タイトル:【塩】 めんどくさがり屋の飼育は虐待寸前 その2
ファイル:めんどくさがり屋の飼育は虐待寸前 その2.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:465 レス数:2
初投稿日時:2006/06/09-00:00:00修正日時:2006/06/09-00:00:00
←戻る↓レスへ飛ぶ

このスクは[実装石虐待補完庫(塩保)]の[過去スクまとめ]に保管されていたものです。
2021/10:塩保消滅によりスクが見れなくなりましたので当保管庫の保存したキャッシュを表示します
めんどくさがり屋の飼育は虐待寸前 その2 06/06/09(Fri),15:54:49 from uploader 次の朝、「」はリビングで目を覚ました。 「(なんでこんなところに寝ているんだっけ……)」 寝ぼけ眼でベランダからの日差しをみると、ベランダの3分の一ほどを占領する巨大な内側が 糞まみれの水槽とその中に軍手の中に首まですっぽりと体を入れて寝る仔実装たちと、 ただ横たわっている大きな実装石の4匹の実装親子が目にはいった。 「(ああそうだ、実装石を飼い始めたんだ……)」 「」は寝ぼけた頭で思い出すと、時間を確認し、洗面所に歩いていった……。 飼い始めたからにはまず欠かさず飯をやらなければなるまい。実装フードを手に取りベランダに出る。 「しかし、汚いな……」 改めて糞まみれの水槽の惨状に眉をひそめる「」。中の実装石親子はまだテフテフと眠っている。 やはり最初に水槽の洗浄をすることにした。彼らも朝シャワーしたいだろう。 ホースを水道とつなぎ、蓋を開け、眠っている実装親子にかまわず水をぶっ掛けた。 ジャババババババババババ 「「「!!!!!!!!くぁswでrftgyふjl「」@;。(翻訳不能)」」」 寝耳に水どころか、寝全身に汚水といった突然の掃除に、実装親子は目を回して飛び起き、 何やら言っている。 朝から元気な連中だ。仔実装は溺れながら濡れて張り付く軍手からもがいて出ようとしている。 水槽内は、糞の溶けた汚水のなかを実装石とおもちゃのゴムボールやカエルがぐるぐると回り、 汚水は実装親子たちを汚しながら、排水溝からゆっくりと出て行っている。 一旦注水を止め、汚水が全部水槽内から出て行くのを待つ。 するとようやくホースを持った「」を見て事態に気づいた親子実装が 「デスデッスー! (いきなり何しやがるデスバカニンゲン! 可愛いワタシたちになんてことをするデス!)」 「「テッチー!(死ぬところだったテチー! 詫びとして金平糖持ってくるテチー!)」」 などといってくるが気にしない。 「おまえらが糞をおまるにしないのが悪いんだよ。」 再度水をぶっ掛ける。 「デデくぁwせdrftgyふじkぉp;@!!(翻訳不能)」 「「テ゛チュカ゛ホ゛ホ゛えrtybヴんみ(不能)」 二回の放水で水槽内から汚れはだいぶ消えたようだ。 ゲホゲホデフデフテフテフと息をつく親仔実装にかまわず、今度はクリーナーをぶっ掛けていく。 水槽の壁、水槽の底、おもちゃに餌皿におまる、そして実装親子に満遍なくシュッシュッとかける。 「デッッスー!!(目に染みるデス薬品臭いデスー!)」 「テ゛ッチ゛ー!(目が見えないテ゛チー!)」 「テチャー!(ギャー!)」 「テェェン!(ママー!)」 底に汚水にまみれた軍手が残っているのでコレを雑巾として大雑把に擦っていく。 汚れの激しいところから順に、おまるや餌皿、おもちゃも適当にごしごしと。 最後に実装親子をぬぐう。 「デスー!(汚いデスー!)」 「テ゛チュー!(ワタチの顔がーテ゛チ!)」 「テ゛チー(アワアワフ゛クフ゛ク……)」 大体洗い終わったら再度ホースで水をぶっ掛ける。 「「「くぁえsdrftgyふじおklp」」」 「よし、コレでいいだろう。おまえたちも今度からちゃんとおまるに糞しろよ」 「」は最早気力もなくグッタリと倒れている、綺麗になった実装親子たちにそう言った。 糞を漏らす暇もなかったようで、パンコンもなく、匂いもなく綺麗で清清しい水槽になった。 ベランダの端に放っておいた昨日の風呂代わりの鍋を取り出し、水を張り、 クリーナーを溶かして汚れた軍手を放り込む。 漬け置き洗いである。だいぶ汚れたが綺麗にしてやらなければ。何しろ今日も使う布団なのだから……。 「じゃあ飯にするか」 びしょ濡れで、まだクリーナーも落としきってない餌皿に乱暴に実装フードを開ける。 倒れている実装親子は飯だというのにピクリともしない。 「あ、そういえば飲料用の水も用意しなきゃなあ」 ベランダを見渡すが、容器になりそうなものはない。ふと水槽内の使われた形跡のない おまるに目が留まる。 「これでいいな。」 おまるにホースから水をあける。だばだばと水が他にも飛ぶが、実装親子は文句も言わずに グッタリとしている。 糞をしたら飲料水が糞味になるが、まあ、実装石だしいいだろう。 大学の帰りに何か皿っぽいものを用意するまでの辛抱だ。 それから親子に着替えも用意してやらなければなるまい。今日は忙しくなりそうだ……。 それより自分の飯を食べよう。 朝から掃除をし、清清しい気分のまま、「」は部屋に戻り今日の準備を始めた……。 「ただいまー」 「」が大学から帰る頃には既にベランダに射す陽は眩いオレンジ色になっていた。 その逆光の中、オッドアイの実装たちがおもちゃで遊んだり、親仔が抱きあってるのが見えた。 餌皿の実装フードは既に空で、おまるには緑の粘土のようなものがこびりつき、水を緑に染めていた。 水槽内に特に汚れはなく、今朝の掃除にも懲りたのか、きちんとトイレの言いつけは伝わったようだ。 やはり実装石の教育は体罰で叩き込むほかの道はないのだろう。 帰ってきた「」に水槽内の親子実装たちは気づいてペンペンと水槽を叩き始めた。 蓋を開けると 「デッスー! (どこ行ってやがったデスバカニンゲン! ワタシたちを放っておいて外出とはいい度胸デス!)」 「レチャー!(お腹減ったレチ! 今度こそ金平糖を持ってきたレチ!?)」 「レチー!(抱っこしてステーキを食わせれば勘弁してやるレチ!)」 「テ゛チテ゛チー!(バカニンゲン、いい加減部屋に戻すテ゛チ!)」 期待したとおりの言葉を投げかけてくれた。 「」は無視して、ゴミ捨て場で拾ってきた小さなタッパー容器に水を汲んで水槽内に置いた。 コレで飲料水はOKだろう。 「デスー!(このしょぼいのはなんデス貧乏人間! せめて水じゃなくて酒を入れるデスー!)」 などと文句を言われるが特に返したい言葉はない。それより容器洗ってないけど実装石だしいいか。 「そんなことよりいい物を持ってきてやったぞー」 と鞄から何かの入ったビニール袋を取り出す。 「デスデスー!(ステーキデス! 褒めてやるデス、バカニンゲン!)」 「「「テッチー!(やったテチー!)」」」 はしゃぎ出す実装親子。 しかし、「」がビニールから取り出したのはいくつかの汚い緑の布切れ……。実装石の服だった。 「」は服の替えを調達しようとしたものの、貧乏大学生にそんなもん買う余裕なんかない。 そこで先の公園に行き、アメで釣った実装石らを蹴飛ばすなどで動けなくした後、 服を剥ぎ取ってきたのだ。服のなくなった実装石がどうなるかは知っていたが、 「」は愛護家でもないし野良がいくら死のうがどうでも良かった。 「デスデッスゥー! (そんな汚いのワタシには似合わないデスー! もっと綺麗でキラキラなの持ってくるデス!)」 「テ゛チー!(いらないテ゛チ! ステーキはどこテチ!)」 「テテチー(お腹空いたレチー)」 「レレチャー(可愛いアタチを抱っこさせてやるから金平糖を持ってくるレチー)」 評判はよろしくないが、こいつらも着ざるをえないだろうし、気にしないことにする。 それから流石に下着までは取ってこれなかった。ただでさえ汚いのに、剥ぎ取るときも ドバドバと糞を漏らすのでとても触りたくない。まあノーパンでも構わないし、場合によっては 適当な布切れを穴あけて履かせよう。 ずり落ちないようにセロテープで貼り付ければいいだろう。 あわせて4着の実装着を軍手を消毒洗浄していたところに放り込み、糞まみれのおまるを回収する。 「デプププ……(バカニンゲンにはワタシたちの糞の片づけがお似合いデス……♪)」 と笑いやがったが、叱り付けて反省されては面白くないので放置する。 トイレに行き、中身をひっくり返して流す。そしておまるは特に水で流し洗いもせず水槽に戻した。 「デススーン!(臭いですバカニンゲン!)」 「レチー!(レテ゛ィーに信じられないテ゛チ!)」 「テテッチー!(こんな汚いもの可愛いワタチのそばに置くなテチ!)」 自分たちの糞なのに何を言っているのかと「」は思った。おまるはどうせ酷く汚れるのだ。 水で流さなくても別にいいだろう。そのうち水槽ごと洗えばいいし。 「」のめんどくさがり屋の習性が発揮された。 「さて、飯にするか」 台所で手を洗ってから、鞄から何かを取り出す。その手にあるのは大きな一枚肉、ステーキである。 叩きもせずに塩コショウを振って焼く。ベランダの戸と水槽の蓋を閉めずにおいたので その香ばしい匂いは水槽まで届いた。 「デッススーン♪(ステーキデスー!)」 「「「テッチュゥーン♪(ステーキステーキ幸せテチー♪)」」」 おおはしゃぎの声がベランダから聞こえる。 やがてステーキをさっさと焼き終え、弁当屋で買ってきたライス、お湯で溶くだけの即席の 味噌汁を用意してベランダの戸の前においた。 「デデッスー♪(褒めてやるデス♪ さあ寄越すデス)」 「テッチーテッチー(ワーイワーイステーキテチー♪)」 「」はベランダに出て激安実装フードを、水槽の中の空の餌皿に上から乱暴にぶちまけ、 水槽に蓋をする。 「デス?」「テチ?」「テチッ?」「テチュ」 一瞬何がなんだかわからないという顔をする実装親子。 「」が部屋に戻って親子実装のすぐ前で置いておいた豪華な晩餐を食べ始めた瞬間 「「「「…………!!!!!…………!!!!」」」」 実装親子が事態を把握し、何かを叫びつつ烈火のごとく暴れ始める。 興奮して糞を漏らしながら水槽を叩いている。……汚いのであまり見ていたくはない。 あちらから食っているところが見えるようにすこし横を向いて食べる。 「あー、ちょーうめー。」 防音水槽を閉じたので恐らく聞こえてはいないだろうが、「」の幸せそうな顔と減っていく ステーキでわかるのだろう。水槽につけっぱなしのリンガルには、死んでしまえ、ぶっとばす、 ワタシの糞を食らえなどの言葉が流れていた。どんなに騒いでも変わらない「」の態度と、 だんだんと減っていくステーキとを見て騒ぎはゆっくりと静まりながら、泣きと媚びに変わっていった。 リンガルには、お腹空いたレチーご主人様、可愛いワタシがこんなに頼んでるデスゥ、抱っこさせてや るレチ、など予想通りの文字が流れるが、最初からやる気はない。「」はとうとう一人で久々の豪華な 食事を食べ終えたのだった。 水槽を見ると実装親子はパンコンしつつ、よだれを垂らして未だ未練がましくこちらを見ていた。 「」はぷるぷると首を振り、水槽内の実装フードを指差して、それを食えとジェスチャーで示して台 所に片付けに行った。 その後ろでは、テンテンと泣き喚く仔実装たちと、がっくりとうな垂れる親実装の姿があったのだった。 財布は傷むが、このためにステーキなんぞを用意した甲斐があった……、「」は満足げであった。 やることもないので寝転がってテレビのバカな番組を見る。むろんベランダからも見れるように 位置を変えた。後ろのベランダの水槽を振り返ってみると、実装フードを食べながら顔を水槽に べったりとくっつけて、テレビを凝視している実装親子の姿があった。子の一匹はテレビに 飽きたのかテチテチとおもちゃのかえるにまたがって遊んでいる。 突然TVを消して振り返ってみる。 親実装は、デッ……という声を出しているのがわかるほど、びっくりした顔をして固まっていた。 爆笑する「」。それをみて親実装はデスー!と怒り出すのがまた可笑しい。 ひとしきり笑った後、TVをつけて、寝っ転がる。すると水槽内の実装石もピタリと静かになり TVを凝視する。しばらくしてパッとTVを消す「」。振り返ると水槽内の親実装は先ほどと 同じ表情で固まっていた。再び爆笑する「」と怒り出す親実装、飽きておもちゃで戯れる仔実装たち。 実装石には、服と食い物と自分の命に関わること以外には、ほとんど学習能力がないため、 「」が飽きるまでこの遊びは続いた。 「そうだ、いいもの買ってきてやったんだ。」 「」はおもむろに鞄を探り出す。鞄から取り出したのは一つの菓子。金平糖…… と思わせておいて果実酒用の氷砂糖だった。別にたいした違いはないだろうと思って買ってきた。 金平糖と比べれば量のわりに安い。これは1キロ300円である。 ベランダに出て水槽の蓋を開けるとおもちゃで遊んでいた仔実装たちも、 やさぐれていた親実装もこちらを見上げてくる。 「いいもんやるぞー」 と、氷砂糖を多めに一掴み掴むと、既に空の餌皿にザラザラとあける。 「デッスーン!(金平糖デスゥ、待ちくたびれたデスゥ♪)」 「テッチュー!(甘いものテ゛チー)」 餓鬼のように群がり、一斉に頬張る。 「デッススーン♪(甘いデス美味しいデス褒めてやるデス♪)」 「テ゛ッチー(金平糖美味しいテ゛チ♪)」 金平糖ではないが、実物を食べたことがないのか、興奮で甘くて硬ければ金平糖になっているのか……、 それはわからないが、勘違いしてくれる分には費用が浮いて助かる。 毎日元気がなくなっていっては退屈で困る。実装石は甘やかせば増長する生き物なので、 適度にほどこせばずっと愉快なことをいい続けるだろう。それこそが「」の狙いだった。 デスデステ゛チテ゛チと夢中で食べているのを尻目に、実装の風呂の用意をする。 ベランダで実装の衣類の漬けおき洗いに使っている鍋をひっくり返して、水を軒下に捨て、類を取 り出す。綺麗になっている。そして台所で熱湯と水と洗剤を混ぜて即席風呂を作る。 今日はわざとお湯の温度を50度に計って調節する。 銭湯のガンコ爺すらちょっと水で埋めたくなる熱さである。 まあ実装なのだから熱湯や直火でない限り問題はないだろう。 ベランダに持っていくと実装親子は既に氷砂糖を平らげていた。 舐めずに少しづつ噛んで一気に食べたようだ。 「デッスーン♪(もっと寄越すデス)」 「テ゛チ!(袋ごと入れるテ゛チッ!)」 実装親子の要求を当然無視して、餌皿を端にうっちゃり、あっつーいガンコ風呂鍋を水槽に入れる。 「デスデスデッスーン!(お風呂じゃないデス!金平糖を寄越すデス!)」 「テチテチ!(おフロと金平糖の違いもわからないなんて、どれだけバカなんテ゛チ!)」 などと文句を言っていたが、全く無視して、同じ鍋に漬けておいた、 先の軍手と予備の実装着を水槽に投げ入れた。 「コレもついでに洗っておけよ」 そういって自らも風呂に入りにいった。 不用意に熱い湯に飛び込んだ仔実装の「「「テ゛ッチー!!!」」」という絶叫を聞きながら。 風呂から上がるとすでに洗濯も終わったようで、親子四人匹仲良くデスデステチテチ歌いながら 鍋の湯に浸かっている。 「」は水槽の中から洗濯し終えた服と下着、軍手を取り出し、一つのハンガーにまとめてかけて 洗濯バサミでとめ、干した。 次に気持ちよく歌を歌っている親子実装を無視して、フロ鍋を掴んでひっくり返す。 「デジャー!!!」「テ゛チャー!」「テチャー!「テェェ」 くつろいでいるところに突然、餌皿の上にひっくり返される裸の親子実装。 湯はさっき実装親子が漏らした糞を押し流しながら排水溝に消えていく。 水槽を洗う手間も省けて一石二鳥である。 「デスデスデス!!(いきなり何するデス!)」「テェェ(驚いたテ゛チ酷いテ゛チ)」 などと文句を言ってくる実装親子は、さらにあることに気づいた。 「テ゛チッ!?(服がないテ゛チー!?)」 「デッスー!(おのれバカニンゲン、どこに隠したデス!)」 「テ゛チェェン(服がないと恥ずかしいテ゛チー)」 しかし服を着ないとほんとにみすぼらしい生き物である。……人間もそうかもしれんが。 「服なら干したよ」 「デデデッスー!(ならすぐ替えを持ってきやがるデス!)」 「ねえよ。全部干した。」 「デ! デデッスデスウ!(じゃあ買ってこいデス! 可愛いやつデス!)」 「明日からなら交互に服を着られるんだがなあ。……ちょっと待ってろ。」 「」はそういうと洗面所に行き、あるものを持ってきて水槽に放り込んだ。 「デス?」 放り込まれたのは二枚の汚い雑巾。綺麗な服を想定していた裸で濡れた実装石たちは理解できず 一瞬固まる。 「おやすみ」 水槽の蓋を閉じて部屋に戻りベランダの戸を閉める。昨日から敷きっぱなしの布団にもぐり、電気を消す。 寝返ってベランダを見るとやはり糞を漏らしながら水槽を叩くおなじみの姿の実装親子が見えた……。 それからの毎日は「」にとって、とても愉快な毎日だった。 ある日は数日間世話をするのが面倒で放っておいた。 数日間は早く美味しいご飯を寄越すデス、お風呂に入れるテ゛チなどと騒いでいたが、全て無視していた。 さらに数日経って、いい加減、中が見えないほど水槽は糞で汚れて異臭を放ち、 実装親子の声も聞こえないので世話をしてやることにした。 中では糞まみれの実装親子がグッタリと倒れていた。 糞を食べて食いつないだのかおまるの中の糞は空になっていた。 とりあえず水をぶっ掛けて水槽ごと洗い始めると、ヨロヨロと起き上がり、汚水となった水を 飲みながら実装親子は少しずつ息を吹き返したようだった。生きていて何よりである。 息を吹き返した親子に散々文句を言われたので、その日はお詫びに人間の飯である、 超激辛カレー(ルーのみ)を盛った。 実装親子は喜んで舌を引っ掻き回してのた打ち回って平らげたようで、 食べ終わったら倒れこみ、次の朝まで動かなかった。 ある日は主食のドッグフードを切らせたので、今晩はステーキにしてやるといったら大喜びだった。 帰ってきたら早速水槽に買ってきた成形サイコロステーキを晩御飯として出してやった。 なんだか微妙な味らしく、コレがあの伝説のステーキの味かと首を傾げつつ食べていた。 ……まあ生のままだったしなあ。 ある日は数日間掃除もフロに入れるのも面倒になっていて、臭くてたまらなくなったので 水槽ごとまとめて洗った。数種類のクリーナーを駆使して、中の実装ごと綺麗にした。 ただ混ぜてはいけない組み合わせもあったらしく、塩素ガスでみんなのた打ち回って死んでしまった。 こうすればなんとなく生き返るかと思い、栄養ドリンクを流し込んだ水に死体を突っ込んでおいたら、 一時間くらいで生き返って水を飲み始めた。相変わらずデタラメな生き物である。 ある日は親実装の服が替えも含め破けてしまった。何故か「」のせいにして、代わりの服を要求する 親実装石。 では自分で獲得しろと、親実装だけ公園に連れて行き、誰かの服を剥ぎ取って自分のにしろと言った。 飼い実装の力を見せてやるデスと優越感たっぷりに突撃して、野良と殴りあった。野良たちは「」が 参戦しないとわかると すぐに集団で親実装をリンチにした。……飼い実装という理由以上に裸だしなあ。 ある日は暑い暑いという実装親子に氷をプレゼントした。冷凍庫一杯に製氷皿でいちいち氷を 作ったものをザザッと水槽一杯に流し入れてやった。ひんやり冷たい氷に、実装親子はデスデスと 大喜びで食べたり投げあったりして遊んでいたが、しばらくすると寒すぎるのか凍えて助けを求めてきた。 排水溝があるものの、ほぼ密閉されてるから昔の冷蔵庫のようになっていたのだろう。 その様が面白いので、救助要請を無視してじわじわと弱っていく実装親子をスケッチしつつ、 氷が溶けきるまで助けることなく観察した。 ある日は、おやつにミニシュークリームを出した。その未体験の甘味にものすごい勢いでがっつく 実装親子。しかしそのシュークリームには一つ、辛子が入れてあった。 「テ゛ッチャー!!!!」 仔実装の一匹が当ててしまったらしい。しばらく仮死状態になっていたようだったが、 しばらくすると息を吹き返した。 その辛さに苦しむ様が結構面白かったので、今度は全て辛子入りのシュークリームを出してみた。 ……4匹の仮死体を見て、これではドッキリと言うよりただの毒殺と言うことに気づき、 早々に辛子シューを引っ込めた。 彼の名は「」。からかうのが好きなだけで虐待する気はないが、ただいろいろと雑だった。 そんなある日の晩、とうとう実装親子が家を出ると言い始めた。 「デッスデッスー!(もういやデス! ご飯は不味いし、家は狭いしやってられないデス!)」 「テ゛ッチー!(公園に帰ってもっといいニンゲンに拾われるテチー)」 「テチー!(このバカニンゲンは全く役立たずテチ!)」 「テッチャー!(ナデナデもしてくれないニンゲンなんていらないテチー)」 何故か「」はあっさりとその申し出を受け入れ、元の公園にすぐに返すと約束した。 「デッ……?」 驚くほど素直に承諾した「」に親実装は拍子抜けするが、すぐに 「デスデスー!(そういうことなら話は早いデス! 早くここから出しやがるデス!)」 「まあ待てよ、今日はもう遅いし明日帰してやるから。今晩は最後にいいもの食わせてやるぞ」 そういうと、「」は晩御飯に自分と同じ、買ってきた弁当を出してやった。 人間の普段食べる飯に舌鼓を打つ実装親子。仔実装にいたってはエビフライを取り合って 喧嘩している。 「デッスーン♪(美味しいですもっと持って来るデス)」 「テ゛ッチューン!(なんでコレを可愛いワタチに毎日出さなかったんテ゛チ!)」 そんな実装親子を見て「」は新しいからかい方を思いついていた……。 次の日、朝早く家を出て帰ってきた「」。 「最後のプレゼントってことで服を買ってやったぞ」 そう言い出した「」が取り出したのは新品の実装服が四着。 下着もちゃんと実装の服を売る店で買ってきた。 親子実装は、可愛いワタシたちには当然デスゥ、褒めてやるテ゛チとか言っていた。 「その前に体を綺麗にしような」 実装親子は珍しくやたら優しい「」に部屋の中に通され、一度も入ったことのない浴室にいれられる。 人間用の、良い匂いのするシャンプーで髪を洗い、これまたフローラルな香りのボディーソープで 丁寧に体を洗う。無論リンスも忘れずにかけてやる。 体を洗ったら入浴剤の入った適温のお湯を張ったフロ桶に入浴する。 「デスゥ〜……」「テチ〜……」 頬を緩ませ、夢見心地の実装親子。仔の一匹は心地よさのあまり桶のなかで脱糞する。 「」は笑顔ですぐに新しいお湯に取り替えてやる。 かいがいしく世話をする「」に実装親子はデプププ……と見下した笑いをする。 風呂から上がったらこれまた良い香りのするふかふかのタオルで体を拭いてやる。 これほど柔らかい布に今まで触ったことがなかったのか、実装親子は心地よさそうな顔で 「」に体を拭かせた。髪をドライヤーでとかし、櫛を入れて、新品の服を着せて、 香水を振り掛けて完成。 「ああ、これも似合うと思って買ってきたんだ」 そういうと「」はピンクのリボンを取り出し全員の髪に結んでやる。 「デッスーン♪」「「「テッチューン♪」」」 生まれて初めてであろうおしゃれに、すっかりご満悦の実装親子。 どこに出しても恥ずかしくない美しい飼い実装である。 「じゃあお別れだな。元気でな。」 玄関に出して手を振る笑顔の「」。しかし、親子実装は出て行くことなく、 「」の方を向いて媚ポーズをしている。 「デス、デスデス(待つデスゥ。やっぱりここに住んでやっても良いデスゥ)」 すっかり調子に乗った親実装。引き続きこういう扱いをしてもらえると思ってるようだ。 「テチテチテチ(住んでやるんだから感謝するテチ。抱っこすることを許すテチ)」 足に縋りつく仔実装。仔実装の一匹は足をすり抜けて、居間の座布団に横になった。 仔実装もすっかり居座る気になったようだ。 「早く出てけ。」 「」は笑顔をスッと引っ込めてドアを開け、親実装を蹴りだす。 「デボッ!?」 続いて仔実装をポイポイと外に投げると、さっさとドアを閉めた。 「デ、デスーッ!(待つデス! 可愛いワタシが住んでやるといってるのにデス!)」 「テチーッ!(開けるテチー!)」 「テチテチー!(入れるテチー!)」 「テチャー!(無礼者テチー!)」 などとポンポンと閉じられたドアをしばらく叩き続ける実装親子。 しかしいくら経ってもドアは開かれる気配はない。 「デスーッ!(もういいデス! お前なんか願い下げデス! あとで後悔するデス!)」 「テチテチ(もっと良いニンゲンに飼って貰うテチ)」 実装親子はそういうと踵を返して公園に向かった。 その顔にはもっと良い条件で他の人間に飼ってもらうことを既に知っているような、 これからの生活に期待のあふれる表情があった。 「」はそっとドアを開けて、カルガモの親子のようになって公園に向かう、小奇麗な実装親子を見守った。 その顔には分かれて寂しがる元飼い主の、寂しがる表情などなく悪戯っ子のような笑みが浮かんでいた……。 その別れから一時間も経たない「」の家。 ドアが激しく叩かれた。音は実装特有の、柔らかい手で叩くポフポフという音。 ニヤリと笑うと玄関に行き、ドアを開けてやる。 ドアを開けた瞬間、デエエエエと妙な泣き声を出して飛び込んでくる肌色の物体。 両手に何かを抱えていた。 先ほど別れた実装親子の成れの果ての姿であった。 親実装は傷跡だらけの裸で、所々齧られた痕がある。 頭を見れば、出て行ったときにリボンを結んだ、綺麗に洗った髪は根元から引き抜かれたのか、 数十本、髪の毛が残っただけのみすぼらしい風貌であった。 禿裸となった親実装の両手にあるのは、元仔実装であったものだろう。 右手に抱えた仔実装は同じように禿裸になっているが頭と胴以外は右手、右耳を残して 食いちぎられている。 まだ息があるようでテフテフと息遣いはかすかに聞こえる。 左手にも仔実装……だったものが抱えられていた。 こちらも禿裸であるが……胸から下はなく、断面から内臓がはみ出している。 息はなく、既に死んでいるようだ。 偽石を破壊されたようで、恐らく栄養液に漬けたところで回復の見込みはあるまい。 親子実装にはもう一匹、仔実装がいたはずだが……恐らく手遅れだったんだろう。 つまり公園に戻った親子実装は野良実装にリンチに合い、仔実装を抱えて、 この家に逃げ帰ってきたってわけだ。 リンチに合うのも当たり前である。親子の風貌はすっかり飼い実装。 良い匂いでリボンまでつけて小奇麗でよく目立つ。 飼い主の姿がなければ嫉妬に狂った野良実装の餌食になるであろうことは想像に難くない。 恐らくその綺麗な服は奪い取られ、リボンは髪ごと引きちぎられ、 良い匂いのする体は食料になったことだろう。 それを見た「」は声を殺して笑う。少しやりすぎたようだが。 そう、これが「」の最後の悪戯だったのだ。 醜く浅ましい実装石たちの姿を見ることを最大の暇つぶしにしていた「」の。 面倒だからその場面は見に行かなかったが。公園ちょっと遠いし。 玄関に立つ「」の足をすり抜け、居間でデェェェンと泣きながら子供を看取る禿裸の親実装。 そこまでに2匹に垂れ流された糞と体液で描かれたレールが敷かれた。 「デェェン!デェェェン!(何してるデスゥ早く可愛いワタシの仔を助けるデスゥ!)」 ひとまず「」は泣きながら騒ぐ親実装をつまみ上げ、ベランダの水槽に放り込む。 「デェェェン!(何するデス! 早くワタシとワタシの子供を助けるデスゥ!)」 好き勝手なことを言う親実装を無視して、まだ生きている仔実装に栄養剤を無理やり喉に流し込む。 コレですぐに生き返ることだろう。偽石も損傷してないようだし。 その仔実装も水槽に放り込むと親実装がそれに縋ってデェェェンと泣く。 もう一匹の屍骸を生ごみの袋に捨てる。 「デッ! デェェェ!?(なっ何するデス!? アタシの子供を助けろデス!)」 「何言ってんだ、手遅れだよ。」 「」はめんどくさそうにドックフードを用意しながらベランダに行く。 「」はデェェェンとわが身の不幸を呪ってなく禿裸親実装の姿を見て、 「(今度はこのまま公園に連れて行こう)」 と次の暇つぶしを思いついていた……。 彼の名は「」。本人は虐待する気はないが、実装石をからかうのが好きな、雑な青年であった……。 =ひとまず了= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注釈. 及び後記. 作者コメント: 長くなってすいません。 今までスク眺めてみて思ったのが、むかつく実装石を飼うときに甘やかすか ガンガン殴る蹴るするかの二極だけが特に多いのが気になりまして、 もっとそれだけではない接し方もやりたいと思って書きました。 つまらなかったらすいません。レッツ忘れて *1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。 *2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。 *3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。 *4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 戻る めんどくさがり屋の飼育は虐待寸前 その2 06/06/09(Fri),15:54:49 from uploader 次の朝、「」はリビングで目を覚ました。 「(なんでこんなところに寝ているんだっけ……)」 寝ぼけ眼でベランダからの日差しをみると、ベランダの3分の一ほどを占領する巨大な内側が 糞まみれの水槽とその中に軍手の中に首まですっぽりと体を入れて寝る仔実装たちと、 ただ横たわっている大きな実装石の4匹の実装親子が目にはいった。 「(ああそうだ、実装石を飼い始めたんだ……)」 「」は寝ぼけた頭で思い出すと、時間を確認し、洗面所に歩いていった……。 飼い始めたからにはまず欠かさず飯をやらなければなるまい。実装フードを手に取りベランダに出る。 「しかし、汚いな……」 改めて糞まみれの水槽の惨状に眉をひそめる「」。中の実装石親子はまだテフテフと眠っている。 やはり最初に水槽の洗浄をすることにした。彼らも朝シャワーしたいだろう。 ホースを水道とつなぎ、蓋を開け、眠っている実装親子にかまわず水をぶっ掛けた。 ジャババババババババババ 「「「!!!!!!!!くぁswでrftgyふjl「」@;。(翻訳不能)」」」 寝耳に水どころか、寝全身に汚水といった突然の掃除に、実装親子は目を回して飛び起き、 何やら言っている。 朝から元気な連中だ。仔実装は溺れながら濡れて張り付く軍手からもがいて出ようとしている。 水槽内は、糞の溶けた汚水のなかを実装石とおもちゃのゴムボールやカエルがぐるぐると回り、 汚水は実装親子たちを汚しながら、排水溝からゆっくりと出て行っている。 一旦注水を止め、汚水が全部水槽内から出て行くのを待つ。 するとようやくホースを持った「」を見て事態に気づいた親子実装が 「デスデッスー! (いきなり何しやがるデスバカニンゲン! 可愛いワタシたちになんてことをするデス!)」 「「テッチー!(死ぬところだったテチー! 詫びとして金平糖持ってくるテチー!)」」 などといってくるが気にしない。 「おまえらが糞をおまるにしないのが悪いんだよ。」 再度水をぶっ掛ける。 「デデくぁwせdrftgyふじkぉp;@!!(翻訳不能)」 「「テ゛チュカ゛ホ゛ホ゛えrtybヴんみ(不能)」 二回の放水で水槽内から汚れはだいぶ消えたようだ。 ゲホゲホデフデフテフテフと息をつく親仔実装にかまわず、今度はクリーナーをぶっ掛けていく。 水槽の壁、水槽の底、おもちゃに餌皿におまる、そして実装親子に満遍なくシュッシュッとかける。 「デッッスー!!(目に染みるデス薬品臭いデスー!)」 「テ゛ッチ゛ー!(目が見えないテ゛チー!)」 「テチャー!(ギャー!)」 「テェェン!(ママー!)」 底に汚水にまみれた軍手が残っているのでコレを雑巾として大雑把に擦っていく。 汚れの激しいところから順に、おまるや餌皿、おもちゃも適当にごしごしと。 最後に実装親子をぬぐう。 「デスー!(汚いデスー!)」 「テ゛チュー!(ワタチの顔がーテ゛チ!)」 「テ゛チー(アワアワフ゛クフ゛ク……)」 大体洗い終わったら再度ホースで水をぶっ掛ける。 「「「くぁえsdrftgyふじおklp」」」 「よし、コレでいいだろう。おまえたちも今度からちゃんとおまるに糞しろよ」 「」は最早気力もなくグッタリと倒れている、綺麗になった実装親子たちにそう言った。 糞を漏らす暇もなかったようで、パンコンもなく、匂いもなく綺麗で清清しい水槽になった。 ベランダの端に放っておいた昨日の風呂代わりの鍋を取り出し、水を張り、 クリーナーを溶かして汚れた軍手を放り込む。 漬け置き洗いである。だいぶ汚れたが綺麗にしてやらなければ。何しろ今日も使う布団なのだから……。 「じゃあ飯にするか」 びしょ濡れで、まだクリーナーも落としきってない餌皿に乱暴に実装フードを開ける。 倒れている実装親子は飯だというのにピクリともしない。 「あ、そういえば飲料用の水も用意しなきゃなあ」 ベランダを見渡すが、容器になりそうなものはない。ふと水槽内の使われた形跡のない おまるに目が留まる。 「これでいいな。」 おまるにホースから水をあける。だばだばと水が他にも飛ぶが、実装親子は文句も言わずに グッタリとしている。 糞をしたら飲料水が糞味になるが、まあ、実装石だしいいだろう。 大学の帰りに何か皿っぽいものを用意するまでの辛抱だ。 それから親子に着替えも用意してやらなければなるまい。今日は忙しくなりそうだ……。 それより自分の飯を食べよう。 朝から掃除をし、清清しい気分のまま、「」は部屋に戻り今日の準備を始めた……。 「ただいまー」 「」が大学から帰る頃には既にベランダに射す陽は眩いオレンジ色になっていた。 その逆光の中、オッドアイの実装たちがおもちゃで遊んだり、親仔が抱きあってるのが見えた。 餌皿の実装フードは既に空で、おまるには緑の粘土のようなものがこびりつき、水を緑に染めていた。 水槽内に特に汚れはなく、今朝の掃除にも懲りたのか、きちんとトイレの言いつけは伝わったようだ。 やはり実装石の教育は体罰で叩き込むほかの道はないのだろう。 帰ってきた「」に水槽内の親子実装たちは気づいてペンペンと水槽を叩き始めた。 蓋を開けると 「デッスー! (どこ行ってやがったデスバカニンゲン! ワタシたちを放っておいて外出とはいい度胸デス!)」 「レチャー!(お腹減ったレチ! 今度こそ金平糖を持ってきたレチ!?)」 「レチー!(抱っこしてステーキを食わせれば勘弁してやるレチ!)」 「テ゛チテ゛チー!(バカニンゲン、いい加減部屋に戻すテ゛チ!)」 期待したとおりの言葉を投げかけてくれた。 「」は無視して、ゴミ捨て場で拾ってきた小さなタッパー容器に水を汲んで水槽内に置いた。 コレで飲料水はOKだろう。 「デスー!(このしょぼいのはなんデス貧乏人間! せめて水じゃなくて酒を入れるデスー!)」 などと文句を言われるが特に返したい言葉はない。それより容器洗ってないけど実装石だしいいか。 「そんなことよりいい物を持ってきてやったぞー」 と鞄から何かの入ったビニール袋を取り出す。 「デスデスー!(ステーキデス! 褒めてやるデス、バカニンゲン!)」 「「「テッチー!(やったテチー!)」」」 はしゃぎ出す実装親子。 しかし、「」がビニールから取り出したのはいくつかの汚い緑の布切れ……。実装石の服だった。 「」は服の替えを調達しようとしたものの、貧乏大学生にそんなもん買う余裕なんかない。 そこで先の公園に行き、アメで釣った実装石らを蹴飛ばすなどで動けなくした後、 服を剥ぎ取ってきたのだ。服のなくなった実装石がどうなるかは知っていたが、 「」は愛護家でもないし野良がいくら死のうがどうでも良かった。 「デスデッスゥー! (そんな汚いのワタシには似合わないデスー! もっと綺麗でキラキラなの持ってくるデス!)」 「テ゛チー!(いらないテ゛チ! ステーキはどこテチ!)」 「テテチー(お腹空いたレチー)」 「レレチャー(可愛いアタチを抱っこさせてやるから金平糖を持ってくるレチー)」 評判はよろしくないが、こいつらも着ざるをえないだろうし、気にしないことにする。 それから流石に下着までは取ってこれなかった。ただでさえ汚いのに、剥ぎ取るときも ドバドバと糞を漏らすのでとても触りたくない。まあノーパンでも構わないし、場合によっては 適当な布切れを穴あけて履かせよう。 ずり落ちないようにセロテープで貼り付ければいいだろう。 あわせて4着の実装着を軍手を消毒洗浄していたところに放り込み、糞まみれのおまるを回収する。 「デプププ……(バカニンゲンにはワタシたちの糞の片づけがお似合いデス……♪)」 と笑いやがったが、叱り付けて反省されては面白くないので放置する。 トイレに行き、中身をひっくり返して流す。そしておまるは特に水で流し洗いもせず水槽に戻した。 「デススーン!(臭いですバカニンゲン!)」 「レチー!(レテ゛ィーに信じられないテ゛チ!)」 「テテッチー!(こんな汚いもの可愛いワタチのそばに置くなテチ!)」 自分たちの糞なのに何を言っているのかと「」は思った。おまるはどうせ酷く汚れるのだ。 水で流さなくても別にいいだろう。そのうち水槽ごと洗えばいいし。 「」のめんどくさがり屋の習性が発揮された。 「さて、飯にするか」 台所で手を洗ってから、鞄から何かを取り出す。その手にあるのは大きな一枚肉、ステーキである。 叩きもせずに塩コショウを振って焼く。ベランダの戸と水槽の蓋を閉めずにおいたので その香ばしい匂いは水槽まで届いた。 「デッススーン♪(ステーキデスー!)」 「「「テッチュゥーン♪(ステーキステーキ幸せテチー♪)」」」 おおはしゃぎの声がベランダから聞こえる。 やがてステーキをさっさと焼き終え、弁当屋で買ってきたライス、お湯で溶くだけの即席の 味噌汁を用意してベランダの戸の前においた。 「デデッスー♪(褒めてやるデス♪ さあ寄越すデス)」 「テッチーテッチー(ワーイワーイステーキテチー♪)」 「」はベランダに出て激安実装フードを、水槽の中の空の餌皿に上から乱暴にぶちまけ、 水槽に蓋をする。 「デス?」「テチ?」「テチッ?」「テチュ」 一瞬何がなんだかわからないという顔をする実装親子。 「」が部屋に戻って親子実装のすぐ前で置いておいた豪華な晩餐を食べ始めた瞬間 「「「「…………!!!!!…………!!!!」」」」 実装親子が事態を把握し、何かを叫びつつ烈火のごとく暴れ始める。 興奮して糞を漏らしながら水槽を叩いている。……汚いのであまり見ていたくはない。 あちらから食っているところが見えるようにすこし横を向いて食べる。 「あー、ちょーうめー。」 防音水槽を閉じたので恐らく聞こえてはいないだろうが、「」の幸せそうな顔と減っていく ステーキでわかるのだろう。水槽につけっぱなしのリンガルには、死んでしまえ、ぶっとばす、 ワタシの糞を食らえなどの言葉が流れていた。どんなに騒いでも変わらない「」の態度と、 だんだんと減っていくステーキとを見て騒ぎはゆっくりと静まりながら、泣きと媚びに変わっていった。 リンガルには、お腹空いたレチーご主人様、可愛いワタシがこんなに頼んでるデスゥ、抱っこさせてや るレチ、など予想通りの文字が流れるが、最初からやる気はない。「」はとうとう一人で久々の豪華な 食事を食べ終えたのだった。 水槽を見ると実装親子はパンコンしつつ、よだれを垂らして未だ未練がましくこちらを見ていた。 「」はぷるぷると首を振り、水槽内の実装フードを指差して、それを食えとジェスチャーで示して台 所に片付けに行った。 その後ろでは、テンテンと泣き喚く仔実装たちと、がっくりとうな垂れる親実装の姿があったのだった。 財布は傷むが、このためにステーキなんぞを用意した甲斐があった……、「」は満足げであった。 やることもないので寝転がってテレビのバカな番組を見る。むろんベランダからも見れるように 位置を変えた。後ろのベランダの水槽を振り返ってみると、実装フードを食べながら顔を水槽に べったりとくっつけて、テレビを凝視している実装親子の姿があった。子の一匹はテレビに 飽きたのかテチテチとおもちゃのかえるにまたがって遊んでいる。 突然TVを消して振り返ってみる。 親実装は、デッ……という声を出しているのがわかるほど、びっくりした顔をして固まっていた。 爆笑する「」。それをみて親実装はデスー!と怒り出すのがまた可笑しい。 ひとしきり笑った後、TVをつけて、寝っ転がる。すると水槽内の実装石もピタリと静かになり TVを凝視する。しばらくしてパッとTVを消す「」。振り返ると水槽内の親実装は先ほどと 同じ表情で固まっていた。再び爆笑する「」と怒り出す親実装、飽きておもちゃで戯れる仔実装たち。 実装石には、服と食い物と自分の命に関わること以外には、ほとんど学習能力がないため、 「」が飽きるまでこの遊びは続いた。 「そうだ、いいもの買ってきてやったんだ。」 「」はおもむろに鞄を探り出す。鞄から取り出したのは一つの菓子。金平糖…… と思わせておいて果実酒用の氷砂糖だった。別にたいした違いはないだろうと思って買ってきた。 金平糖と比べれば量のわりに安い。これは1キロ300円である。 ベランダに出て水槽の蓋を開けるとおもちゃで遊んでいた仔実装たちも、 やさぐれていた親実装もこちらを見上げてくる。 「いいもんやるぞー」 と、氷砂糖を多めに一掴み掴むと、既に空の餌皿にザラザラとあける。 「デッスーン!(金平糖デスゥ、待ちくたびれたデスゥ♪)」 「テッチュー!(甘いものテ゛チー)」 餓鬼のように群がり、一斉に頬張る。 「デッススーン♪(甘いデス美味しいデス褒めてやるデス♪)」 「テ゛ッチー(金平糖美味しいテ゛チ♪)」 金平糖ではないが、実物を食べたことがないのか、興奮で甘くて硬ければ金平糖になっているのか……、 それはわからないが、勘違いしてくれる分には費用が浮いて助かる。 毎日元気がなくなっていっては退屈で困る。実装石は甘やかせば増長する生き物なので、 適度にほどこせばずっと愉快なことをいい続けるだろう。それこそが「」の狙いだった。 デスデステ゛チテ゛チと夢中で食べているのを尻目に、実装の風呂の用意をする。 ベランダで実装の衣類の漬けおき洗いに使っている鍋をひっくり返して、水を軒下に捨て、類を取 り出す。綺麗になっている。そして台所で熱湯と水と洗剤を混ぜて即席風呂を作る。 今日はわざとお湯の温度を50度に計って調節する。 銭湯のガンコ爺すらちょっと水で埋めたくなる熱さである。 まあ実装なのだから熱湯や直火でない限り問題はないだろう。 ベランダに持っていくと実装親子は既に氷砂糖を平らげていた。 舐めずに少しづつ噛んで一気に食べたようだ。 「デッスーン♪(もっと寄越すデス)」 「テ゛チ!(袋ごと入れるテ゛チッ!)」 実装親子の要求を当然無視して、餌皿を端にうっちゃり、あっつーいガンコ風呂鍋を水槽に入れる。 「デスデスデッスーン!(お風呂じゃないデス!金平糖を寄越すデス!)」 「テチテチ!(おフロと金平糖の違いもわからないなんて、どれだけバカなんテ゛チ!)」 などと文句を言っていたが、全く無視して、同じ鍋に漬けておいた、 先の軍手と予備の実装着を水槽に投げ入れた。 「コレもついでに洗っておけよ」 そういって自らも風呂に入りにいった。 不用意に熱い湯に飛び込んだ仔実装の「「「テ゛ッチー!!!」」」という絶叫を聞きながら。 風呂から上がるとすでに洗濯も終わったようで、親子四人匹仲良くデスデステチテチ歌いながら 鍋の湯に浸かっている。 「」は水槽の中から洗濯し終えた服と下着、軍手を取り出し、一つのハンガーにまとめてかけて 洗濯バサミでとめ、干した。 次に気持ちよく歌を歌っている親子実装を無視して、フロ鍋を掴んでひっくり返す。 「デジャー!!!」「テ゛チャー!」「テチャー!「テェェ」 くつろいでいるところに突然、餌皿の上にひっくり返される裸の親子実装。 湯はさっき実装親子が漏らした糞を押し流しながら排水溝に消えていく。 水槽を洗う手間も省けて一石二鳥である。 「デスデスデス!!(いきなり何するデス!)」「テェェ(驚いたテ゛チ酷いテ゛チ)」 などと文句を言ってくる実装親子は、さらにあることに気づいた。 「テ゛チッ!?(服がないテ゛チー!?)」 「デッスー!(おのれバカニンゲン、どこに隠したデス!)」 「テ゛チェェン(服がないと恥ずかしいテ゛チー)」 しかし服を着ないとほんとにみすぼらしい生き物である。……人間もそうかもしれんが。 「服なら干したよ」 「デデデッスー!(ならすぐ替えを持ってきやがるデス!)」 「ねえよ。全部干した。」 「デ! デデッスデスウ!(じゃあ買ってこいデス! 可愛いやつデス!)」 「明日からなら交互に服を着られるんだがなあ。……ちょっと待ってろ。」 「」はそういうと洗面所に行き、あるものを持ってきて水槽に放り込んだ。 「デス?」 放り込まれたのは二枚の汚い雑巾。綺麗な服を想定していた裸で濡れた実装石たちは理解できず 一瞬固まる。 「おやすみ」 水槽の蓋を閉じて部屋に戻りベランダの戸を閉める。昨日から敷きっぱなしの布団にもぐり、電気を消す。 寝返ってベランダを見るとやはり糞を漏らしながら水槽を叩くおなじみの姿の実装親子が見えた……。 それからの毎日は「」にとって、とても愉快な毎日だった。 ある日は数日間世話をするのが面倒で放っておいた。 数日間は早く美味しいご飯を寄越すデス、お風呂に入れるテ゛チなどと騒いでいたが、全て無視していた。 さらに数日経って、いい加減、中が見えないほど水槽は糞で汚れて異臭を放ち、 実装親子の声も聞こえないので世話をしてやることにした。 中では糞まみれの実装親子がグッタリと倒れていた。 糞を食べて食いつないだのかおまるの中の糞は空になっていた。 とりあえず水をぶっ掛けて水槽ごと洗い始めると、ヨロヨロと起き上がり、汚水となった水を 飲みながら実装親子は少しずつ息を吹き返したようだった。生きていて何よりである。 息を吹き返した親子に散々文句を言われたので、その日はお詫びに人間の飯である、 超激辛カレー(ルーのみ)を盛った。 実装親子は喜んで舌を引っ掻き回してのた打ち回って平らげたようで、 食べ終わったら倒れこみ、次の朝まで動かなかった。 ある日は主食のドッグフードを切らせたので、今晩はステーキにしてやるといったら大喜びだった。 帰ってきたら早速水槽に買ってきた成形サイコロステーキを晩御飯として出してやった。 なんだか微妙な味らしく、コレがあの伝説のステーキの味かと首を傾げつつ食べていた。 ……まあ生のままだったしなあ。 ある日は数日間掃除もフロに入れるのも面倒になっていて、臭くてたまらなくなったので 水槽ごとまとめて洗った。数種類のクリーナーを駆使して、中の実装ごと綺麗にした。 ただ混ぜてはいけない組み合わせもあったらしく、塩素ガスでみんなのた打ち回って死んでしまった。 こうすればなんとなく生き返るかと思い、栄養ドリンクを流し込んだ水に死体を突っ込んでおいたら、 一時間くらいで生き返って水を飲み始めた。相変わらずデタラメな生き物である。 ある日は親実装の服が替えも含め破けてしまった。何故か「」のせいにして、代わりの服を要求する 親実装石。 では自分で獲得しろと、親実装だけ公園に連れて行き、誰かの服を剥ぎ取って自分のにしろと言った。 飼い実装の力を見せてやるデスと優越感たっぷりに突撃して、野良と殴りあった。野良たちは「」が 参戦しないとわかると すぐに集団で親実装をリンチにした。……飼い実装という理由以上に裸だしなあ。 ある日は暑い暑いという実装親子に氷をプレゼントした。冷凍庫一杯に製氷皿でいちいち氷を 作ったものをザザッと水槽一杯に流し入れてやった。ひんやり冷たい氷に、実装親子はデスデスと 大喜びで食べたり投げあったりして遊んでいたが、しばらくすると寒すぎるのか凍えて助けを求めてきた。 排水溝があるものの、ほぼ密閉されてるから昔の冷蔵庫のようになっていたのだろう。 その様が面白いので、救助要請を無視してじわじわと弱っていく実装親子をスケッチしつつ、 氷が溶けきるまで助けることなく観察した。 ある日は、おやつにミニシュークリームを出した。その未体験の甘味にものすごい勢いでがっつく 実装親子。しかしそのシュークリームには一つ、辛子が入れてあった。 「テ゛ッチャー!!!!」 仔実装の一匹が当ててしまったらしい。しばらく仮死状態になっていたようだったが、 しばらくすると息を吹き返した。 その辛さに苦しむ様が結構面白かったので、今度は全て辛子入りのシュークリームを出してみた。 ……4匹の仮死体を見て、これではドッキリと言うよりただの毒殺と言うことに気づき、 早々に辛子シューを引っ込めた。 彼の名は「」。からかうのが好きなだけで虐待する気はないが、ただいろいろと雑だった。 そんなある日の晩、とうとう実装親子が家を出ると言い始めた。 「デッスデッスー!(もういやデス! ご飯は不味いし、家は狭いしやってられないデス!)」 「テ゛ッチー!(公園に帰ってもっといいニンゲンに拾われるテチー)」 「テチー!(このバカニンゲンは全く役立たずテチ!)」 「テッチャー!(ナデナデもしてくれないニンゲンなんていらないテチー)」 何故か「」はあっさりとその申し出を受け入れ、元の公園にすぐに返すと約束した。 「デッ……?」 驚くほど素直に承諾した「」に親実装は拍子抜けするが、すぐに 「デスデスー!(そういうことなら話は早いデス! 早くここから出しやがるデス!)」 「まあ待てよ、今日はもう遅いし明日帰してやるから。今晩は最後にいいもの食わせてやるぞ」 そういうと、「」は晩御飯に自分と同じ、買ってきた弁当を出してやった。 人間の普段食べる飯に舌鼓を打つ実装親子。仔実装にいたってはエビフライを取り合って 喧嘩している。 「デッスーン♪(美味しいですもっと持って来るデス)」 「テ゛ッチューン!(なんでコレを可愛いワタチに毎日出さなかったんテ゛チ!)」 そんな実装親子を見て「」は新しいからかい方を思いついていた……。 次の日、朝早く家を出て帰ってきた「」。 「最後のプレゼントってことで服を買ってやったぞ」 そう言い出した「」が取り出したのは新品の実装服が四着。 下着もちゃんと実装の服を売る店で買ってきた。 親子実装は、可愛いワタシたちには当然デスゥ、褒めてやるテ゛チとか言っていた。 「その前に体を綺麗にしような」 実装親子は珍しくやたら優しい「」に部屋の中に通され、一度も入ったことのない浴室にいれられる。 人間用の、良い匂いのするシャンプーで髪を洗い、これまたフローラルな香りのボディーソープで 丁寧に体を洗う。無論リンスも忘れずにかけてやる。 体を洗ったら入浴剤の入った適温のお湯を張ったフロ桶に入浴する。 「デスゥ〜……」「テチ〜……」 頬を緩ませ、夢見心地の実装親子。仔の一匹は心地よさのあまり桶のなかで脱糞する。 「」は笑顔ですぐに新しいお湯に取り替えてやる。 かいがいしく世話をする「」に実装親子はデプププ……と見下した笑いをする。 風呂から上がったらこれまた良い香りのするふかふかのタオルで体を拭いてやる。 これほど柔らかい布に今まで触ったことがなかったのか、実装親子は心地よさそうな顔で 「」に体を拭かせた。髪をドライヤーでとかし、櫛を入れて、新品の服を着せて、 香水を振り掛けて完成。 「ああ、これも似合うと思って買ってきたんだ」 そういうと「」はピンクのリボンを取り出し全員の髪に結んでやる。 「デッスーン♪」「「「テッチューン♪」」」 生まれて初めてであろうおしゃれに、すっかりご満悦の実装親子。 どこに出しても恥ずかしくない美しい飼い実装である。 「じゃあお別れだな。元気でな。」 玄関に出して手を振る笑顔の「」。しかし、親子実装は出て行くことなく、 「」の方を向いて媚ポーズをしている。 「デス、デスデス(待つデスゥ。やっぱりここに住んでやっても良いデスゥ)」 すっかり調子に乗った親実装。引き続きこういう扱いをしてもらえると思ってるようだ。 「テチテチテチ(住んでやるんだから感謝するテチ。抱っこすることを許すテチ)」 足に縋りつく仔実装。仔実装の一匹は足をすり抜けて、居間の座布団に横になった。 仔実装もすっかり居座る気になったようだ。 「早く出てけ。」 「」は笑顔をスッと引っ込めてドアを開け、親実装を蹴りだす。 「デボッ!?」 続いて仔実装をポイポイと外に投げると、さっさとドアを閉めた。 「デ、デスーッ!(待つデス! 可愛いワタシが住んでやるといってるのにデス!)」 「テチーッ!(開けるテチー!)」 「テチテチー!(入れるテチー!)」 「テチャー!(無礼者テチー!)」 などとポンポンと閉じられたドアをしばらく叩き続ける実装親子。 しかしいくら経ってもドアは開かれる気配はない。 「デスーッ!(もういいデス! お前なんか願い下げデス! あとで後悔するデス!)」 「テチテチ(もっと良いニンゲンに飼って貰うテチ)」 実装親子はそういうと踵を返して公園に向かった。 その顔にはもっと良い条件で他の人間に飼ってもらうことを既に知っているような、 これからの生活に期待のあふれる表情があった。 「」はそっとドアを開けて、カルガモの親子のようになって公園に向かう、小奇麗な実装親子を見守った。 その顔には分かれて寂しがる元飼い主の、寂しがる表情などなく悪戯っ子のような笑みが浮かんでいた……。 その別れから一時間も経たない「」の家。 ドアが激しく叩かれた。音は実装特有の、柔らかい手で叩くポフポフという音。 ニヤリと笑うと玄関に行き、ドアを開けてやる。 ドアを開けた瞬間、デエエエエと妙な泣き声を出して飛び込んでくる肌色の物体。 両手に何かを抱えていた。 先ほど別れた実装親子の成れの果ての姿であった。 親実装は傷跡だらけの裸で、所々齧られた痕がある。 頭を見れば、出て行ったときにリボンを結んだ、綺麗に洗った髪は根元から引き抜かれたのか、 数十本、髪の毛が残っただけのみすぼらしい風貌であった。 禿裸となった親実装の両手にあるのは、元仔実装であったものだろう。 右手に抱えた仔実装は同じように禿裸になっているが頭と胴以外は右手、右耳を残して 食いちぎられている。 まだ息があるようでテフテフと息遣いはかすかに聞こえる。 左手にも仔実装……だったものが抱えられていた。 こちらも禿裸であるが……胸から下はなく、断面から内臓がはみ出している。 息はなく、既に死んでいるようだ。 偽石を破壊されたようで、恐らく栄養液に漬けたところで回復の見込みはあるまい。 親子実装にはもう一匹、仔実装がいたはずだが……恐らく手遅れだったんだろう。 つまり公園に戻った親子実装は野良実装にリンチに合い、仔実装を抱えて、 この家に逃げ帰ってきたってわけだ。 リンチに合うのも当たり前である。親子の風貌はすっかり飼い実装。 良い匂いでリボンまでつけて小奇麗でよく目立つ。 飼い主の姿がなければ嫉妬に狂った野良実装の餌食になるであろうことは想像に難くない。 恐らくその綺麗な服は奪い取られ、リボンは髪ごと引きちぎられ、 良い匂いのする体は食料になったことだろう。 それを見た「」は声を殺して笑う。少しやりすぎたようだが。 そう、これが「」の最後の悪戯だったのだ。 醜く浅ましい実装石たちの姿を見ることを最大の暇つぶしにしていた「」の。 面倒だからその場面は見に行かなかったが。公園ちょっと遠いし。 玄関に立つ「」の足をすり抜け、居間でデェェェンと泣きながら子供を看取る禿裸の親実装。 そこまでに2匹に垂れ流された糞と体液で描かれたレールが敷かれた。 「デェェン!デェェェン!(何してるデスゥ早く可愛いワタシの仔を助けるデスゥ!)」 ひとまず「」は泣きながら騒ぐ親実装をつまみ上げ、ベランダの水槽に放り込む。 「デェェェン!(何するデス! 早くワタシとワタシの子供を助けるデスゥ!)」 好き勝手なことを言う親実装を無視して、まだ生きている仔実装に栄養剤を無理やり喉に流し込む。 コレですぐに生き返ることだろう。偽石も損傷してないようだし。 その仔実装も水槽に放り込むと親実装がそれに縋ってデェェェンと泣く。 もう一匹の屍骸を生ごみの袋に捨てる。 「デッ! デェェェ!?(なっ何するデス!? アタシの子供を助けろデス!)」 「何言ってんだ、手遅れだよ。」 「」はめんどくさそうにドックフードを用意しながらベランダに行く。 「」はデェェェンとわが身の不幸を呪ってなく禿裸親実装の姿を見て、 「(今度はこのまま公園に連れて行こう)」 と次の暇つぶしを思いついていた……。 彼の名は「」。本人は虐待する気はないが、実装石をからかうのが好きな、雑な青年であった……。 =ひとまず了= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 注釈. 及び後記. 作者コメント: 長くなってすいません。 今までスク眺めてみて思ったのが、むかつく実装石を飼うときに甘やかすか ガンガン殴る蹴るするかの二極だけが特に多いのが気になりまして、 もっとそれだけではない接し方もやりたいと思って書きました。 つまらなかったらすいません。レッツ忘れて *1:アップローダーにあがっていた作品を追加しました。 *2:仮題をつけている場合もあります。その際は作者からの題名ご報告よろしくお願いします。 *3:改行や誤字脱字の修正を加えた作品もあります。勝手ながらご了承下さい。 *4:作品の記載もれやご報告などがありましたら保管庫の掲示板によろしくお願いします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 戻る

■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため5039を入力してください
1 Re: Name:匿名石 2021/04/05-17:48:33 No:00006324[申告]
名作
2 Re: Name:匿名石 2023/05/28-13:13:32 No:00007244[申告]
そこら辺にうじゃうじゃいそうな凡庸タイプな実装石をベースにしてこれだけ魅力的な話にするのはいいなぁ
滑稽さや無様さを楽しむ分にはこれ以上の逸材はないと感じさせてくれる
戻る