タイトル:【塩】 仲良し双子
ファイル:仲良し双子.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:175 レス数:1
初投稿日時:2005/11/03-00:00:00修正日時:2005/11/03-00:00:00
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このスクは[実装石虐待補完庫(塩保)]の[過去スクまとめ]に保管されていたものです。
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from uploader 初めて書いた物がちょっと形になったので載せてみます。 まだまとまり切ってないため、ありきたりな展開の上に無駄に長くて申し訳ないです。 妹の鈴音が実装石の親子(親+仔7匹)を拾ってきた。 家で飼いたいと言ってたけど、私はダメだろうなと思っていた。 だけど、意外にも両親はあっさりと認めてくれた。 私は、困ったことになったな、そう思っていた。 そしてそれが始まりだった。 私(琴音)と妹の鈴音は双子の姉妹だ。 見分け方は髪の毛の短い方が私、長い方が妹。 オッドアイの双子人形とは正反対。 高校生になったら伸ばしてみたかったけど、妹が伸ばすと言ったから仕方がない。 私は姉だから、譲れるものは妹に譲ってあげなければいけない。 私は姉として妹を可愛がり、面倒を見てあげなければならない。 私が少しだけ先に生まれただけで同い年、それは何となくおかしいと思ってはいるけれど、 今までずっとそうしてきたのだから、いきなり変えられるものでもない。 幼い頃からお姉さんだから、お姉さんだからといつも妹に譲り、喧嘩になればほとんど一方的に叱られ、 いつもいつも妹が好き勝手して甘えている側で、我慢を強いられてきた。 それでも、お姉さんらしくしていれば褒めてもらえた。 だから私は我侭言ってわざわざ不興を買うなんてことはしない。 親の求める姉の姿を黙って演じてさえいれば、そこに居場所はあるのだ。 物心つく前から与えられた役割を演じていた。 今ではそれ以外の自分が想像できない。 姉である私は、その役割を全うするために日々努力をし、気が付けば優等生と呼ばれるようになっていた。 真面目で優しい優等生の姉と、明るく奔放で友達も多い人気者の妹。 私達二人は近所でも評判の、仲の良い双子だった。 私は疲れていた。 自分の勉強はあるし、部活もやっている。 妹の宿題を手伝わなければならないし、家事の手伝いもしている。 優等生とは呼ばれているが、日々努力努力で余裕がない。 そこにやってきた親子実装。 実装石をじっと見てみる。 生ゴミ臭くて薄汚い風貌、耳障りな鳴き声、醜い顔、可愛さの欠片もない。 私は実装石が嫌いだった。 私が何より許せないのは、見た目よりむしろ、その性根と仕草。 拾ってきたのは妹だけど、世話をするのは私になるんだろうな、思わず溜息がこぼれた。 実装石親子は、私の隣の物置のように使われている部屋に住むこととなった。 面倒だけど、荷物を全部その部屋の押入れに詰めこんでおく。念のため、自分のものは自分の部屋へ。 ゴミを出したばかりなので、片付けが楽で良かった。 そこにトイレとベッドを設置し6畳の、実装石にとっては広めであろう居住空間の完成だ。 そこに実装石たちを招き入れようとすると、 「お姉ちゃん、実装石をお風呂に入れてあげて。」 妹は期待を裏切らない。やはり世話係は私。 断ろうと思ったけど、妹が期待に満ちた眼差しで私を見つめている。 結局こうなるのか。でも妹のお願いだし、仕方がない。 ベッドに転がり、目を閉じて今日の出来事を反芻する。最悪の1日だった。 何が悲しくて、実装石なんかとお風呂に入らなければいけないのか。 一日の疲れを洗い流すどころか、逆にもう一日分の疲れを溜め込んで汚れた、そんな感じだった。 きれいに洗ったけど生ゴミ臭さは取れず、私は肩を落とした。 さらに悪いことに、実装石の服と一緒に私の下着も洗ってしまっていた。もう捨てるしかない。 その後実装石を入れたお風呂を掃除し、体が冷えてしまったのでもう一度シャワーを浴びた。 体の疲労だけならまだいい。心にもかなりの負担がかかった。 お風呂の最中、許せないことがあった。 実装石の親が、お風呂に入っている時、私の裸を見て笑ったのだ。 自分のスタイルがいいとは思っていない。 けど、薄汚いざらざらの肌、無駄に張った乳房、くびれのない腰、バサバサベトベトで汚い髪の毛、 その醜い体のお前に、何故私が笑われなければならないのか。 「デプププププ」 あの不快な含み笑いが頭にこびりついて離れない。 無性に腹が立って、その晩私はなかなか寝つけなかった。 こうして実装石のいる生活が始まった。 拾ってきた妹だが、はじめのうちは餌をあげたり、仔実装と遊んだりもしていた。 しかし3日も過ぎれば完全に飽きて、世話は全部私に押し付けていた。 実装石は嫌いだけど、全く情が湧かなかったわけでもない。 トイレもすぐ覚えてくれたし、置いておいた玩具もそれほど散らかさない。 抱き上げると喜ぶ仔実装、子供のうちなら可愛いかも、なんて思ったりもした。 しかしそれも最初のうちだけだった。 1匹を抱き上げると周囲から不満の声が溢れ出す。 そして抱き上げられた仔実装の優越感に浸った満足げな鳴き声。 自分が一番だと信じて疑わない傲慢な本性、 初日のお風呂の件でもあったように、根拠のない自信をもって、簡単に他者を見下す。 餌が足りないと騒ぎ立て、自分を構えと媚び始める。 嫌悪感は増すばかりだった。 実装石が来て1週間が経ち、私達姉妹は実装リンガルを手に入れた。 妹は満足していたが、私はますます実装石が嫌いになった。 実装リンガルを得て、家の実装石たちはなかなか賢い群れだということがわかった。 実装石たちは私達姉妹を見分け、たまにしか現れない妹をお客様、いつも世話している私を召使いのように思っている。 そして妹がいる時には行儀良くしているが、いなくなると途端に私をあごで使おうとする。 そこそこに知恵があり、傲慢で自己中心的な固体の集団・・・最悪だ、と思った。 その頃になると、私も実装石についてネットで情報収集をするようになっていた。 そこで一つの疑問が浮かんできた。 こういう自己中心的な性格をした群れなら、妬みによる実装石同士の虐め、 或いは噂に聞く共食いなどで数が減っていてもおかしくない。 しかし、1週間を過ぎても個体数は変わらず、部屋に居座っていた。 その理由は、ある時部屋の向こう側から聞こえてきた声によって知ることとなる。 実装リンガルにはこう訳されていた。 「デスデス、デスゥ、デスンデスデス、デスデスデスデスゥ!!」 (足りなくなったらあの人間に持ってこさせればいいんだから、今ある分をみんなで同じく分けるんデスゥ!!) どうやら喧嘩してたのを諌めていたらしい。でも、そういうことだった。 みんながみんな、満足いく量の餌を貰っていれば、一番重要な食欲絡みでの争い事は起こらない。 他にも欲しいものは私に貢がせればいいのだから、一時は喧嘩になったとしてもすぐに収まる。 私がいて世話をしている限り、ここでは命に関わるほどのいざこざは起こらないのだ。 私はネットで実装石の生態について詳しく知ると同時に、虐待のことについても知った。 実装石を躾るには、餌を上手に利用するか虐待するか、であると。 躾については、さほど部屋を荒らしたりはしないうちの実装石、気にすることもないかなと思ったけど、 私を顎で使うその態度が気に入らない。それは改めたかった。 私は新しい玩具を買って来いとわめきたてる仔実装にデコピンをした。 その時はすっきりしたけど、事態は最悪の方向へ進んだ。 「デスゥ!!デスデスゥ!!」(髪の長い女に言いつけるデスゥ!!) 親実装がこのことを妹に告げ口したのだ。 そして、妹がこのことを親に言った。 私は親に、動物を虐待するなと散々叱られた。 家族みんなは愛護派。 私の存在は、実装石以下になってしまった。 拾ってきた妹はもう何もしようとしない。 実装石さえいなければ・・・ この家にいるのも苦痛でしかなかった。 夕食後、妹が私の部屋に入ってくる。 「お姉ちゃん、実装石が餌をねだってうるさいよ」 「うん、わかった。すぐやるから」 やりたくない。本当は妹の仕事のはずなのに。 「あと、今日の宿題なんだけど・・・」 妹は、甘えれば私が何でもやってくれると思っている。 でも私は姉。妹の面倒をみなければならない。 拒否すれば、職務怠慢だと両親に叱られるだけ。 もう私の言い分は通らなくなって久しい。 強情張って不快な思いをさらに積み上げることもない。黙って従っておけばいい。 「あとちょっとで終わるから、先にお風呂でも入ってて」 「はーい」 妹が出ていくと、私は実装フードを取り出した。 隣の部屋からデスデス不快な声が漏れてくる。 部屋に入るなり、私は実装親子に囲まれた。 餌が遅いということなのだろう。私の足を叩いたり蹴ったりしている者もいる。 今この状態で媚びてくる者はいない。彼女たちにとって、既に餌は貰えて当然な事なのだ。 私は実装石にすら逆らえない。 実装石は盛られた餌を平らげ、そこではじめて媚びてくる。 「デスゥ、デス〜ン!!」「「テチュテチュ、テチュ〜ン!」」 デザートが欲しい、構って欲しい、ということらしい。 私の世話している実装石にとって、媚とは一段階上の要求をする時のための手段なのだ。 餌を貰う、風呂に入る、トイレを片付けるとか、そんな当たり前のことをしてもらうのに媚びたりなんかしない。 私はコンペイトウをばら撒いた。 こいつらも知っている。甘えてねだれば、私は絶対逆らえないということを。 拒否すればいずれは実装リンガルを通して妹に、妹から両親に・・・。面倒は御免だ。 こいつらってなんだか・・・その先の言葉を慌てて飲みこんだ。 そんなこと考えてはいけない。 その時、「テ゛フ゜フ゜フ゜フ゜」親実装が笑った。私の方を見て笑った。 「「テチチチチチチ」」仔実装たちも笑った。 「デスデスデスデスデスゥデスン」(ちょっと可愛い仕草を見せれば簡単に騙されるデスゥ) ・・・私はお前たちが大嫌いだ。 妹が実装親子を拾ってから3週間が過ぎた。 仔実装は中実装ぐらいにまで成長した。 私はもう、実装リンガルなど見たくもない。 彼女たちは私を奴隷か何かだと思っているらしい。 自分のこと、妹のこと、それに加えて実装石のこと。 仕事を増やされて、私は身心ともに参っていた。 昼休み、クラスの喧騒に耐えられず、私は一人体育館裏の日陰でお弁当を広げていた。 すると、体育館の中から声が聞こえてきた。 「え〜っ、鈴音、実装石なんか飼ってるの?」 「まあね。世話してるのはお姉ちゃんだけど。」 妹とその友達の声だ。何となく聞き耳を立ててしまう。 「あんた実装石嫌いだって言ってたじゃん。」 えっ? 「うん。嫌いだよ。」 ??? 「じゃあ何で飼ってんのよ。」 「ちょっとストレス発散?なんてね。」 どういう・・・こと? 「うわっ、鈴音って、もしかして虐待派?」 「まあね。」 妹が、虐待?混乱して、よくわからない・・・ 「お姉さん可哀想だよ。あんな生ゴミの世話させられて。」 「別に。なんか優等生ぶっててムカツクし。ちょっと先に生まれたってだけで姉キ面すんなってーの。」 「鈴音って毒舌www実の姉も虐待www」 「そうだよ、私、虐待大好きだし。あいつ、実装石に奴隷扱いされてるんだよ、笑えるよね。」 巻き起こる笑い声。妹の口からは私への侮辱の言葉が次々と吐き出される。 私は、私はあなたの嫌がらせを一生懸命我慢してこなしてきたの? 私は、本当はあなたに、そんなにまで嫌われていたの? 窓からそっと中を覗いて見る。友達に囲まれた人気者の妹。 髪が長いけど、私と同じ姿。髪の長い私。私が笑っている。私を笑っている。 髪の長い私が、みんなの前で私の存在を否定している。 頭の中が真っ白になった。お弁当を片付け、気が付いたら学校を抜け出し、家に帰り着いていた。 母はパートでいない。 実装石の部屋のドアを開ける。 突然の帰宅に驚いていたようだが、すぐに自分を構えと媚びてくる。 こいつらは妹に虐待されてたのか。妹が一緒の時に行儀が良かったのは、妹が怖かったからなのか。 「デスデス」「「テチュテチュ」」 上目遣いに期待した目で体をくねらせ媚びてくる。 「デッス〜ン」「「テチュー、テッチュ〜ン」」 その姿がある人間の姿と重なってくる。 『お姉ちゃん、宿題見せて〜』 私は部屋を出て、自分の部屋に入った。隣からはデスデスとわめきたてる耳障りな声が聞こえてくる。 私は妹が・・・・・・だいっきらいだ!! その夜、無断早退をした私は両親にひどく怒られた。 だけど両親の言葉は、今の私には届かない。 どうして二人同じく育ててくれなかったのだろう。 ただただ、理不尽に思う。もやもやがどんどん胸の奥から湧き出して、体全体に広がっていく。 「琴音、聞いてるの!?」 「うるさい!!」 反射的に私は母親を突き飛ばしていた。母はただ茫然と私を見ていた。 「琴音!!」 父の平手が私の頬を叩く。 私は、私は父に、殴りかかっていた。 勿論、男である父にかなうはずもない。父は私を押し倒し馬乗りになると、何度も平手を叩きつけてきた。 痛い、痛い、痛いよ・・・叩かれた跡が熱く、涙が止まらなかった。 いつのまにか父の重みが消え、気が付くと私は自分のベッドに横たわっていた。 母が部屋に入って来て何か言っていたが、よくわからなかった。 表情は険しかったからたぶんお小言だろう。 母は私が顔を向けると視線を逸らし、部屋から出ていった。 初めての反抗。体は痛くてたまらない。でも、少しだけもやもやが晴れた気がした。 と、その時少しだけドアが開いた。 「お姉ちゃん、宿題・・・」 ドアの向こうから覗きこんでいる顔を見て、またもやもやが噴出して来る。 うるさい!!媚びるな、私と同じ顔して媚びるな!!私の顔で媚びるな!! だけど声がかすれて出ない。体が痛くて動けない。 そんな私の様子を見ると、妹はそっとドアを閉じた。 ドアの向こうから少し、笑い声が漏れてきた。 妹は私の様子を見にドアを開けたのだ。殴られてボロボロの私を見て嘲るために。 その姿に、実装石が重なった。 その日が金曜日だったのは幸いだった。 腫れた顔、ボロボロな体で学校なんか行けない。 今日は日曜、両親とも出かけて家にはいない。 殴られた顔の腫れも引いてきて、体の痛みも消えかけていた。 土曜日、家族とは一言も言葉を交わさず過ごした。実装石の世話もしていない。 そのためか、隣では実装石の抗議の大合唱だ。 「お姉ちゃん、実装石うるさいよ!!」 ドアの向こうで声がした。私は無視する。 「お姉ちゃん!!」 誰かが私の部屋に入ってきた。 「お姉ちゃん、実装石をなんとかしないと、お母さんに言うよ!!」 ああ実装妹か、耳元で一々うるさいな。 私は返事もせずに起き上がり、実装フードを持って隣の部屋に入っていく。 入ってすぐに私は前にあったように取り囲まれ、足を蹴られた。 実装石達はデスデスと抗議の声をあげている。トイレも片付けなかったから臭い。 私は無造作に餌をばら撒くと、トイレの掃除を始めた。 飢えていたのか、実装石たちは餌を拾い集めて貪り食っている。浅ましい。 その時、餌を頬張りながら、親実装がトイレ掃除をする私を見て笑った。 「デプププププ」 私は切れた。 「笑うな。」 私は立ち上がり、親実装を蹴り飛ばした。 空気の抜けたバレーボールのような感触、親実装は壁に打ちつけられた。 そのまま歩み寄り、その醜くゆがんだ顔に握り拳を叩きつけていく。 「デ、デプッ、デッデッ、デギャァァァァァ!!」 仔実装達が親実装の異変に気付き、抗議の声をあげたり私に殴りかかってきたりする。 「お姉ちゃん、何してるの!!」 騒ぐ実装石たちの声を聞きつけ、妹がやってきた。しかし私は構わず殴り続ける。 「お姉ちゃん、やめて!!いい加減にしないとお母さんに・・・」 「言えば?」 間髪入れずに私は答えた。 私は気付いてしまった。母を突き飛ばしたあの時に。母が私から視線を逸らしたあの時に。 気付いたのは私だけでなく、母も気付いてしまったのだろう。 『暴力』になったら、私には敵わない、ということに。 私は当然母より若く、部活もやっているから体力もある。私の方が強い。 私から目を逸らしたあの時、母は怯えていた。今私が殴っている親実装のように。 この家で私が敵わないのは父だけ。だけど、告げ口されようがそんなことどうでもいい。 私は実装石を、殴って殴って殴りつける。 「お姉ちゃん!!」 妹が私の肩に掴み掛かってきた。私は振り返り、掴み合う。 「実装石の奴隷のくせに!!」 「うるさい。」 もみ合う二人。しかし思った通り、私の方が強い。 テニス部に入ったけどサボってばかりの妹より、日頃鍛錬している私の方が、強い。 体の基本性能は同じぐらいでも、日々の生活ぶりが明暗を分けた。 「優等生ぶってんじゃないよ!!お前なんて・・・」 妹が本性を剥き出しにしてきた。その言葉の一つ一つが私の胸に突き刺さる。 「黙れ。」 私は妹を引き倒すと、父が私にしたように馬乗りになり、むちゃくちゃに手を振り落とした。 妹も反撃してくるけど、夢中で手を振り落とした。 私は殴っている。実装石のような、この浅ましく醜い妹を。でも・・・ 痛い、いたい、イタイ・・・実装石を殴っている時とは違う・・・ 今妹を殴っているこの手が痛い、そして妹に殴られてたところも痛い・・・ そうだ、妹は、実装石なんかじゃ・・・ない・・・ 妹が顔を腫らして泣いていた。 私と同じ顔で、私と同じ声で。妹が泣いていた。そして私も、泣いていた。 「お姉ちゃん・・・ずるいよ。何でもできて、何でもすごくて・・・」 妹が、私の下で、恨み言を呟き始めた。 いい子だといつも褒められるのは姉の私、いつしか劣等感を抱くようになったと。 だからあてつけで私の欲しがる物を奪い、嫌なことは全部押し付けてきた。 そんな妹のしてきた事は許せない。でも、妹もまた悩んでいた。妹という配役に縛られていた。 私は、私もずっと抱いていた思いを妹に語った。 ずっと我慢を強いられ、欲しいものが手に入らなかった今までの思いを。 私は姉であろうと努力してきたけど、逆にそれが妹を追い詰め、姉妹の溝を深めてしまっていた。 確かに妹は私にひどいことをした。でも、私にだって原因はあった。二人を分けて育てた両親にも。 私はなんて事をしてしまったのだろう。この手で、妹を何度も何度も・・・ 「たまたま私が先に生まれた、ただそれだけの事なのにね。」 「お姉ちゃん・・・」 同じ日に生まれた姉妹なのに、無理に姉と妹でいようとしたことが無理だったのだと、 私達は今更ながらに気付いた。 私達はお互いに首を絞めあって、これまで生きてきたんだ。 私達は年の離れた姉妹ではないのだから、守る守られるの関係なんておかしい。 勿論、それで上手くいく人達もいるのだろうけど、その関係は私達には合ってなかった。 私は、妹を実装石に似ていると思った。 だけど性根は私も実装石だった。 私は実装石。抱き上げられて喜ぶ実装石を、恨めしそうに嫉妬深い眼差しで見上げる実装石。 何の事はない、二人とも自分が一番と思っている、傲慢で自己中な実装石だったのだ。 その時私は思った。実装石なんていやだ。私達は違う。実装石なんかでいたくない。 今まではそうだったかもしれない。だけど変わるんだ、変われるんだ。変わろう、妹と一緒に。 そうだ、私達は互いを思いやれる人間の姉妹になれる。私達は自分達の醜さに、気付くことができたのだから。 私達は、本当の仲良し姉妹になるんだ。 ふと気が付くと、私達姉妹を実装石達が取り囲み、私に乗られて動けない妹を殴っていた。 呆然とする私達。 「何これ・・・」 「あぁ、私、こいつら虐待してたから、仕返しのつもりなのかも。」 親実装は私の足をぺちぺち叩いている。 あんなに妹の前ではいい子ぶってたのに、妹が劣勢と知るや、掌返して仕返しに走るとは。 でも虐待したのは妹だし、因果応報かも。そういえば私も親実装を殴ったし。 だけど・・・ 「テチッ!!」 私は妹を殴っている仔実装を殴り飛ばした。 立ち上がって蹴り飛ばし、踏みつけ、摘み上げて壁に叩きつける。 「鈴ちゃんが叩かれてるのを見ると、ムカツクんだよね。」 「今まで散々馬鹿にして、こき使ってくれてありがとう!!」 ついでに逃げようとする親実装を踏みつけ蹴り飛ばす。 「デアアアアアアア!!」 ドアが開きっぱなしだったのに気付き、逃げられないように閉める。 「お姉ちゃん、そいつは私にやらせてよ。」 妹が起き上がり、親実装を蹴り始めた。 「デァッ、デギャァァァァ!!」 「お姉ちゃんを殴るなんて、最低の糞虫ね。」 私達はわかりあえた。それぞれが互いに妄想を膨らまし、いがみ合い、妬んでいた。 でもそんなことをする必要なんてなかったんだ。 そして部屋中に実装石たちの悲鳴が響き渡った。 「デッデッデッ、デァッ、デギャァァァァアァァァァァ!!」 「あ、今すごいいい声で鳴いた。何したの?」 「腕を捻り切ったの。お姉ちゃんもやってみなよ。」 私も仔実装を捕まえてやってみた。プチッ。 「テチャァァァアァアアアァァアァ!!」 「すぐ千切れちゃった。」 「ダメだよお姉ちゃん。仔実装は儚いからもっとじわじわやらないと。」 妹は虐待の先生だ。 楽しい、楽しいよ。虐待楽しいよ!! 妹は楽しそうに笑っていた。私と同じ顔で、同じ声で。 私も笑っているのだろうか。私も笑っている。妹と同じ顔で楽しそうに笑っている。 今までの私達姉妹はお前達と同じ糞虫だったけど、これからは違う。 私達には本物の姉妹愛が実装されるんだ。 お前達とは違う、お前達では永遠に手に入らないものを手に入れるんだ。 そしてお前達はここで死ぬ。 「デギャアアアアァァァァァァ!!」「「テチャァァァァァァァ!!」」 赤と緑の返り血に染まった私達は、一緒にお風呂に入り、その後は私のベッドで二人一緒に眠りについた。 こんな風に二人で寝るのなんで、何年振りだろう。 部屋を分けられ初めて一人のベッドで眠った時、とても心細くてなかなか寝つけなかった。 隣に妹のぬくもりを感じながら、そんな幼き日のことを思い出していた。 「お姉ちゃん、ごめんね。」 私は妹の体をぎゅっと抱きしめた。 「私の方こそ、ごめんね。」 最近、私達の雰囲気が変わったと良く言われる。 以前よりもっと柔らかな感じになったらしい。 今まで通り私達は姉と妹だけど、以前とは違う、役割などない対等な関係の姉妹だ。 私も無理に頑張らなくて良くなったせいか、ゆとりが生まれて友達が増えた。 妹は私に押し付けてた事を自分でやらなければならなくなり大変そうだけど、 手に余る物は私もちょっとだけ手伝ってるし、少しずつ慣れてきているから大丈夫。 私達が仲良くなった分、両親とはちょっと溝が出来たみたいだけど、たぶんなんとかなると思う。 前と同じようにはならないだろうけど、その方がいい。 「デスー、デスー」 振り返ると実装石が仔実装を差し出している。 仲良く歩く私達姉妹を見ると、可愛がってもらえると思うのだろうか。 最近実装石が寄って来ることが多い。 「お姉ちゃん、可愛いね。」 「そうね、可愛がってあげたくなるね。」 それを聞いて実装親子の表情が明るくなる。 「「おいで。」」 「デッス〜〜〜ン」「「テチュテチュ」」 私達は顔を見合わせ、微笑んだ。 本当に最近、実装石が寄って来ることが多い。私達を虐待姉妹とも知らずに。 あれ以来、私もすっかり虐待にはまってしまった。 「(私、精神的虐待とかやってみたいなぁ)」 「(うーん、でも釣り天井も使ってみたいかな)」 「(じゃあ、両方やればいいんだよ)」「(そうね)」 私達姉妹は虐待初心者。やってみたいことはまだまだたくさんある。 私達は近所でも評判の仲良し双子。 仲良し実装虐待姉妹。 私は澄み渡る空を見上げ、防音の部屋が欲しいな、と思った。 −完− ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注釈. 及び後記. 05/11/03(木)03:00:00 *1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。 *2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。 *3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。 *4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 戻る from uploader 初めて書いた物がちょっと形になったので載せてみます。 まだまとまり切ってないため、ありきたりな展開の上に無駄に長くて申し訳ないです。 妹の鈴音が実装石の親子(親+仔7匹)を拾ってきた。 家で飼いたいと言ってたけど、私はダメだろうなと思っていた。 だけど、意外にも両親はあっさりと認めてくれた。 私は、困ったことになったな、そう思っていた。 そしてそれが始まりだった。 私(琴音)と妹の鈴音は双子の姉妹だ。 見分け方は髪の毛の短い方が私、長い方が妹。 オッドアイの双子人形とは正反対。 高校生になったら伸ばしてみたかったけど、妹が伸ばすと言ったから仕方がない。 私は姉だから、譲れるものは妹に譲ってあげなければいけない。 私は姉として妹を可愛がり、面倒を見てあげなければならない。 私が少しだけ先に生まれただけで同い年、それは何となくおかしいと思ってはいるけれど、 今までずっとそうしてきたのだから、いきなり変えられるものでもない。 幼い頃からお姉さんだから、お姉さんだからといつも妹に譲り、喧嘩になればほとんど一方的に叱られ、 いつもいつも妹が好き勝手して甘えている側で、我慢を強いられてきた。 それでも、お姉さんらしくしていれば褒めてもらえた。 だから私は我侭言ってわざわざ不興を買うなんてことはしない。 親の求める姉の姿を黙って演じてさえいれば、そこに居場所はあるのだ。 物心つく前から与えられた役割を演じていた。 今ではそれ以外の自分が想像できない。 姉である私は、その役割を全うするために日々努力をし、気が付けば優等生と呼ばれるようになっていた。 真面目で優しい優等生の姉と、明るく奔放で友達も多い人気者の妹。 私達二人は近所でも評判の、仲の良い双子だった。 私は疲れていた。 自分の勉強はあるし、部活もやっている。 妹の宿題を手伝わなければならないし、家事の手伝いもしている。 優等生とは呼ばれているが、日々努力努力で余裕がない。 そこにやってきた親子実装。 実装石をじっと見てみる。 生ゴミ臭くて薄汚い風貌、耳障りな鳴き声、醜い顔、可愛さの欠片もない。 私は実装石が嫌いだった。 私が何より許せないのは、見た目よりむしろ、その性根と仕草。 拾ってきたのは妹だけど、世話をするのは私になるんだろうな、思わず溜息がこぼれた。 実装石親子は、私の隣の物置のように使われている部屋に住むこととなった。 面倒だけど、荷物を全部その部屋の押入れに詰めこんでおく。念のため、自分のものは自分の部屋へ。 ゴミを出したばかりなので、片付けが楽で良かった。 そこにトイレとベッドを設置し6畳の、実装石にとっては広めであろう居住空間の完成だ。 そこに実装石たちを招き入れようとすると、 「お姉ちゃん、実装石をお風呂に入れてあげて。」 妹は期待を裏切らない。やはり世話係は私。 断ろうと思ったけど、妹が期待に満ちた眼差しで私を見つめている。 結局こうなるのか。でも妹のお願いだし、仕方がない。 ベッドに転がり、目を閉じて今日の出来事を反芻する。最悪の1日だった。 何が悲しくて、実装石なんかとお風呂に入らなければいけないのか。 一日の疲れを洗い流すどころか、逆にもう一日分の疲れを溜め込んで汚れた、そんな感じだった。 きれいに洗ったけど生ゴミ臭さは取れず、私は肩を落とした。 さらに悪いことに、実装石の服と一緒に私の下着も洗ってしまっていた。もう捨てるしかない。 その後実装石を入れたお風呂を掃除し、体が冷えてしまったのでもう一度シャワーを浴びた。 体の疲労だけならまだいい。心にもかなりの負担がかかった。 お風呂の最中、許せないことがあった。 実装石の親が、お風呂に入っている時、私の裸を見て笑ったのだ。 自分のスタイルがいいとは思っていない。 けど、薄汚いざらざらの肌、無駄に張った乳房、くびれのない腰、バサバサベトベトで汚い髪の毛、 その醜い体のお前に、何故私が笑われなければならないのか。 「デプププププ」 あの不快な含み笑いが頭にこびりついて離れない。 無性に腹が立って、その晩私はなかなか寝つけなかった。 こうして実装石のいる生活が始まった。 拾ってきた妹だが、はじめのうちは餌をあげたり、仔実装と遊んだりもしていた。 しかし3日も過ぎれば完全に飽きて、世話は全部私に押し付けていた。 実装石は嫌いだけど、全く情が湧かなかったわけでもない。 トイレもすぐ覚えてくれたし、置いておいた玩具もそれほど散らかさない。 抱き上げると喜ぶ仔実装、子供のうちなら可愛いかも、なんて思ったりもした。 しかしそれも最初のうちだけだった。 1匹を抱き上げると周囲から不満の声が溢れ出す。 そして抱き上げられた仔実装の優越感に浸った満足げな鳴き声。 自分が一番だと信じて疑わない傲慢な本性、 初日のお風呂の件でもあったように、根拠のない自信をもって、簡単に他者を見下す。 餌が足りないと騒ぎ立て、自分を構えと媚び始める。 嫌悪感は増すばかりだった。 実装石が来て1週間が経ち、私達姉妹は実装リンガルを手に入れた。 妹は満足していたが、私はますます実装石が嫌いになった。 実装リンガルを得て、家の実装石たちはなかなか賢い群れだということがわかった。 実装石たちは私達姉妹を見分け、たまにしか現れない妹をお客様、いつも世話している私を召使いのように思っている。 そして妹がいる時には行儀良くしているが、いなくなると途端に私をあごで使おうとする。 そこそこに知恵があり、傲慢で自己中心的な固体の集団・・・最悪だ、と思った。 その頃になると、私も実装石についてネットで情報収集をするようになっていた。 そこで一つの疑問が浮かんできた。 こういう自己中心的な性格をした群れなら、妬みによる実装石同士の虐め、 或いは噂に聞く共食いなどで数が減っていてもおかしくない。 しかし、1週間を過ぎても個体数は変わらず、部屋に居座っていた。 その理由は、ある時部屋の向こう側から聞こえてきた声によって知ることとなる。 実装リンガルにはこう訳されていた。 「デスデス、デスゥ、デスンデスデス、デスデスデスデスゥ!!」 (足りなくなったらあの人間に持ってこさせればいいんだから、今ある分をみんなで同じく分けるんデスゥ!!) どうやら喧嘩してたのを諌めていたらしい。でも、そういうことだった。 みんながみんな、満足いく量の餌を貰っていれば、一番重要な食欲絡みでの争い事は起こらない。 他にも欲しいものは私に貢がせればいいのだから、一時は喧嘩になったとしてもすぐに収まる。 私がいて世話をしている限り、ここでは命に関わるほどのいざこざは起こらないのだ。 私はネットで実装石の生態について詳しく知ると同時に、虐待のことについても知った。 実装石を躾るには、餌を上手に利用するか虐待するか、であると。 躾については、さほど部屋を荒らしたりはしないうちの実装石、気にすることもないかなと思ったけど、 私を顎で使うその態度が気に入らない。それは改めたかった。 私は新しい玩具を買って来いとわめきたてる仔実装にデコピンをした。 その時はすっきりしたけど、事態は最悪の方向へ進んだ。 「デスゥ!!デスデスゥ!!」(髪の長い女に言いつけるデスゥ!!) 親実装がこのことを妹に告げ口したのだ。 そして、妹がこのことを親に言った。 私は親に、動物を虐待するなと散々叱られた。 家族みんなは愛護派。 私の存在は、実装石以下になってしまった。 拾ってきた妹はもう何もしようとしない。 実装石さえいなければ・・・ この家にいるのも苦痛でしかなかった。 夕食後、妹が私の部屋に入ってくる。 「お姉ちゃん、実装石が餌をねだってうるさいよ」 「うん、わかった。すぐやるから」 やりたくない。本当は妹の仕事のはずなのに。 「あと、今日の宿題なんだけど・・・」 妹は、甘えれば私が何でもやってくれると思っている。 でも私は姉。妹の面倒をみなければならない。 拒否すれば、職務怠慢だと両親に叱られるだけ。 もう私の言い分は通らなくなって久しい。 強情張って不快な思いをさらに積み上げることもない。黙って従っておけばいい。 「あとちょっとで終わるから、先にお風呂でも入ってて」 「はーい」 妹が出ていくと、私は実装フードを取り出した。 隣の部屋からデスデス不快な声が漏れてくる。 部屋に入るなり、私は実装親子に囲まれた。 餌が遅いということなのだろう。私の足を叩いたり蹴ったりしている者もいる。 今この状態で媚びてくる者はいない。彼女たちにとって、既に餌は貰えて当然な事なのだ。 私は実装石にすら逆らえない。 実装石は盛られた餌を平らげ、そこではじめて媚びてくる。 「デスゥ、デス〜ン!!」「「テチュテチュ、テチュ〜ン!」」 デザートが欲しい、構って欲しい、ということらしい。 私の世話している実装石にとって、媚とは一段階上の要求をする時のための手段なのだ。 餌を貰う、風呂に入る、トイレを片付けるとか、そんな当たり前のことをしてもらうのに媚びたりなんかしない。 私はコンペイトウをばら撒いた。 こいつらも知っている。甘えてねだれば、私は絶対逆らえないということを。 拒否すればいずれは実装リンガルを通して妹に、妹から両親に・・・。面倒は御免だ。 こいつらってなんだか・・・その先の言葉を慌てて飲みこんだ。 そんなこと考えてはいけない。 その時、「テ゛フ゜フ゜フ゜フ゜」親実装が笑った。私の方を見て笑った。 「「テチチチチチチ」」仔実装たちも笑った。 「デスデスデスデスデスゥデスン」(ちょっと可愛い仕草を見せれば簡単に騙されるデスゥ) ・・・私はお前たちが大嫌いだ。 妹が実装親子を拾ってから3週間が過ぎた。 仔実装は中実装ぐらいにまで成長した。 私はもう、実装リンガルなど見たくもない。 彼女たちは私を奴隷か何かだと思っているらしい。 自分のこと、妹のこと、それに加えて実装石のこと。 仕事を増やされて、私は身心ともに参っていた。 昼休み、クラスの喧騒に耐えられず、私は一人体育館裏の日陰でお弁当を広げていた。 すると、体育館の中から声が聞こえてきた。 「え〜っ、鈴音、実装石なんか飼ってるの?」 「まあね。世話してるのはお姉ちゃんだけど。」 妹とその友達の声だ。何となく聞き耳を立ててしまう。 「あんた実装石嫌いだって言ってたじゃん。」 えっ? 「うん。嫌いだよ。」 ??? 「じゃあ何で飼ってんのよ。」 「ちょっとストレス発散?なんてね。」 どういう・・・こと? 「うわっ、鈴音って、もしかして虐待派?」 「まあね。」 妹が、虐待?混乱して、よくわからない・・・ 「お姉さん可哀想だよ。あんな生ゴミの世話させられて。」 「別に。なんか優等生ぶっててムカツクし。ちょっと先に生まれたってだけで姉キ面すんなってーの。」 「鈴音って毒舌www実の姉も虐待www」 「そうだよ、私、虐待大好きだし。あいつ、実装石に奴隷扱いされてるんだよ、笑えるよね。」 巻き起こる笑い声。妹の口からは私への侮辱の言葉が次々と吐き出される。 私は、私はあなたの嫌がらせを一生懸命我慢してこなしてきたの? 私は、本当はあなたに、そんなにまで嫌われていたの? 窓からそっと中を覗いて見る。友達に囲まれた人気者の妹。 髪が長いけど、私と同じ姿。髪の長い私。私が笑っている。私を笑っている。 髪の長い私が、みんなの前で私の存在を否定している。 頭の中が真っ白になった。お弁当を片付け、気が付いたら学校を抜け出し、家に帰り着いていた。 母はパートでいない。 実装石の部屋のドアを開ける。 突然の帰宅に驚いていたようだが、すぐに自分を構えと媚びてくる。 こいつらは妹に虐待されてたのか。妹が一緒の時に行儀が良かったのは、妹が怖かったからなのか。 「デスデス」「「テチュテチュ」」 上目遣いに期待した目で体をくねらせ媚びてくる。 「デッス〜ン」「「テチュー、テッチュ〜ン」」 その姿がある人間の姿と重なってくる。 『お姉ちゃん、宿題見せて〜』 私は部屋を出て、自分の部屋に入った。隣からはデスデスとわめきたてる耳障りな声が聞こえてくる。 私は妹が・・・・・・だいっきらいだ!! その夜、無断早退をした私は両親にひどく怒られた。 だけど両親の言葉は、今の私には届かない。 どうして二人同じく育ててくれなかったのだろう。 ただただ、理不尽に思う。もやもやがどんどん胸の奥から湧き出して、体全体に広がっていく。 「琴音、聞いてるの!?」 「うるさい!!」 反射的に私は母親を突き飛ばしていた。母はただ茫然と私を見ていた。 「琴音!!」 父の平手が私の頬を叩く。 私は、私は父に、殴りかかっていた。 勿論、男である父にかなうはずもない。父は私を押し倒し馬乗りになると、何度も平手を叩きつけてきた。 痛い、痛い、痛いよ・・・叩かれた跡が熱く、涙が止まらなかった。 いつのまにか父の重みが消え、気が付くと私は自分のベッドに横たわっていた。 母が部屋に入って来て何か言っていたが、よくわからなかった。 表情は険しかったからたぶんお小言だろう。 母は私が顔を向けると視線を逸らし、部屋から出ていった。 初めての反抗。体は痛くてたまらない。でも、少しだけもやもやが晴れた気がした。 と、その時少しだけドアが開いた。 「お姉ちゃん、宿題・・・」 ドアの向こうから覗きこんでいる顔を見て、またもやもやが噴出して来る。 うるさい!!媚びるな、私と同じ顔して媚びるな!!私の顔で媚びるな!! だけど声がかすれて出ない。体が痛くて動けない。 そんな私の様子を見ると、妹はそっとドアを閉じた。 ドアの向こうから少し、笑い声が漏れてきた。 妹は私の様子を見にドアを開けたのだ。殴られてボロボロの私を見て嘲るために。 その姿に、実装石が重なった。 その日が金曜日だったのは幸いだった。 腫れた顔、ボロボロな体で学校なんか行けない。 今日は日曜、両親とも出かけて家にはいない。 殴られた顔の腫れも引いてきて、体の痛みも消えかけていた。 土曜日、家族とは一言も言葉を交わさず過ごした。実装石の世話もしていない。 そのためか、隣では実装石の抗議の大合唱だ。 「お姉ちゃん、実装石うるさいよ!!」 ドアの向こうで声がした。私は無視する。 「お姉ちゃん!!」 誰かが私の部屋に入ってきた。 「お姉ちゃん、実装石をなんとかしないと、お母さんに言うよ!!」 ああ実装妹か、耳元で一々うるさいな。 私は返事もせずに起き上がり、実装フードを持って隣の部屋に入っていく。 入ってすぐに私は前にあったように取り囲まれ、足を蹴られた。 実装石達はデスデスと抗議の声をあげている。トイレも片付けなかったから臭い。 私は無造作に餌をばら撒くと、トイレの掃除を始めた。 飢えていたのか、実装石たちは餌を拾い集めて貪り食っている。浅ましい。 その時、餌を頬張りながら、親実装がトイレ掃除をする私を見て笑った。 「デプププププ」 私は切れた。 「笑うな。」 私は立ち上がり、親実装を蹴り飛ばした。 空気の抜けたバレーボールのような感触、親実装は壁に打ちつけられた。 そのまま歩み寄り、その醜くゆがんだ顔に握り拳を叩きつけていく。 「デ、デプッ、デッデッ、デギャァァァァァ!!」 仔実装達が親実装の異変に気付き、抗議の声をあげたり私に殴りかかってきたりする。 「お姉ちゃん、何してるの!!」 騒ぐ実装石たちの声を聞きつけ、妹がやってきた。しかし私は構わず殴り続ける。 「お姉ちゃん、やめて!!いい加減にしないとお母さんに・・・」 「言えば?」 間髪入れずに私は答えた。 私は気付いてしまった。母を突き飛ばしたあの時に。母が私から視線を逸らしたあの時に。 気付いたのは私だけでなく、母も気付いてしまったのだろう。 『暴力』になったら、私には敵わない、ということに。 私は当然母より若く、部活もやっているから体力もある。私の方が強い。 私から目を逸らしたあの時、母は怯えていた。今私が殴っている親実装のように。 この家で私が敵わないのは父だけ。だけど、告げ口されようがそんなことどうでもいい。 私は実装石を、殴って殴って殴りつける。 「お姉ちゃん!!」 妹が私の肩に掴み掛かってきた。私は振り返り、掴み合う。 「実装石の奴隷のくせに!!」 「うるさい。」 もみ合う二人。しかし思った通り、私の方が強い。 テニス部に入ったけどサボってばかりの妹より、日頃鍛錬している私の方が、強い。 体の基本性能は同じぐらいでも、日々の生活ぶりが明暗を分けた。 「優等生ぶってんじゃないよ!!お前なんて・・・」 妹が本性を剥き出しにしてきた。その言葉の一つ一つが私の胸に突き刺さる。 「黙れ。」 私は妹を引き倒すと、父が私にしたように馬乗りになり、むちゃくちゃに手を振り落とした。 妹も反撃してくるけど、夢中で手を振り落とした。 私は殴っている。実装石のような、この浅ましく醜い妹を。でも・・・ 痛い、いたい、イタイ・・・実装石を殴っている時とは違う・・・ 今妹を殴っているこの手が痛い、そして妹に殴られてたところも痛い・・・ そうだ、妹は、実装石なんかじゃ・・・ない・・・ 妹が顔を腫らして泣いていた。 私と同じ顔で、私と同じ声で。妹が泣いていた。そして私も、泣いていた。 「お姉ちゃん・・・ずるいよ。何でもできて、何でもすごくて・・・」 妹が、私の下で、恨み言を呟き始めた。 いい子だといつも褒められるのは姉の私、いつしか劣等感を抱くようになったと。 だからあてつけで私の欲しがる物を奪い、嫌なことは全部押し付けてきた。 そんな妹のしてきた事は許せない。でも、妹もまた悩んでいた。妹という配役に縛られていた。 私は、私もずっと抱いていた思いを妹に語った。 ずっと我慢を強いられ、欲しいものが手に入らなかった今までの思いを。 私は姉であろうと努力してきたけど、逆にそれが妹を追い詰め、姉妹の溝を深めてしまっていた。 確かに妹は私にひどいことをした。でも、私にだって原因はあった。二人を分けて育てた両親にも。 私はなんて事をしてしまったのだろう。この手で、妹を何度も何度も・・・ 「たまたま私が先に生まれた、ただそれだけの事なのにね。」 「お姉ちゃん・・・」 同じ日に生まれた姉妹なのに、無理に姉と妹でいようとしたことが無理だったのだと、 私達は今更ながらに気付いた。 私達はお互いに首を絞めあって、これまで生きてきたんだ。 私達は年の離れた姉妹ではないのだから、守る守られるの関係なんておかしい。 勿論、それで上手くいく人達もいるのだろうけど、その関係は私達には合ってなかった。 私は、妹を実装石に似ていると思った。 だけど性根は私も実装石だった。 私は実装石。抱き上げられて喜ぶ実装石を、恨めしそうに嫉妬深い眼差しで見上げる実装石。 何の事はない、二人とも自分が一番と思っている、傲慢で自己中な実装石だったのだ。 その時私は思った。実装石なんていやだ。私達は違う。実装石なんかでいたくない。 今まではそうだったかもしれない。だけど変わるんだ、変われるんだ。変わろう、妹と一緒に。 そうだ、私達は互いを思いやれる人間の姉妹になれる。私達は自分達の醜さに、気付くことができたのだから。 私達は、本当の仲良し姉妹になるんだ。 ふと気が付くと、私達姉妹を実装石達が取り囲み、私に乗られて動けない妹を殴っていた。 呆然とする私達。 「何これ・・・」 「あぁ、私、こいつら虐待してたから、仕返しのつもりなのかも。」 親実装は私の足をぺちぺち叩いている。 あんなに妹の前ではいい子ぶってたのに、妹が劣勢と知るや、掌返して仕返しに走るとは。 でも虐待したのは妹だし、因果応報かも。そういえば私も親実装を殴ったし。 だけど・・・ 「テチッ!!」 私は妹を殴っている仔実装を殴り飛ばした。 立ち上がって蹴り飛ばし、踏みつけ、摘み上げて壁に叩きつける。 「鈴ちゃんが叩かれてるのを見ると、ムカツクんだよね。」 「今まで散々馬鹿にして、こき使ってくれてありがとう!!」 ついでに逃げようとする親実装を踏みつけ蹴り飛ばす。 「デアアアアアアア!!」 ドアが開きっぱなしだったのに気付き、逃げられないように閉める。 「お姉ちゃん、そいつは私にやらせてよ。」 妹が起き上がり、親実装を蹴り始めた。 「デァッ、デギャァァァァ!!」 「お姉ちゃんを殴るなんて、最低の糞虫ね。」 私達はわかりあえた。それぞれが互いに妄想を膨らまし、いがみ合い、妬んでいた。 でもそんなことをする必要なんてなかったんだ。 そして部屋中に実装石たちの悲鳴が響き渡った。 「デッデッデッ、デァッ、デギャァァァァアァァァァァ!!」 「あ、今すごいいい声で鳴いた。何したの?」 「腕を捻り切ったの。お姉ちゃんもやってみなよ。」 私も仔実装を捕まえてやってみた。プチッ。 「テチャァァァアァアアアァァアァ!!」 「すぐ千切れちゃった。」 「ダメだよお姉ちゃん。仔実装は儚いからもっとじわじわやらないと。」 妹は虐待の先生だ。 楽しい、楽しいよ。虐待楽しいよ!! 妹は楽しそうに笑っていた。私と同じ顔で、同じ声で。 私も笑っているのだろうか。私も笑っている。妹と同じ顔で楽しそうに笑っている。 今までの私達姉妹はお前達と同じ糞虫だったけど、これからは違う。 私達には本物の姉妹愛が実装されるんだ。 お前達とは違う、お前達では永遠に手に入らないものを手に入れるんだ。 そしてお前達はここで死ぬ。 「デギャアアアアァァァァァァ!!」「「テチャァァァァァァァ!!」」 赤と緑の返り血に染まった私達は、一緒にお風呂に入り、その後は私のベッドで二人一緒に眠りについた。 こんな風に二人で寝るのなんで、何年振りだろう。 部屋を分けられ初めて一人のベッドで眠った時、とても心細くてなかなか寝つけなかった。 隣に妹のぬくもりを感じながら、そんな幼き日のことを思い出していた。 「お姉ちゃん、ごめんね。」 私は妹の体をぎゅっと抱きしめた。 「私の方こそ、ごめんね。」 最近、私達の雰囲気が変わったと良く言われる。 以前よりもっと柔らかな感じになったらしい。 今まで通り私達は姉と妹だけど、以前とは違う、役割などない対等な関係の姉妹だ。 私も無理に頑張らなくて良くなったせいか、ゆとりが生まれて友達が増えた。 妹は私に押し付けてた事を自分でやらなければならなくなり大変そうだけど、 手に余る物は私もちょっとだけ手伝ってるし、少しずつ慣れてきているから大丈夫。 私達が仲良くなった分、両親とはちょっと溝が出来たみたいだけど、たぶんなんとかなると思う。 前と同じようにはならないだろうけど、その方がいい。 「デスー、デスー」 振り返ると実装石が仔実装を差し出している。 仲良く歩く私達姉妹を見ると、可愛がってもらえると思うのだろうか。 最近実装石が寄って来ることが多い。 「お姉ちゃん、可愛いね。」 「そうね、可愛がってあげたくなるね。」 それを聞いて実装親子の表情が明るくなる。 「「おいで。」」 「デッス〜〜〜ン」「「テチュテチュ」」 私達は顔を見合わせ、微笑んだ。 本当に最近、実装石が寄って来ることが多い。私達を虐待姉妹とも知らずに。 あれ以来、私もすっかり虐待にはまってしまった。 「(私、精神的虐待とかやってみたいなぁ)」 「(うーん、でも釣り天井も使ってみたいかな)」 「(じゃあ、両方やればいいんだよ)」「(そうね)」 私達姉妹は虐待初心者。やってみたいことはまだまだたくさんある。 私達は近所でも評判の仲良し双子。 仲良し実装虐待姉妹。 私は澄み渡る空を見上げ、防音の部屋が欲しいな、と思った。 −完− ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注釈. 及び後記. 05/11/03(木)03:00:00 *1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。 *2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。 *3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。 *4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 戻る

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1 Re: Name:匿名石 2024/07/17-20:42:43 No:00009252[申告]
何か仲良くなってるけど双子の姉は妹をどうにかして始末したほうが良い
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