さく届いた。
そして冬がやってきた。
地面も森も雪に覆われて白く凍り付き、冷たく眠り続ける。
そんな凍える山肌で、「デッス、デッスー」1匹の山実装がいまだ活動を続けていた…
かの2番である。
今は完全に成体となり、山実装の平均よりも大きなボディを誇っている。
既に群れの同族は冬の到来に、いやおうなく冬眠せざるを得なくなっていた。
そもそも熊などの生理的に冬眠する機能を備えた生物とは異なり、実装石に冬眠という習慣はない。
再生機能も高いが生命維持で消費するカロリーも異様に高い実装は、本来は通年で活動するものだ。
事実、都市部に生息する野良実装は人間の廃棄するゴミを年中食することができるので冬眠しない
山実装が冬眠の真似をするのは、純粋に食糧事情が通年の活動を許さないために他ならない。
そして、長期間食物を摂取せずにひたすら眠り身体機能を維持していくのは実装石にとっても苦行だ
もし春の到来が遅れれば、再生能力の限界を超え目覚める事のないまま死を迎えることになる。
無事冬を乗り切り目を覚ませるかどうかは多分に運次第。
目覚めた時に、食料を探しに行く体力があるかどうかが問題となってくる
さらに目覚めが他の個体より遅ければ、空腹の同族によって最初の食事にされてしまうだろう。
2番もまたその事実を認識していた。
母親のミミカケから受け継いだ知識と、それを理解する能力のおかげで彼女は群れの仲間より、
危険に対してうまく立ち回ることができた。
既に十分栄養をその体内に蓄えてはいたものの、まだ不十分だと彼女は感じていた。
目を覚ました時すぐ食べられるモノがあれば、寒くない時期がやってきた時に役に立つ
仲間は雪の下に埋もれた食べ物を見つけられずにあきらめてしまったけれどワタシは違う。
どこに何があったか、覚えておけばいいだけのこと。
雪を掘る木の枝もちゃんと用意している。
デプププと笑いながら、2番は雪に覆われた山の稜線を登っていく。
彼女は確かに賢かった。
おそらく実装石としては、望める限り最高の知能を持っていたと言える。
しかし…やはり経験は足りなかった。
いや知識に対する謙虚な姿勢に欠けていた。
単独行動が危険だという知識は、既に仔実装のころに得ていたにもかかわらず、
成体になったことでその知識を軽んじてしまっていたのだ。
以前、彼女が外敵から逃れられた理由は身代わりになる同族と一緒に行動していたからだが、
成体となり仔実装に比べて段違いの体力と行動力を得た2番はその事実を軽視し
単独行動してしまった。
結局はそれが…彼女の命取りになるのであった。
「デッスゥ!デッススゥー♪」山の稜線に鳥の死骸を見つけ、思わず2番はそこに足を止めた。
ゆっくりと照準がスコープの中で2番の姿に合わせられ、そして…
「…デギッ!?」突然…2番は体を貫いた衝撃と激痛に呻いた。そっと、その場所に手をやると…
「デェッ!?」胴体の真ん中には大穴が開いていた。体液が止めどもなく流れだし、意識が遠のく。
なんで、何故?なにがおきたの?痛い、痛い痛い!なんでこんなことに、なんで!!
遠くでダーンという音が聞こえたが、もう2番にはその音と激痛との関連を考えている力はなかった。
「デッ…ギャアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ッ !!」
絶叫とともに…2番は雪の斜面を転げ落ちていった…
「おお、当たった。流石にオジイは名人じゃのう」
「バラ弾35年、ライフル20年。山実装撃ちは40年やっとるからのう、年期が違うて」
2番を射倒した猟師は、満足げにショートピースに火を付けて言った。
冬はますます厳しさを増している。例年になく降り続く雪は野も山も白い重みで埋め尽くしていく。
いったい何匹の山実装が凍てつく季節を生き延びられるのか…それは誰にもわからない。
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注釈. 及び後記.
*1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。
*2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。
*3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。
*4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。
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1 Re: Name:匿名石 2024/10/12-02:32:15 No:00009368[申告] |
実装石最初期は野良でも2か月で成体になってたのか |
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