このスクは[実装石虐待補完庫(塩保)]の[[スクあぷろだup0181-1267]に保管されていたものです。日課の朝の散歩中にエサの袋を背負った実装石を見つけた。 中型のコンビニ袋に生ゴミを満載し、辺りを警戒しながらヨタヨタと歩いている。 ・・・・・何時見ても無様な生き物だ。 実装石規制法が施行された今ではほとんど見かけることはなくなったが昔は酷かった。 生ゴミの日にはそこら中のゴミ集積所に実装石が群がりゴミを散らかし、デスデスと騒ぎ立てていたものだ。 散歩中に見つけた連中は裁判キャンセルで即死刑に処していたが一向に数が減らなかったな。 100匹単位で殺していても減らなかった実装石も人間の本格的な駆除の前には歯が立たず、 今では野良猫よりも珍しい存在になっている。 糞蟲は全て死に絶え、生き残った賢い個体も人間の機嫌を損ねないようにコソコソと街の隙間で へばり付く様に生きているこの時世に住宅街を歩く実装石・・・。 見つからないように尾行してゆくと最近町内で問題になっているゴミ捨て場と化した空き地に入ってゆく。 何時の頃からか親の躾のなっていない連中がこれでもかと捨てた家電ゴミと袋入りのゴミの間を 縫うように進んで行くと中程の所に3畳ほどのスペースが現れる。 広場の隅のほうに置かれた段ボールハウスから仔実装の楽しそうな鳴き声が聞こえてくる。 なるほどな・・・。 この家族はあぶれ者の様だ。 実装石規制法が施行されてから日陰で生きなければならなくなった実装石達は、 人間の死角である商業地の隙間に住居を構える様になっていた。 そこならば虐待派や清掃局員からも身を隠せる上に、安全に子育ても出来る。 何よりもレストランなどから出る生ゴミを少量とはいえ確実に手に入れることが出来るので 駆除を生き残った賢い実装石にとっては最高の生活空間と言えた。 でもそんな好条件な場所は限られており、おのずとあぶれる者が出てくる。 そうしたあぶれ者は自然の多く残る山野に落ち延びてゆくか、 危険を承知で住宅街や公園に住居を構えるしかない。 この家族もそうした中の一つなのだろう。 コイツ等もコイツ等なりに危険と悪意に満ちたこの世界で懸命に生きて来たのだろうな・・・。 でも、害蟲は駆除しないといけない。 糞蟲親子が一家団欒をしている段ボールハウスを思いっきり蹴り飛ばし、 壁のようにそそり立つ冷蔵庫の山に叩きつける。 「デウウゥゥ!!!デスゥ!!デスゥゥウウウゥ!!!」 グシャグシャに潰れたダンボールから親蟲が慌てて飛び出してきて辺りを警戒する。 蹴り飛ばされたショックで混乱しているのか5秒ほどしてからようやく巣を破壊した俺を視認した。 定番通りデスデス文句を垂れるのかと思いきや、唸り声を上げて巣内に残るわが子を守ろうとしている。 コイツは愛情のあるフリをしている個体の様だな。 問答無用で俺は親蟲の両足を掴み、7〜8回ほど完全死しない程度の力加減で地面に叩きつけて仮死させる。 「テギャ!!ギュブゥ!!デベッ!!ジュバッ!!デズゥッ!!シュブゥッ!!キュウゥッ!!デブッ!!」 顔を赤緑の体液で染め、舌をだらしなく垂らして仮死した親蟲を投げ捨てて段ボール箱内の子蟲達を覗く。 潰れた段ボール箱内では、8匹の子蟲達が抱き合って震えていた。 親が静かにしている内に子蟲の性格を確かめておこう。 その辺にあった空き箱に取り出した子蟲達を放り込み様子を見る。 少しすると、3匹が頭から湯気を立てて俺に猛烈に抗議を始め、 残りの5匹のうち3匹は隅の方で抱き合って震え、2匹は震える姉妹を慰めているようだ。 なるほど、この二匹が家族内の賢い仔実装か。 「ニンゲン、カワイイワタチにこんなぶれいをしてゆるされるとおもっているテチュか!!」 「そうテチュ!!どげさをしてあやまればゆるしてやるテチュ!! そしてカワイイワタチにほうしをしてつみをつぐなうきかいをやるテチュ!! おまえのわるいあたまでもわかるようにいうと、カワイイワタチをかわせてやるテチュ!!」 「ごはんのじゃまをしたばつとしていますぐおいちいごはんをくわせろテチュ!! えーーっと・・なんていうテチュか・・・とにかくおいちいごはんテチュ!!」 バカ3匹はスーパーピンチな状況も理解できないらしい。 リンガルに表示される言葉遣いをみるとまだ生まれて間もない様だ。 服こそ生え揃っているもののまだ10cmに満たない体格で、 自分の17倍以上もある人間に無礼な発言を平気で行なえる能天気さ。 こいつ等には慎ましさというものは無いのかねぇ・・・まあそんな高尚なものが有れば 大駆除の憂き目に遭うこともなかっただろうしな。 どうしようもないバカ3匹を摘み出し地面に下ろすと、一番バカそうな子蟲を選び出して罰を与える。 まずご自慢の髪の毛を全て毟って腹が減ったを申していた口に捻り込む。 次に詰め込まれた脂まみれの汚い髪を吐き出そうとえずいている子蟲の服を毟り、 それを3つに細く裂いて簡単な三つ編の紐を即席で作る。 目玉を見開き何とか汚い髪の毛を吐き出した子蟲を捕まえて、再度口に自身の汚い髪の毛と頭巾を捻り込み 今度は吐き出せないように服から作り出した紐を猿轡の様に咬ませて頭の後ろで3重の固結びにしてやる。 「ヒョフォウウウゥ!!ホウウ!!フッオウウッ!!」 血涙を流し、転がりまわる姉妹を見てようやく事の重大さを認識したらしい残りのバカ2匹。 抱き合って後ずさりしながら此方を根目上げてくる。 「チュゥウウ・・・。こ、こんなむほうがゆ、ゆるされるテチュか・・・。」 「そ、そうテチュ・・・・。マ、ママさえいればおまえなんかいちころテチュ!」 ・・・・・俺の早とちりだったようだ。 まあいいどうせ罰を与えるつもりだったのだからな。 とりあえずバカ2匹の前髪を毟り、ライターで焼き払う。 「「チュウウウウウウウゥゥウウゥゥゥーーーー!!!!!」」 この世の終わりみたいな絶叫を上げて燃えカスに群がるバカ2匹。 血涙を流しながら燃えカスを掴み、何度も何度も額に押し付けて元に戻そうと足掻く姿はなんとも微笑ましい。 さて、残りの子蟲ちゃんはどうしているかな? 空き箱の中に放り込んである残りの子蟲の様子を見る。 俺のバカな姉妹に対する行動を見ていた子蟲達は露骨な警戒心を剥き出しで威嚇をしてくる。 そんな虚勢も俺が手を伸ばすと粉々に砕け散り、優雅に居眠りをしている親蟲に必死で助けを求める。 「「マ、ママーーー!!たちゅけてぇーーーー!!どこにいるテチュゥーー!!」」 「こわいテチュ・・・。ママァ・・ママ・・。」 「やめてテチュゥ!!こっちにこないでテチュ!!ママはなにをしてるんテチュゥ!!ママァーーー!!」 「いもうとたちにはゆびいっぽんふれさせないテチュゥ!!おまえなんかどっかいっちゃえテチュ!!」 賢いと思われる2匹は丸まって震える三匹の妹を庇う様に立ちふさがり、 震えながらテチュテチュ鳴いて俺を追い払おうと必死になっている。 健気に姉妹を庇っている賢いと思われる2匹を摘み出し、中型の冷蔵庫の上に置いてやる。 「「チュゥゥゥウウウゥウゥーーーー!!!!!」」 自力では脱出出来ない高所に置かれ、我が身に降りかかるであろう苦痛と恥辱を想像し泣き震える2匹。 血涙を流して泣いている所をみると本気で死ぬと思っているようだな・・・・。 「ママ・・・・ママァ・・・。」 「こわいテチュゥ・・どうしてママはたちゅけにこないんテチュ・・・?」 「まあ落ち着けよ子蟲ども、お前達はまだ殺さない。 だから静かにしてお行儀良くそこに立っていろ。 さもないと・・・そこのバカどもよりも酷いことをしてやるからな♪」 俺の恫喝で静かになり、気を付けの体勢で立っている子蟲ども。 人間の恐ろしさを理解し、命令を聞かなければどうなるかを想像できる程度の知恵を持った個体か・・。 まあまあの代物だな、さて本命の親蟲の賢さはどの程度の物かな? 子蟲でこのぐらいなのだから親蟲にも期待が持てそうだ。 仮死から脱出し呻き声を上げながら地面で伸びている親蟲を持ち上げて その辺に転がっていた塩ビ製パイプで2〜3発顔をシバいて意識をこちら側に帰還させる。 「デゥゥゥウゥ!!!い、いったい・・・私はどうしたんで・・・・デウゥ!!」 人間に捕えられていることにようやく気付き狼狽する親蟲。 まったく愚鈍な生き物だな。 こいつを地面に降ろしてやり状況の確認をさせてやる。 悶えるバカ3匹と高い所にいる賢い2匹、そして箱の中で震える普通の3匹・・・・。 間引きする予定のバカ三匹の惨状を見て驚いたようだが、 子供はまだ全員生きていることを確認して安堵する親蟲。 だが俺と目が合い狼狽する。 さて、この後は何を見せてくれるのか。 猛烈な抗議をしてくるかと思いきや、この親蟲はいきなり土下座をして許しを請い始めたではないか・・・。 「お許しくださいデスゥニンゲン様ァ!! ワタ、ワタシ達はニンゲン様方に迷惑を掛ける様な不始末はしていないデスゥ・・・。」 なんとも実装らしからぬ丁寧な言葉使い。 コイツはもしかして元飼い実装か? 不審に思った俺は土下座してペコペコ謝る親蟲の頭巾を剥ぎ取り、後頭部を見る。 あった・・・。 特級実装石B1163号、2003、9/18登録 などの文字列とバーコードが後頭部の髪の生えていない所に刻印されていた。 特級実装石というのは一昔前にペット実装石ブームなどというものがあった頃に創られたモノ。 普通のペット実装石には有り得ないほどの知性と感情、 実装石の出来うる限りの家事を完璧にこなし、 実蒼石と見紛うほどの慎ましさと気遣いを持つ異端の実装石のことだ。 こんな不自然な物を作り出すのには並々ならぬ努力が必要なのは言うまでもない。 先ずは賢くて情緒の豊かなフリをするのが上手な実装石を揃え、 そいつ等の身動きを封じて舌を抜いた後特殊な妊娠誘発剤で受精させる。 妊娠した実装石の腹にスピーカーを貼り付けて洗脳用のカリキュラムをエンドレスで流し続ける。 賢い仔実装が生まれやすいとされる最良の湿度と温度、 胎内の仔実装用の各種薬剤、親用の安定剤、栄養剤を取り混ぜた点滴 幸せに生活しているなどの親を騙す用の擬似記憶などを3週間の妊娠期間の間十二分に与えておく。 出産する直前に開腹して仔実装を取り出し、偽石を抜かれた者が特級実装石候補生となる。 誕生してから半日も経たない大体300匹ほどの仔実装を揃えてから最初の試験が行なわれる。 普通のペット実装石の場合は簡単な○×問題程度なのだが、特級実装石の場合は胎教で刷り込まれた 人間に対する忠誠心と礼節の確認を行なう。 この時点で90%の仔実装が人間に対して非常に高い忠誠心と礼節を実装石の本能以上に インプットされているが所詮は実装石なのでテストを行い不要なカスを振るいに掛ける必要がある。 そうすることで無駄なコストを抑え、残りの仔実装に過酷な現実を理解させる手助けにもなる。 提示された問題に正確に回答できれば合格、間違えたり質問の意味自体を理解できない低脳は 耐熱ガラスを使って中が見えるように加工された高熱炉で焼却処分される。 この際、処分するカスどもに実装活性剤を薄めた末期の水を飲ませてから炉の中に投入する。 整列させられた合格者達は生きながら焼き殺される不合格者の末路を最後まで見学させられたのち、 生まれて初めての食事となるコンペイトウを1匹1粒ずつ渡して食わせた後就寝させる。 此処までに残っている仔実装は70%ほど。 次の日からは過酷な訓練とマズイ食事の苦行が始まり、ここで20%が脱落し火炙りに処せられる。 一週間に一度、様々な誘惑と外に逃げられる隙間などが用意された小部屋の中で過ごすことを許される。 といってもいつも通りの規律が適応され、自分勝手な行動は許されず、 ここでも本能に負けたクズが40%ほど脱落する。 こうした海兵隊キャンプ並みの過酷な調教を施してから一ヶ月半、 生き残って技術の調教課程終了した仔実装は最初の10%ほどになってる。 確立から言えばかなりの数が生き残っているように思われるが、 知能レベルが高いのでこの数でも少ないぐらいだという話。 一ヶ月半もすれば大仔実装位の大きさになっているように思われるが、 始めに行なった偽石の加工とエサに混ぜ込んだ薬剤のお陰でまだ10cmほどの大きさにしか 成長していない仔実装達。 成体にまで成長した実装石に商品価値はまったく無いので、 高級ペット用仔実装にはペットショップの店頭に並んで客に買われるまでは こうした成長阻害措置という物が良く行なわれている。 こういう処置をされていない安物のペット用仔実装は大仔実装程度に成長した時点で処分される。 殆どが叩き売りの安値で虐待派に買われてゆくそうだ。 そうなってしまえば今までの努力も我慢も全て無駄になり、なまじ賢く情緒が豊かなのが災いして 長く苦しめられて最低な死に方を迎える運命しか残されていない。 なお、客の中には一生仔実装のまま飼いたいという者が数多くいるので 成長阻害措置用の薬剤を混入した高額なエサが飛ぶように売れているそうな。 俺は実装石を虐待用以外でに飼育しようなんて思わないのでなんともいえないが 世の中には汗水たらして稼いだ金をドブに捨てる奇特な連中がいるのだなと感心するばかりだ。 話が逸れたが、特級実装石の最低条件をクリアした仔実装達に与えられる次の課題は実地訓練だ。 1LDKの部屋の中で人間と仔実装数匹が1週間ほど暮らし、 様々な状況を体感させて今まで学んできたことをフルに生かせるように調教するというものだ。 集団生活が始まる前に仔実装を眠らせ気付かれない様に偽石を抜き取って、 PCに接続した超高性能実装リンガル(偽石から実装石の心の声まで抽出できる優れもの)に 偽石をセットして実地訓練を始める。 始めの4日は優しく接し、残りの3日は仔実装が死ない程度に虐待する。 こうする事で人間に対する恐怖心と不信を植え付け、人間への服従を徹底させる。 それを4セット繰り返して実地訓練を終了する。 この実地訓練は性能のランク付けと演技をしている者の判別を行なう振るいの役目を持っている。 特級実装石に必要とされるものは性格の良さと人間の役に立つ技能を使いこなせる知能を持っていること。 どんなに優れていようと性格が糞虫ならば廃棄され、 多少不器用でも性格が良ければ生き残れる可能性があるということだ。 ちなみにここまでに生き残った仔実装は全体の3%ほど。 そうして数々の苦行に耐え忍び、シリアルとバーコードを刻まれた仔実装は晴れて特級実装石となり、 金持ちの愛護派に高級車並みの値段で売られていって幸せに暮らしましたとさ・・・・・、 で話は終わるはずだったのだが、野良どもの悪行が原因で施行された実装石規制法のお陰で状況は一変する。 実装石規制法にある実装石飼育についての項 実装石飼育免許を持たない者が実装石を無断で飼育した場合、 執行猶予なしの禁固1年以上の実刑と100万〜1億の罰金を支払うこと。 という物が出来てしまい実装石飼育免許を持つ虐待派か実装関係の仕事をしている人間しか 実装石を取り扱うことが出来なくなり、特級実装石を含むペット実装達は苦境に立たされた。 実装石飼育免許は別名実装石虐待免許と呼ばれるぐらい過激な代物で、 試験の内容は参考書を流し読みして、試験の対策と傾向をなぞる程度で80点は取れる程度の代物だが、 問題は試験官相手の実技と面接だ。 実装石のことを虐待用の玩具かただの肉塊程度に思える人間でないと到底取得できる代物ではない。 また、自分の可愛いペット実装と暮らすために努力すればするほど実装石の本質を知ることになり、 自分のペット実装も野良の糞蟲と同じ考えなのでは・・・・という疑心暗鬼に陥ることになって 最終的には保健所もしくは購入したペットショップに送られるか、 飼い主自身が虐待派に転進して嬲り殺されるという憂き目にあった。 そうした過酷な状況の中でコイツはよく生き残ったものだ。 特級実装石は飼い主が公園や野原に運良く捨てくれたとしても、 飼い実装のことを妬み憎んでいる同族や野生動物に見つかり嬲られた後喰われて影も形もなくなっているはず。 ・・・・・いくつもの偶然と奇跡がコイツを助けて、今日まで生き残って来たのだろう。 だがその奇跡も今日で打ち止めだな。 「おい、糞蟲。 人間様の土地を不法占拠した上にこんなに汚しやがって・・・・。 死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」 音が聞こえるほどガチガチ震えながら親蟲は許しを乞い続ける。 「お許しくださいデスゥ!! ワタシ達家族は住むところを他の同族に奪われて仕方なしにここに住まわせていただいていただけデスゥ! 悪気は無かったんデス。でもこのゴミ捨て場は私が初めて来た頃からこんな感じだったデスゥ・・。」 土下座でペコペコ許しを請う親蟲の背中を塩ビ製パイプで何度も打ち据える。 実装石の苦痛の鳴き声が心地よく響き渡る。 「おまえの言い訳はいい・・・・・・ところでお前は生きていたいか?」 唐突な質問に固まる親蟲。 「だ・か・ら、お前は生きていたいかと聞いているんだ。 黙っているということは惨たらしく嬲り潰されて家族仲良く地獄に落ちたいのかな?」 「ち、ちがいますデス!!もちろん生きていたいデス!」 「そうか、生きていたいか・・・・。 だったら、何か人間のためになることを実践してこの世界にとって 自分は必要不可欠な存在だということを証明してみせろよ。 人間に仕えるためだけ生まれてきた元特級実装石のお前なら簡単なことだろう。」 「し、証明デスか・・・・。」 「そう、証明。 高級車並みの値段のしていたお前に相応しい仕事はな・・・・・。 ・・・・これでいい、この空き地を明日のこの時間までに清掃しておけ。」 目に見えて青ざめる親蟲。 60坪ほどある空き地の中には山積みのゴミが存在し、10tトラック2台分は軽くありそうだ。 特級実装石の掃除といえばク○ックルワイパーでフローリングを撫ぜまわしたり、 食器を洗浄器に入れてスイッチを押す、ゴミの分別をして軽いゴミを捨てに行く程度の能力でしかない。 背が低いので床以外の掃除は出来ない上に、実装石の手先は絶望的に不器用なので細かい作業は無理な話。 家財に被害を出さずに何とか完璧にこなせる仕事はこの程度しかなかったのだ。 不器用で鈍臭い実装石がこれだけの事をこなすだけでも奇跡なのに 俺はコイツの能力の100万倍以上のことを注文している。 人間でも5人がかりでまる3日は掛かりそうな仕事を押し付けられていることに気付いた親蟲は・・・・。 「む、無理デスゥ!! こんなに沢山のゴミをワタシ一人で始末する方法を学校の先生達は教えてくれなかったデスゥ!! 絶対無理デス!お願いしますデス!どうか他の仕事に変えて欲しいデスゥ!!」 塩ビ製パイプが唸り親蟲の背中を打ち据える。 「デゥゥ!!絶対無理デスゥゥウ・・・・。」 命令を拒否しようとする親蟲。 基本的に特級実装石は人間の命令に絶対服従になるように調教してあるのだが、 コイツは野良の生活が長いようなので人間に対する忠誠心が薄れているようだ。 「できないか?」 「無理デスゥ!!」 「そうか。」 では、はいと言うまで打ち据えるとしよう。 一体何分ぐらいで人間への忠誠心を思い出すかな? 10分後、背中の肉が爆ぜ背骨と肋骨が丸見えになるまで打ち据えられてようやく命令を受け入れた親蟲。 息も絶え絶えでふらつく親蟲のを元気つける為に親の惨状そっちのけで、 自分の心配しかしていなかったバカ3匹の両腕を引きちぎり、親蟲の口に突っ込んで命ずる。 「これからこなす仕事の英気を養うために肉を食わせてやろう。 嬉しいか?嬉しいだろうなぁ、 野良になってからは他実装の仔や間引く時に食った自分の仔以外は肉なんて口に出来なかっただろ? 良く咬んで、味わってから飲み込め。」 子蟲達にも良く聞こえる様に続ける。 「今食わせてやった肉はお前自身があと1,2日以内に間引く予定だった どうしょうもない糞蟲になる予定の子蟲の肉だ。 まだ足りないなら遠慮することはない、間引くときのように腹一杯貪り食うがいい。」 悲嘆に暮れた顔で俺の与えた肉をクッチャクッチャ汚らしい音を立てて咀嚼している親蟲。 笑顔が足りないな、 「親蟲、嬉しいときは笑え!!」 すぐさま甘い物を与えられた時のような至福の笑みを浮かべる親蟲。 特級実装石の心得を思い出し俺の命令に素直に従っている。 この卑しい糞蟲の浮かべている笑顔・・・・。 こいつ等の混じりけなしの感情なんて物は完全死を迎えかねない状況でしか見られない。 絶望した貌、生を繋ぐ為の必死の懇願の貌、死ぬ直前の全てが抜け落ちた貌。 こいつ等のナマの感情などこの程度だ、他の感情など人間に媚びて楽をするための方便でしかない。 親子が仲良くしているのも演技、仔を労わっているのも演技、仔と遊んでやるのも演技、 こいつ等が見せる行動全てが人間の歓心を得るための演技に過ぎない。 ペット実装とはこの習性を利用して演技する生き物を量産しているにすぎない。 人間が好む行動、表情以外を全て去勢し、出来の良い物は高値で何も知らない愛護派が買い取り、 劣る物や愛護派に選ばれなかった運の無い奴は、実装石のナマの表情を拝むことが大好きな虐待派の もてなしを受ける羽目になるだけ。 演技がお上手な親蟲にバカ3匹分の両手と下半身を吟味させ、精がついたところで残りの子蟲の始末をする。 普通と思われる3匹はその辺にあった壊れた洗濯機の中に投入。 何か文句を垂れているようだが、意地の悪い笑顔を浮かべて覗き込んでやると黙り込む。 素直が一番だ子蟲どもよ。 そして親蟲の期待の星の賢い2匹のことは・・・。 「おい親蟲、お前の服を脱いで俺に差し出せ。」 「な、何でデスか・・・・?」 「お前が逃げ出さないための保険だよ。 実装石はどんなに慈母ヅラしていてもいざというときは子供を見捨てて逃げ出すものだ。 俺が今まで駆除してきた連中は皆そうだったな・・・。 子供を好きにしていいからワタシを見逃して欲しいデスゥ〜〜とな。」 「ワタシはそんなことはしないデス!大切な子供達を見捨てて逃げるなんて出来ないデス!!」 「ご立派な答えだが、俺は実装石の言葉など信用する気は無い。 だからお前の命の次に大事なその薄汚い服を担保として寄越せ。」 黙り込む親蟲・・・・。 特級実装石の心得が服を差し出すことを望まない本能を何とか押さえつけている様だ。 いいえと言ってしまった時が自分と子供達の最後と分かっていても 実装石の証である自分の服を人間に差し出すのは抵抗があるらしい。 1分後・・・・血涙を流しながら服を脱ぎ、俺に差し出してくる。 可能なかぎり手入れをしている様子の薄汚い服を結んで袋状にして、その中に賢い子蟲を押し込んでおく。 「この2匹も服と同じように預かっておく。 心配するな、明日になるまでは絶対に殺さない。 お前たち家族の生死はママであるお前の双肩に係っているんだ、しっかり働けよ。 じゃあ、明日のこの時間にまた会おう。 せいぜい頑張りな。」 地面に虫の息で転がっていたバカ3匹を先に子蟲を入れた洗濯機に放り込んで蓋を閉め、 賢い子蟲を連れて家に帰るとしよう。 何か言いたげな裸親蟲の視線を背中に受けつつ俺と2匹の子蟲は家路についた。 20分ほどの道のりを歩き、我が家に到着する。 一人で住むには随分広い、築年数30〜40年は経っている6LDKの家の前で道を掃除をしている人影。 140cmほどの身長の少女だが、俺の妹ではない。 大学に居た頃に購入した狩猟用仔実蒼石を実蒼さんにまで成長させた個体、名を「星華」という。 「お帰りなさい、旦那さん。」 「ああ、ただいま。 星華、仔実装鍋は何処に放り込んであったか知っているか?」 「アレは確か・・・、裏の物置でしたか? さがしてお持ちしましょうか。」 「お願いするよ、縁側のほうにいるからそっちに持ってきてくれ。」 そういって庭のほうに向かう。 郊外にある古い家なので何もかもが広めに造られており、 家庭菜園にしてもまだまだ余裕のある庭を通り過ぎ、居間の前の縁側に向かう。 ブルブル震えている子蟲どもを縁側の近くにある水場の受け皿の上に降ろし、 「これからお前たちに仕事を与える。 自分の着ている汚い服とママの汚い服を洗濯してもらう。 それが完全に終わるまではエサも与えないし、 明日ママの所に帰るまでに与えた仕事をこなしていなければ・・・・・・。 この先は言わなくても賢いお前たちにはわかるよな?」 受け皿に水を張り、洗濯を開始させる。 服を脱ぎ水に浸すまでは分かるようだが、その後何をしたらいいのか分からないらしい。 「水に浸した服をたたんで踏みつけろ。 そうして汚いもやが出なくなるまで踏みつけたら絞って、縁の所にでも掛けておけ。 まあ、念のために言っておくが・・・もしも逃げ出したりしたら生まれてきたことを猛烈に後悔しながら 長い時間をかけて死ぬことになるからその辺の所を宜しく。」 引きつる子蟲どもを尻目に、俺は朝食を摂りに縁側から家の中に戻る。 朝食後1時間ほどだらだらして午前9時ぐらいになった頃、 子蟲達の様子を見に縁側に出る。 既に自分達の服を洗い終わり、親蟲の大きな服を2匹がかりで踏みつけている。 実装石の中では性能の高い部類に入る特級実装石の産んだ賢い子蟲ならこの位の事は出来て当たり前か。 まあ親蟲は生まれたときからこの程度のことが出来るように胎教を施されていたのだろうから その性質が劣化して遺伝しているのだろう。 でもそんなことは関係ないな。 恒例の姑的イジメを子蟲どもに行なう。 星華に探してきてもらった仔実装鍋(燃えないゴミの日に捨てられていた芋煮用の大鍋)の中に水を張り、 子蟲どもの服を浸して軽く揉む・・・・・・やはり大量の緑色のもやが水中に撒き散らされる。 「おい、子蟲ども!!全然綺麗になっていないじゃないか!」 「テェ!!そんなことはないテチュ!! いっぱいふんできたないもやがでなくなるまでちゃんとやったテチュ!」 「ほう・・・これはなんだ?」 口答えした強気な子蟲を吊るし上げ、鍋の中身を確認させる。 「テェェ!!なんでテチュ・・・。あんなにいっぱいふんだのに・・・。 そうテチュ!ニンゲンさんがさわったからよごれがついたんテチュ♪」 「なるほど・・・あくまで自分の責任では無いと?」 「そうテチュ!ワタチはいっそうけんめいやってるテチュ! ニンゲンさんのいじわるにきまっているテチュ!いいがかりはやめてほしいテチュ!!!」 とりあえずこの脳タリンの両腕を揉み潰し、紐みたいになった両腕を後ろ手で蝶々結びにして、 そのあとデコピンを脳天に打ち込んで水場の受け皿に叩きつける。 「チュウウウウウウ!!!!!い、いたいテチュウゥゥゥゥウウウ!!!!! な、なんにもわるいことをしていないワタチがどうしてこんなひどいめにあうんテチュゥ!!」 「お前は並みの実装石のようだな。 特別な親から生まれた並みの実装石ねぇ・・・。 ようするにクズってことだな。」 「うっうるさいテチュ!!クズっていったほうがクズテチュ!!」 「おい、もう一匹の方。 コイツの罪状は何だ?」 「テ、テェェェ!!ワタチテチュか!?」 「そう、お前だ。 こいつの犯した罪を上げて見ろ、今すぐに。」 震えて糞を漏らす子蟲。 また洗濯が困難になるな・・・・。 「え・・・・えっと・・・まずはニンゲンさまにくちごたえをちたつみテチュ・・・。」 「他は?」 「・・・・・ニンゲンさまをばかにして、しごとのふできをニンゲンさまのせいにちましたテチュ・・。 あとは・・・じぶんのおかしたつみをみとめずひらきなおったことテチュ・・・。」 「ふむ・・・全部拾い上げているようだな、いいだろうお前は不問に処す。 本当はエサをくれてやろうかと思っていたのだが、仕事はまるでダメ、口答えをしてあまつさえ 自分の不備を俺のせいにして開き直るクズの所為で朝飯は無しだ。 次来るまでに自分の服ぐらいは綺麗にしておけよ。さもないと明日ママに会えなくなるかもしれないぞ。」 「「チュウウウウウッ!!」」 悲痛な叫び声を上げる子蟲ども目掛けて鍋の中の水ごと服を受け皿の中に流し込んでやると、 水流に揉まれてあちこちに叩きつけられて満身創痍になる。 水場の栓を抜き、新しい水を張り直してやって作業を再開させる。 両手を潰されたカスはやり難さと痛みにブツブツと文句を垂れながらいい加減に踏み、 真面目な子蟲のほうは今まで以上に懸命にたたんだ服を踏みつけている。 まあ、アドバイスぐらいはやるか。 何時までも洗濯させていても面白くないからな。 「子蟲ども、20回ぐらい踏んだら一度開いてもう一度たたみ直してから踏めよ。 そうしないと何時までたっても洗濯は終わらんぞ。」 なんとか2匹とも理解したようだ。 それなりの頭は2匹とも備えているようだな。 真面目な子蟲はアドバイス生かしているが、クズの方は腕が使えないためただ踏むことしかできない。 クズの悪戦苦闘を見かねた真面目な子蟲が服を裏返してやろうとすると物凄い剣幕で、 「ジャマをするなテチュゥ!!ワタチにはワタチのやり方があるんテチュ!! ニンゲンにおべっかをつかううらぎりもののてはかりないテチュ!!」 と大声でぬかしておられる。 まあいい精々頑張りな。 実装石が洗濯を完了させることなどは決してないからな。 実装石の体格では汚れを揉み出すために必要な力も体重も不足しているため、 決して洗濯物が綺麗になることは無い。 野良でありながら綺麗好きで知られる賢い実装石であっても所詮は野良。 小奇麗に見えても近くに寄ってくると不快な実装臭が漂ってくる。 これは実装石の体のつくりと生活にも問題がある。 凄まじい再生能力の副作用で新陳代謝が激しいため、毎日洗濯していたとしても臭いは摂りきれず、 腐りかけの生ゴミを主食にしているため体臭を消すための根本の改善ができない。 悪循環が多く重なり世間一般では実装石は不潔で臭い生き物というイメージが定着している。 大粒の涙を流しながら黙々と作業に打ち込む子蟲達。 なぜ、ワタチたちはこんな酷い目に遭わなければならないのか・・・。 なんて下らない事を考えているのだろう。 クズは無論、真面目な子蟲ですら作業する姿から不満が滲み出ている。 まだお前たちは幸せな方だよ・・・、 問答無用で殺され無い上に明日になればもう一度だけ大好きなママに会えるのだからな。 さて、折角のいい天気だ。 家庭菜園の手入れでもするかな。 アレから3時間が過ぎた・・・・・。 つい菜園の手入れに熱が入り、すっかり子蟲達のことを忘れていた。 「昼ごはんができましたよ〜〜。」 と声を掛けられて、作業にけりを付けて縁側に歩いていく途中でふと目に止まるもの・・・・。 ・・・・水場で仮死している子蟲が2匹・・・・・。 極限の過労で力尽き仮死を迎えたようだな。 直前まで踏んでいた洗濯物に覆いかぶさるように仰向けで倒れ、薄く張られた水の上をプカプカと浮いている。 しょうがないな・・・・。 急いで家に上がり作業部屋の冷蔵庫の中から実装活性剤を持ち出してきて、 各子蟲どもに1ccづつ注射しておく。 すると目に見えて子蟲達の体に生気が通って行き、10秒もしないうちに目を覚ます。 「テェェ・・・。おいちいごはんは・・・・どこにいっちゃったテチュゥ・・・?」 「・・・・・・あれぇ・・、なんでママがいないんテチュ?」 まだ夢の世界に片足を突っ込んでいるようだな。 受け皿を蹴り、子蟲達の意識を此方側に帰還させる。 「仕事中に居眠りとはいい度胸だな。 もちろん仕事は終わったんだろうな?」 「も、もちろんテチュ!だからワタチたちをさっさとママのところにかえすテチュ!!」 「お、おねえちゃん・・・。 ニンゲンさまにそんなくちのききかたをしちゃだめだってママがいつもいってるテチュ・・・。」 「うるちゃいテチュ!!これはワタチたちのとうぜんのけんりテチュ!! せんたくをおわらせたんだからサッサ・・・バチャアアアアァァ!!!!」 わきの下から枯枝を突き刺し、両肺と心臓を串刺しにしてやる。 ここまで無礼で脳タリンの糞蟲に当たったのも久方ぶりだな。 2〜3度枝をこねくり回してから引き抜き、クズを地面に投げ捨てる。 口と総排泄口、わき腹の傷口から盛大に体液と糞を垂れ流して悶絶するクズ。 肺に血が溜まって息が出来ず、陸に居ながら溺れている愚かな子蟲。 「さて、本当に綺麗になっているか確かめさせてもらうぞ。 まずはお前のだ。」 真面目な子蟲は震えながらも洗濯した自分の服を俺に手渡し裁定を待つ。 水に浸して揉んで見ると・・・・やはり汚れが落ち切れていない、 だがコイツは一生懸命努力していたからこれに関しては許してやろう。 「よし、お前は合格だ。」 空の仔実装鍋の中に摘んで移し、市販の実装フードを与える。 水気がなくモサモサして喰いずらそうな代物だが、 子蟲は血涙を流しながらそれを無我夢中で食いついて腹の中に収めていた。 まったく・・・あんな物で喜ぶなんて安い嗜好だな。 「次はお前だなクズ。 大口を叩いたからには完璧な仕事をこなしていなければどうなるか・・・・。」 4時間と大差ない出来・・・・。 コイツは知恵は多少回るが仕事はダメ、人間に対する脅威も認識できない欠陥品ということだな。 やはり野良の過酷な環境では優性遺伝子を持つ特級実装石でも子供の出来は良くないらしい。 いや、一匹だけでもまともそうな仔がいるだけでも上出来とすべきか・・・・。 実装活性剤のお陰で失血による完全死を免れ、高速再生が始まって傷が治りかけているクズを摘み上げ、 自分の不出来さを確かめさせる。 「・・・・このクズ!!。 妹はちゃんと仕事をこなしたのにお前は大口叩いておいてこの様か・・・。 この出来損ないの糞蟲め!今からお前の名前は「クズ」だ!! どうだ嬉しいかクズ、実装石にとって名前は特別な物だもんな。 お前に相応しい名前だなクズ、そのまんますぎて笑っちまう。 どうしたクズ、返事は!?」 憤怒の相で俺を睨み付けているクズは、 「クズ、クズいうなテチュ!!ワタチはクズじゃないテチュゥ!!! ニンゲンのくせにいいかげんにしないとぶっとばすテチュゥ!!!」 何も言わずにデコピンを喰らわす。 「チュウ!!いいかげんにするテチュ!!」 更にデコピンを喰らわす。 「いたぁーーいテチュゥゥゥ!!!なんでワタチがぁ!!」 更に更にデコピンを喰らわす。 「なんでこんなひどウィ!!!」 更に更に更にデコピンを喰らわす。 「チィィィィイイイイ!!!!!やっめてテチュゥウウゥゥ!!!」 更に更に更に更にデコピンを喰らわす。 「ごめんなさい、ごめんなさいテチュゥゥゥウウ!!!」 更に更に更に更に更にデコピンを喰らわす。 「なんでもいうことをきくテチュゥ!!だからもういたいことしないでくだちゃいテチュゥゥ!!!」 額が陥没し、めり込んだ肉に圧迫されて両目が飛び出し、出目金のような顔になったクズ。 ブサイク以外形容の仕様がない面を血涙で濡らしながら俺に許しを請い始める。 「では聞こうか? お前の名前は何だ?」 「ええ・・・っと・・・・。」 溜めを行ったデコピンを見せる・・・。 「ワタチの・・・名前は・・・ク・・・ク、ク・・・クズ・・・テチュ・・・。」 「何だって?良く聞こえんなぁ? もう一度大きな声で名乗れ。」 「わ、ワタチの名前は・・・・クズテチュゥ!」 「良く聞こえん!!!もう一度!!!」 「ワタチの名前はクズテチュゥ!!」 「良く聞こえんな!!!もう一度!!!」 「ワタチのぉ名前はクズテチュゥ!!!!」 「声が小さぁーーーーーい!!!!!玉落としたか!!!!!もう一度!!!」 「ワタチのぉ名前はぁクズテチュゥ!!!!!!!!!!」 俺は妹蟲の方を向き、 「だそうだ、これからはこの仔実装のことを「クズ」と呼べ。 それ以外は許さん。 お前が俺の命令通りに行動してこのクズに苛められたりしたら遠慮なく言うがいい。 強烈な仕置きを施し性根を叩き直してやる。お前も俺の命令を実行しなかったら同じ目に合わせてやる。 いいな、コイツをクズ以外の名で呼ぶことは許さん。」 「は、はいテチュ・・・。ニンゲン様・・。」 「よろしい、ではクズから改めて自己紹介があるそうだ。」 クズを妹蟲の居る鍋の中に降ろし、気を付けの体勢で立たせて自己紹介をさせる。 「わ、ワタチの名前は・・ク、クズテチュゥ!! よろしくおねがいちまちゅテチュ!!」 「こ、こちらこそおねがいしまちゅテチュ・・・ク、クズ・・・さん・・。」 ビキッとクズのこめかみに青筋が浮かぶ。 ・・・・面白いことになりそうだ。 「あの〜・・・、旦那様。 ご飯冷めちゃいますよ?」 居間のガラス戸から蒼い割烹着を着た少女が顔を出して俺を呼ぶ。 この少女も星華と同じく実蒼さんの「彩華」という。 狩猟用実蒼石は2〜4体の同じ親から同時期に生まれた姉妹が一セットで販売されている。 その理由は実蒼石の持つテレパス能力を使用した狩りを有効的に行うため。 血縁の無い個体同士でも簡単な通信は行えるが、やはり姉妹のほうが通信範囲が広い上に精度も格段に高いので 深山で行われる山実装狩りに使われる狩猟用実蒼石は姉妹単位での流通がメジャーとなっている。 それに実蒼さんにまで成長させれば人間の言語も喋れる様になるし、 格段に戦闘能力が上昇する(成体実蒼石の約100倍)上に、見た目も人間の美少女そのものになるので 実蒼石というものは素晴らしい生き物だと俺は思う。 ちなみに彩華のほうが姉だ。 そうそう昼めしだったな・・・。 クズは罰として飯抜きに処して、俺は家の中に戻る。 30分後、食事を終えて庭に出ると鍋の中が騒がしい。 「なんでおまえだけがごはんをたべてカワイイワタチがごはんぬきなんテチュか!!」 「おね・・・クズさんはニンゲンさまにあんなにたてついたからテチュ・・・。 でも、あのニンゲンさまはママがいっていたこわいニンゲンとちがってちゃんといいこにしていれば ひどいことはしないみたいテチュ・・。」 「クズいうなテチュ!!いもうとのくせになまいきテチュゥ!! あのクソニンゲンはまちがっているテチュ。ワタチのようにかわいいじっそう石をかわいがらないで いじめるなんてしょうねがまがっているテチュゥ!! なんでカワイイワタチがぁ・・・・・。 ・・・・・どうしたんテチュ?そんなまぬけなかおをして・・・・。」 妹蟲の表情を不審に思ったクズは恐る恐る後ろを振り向く・・・・・。 そして固まる。 満面の笑みを浮かべた俺に戯言を全て聞かれてしまったのだから・・・・。 さて、どうしてくれようかな♪ 「どうもすいませんねぇ、性根が曲がっていて。 さて、とても素晴らしい御高説を拝聴し、 是非とも特別なもてなしをクズさんに馳走したいのですが、 3つほどあるのでどれか好きな物をえらんでくださいな。」 ガチガチ震えるクズを摘み出し、縁側の上に載せて問う。 「一つ、賢い実装石の大好きなお風呂 二つ、食べきれないほどの食事 三つ、子供には早いかもしれないが夜の遊び さて、どれがいい?」 問答無用で嬲り潰されると思っていたクズは不審な顔している。 「何だ?どれも要らないのか。 じゃあしょうがないな、いい子にしていた妹の方に・・・。」 「お、おふろがいいテチュ!!」 なるほどねぇ・・・。 賢いという言葉に引かれて風呂を選んだか。 ・・・じゃあ準備するとしようか。 20分後、鍋の中に入れられ、首まで水を注がれてガチガチ震えているクズを眺めている。 「じゃあ楽しいお風呂を始めようか。 だがなクズ、お前は風呂がどんな物だか知っているのか? 三つ目は兎も角、腹いっぱいエサが喰える機会を逃してまでどうして風呂なんだ?」 「ママがおしえてくれたテチュ・・・。 ママをかっていたニンゲンさんがまいにちかかさずいれてくれてたそうテチュ。 あったかくてきもちがよくて、おわったあとはいいにおいがするっていってたテチュ。 だからワタチもママとおなじようなきぶんをあじわいたいテチュ♪」 野良の上、生まれて間もないこいつが風呂なんて物を親から教えられたとはいえ理解していることは驚きだが、 下らない見栄が実装石の食い意地を押しのけたことも驚愕に値するな。 大駆除が行われてから同じ行動しかしない糞蟲が消え去り、 生き延びる努力をした賢い実装石の生み出した様々な個性を持つ仔実装が現れ始めた。 一概に糞蟲候補の低脳ですら個性らしき物が表われ、実装石も絶滅しまいと様々な努力をようやく始めた様だ。 だが、虐待派が少なくなった実装石を求めて常に街を虱潰しに徘徊しているし、 清掃局員も一匹捕まえるごとに手当てが出るようになっているから真面目に仕事に取り組んでいる。 捕獲される数が減ったとはいえ毎日100〜200匹の実装石が捕獲されており、 いくらデタラメな繁殖力を誇る実装石といえど、このままでは真綿で首を絞められるように絶滅してゆくだろう。 仮に人間を出し抜ける個体が生まれたとしても人間の傍で生活を続けようとするかぎりは、 現状の数を維持するのが精一杯で昔のように都市を埋め尽くすなんて時代は二度と訪れないだろう。 まあいい、望み通り風呂に入れてやろう・・・熱々のヤツにな! 大型のトングで先ほど熾した焚き火の中に放り込んでおいた拳大の石を取り出し鍋の中に放り込む。 「チュウゥゥゥゥウウウゥゥ!!!!!あぶないテチュゥ!!なにをするテチュ!!」 「なんだいこんな物も知らないのか? コイツは石焼風呂といってとっても特別な風呂なんだぞ。 人間だって滅多に入らない珍しい物なんだ、ママだって入ったことはないだろうなぁ・・・。」 「・・・・そうなんテチュか・・? ママもはいったことのないとくべつなおふろ・・・。 いいかんじテチュ♪じゃんじゃんいれてほちいテチュ♪」 俺は嘘は言っていない。 キャンプとかをする時に川の浅瀬を即席プールのように囲んでその中に熱した石をこれでもかと放り込んで 即席の風呂を作る方法があると何かの本で読んだ事がある。 まあ日本でそんな本格的に野営をする物好きはいないだろうから滅多に入らない珍しい物と言ったのだが・・・。 とりあえずあと2つほど石を放り込んで様子を見る。 水の量が多いから中々温度が上がらないらしい。 「なんだかぬるいテチュ・・・。これがとくべつなんテチュか?」 さらに3つ投入する。 クズから鼻歌めいた唸り声が聞こえるようになってきた。 「湯加減はどうだい?」 「さいこうテチュゥ♪」 なるほどこの辺が安全圏か・・・。 それが分かればもう容赦はいらないな。 焚き火の中から次々と石を取り出して鍋の中に放り込んでゆく。 石が増えるごとに顔色が悪くなり、足場も焼けた石に占領されて無くなってゆく。 「も、もういいテチュゥ・・・。あついテチュ・・・・。」 「何を言っている、これからが本番だろうが!! 特別な風呂なんだぞ、頑張れよ!!」 無責任なことを言い放ち次々と焼け石を投入する。 水面に泡が立ち始め、そろそろ沸点間近のようだ・・・。 俺は鍋の蓋を持ち、一際大きい石を摘んで・・・、 「さあ、これで最後だ!!」 一際大きい石を放り込み、急いで蓋をする。 数秒の静寂の後・・・・・・。 「ジュアアアアアアアァァァッァァアアアアァァァァァアアアァァァァァーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」 魂千切る絶叫と共に薄く緑色に染まった湯が勢い良く蓋の隙間から噴き出した。 蛙を鍋に入れて水から煮出してやると沸騰するまで生きているなんて話があるがこいつ等も同じ様なものか。 鍋に背を向け丸まって震えている子蟲を吊るして、 「これが終わったら次はお前だ。」 「テェ!!ごめんなさいテチュゥ!!どうかゆるしてくだちゃいテチュ!!」 「まあそんなに固くなるな。クズの無様な様子を目を逸らすことなくちゃんと見れたら勘弁してやろう。 あとクソを漏らしたらお前も嬲り潰すから気を付けろよ。」 悲鳴が絶えない鍋を凝視させる。 ピンクローターの様にブルブル震えているが俺の命令通りクズの惨状を瞬きもせずに凝視している。 コイツは中々意思の強い子蟲のようだ、この惨状を見てクソも漏らさずなんとか我慢している。 親蟲の本命はこの真面目な子蟲の方だろうな・・・。 いくら特級実装石の産んだ仔実装といえども大体はそこで煮えているクズ止まりの出来の仔実装が殆どで、 コイツのように慎ましく、物事を理解して状況判断の出来る仔実装など本当にごく稀・・・・・ 10万匹に1匹いるかどうかという確立の低さ。 それゆえ実装石ブーム時にはこういう子実装は上級サラリーマンの年収を軽く上回る値が付けられて 新聞の三面を驚かせていたものだ。 いまではこいつ等の10倍以上の知性とやさしい性格と愛らしい風貌を持つ実翠石が 実装ペット業界を席巻しているのでいまさら実装石の出番などない。 要するに愛玩用ペットとしての価値が失われて、ただの物として取り扱われるになっている。 俺のような虐待派か実装畜産業者、もしくは試薬実験や生体実験用のマルタとして飼われる程度の需要しかない。 お前さんもあと2〜3年早く生まれてくれば少しはこの世の春を謳歌できたかもしれないのにね。 5分ほどが経ち、沸騰もクズの悲鳴も収まり、鍋の中が静かになる。 蓋を外すと、真っ赤に茹で上がったクズが緑色に染まった熱湯の中に浮いていた。 「テェェェ・・・・。」 もう何も言う気力も残っておらず、ただ力なく呻くだけ。 偽石を抜き忘れたから死んだかと思っていたが、実装活性剤の効果が残っている様でしぶとく生きている・・・。 トングで茹で上がったクズを取り出し地面に投げ捨てておく。 身動き一つ取れないところを見ると神経が全て死んでる様子で、 重度の全身火傷で皮膚の再生も儘ならずただ息をしているだけの肉塊に進化したクズ。 いよいよ相応しい相貌になってきたな。 親蟲との約束を守るためにコイツを生かしておかなければならない。 またまた実装活性剤を1CCほど打ち、水を張った受け皿に入れておく。 意識は空高く飛んで行ってしまっているのだろう・・・ 心臓に直接注射してもウンともスンとも言わず、ただ意味の無い呻き声を漏らしているだけで面白みがない。 あと2〜3時間は使い物にならないな。 真面目な子蟲を普通の風呂に入れてやろうかな。 鍋に残っていたクズのだし汁を排水溝に流し、新しい水を注いで子蟲を入れる。 クズの惨状を腹いっぱい見せられていたので今度は自分の番か・・・と身を固くして震えている。 「お前さんの方は褒美として風呂を与えよう。」 とりあえず震える子蟲の頭を撫でて落ち着かせる。 それからさっき確かめた限界点の6個の焼き石を静かに入れて水を丁度いい温度に沸かす。 「チュウゥ〜〜ン♪なんだかとってもきもちいいテチュゥ〜〜。」 極楽にでも居るかのような至福の表情で湯を楽しむ子蟲。 実装石のことを何も知らない愛護派ならかわいいとほざくのだろうが俺にはどうでもいいことだ。 でも人間向けに演技をしているのだろうが、なんとも真に迫った表情だ・・・。 ここ数年間の過酷なサバイバルの中で実装石にも本当の感情という物が芽生えてきたのだろうか? 今度実験をしてみるか。 人間の興味を引くための擬態ではなく、 自分自身の心から染み出してきた感情を素直に表している様に見える子蟲を鍋の中から取り出し、 薄く湯を張ったバケツの中に移す。 今度は髪と体を洗ってやろう。 スポンジに脂汚れによく効く食器洗浄用の中性洗剤を垂らして優しく全身を洗う。 親と同じように毎日水浴びぐらいはしていたのだろうが想像以上の汚れだ・・・・・・。 クズを煮出した為に深い緑色の汚水となった風呂の水についても得心がいく。 三度スポンジを絞って全身をくまなく洗ったあと、問題の髪に移る・・・。 フィギュアの髪のように髪型が形成されているのを疑問に思わず、 野良を拾ってペットとして飼おう考えた勇者達の白雉振りを称えてやりたくなるな・・・。 洗剤を掛けて揉み解すこと25分・・・・自分の髪だってこんなに時間を掛けて洗ってことは無い・・・。 なんとか様になった髪に人間用のリンスを使って仕上げを行い、洗剤を綺麗に洗い流してまた鍋の中に戻す。 「ママはまいにちこんなてんごくをあじわっていたんテチュか〜〜♪ でも、ニンゲンさまはどうちてワタチにやさしくしてくれるんテチュか?」 「さてね・・・そのうち分かるだろうて。 まあ、今は初めて入る風呂を目一杯楽しむがいい。」 のん気に鼻歌が出てくる子蟲をその場に残し、倉庫に向かう。 10分後、子蟲を鍋から引き上げ体を拭いてから倉庫から持ってきた 洗濯済みの仔実装服(前に虐待した子蟲の遺品)を着せて縁側に座らせておく。 そうしている内に次の仕込を開始する。 服と一緒に出してきた仔実装用の飼育水槽(持ち上げる為の優待仕様)を清掃し、庭にある棚の上に置く。 その中に風呂の余韻を味わっている子蟲を入れてくつろがせる。 初めて見る綺麗な個室、清潔な布団と皿の上に山盛りに置かれた金平糖、 親蟲のかつての生活の一端を目の当たりにして感無量の子蟲。 「これから夕飯までこの水槽の中で好きにしていいぞ。今日に限ってこの水槽の中にある物全てがお前の物だ。」 「チュゥ!!これをワタチがすきにちていいんテチュか・・・?」 「そうとも。 これらはお前のママが飼い実装だったころの生活の一端を再現して見たものだ。 ママがどれくらい幸せだったか体感してみるといい。」 「ありがとうございまちゅテチュ♪・・・・でもおね・・クズさんは・・・?」 言いつけはちゃんと憶えているようだな。 第一段階は合格だ。 「クズは反省中だ。 だから楽しいことは一切なしだ。 だが安心しろ、まだ死んではいないぞ。 明日になれば姉妹仲良くママの所に帰れるだろう。」 「はい・・・わかりまちたテチュ。」 そう言って水槽の蓋を締め、一匹にしてやる。 人間に見られていてはリラックスも出来ないだろうからなぁ。 全面がマジックミラー仕様になっているこの水槽は強い絆で結ばれた姉妹を仲たがいさせる用に創った物。 優位なものを虐待し、隷属していたものをこの水槽で散々甘やかしてから引き合わせて楽しむという趣向だ。 100組ほど試して、90%の子蟲姉妹は仲違いをして殺し合いを始める。 残りの10%は自分の優位を信じて疑わなかった姉蟲が妹の優遇ぶりを見て憤死したというもの。 さて、こいつ等はどんなドラマを見せてくれるかな? 瀕死のクズもなんとか息を吹き返し、辺りの様子を窺うまでには回復していた。 神経が完全に復元できていないので起き上がることは出来ないらしい。 「おい、気分はどうだいクズ蟲。」 「いたくて・・・からだがうごかなくて・・・とってもくるちいテチュ・・・。 もうなまいきなことをいわないテチュ・・・だからもうゆるちて・・・テチュ・・・。」 「お前は糞蟲候補の仔実装だということが判ったからなぁ。 処分されないだけでも有り難いと思え。 それとお前の妹蟲のことなんだがな・・・・。」 言葉を区切り、クズを板切れの上に寝かせて丁度水槽の内部が良く見える様に設置してやる。 視力の戻っていたクズは妹蟲の優遇ぶりに目を剥く。 「いい子だから褒美を与えた。 お前は馬鹿だねぇ・・・ちゃんと言うことを聞いて真面目に仕事をしていればお前もあそこに居たのに・・。 かつてお前のママが味わっていた楽園の生活を部分的に再現してみたんだ。 見ろよ、あっま〜い金平糖をあんなに頬ばって幸せそうなツラをしているじゃないか。」 「テェェ・・・い、いもうとのくせに・・それはワタチのようなカワイイじっそう石のために・・あるのにぃ・・。 からだがうごけば・・・あのバカを・・ぶちのめちて・・・やるテチュゥ・・・。」 まだカワイイとかの寝言が出るかねぇ・・・。 コイツは自分の姿がどうなっているのか分からないらしい。 現在の自分の姿を見たら実装活性剤を使っていてもショックで偽石を割りそうだな・・・。 とりあえずコイツの偽石を抜いておこうか。 偽石サーチャーでクズの全身をなぞり・・・コイツの偽石は後頭部に有るようだ。 どうりで額を陥没させても、胸部を串刺しにしても死なないはずだ。 痛覚の失われたクズを裏返し、実装包丁で開頭して偽石を取り出す。 コイツの偽石は歪な形をした小石ぐらいの大きさで、通常の透き通った翡翠色ではなく 黒ずみドブの汚水の様な色をしていた。 極限のストレスで偽石が崩壊兆候を見せているな・・・。 実装活性剤を10倍に薄めた溶液を満たした小瓶の中に偽石を静かに入れ放置する。 「な、なにを・・・ちたんテチュ・・? なんだかソワソワちて・・・おちつかなテチュ・・・。」 偽石を抜かれたことも分かっていないらしい・・・お前の命なんだぞこの歪な小石は・・・。 テチテチ五月蝿いクズに軽いデコピンを打ち込んで妹蟲の様子が良く見えるように即席で立てた棒に括り付け、 この世の春を満喫している妹蟲の様子をこれでもかと見せ付ける。 小癪にも目を瞑るなどの反抗的な態度を見せたので瞼を加熱したメスで切り取ってやり、 頭が正面を見据えるように完全に固定して放置する。 「いやテチュゥーーー!!なんでかわいくてかしこいワタチがこんなひどいめにあって、 グズでのうたりんのいもうとがてんごくにいるんテチュゥゥゥウウ!!! こんなものみたくないテチュゥ!!どうちてこんなことになったたんテチュゥ!! ママァーーー!!ママァーーー!!ママァアーーーッ!!!!!」 コイツは模範的な糞蟲だな・・・。 だが、他の奴は更に酷いのだろうから、親蟲も苦渋の選択でコイツを選んだのだろうな。 親は産み出す仔を選べないし、仔も親を選べない。 実装石の一生とは無常な物だ。 アレから2時間、クズも体が動かせるようになったのでそろそろお楽しみを始めようかな。 天国でまどろんでいた子蟲を取り出し、地面に置いて揺すり起こす。 「テ、テェ・・・!な、なんテチュかニンゲン様・・・。」 「クズが元気になったから会わせてやろうと思ってな。 さっき心配していただろ?」 「おね・・クズさんはだいじょうぶなんテチュか?」 おろおろしている子蟲の後ろを指差してやる。 後ろを振り向き固まる子蟲。 そこには立って歩ける程度にまで回復したクズがいた。 「テ、テェェェェエエエエェ!!!!お、お、おばけがいるテチュゥ!!!!」 「このクソがッ!!!かわいいワタチをさしおいてなにたのしんでいやがったテチュゥ!! ばつとしてまるはげにしてやるテチュゥ!!!!」 姉妹の追いかけっこが始まる。 鬼の形相で追いかけるクズ、血涙を流しながら逃げ惑う妹蟲。 「こないでテチュゥゥゥーーー!!!わたちをたべてもおいちくないテチュゥゥゥーーー!! おばけはどっかとおくにいっちゃえテチュゥゥゥゥーーー!!!!!」 「ジュゥゥゥゥゥウウウゥ!!!!!!!!このクソいもうとがぁぁぁ!!! かわいいワタチをバケモノよばわりちてただでちゅむとおもってるんテチュかぁぁぁぁーーーー!!! つかまえたらどれいにちてやるテチュゥゥ!!!!!」 暢気な速度で庭先をぐるぐる回り続ける子蟲達・・・・・。 リンガルの訳なしでその様子を見ていれば、 ただのかけっこにも見えなくはないが中身は修羅の世界だ。 殺す、奴隷にする、はらわたを引きずり出して食ってやるなど 生まれてから1週間も経っていない仔実装が言い放つのには 相応しくない単語を連呼しながら妹蟲を執拗に追い掛け回すクズ。 必要な所に頭が回らず、下らない実装石的思考や悪罵の類に関しては天才的な片鱗を見せるクズ 本当にどうしょうもないクズだな・・・。 5分もするとクズの息が上がり始め、カタツムリ以下の速度でノロノロと歩き、最後には力尽きて倒れこむ。 「お、おかちいテチュ・・・・なんでグズのいもうとに・・・おいつけない・・・テチュゥ・・・。 それに・・・なんだか・・・からだが・・いうことをきかない・・テチュ・・・。 なん・・でいもうとは・・・かわ・・いい・・ワタチを・・おばけよばわ・・り・・・ちたん・・テチュ・・?」 自分の姿の変化に気付いていないクズは息も絶え絶えで、無意味で下らないことを煩悶していた・・・。 なんだかんだで目に映る自分の手や体を見れば分かりそうなのものだが、そんな所には頭が回らないのだろう。 実装石の悪性のみが特化していて、他の能力は並みの出来というわけか・・・。 それに何を根拠に自分が妹蟲よりも可愛く、優れていると思っているのか? これは人間には永遠に理解できないことの一つだろう。 人間から見れば・・・いや超愛護派を自認する連中でも実装石の美の基準を見極めることは不可能だろう。 顔の作りの差の多少の判別はついても芸術的なまでにブサイクな顔の何処に美点を見出せというのか? 妹蟲を回収し、優待水槽に戻しておく。 「テェ、テェ、テェェ・・・。 な、なんだったんテチュ・・・おねえ・・クズさんのこえがしたとおもってうしろをむいたら、 あんなおばけがおそってくるなんてテチュゥ・・・。 でもみためとちがっておそいからたべられずにちゅんだテチュ♪」 ・・・・・なんとなくコイツに質問をしてみたくなった。 知能レベルが高く、人間に対して嘘や媚を行わないこいつなら俺の疑問の一端に答えを出してくれるかも知れない。 「そういえばクズとお前、どっちの方が総合的に優れているんだ?」 「たぶんおね・・クズさんテチュ。」 「どの辺が?」 「ええっと・・・ママのおべんきょうやものをかんがえるのはワタチのほうがとくいテチュが、 でも・・・クズさんはとってもつよいんテチュ。 ケンカはまけたことないし、ワタチいがいのいもうとのだれよりもかしこいテチュ。 だからママがいないときは・・クズさんがみんなをまとめていたテチュ。」 「で、自分とクズどっちの方が可愛いということになっているんだ? 家族と自分の意見を嘘偽り無く言うがいい。」 「テェェェ・・・・。 そうテチュね・・・みんなはやっぱりじぶんがいちばんだとおもっているテチュ・・。 でも・・・ママがいるときはママがいちばん、ママがいないときにはクズさんがいちばんテチュ。」 こいつ等は強い物が可愛いといえば可愛いと右を倣えで生きているわけか・・・。 実装石の可愛いという基準は順列の優劣で推移しているのか? ますます分からなくなってきた・・・。 「まあいい、夕食までゆっくりしているといい。 ここならバケモノも入ってこないからな。」 そういって蓋を閉め、家に戻る。 そうしてお楽しみの夕食の時間。 自分の食事よりも先に子蟲達にエサを与えておこう。 飯を食うと楽しいことでも動くのが億劫になるからな・・・。 クズと妹蟲を地面に置き、其々の食卓に配置する。 クズのディナーは・・・野菜クズと魚の内臓類、市販の虐待用実装フード(胃の粘膜を吐き出すぐらいマズイ) をミキサーですり潰し、エサ皿(昔虐待していた子蟲の遺品)に口いっぱい盛ったもの。 対して妹蟲のディナーは・・・絵皿(拾ってきた)に乗った大判のハンバーグ(生まれたて仔実装肉100%) と付け合わせの野菜類、白いご飯とデザートのレアチーズケーキ(コンビニ物) 天と地の待遇差に当然文句の程走るクズ。 「ど、ど、ど、どうちて!!!こんなにさがあるんテチュ!!!! ニンゲンのしんびがんはゆがんでいるテチュゥ!!! いますぐていせいすればどげざでかんべんしてやるテチュ!! さあ、はやくいもうととせきをこうかんするテチュ!!」 大きく出たものだ・・・・。 度重なるもてなしのせいで実装石特有の現実逃避癖が出て、知能が低下し始めたかな? でもそんな物は言い訳にはならない、自分の立場を再認識させてやろう。 星華に命じて針と細い針金と漏斗を持って来てもらう。 それらを手にして庭に出てテチテチ文句を垂れるクズの元に向かう。 「な、なんテチュ?!ようやくワタチのただしさをりかいちたテチュか。 まったく、ニンゲンはの・・・テベェェェ!!!!」 無駄口を最後まで聞くのは癪に障るのでさっさと握り潰してから持ち上げる。 クズは口と総排泄口から出血して悶えているが気にしない。 総排泄口と鼻を針金できつく縫い止めておき、 半開きの口に漏斗を突っ込み、喉の奥まで突起を押し込んだ後、口を塞げない様に顎の関節を押さえつけておく。 「五月蝿ぇよこのクズが!! 余程死後の地獄に興味が御ありのようですな。 だったらその一端をこれから体験させてあげよう。」 エサ皿一杯の毒汁を漏斗に注ぎこみ、中身が全てクズの胃の中に入ったのを確認した後、 吐く間も与えずに口をきつく固く縫い止める。 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 MPが吸い取られそうな前衛芸術的な踊りを舞って全身で喜びを表すクズ。 顔色が信号機のように変化し、体中に脂汗が滲み出してくる。 醜い顔に血管を浮き上がらせて胃の中の毒液を吐き出そうと苦悶している。 無駄無駄ァ! お前ごときの力では二重に縫い付けた針金は千切れまい。 5分も悶絶していると・・・・・・。 とうとう顔を真っ黒にして、耳の穴と目から毒汁を勢い良く噴き出して仮死を迎えた。 モザイクを掛けた方がいい死に顔を晒しているクズを鍋の中に放り込み、妹蟲に食事を始めるように促す。 俺の放つ強烈な負のオーラに気押されてパンコン寸前の妹蟲。 外は真っ暗なのと家から漏れる照明のお陰で妹蟲には俺の顔が見えていないようだ・・・。 たぶん見えていたら・・・・・、パンコンどころか偽石を割ってしまうほどの恐怖を味わって死んでいただろうな。 ・・・・・・自分でも抑えきれないくらいに感情が昂っている。 血圧が7割り増しぐらい上昇し、狂気を帯びた三日月の様な笑顔を浮かべているのが手に取るように分かる。 不味いな・・・・こんな所で弾けるのは宜しくない・・・。 ・・・・3分ぐらいで何とか発作を抑え、勤めて優しい声で妹蟲に再度食事を開始するように促す。 おずおずと皿に向かい少々冷えたハンバーグを口にする・・・・。 「チュ?、チュウ、チュウウゥゥゥ〜〜〜ン♪♪♪ な、なんておいちいんテチュゥ♪よのなかにこんなにおいちいものがあったなんてしらなかったテチュ。」 「それは良かったな子蟲。それは全部お前のものだ、好きなだけ時間をかけて存分に味わうがいい。」 さっきまでの陰鬱な気分は吹き飛び、一心不乱でご馳走に挑みかかる妹蟲。 服の汚れるのも構わず犬食いでハンバーグを食い散らかしテーブルマナーもあったもんじゃない。 所詮は野良なのでそういう手合いの物を期待すること自体が酷というものだが、もう少し綺麗に喰えないものかねぇ。 喰い方は汚いが実装石とは思えないぐらい素直な笑顔を浮かべている妹蟲。 コイツは親蟲の影響を多大に受けていて、尚且つ情緒の発達した個体なのだろう。 こういう連中ばかりなら実装石も迫害されることは無かっただろうに・・・。 わずか3分で120gのハンバーグを片付けて、本命のデザートに移ろうとしている妹蟲。 「口をゆすいでからにしたほうがいいぞ。さもないと折角の甘味が台無しになる。」 俺の忠告を理解し、実行する程度の理性は残っていたようだ。 忠告通りに行動し、待望のデザートにむしゃぶりつく。 まあいい、こいつは逃げ出す心配もないし・・・。 幸せ一杯の子蟲を尻目に家の中に戻って夕食にする。 一時間後、庭に出て子蟲達の様子を確認する。 鍋の底でまだ悶絶しているクズと地面の上に大の字で寝ている妹蟲。 どちらも叩き起こし、並んで整列させる。 「で、俺のもてなしは楽しんでいただけたかな?」 「はいテチュ♪ ママがいってたとおりニンゲンさんのなかにはとってもいいひとがいるっていってたのはほんとうだったテチュ。 こんなおいちいごはんとあったかいおふろにいれてくれて、きれいなへやでねかせてくれる ニンゲンさまはとってもいいひとだとおもうテチュゥ♪」 「・・・・・・・・・・・・・・」 ああそうか・・・クズは口を針金で縫いとめてあるから喋れないのだったな・・。 ニッパーで肉ごと針金を切り落とし常時歯茎剥き出しスマイルが可能な状態にしてやる。 さて、クズちゃんの感想は? 「へふあぁ・・・まう・・まうゆふひて・・・へヒュ・・・・。」 言葉すらまともに喋れなくなったクズの前に手鏡を置いてやる。 固まるクズ・・・・・・。 「どうしたクズ? 自分の姿に感動して言葉もでないか?」 「ヘフェェェッッ!!!ワハヒはかふぁひいへヒュゥ!! こふはビャケモフといっひょひふふなへヒュ!! ふひゅかひはビャケモフふぉどひょうかにすへふへヒュゥ!!!」 クズの頭を摘み上げ、手鏡の前で左右に振ってやる。 物凄い勢いで顔色と表情が変化し、ブルブル震えだす。 足りない頭でもここまで明確な証拠を突きつければなんとか理解できるらしい。 「フェ・・・フェェェェェェェーーーーーーー!!!!!!! ワハヒは・・・・ワハヒは・・・・・ワハヒはぁぁ!!!!!!!!! フヒュヒュヒュ・・・・・かふぁひくなひ・・・。 ・・・ワハヒはかふぁひくなひ・・・へチュゥ・・・。 ・・・・・・・・・へへへえへっへへっへっへっへ・・・・・・。 ・・・ワハヒはかふぁひくなひんへチュゥ♪・・・。 フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィイイイィィィィーーーーーーーーーー!!!!!! ジュブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッゥウゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 とうとう発狂したクズ。 やはり実装石は自分が可愛くないと認識させるとおもしろいな。 こればかりは賢い個体よりも糞蟲の方が良い反応を見せてくれる。 妹蟲もようやく隣の発狂したバケモノの正体に気付いたらしい。 実装石が家族を見分けているのは家族独特の臭いと実装石のみに分かる姿形の違いで判別を付けているらしい。 このクズからはその二つが消失していたから妹蟲は自分の姉だと分からなかったようだ。 熱湯で煮詰められて臭腺が全て潰されて家族独特の臭いを消された上に 全身火傷を放置した状態で実装活性剤を投与したため、 皮膚が出鱈目な再生をしてガンモドキの出来損ないの様な姿になっていたのだ。 このクズは家族内では親蟲を除きもっとも強い個体だったのだろう。 妹蟲の話を鵜呑みにしたとして、強い=可愛いと思っているなら こいつは自分のことを世界最高の美少女と自認していたのだろうな。 発狂したクズを見て盛大にパンコンしてしまう妹蟲。 その顔に凄まじい恐怖を宿し、血涙を流して震える妹蟲に問いかける。 「俺は善い人かい?」 妹蟲はそのまま気絶した・・・・・・。 次の朝、笑い続けるクズとガチガチ震える妹蟲をゴミ袋に押し込み親蟲の元に向かう。 あの後クズの正気は戻ることなく、妹蟲も姉の無残な有様に発狂寸前にまで陥っていた。 さすがにこうなってしまえば金平糖を与えても無駄。 食欲よりも恐怖の方が勝り、妹蟲が俺を露骨に警戒するので二匹一緒に鍋の中に放り込んでおく。 そうして一晩中、鍋の中では妹蟲が一生懸命クズの正気を取り戻そうと無駄な努力を繰り広げていた・・。 20分の道のりを歩み、例の空き地にやってくる。 ・・・・はっきりいって何も変わっていない。 ゴミを掻き分け奥に進んで行くと・・・。 必死でゴミを分別し、破れた袋に押し込んでいる親蟲を発見した。 巣の周りだけはまあ掃除したと言ってもいい位の状態だが、その他は昨日と大差ない。 「おはよう親蟲。今日は死ぬにはいい日だな・・・。」 「デ、デゥッ!!!!お、おはようございますデス・・・ニンゲン様・・・。」 ワザとらしく周りを見渡し、溜息を付く。 「所詮は実装石か・・・・。 丸一日掛かって巣の周りだけか? 要するに生きていたくない、親子仲良く俺に処刑されたいらしいな。」 「ッ・・・・!!お、お許しくださいデスゥ!!ワタシの能力では過ぎた仕事量だったんデスゥ!!! だから・・・無理だといったの・・・デズゥッ!!!」 土下座して言い訳をしていた親蟲の顔面に前蹴りをぶち込んでフッ飛ばす。 歯と体液を撒き散らしながら冷蔵庫の山に勢い良くぶち当たってゴミの山の中に落ちる。 ピクピク悶絶している親蟲を引きずり出して無理矢理起立させ、昨日預かっていた子蟲と服を返す。 「ママァーーーーー!!!!!おね、おねえちゃんが・・・おねえちゃんが・・・。」 「ふぇぺっぺっぺぇ・・・・・ひゅべぶぅ・・・・。」 凄まじいショックを受けて棒立ちになる親蟲。 発狂したクズの惨状が御気に召さないようだな。 「ニ、ニ、ニンゲン・・・様・・・これは・・・どういうことデス・・・・。」 「どうもこうも、もてなしてやっただけだよ。 お前たちの服を洗濯させ、風呂に入れて、エサを食わせてやった。 その際にそこのクズはグダグダと文句を垂れて不貞腐れたんで、ちょいと仕置きを施しただけだ。 それに妹蟲は無傷だろ? こいつはお前みたいにクソ真面目に俺の言いつけを守ったから少しは楽しいことを体験できたんだ。」 「でも・・・、これはやり過ぎデス・・・。 この仔がいくらい言いつけを守らないからといって・・・・こんなになるまで・・・・・。 ・・・この仔はまだ生まれて間もないんデスゥ・・・。」 「ふざけるなよ親蟲。糞蟲の分際で下らない意見を吐くか? 人間様に歯向かったクズを生かしてもらっているだけで有り難いと思え。」 服も着ないで二匹の子蟲を抱きしめ、自身も泣きながら子供を慰めている親蟲。 人間が好む行動を如何なる状況でも実行するように躾けられているこの親蟲の行動自体が既に媚。 行動と表情が一致していないぞ親蟲。 子供を労わるフリをして時間稼ぎをして、何か策を考えているのだろう。 なんとかこの状況を生き残り、家族を再建する手筈を練っている様子。 「まあいい言い訳と命乞いは処刑場で聞こう」 有無を言わさず親蟲を子蟲二匹をゴミ袋に入れて河原に移動する。 「ま、まってくださいデスゥ!!!洗濯機の中の子供達を忘れているデスゥ!!」 「ああ・・・アレか。アレは俺の特別の温情で見逃してやるよ。」 「だったらせめて外に・・・。」 「害虫を見逃してやるという俺の優しさに浸けこんでまだ何かを要求するかね? あくまで俺が手を下さないということだ。あとは好きにしろといっているんだ。 脱出しても良し、中にとどまるも良しということ。 好きなんだろ、自分で選択できる自由ってのが?」 「で、でもあの仔達じゃ洗濯機から出れないデス。 だ、だから・・・。」 「じゃあ、あの子蟲達の代わりにお前があそこに入ってみるか?」 「デ、デスゥッ!!・・・・・・・・・。」 黙り込む親蟲。 まあ、御身は大切だろうからなぁ。 並みの子蟲達のためには命は張れないか。 選択としては正しいが特級実装石としては減点ものだな。 洗濯機の中からはテチテチと耳障りな鳴き声が聞こえてくる。 子蟲の入った洗濯機が見えなくなるまで親蟲はゴミ袋の中で残された子蟲達を呼び続けた・・・。 空き地から10分ほど歩き、河原に到着する。 ゴミ袋内の糞蟲親子に別に逃げてもいいがそのときは、 死を超える苦痛と恐怖を長い時間を掛けて味合わせてやると警告して材料の調達に向かう。 中ぐらいの太さの竹や大量の流木を集め、親子の待つ地点に戻る。 偉いな、逃げ出さずに袋の中で固まっているよ。 これから何をされるのか皆目見当の付かない親子は不安で一杯のようだ。 そんな親子を尻目に即席の火刑台を建造する。 河原特有の粘土みたいな地面に穴を掘り、先ほど切り出してきた竹を突き立てて根元をしっかりと踏み固め、 大きめの石を組み合わせて支えにする。 竹を中心に流木を組み合わせ、その隙間に枯れた草を大量に敷き詰めて完成。 親子を袋から取り出し、一列に整列させて・・・ 「さて、掃除の不始末の落とし前を付けて貰おうか・・・。 親蟲か、子蟲か、3匹のうち2匹どれが死ぬ?」 唖然とする親蟲。 質問の意味を分かりかねている様子だ。 「だから、どの2匹が死んで責任を取ってくれるんだと聞いているんだよ。 生き残れるのは一匹だけだ。 もしかして家族仲良く焼け死にたいのか?」 「ち、違いますデス・・・。 ワタシか子供たちのどちらかが死ななければならないんデスか・・・?」 「そうだ、お前の無能が招いた事態だ。 子供を犠牲にして一からやり直すか、1匹の子蟲に未来を託して自分が死ぬかの二択だ。 好きな方を選ばせてやるから今すぐ決めろ。 あと3分後に答えを聞こう、その時答えられなかったら・・・・・。 その先は言わなくても分かるよな。」 粗末な顔をこの上ないぐらい歪めて物思いに耽る親蟲。 その傍らで不安そうに親蟲の顔を覗きこむ妹蟲。 ただ一匹夢の世界を散歩するクズ。 あと3分後には2匹が死ぬことになり、1匹が生き残る次第。 3分たった・・・・。 「で、どれが死ぬんだ?」 俯いていた親蟲が顔を上げ、俺の問いにどもりもせずに答える。 「ワタシが死にますデス。」 ・・・・・ほう、そうきたか。 糞蟲にしては考えたものだな、理由を聞いてみるか。 「ニンゲン様は子供を犠牲にして助かろうするワタシの命を助けてくれるはずデス。 でも・・・きっと、ワタシが二度と子供が産めない様にすると思うんデス。 ワタシたち実装石にとって子供が産めなくなるということは実装石の証を失う以上に辛い事デス。 でも、子供相手ならば・・・そんな無茶をすれば死んでしまうデス。 それでは約束違反になるデス。ニンゲン様はたぶんワタシ達が相手でも約束を守る人だと思うんです。 ワタシのご主人様もそういってたデス・・・・。 だからワタシが死んで責任を取り、子供たちを生かすデス・・・。」 なるほど、なるほど・・・・。 コイツは飼い主に捨てられる前に生きてく術を伝授された飼い実装の様だな。 たしかに虐待派は糞蟲と遊ぶときに何かしらのルールを設定するものだ。 ただストレス解消のためにいたぶり殺す時はともかく、知的な虐待を楽しむ場合は一定のルールを定めたら、 たとえ糞蟲相手であっても約束を破ったり都合が悪いからとルール変更をすることは余程のことがないかぎりしない。 ゲームとはルールを遵守して楽しむからこそ面白いのだと思うからだ。 こいつの主人はなかなか正鵠を得た思考をこの親蟲に刷り込んだものだ。 虐待派の思考を押さえ、その後の対処法を的確に判断するように躾けた様子。 コイツの主人は元虐待派だったのかもしれないな。 虐待派から転向した愛護派や実装石の実態を知りながら飼っていた物好きの一部が 免許を取得することができず、自分の飼い実装を手放さなくてはならなくなった時に 自分の知りうる知識を出来るかぎり飼い実装に教え込み、野に放したという話があった。 この親蟲もそうした中の一匹なのだろう。 飼い主としては保健所で自分の飼い実装が公園等で捕獲された野良と一緒に焼却処分されたり、 ペットショップに出戻りした自分の飼い実装が叩き売りの安値で虐待派に売られ、悲惨な末路を辿るよりは 危険や困難が多々有るにしても生き残る可能性のある自然に放してやった方がいいと思うのが人情なのだろう。 だが、いくらそんな知恵を授けても実装石には活用する知能も能力も足りない。 そんな無駄な努力をしても、せいぜい俺のような残虐な真性虐待派を大いに喜ばせるだけだ。 この親蟲も目の付け所は良いが、肝心な所が抜けている。 「いいだろう、お前が死ぬんだな? これが最終確認だ、これ以降の変更は一切認めない。」 「はい・・・・・・・デスゥ・・・。」 「よろしい、では残したい子蟲を一匹だけ選び出せ。」 「・・・・・デ・・デスゥッ!!・・・・。 い・・今なんて言ったんデス・・。」 「なにが? 俺は生かしたい子蟲を一匹だけ選べと言ったんだ。 質問の意味が難しすぎて分かりませんか? 糞蟲お母さん?」 「だ、だって・・・約束違反デス・・。 子供達は生かしてくれるっていったデス・・。」 「おいおい、俺の話をよく聞いていなかった様だな。 生き残れるのは一匹だけだと初めに言っただろう? 害蟲が2匹も生き残れると思っていたのか。」 「そ・・・そんな・・・。 だまされた・・・デスゥ・・。」 わなわなと震えだし、顔に憤怒の貌を刻んだ親蟲。 特級実装石でも所詮はこの程度か。 自身の幸せ回路で勝手に解釈した話を人間に押し付けようと躍起になっているようだ。 デスデス鳴きながら俺の脚をポカポカと殴りつけている。 「まあいい、それじゃあ俺が選んでやろう。」 親蟲を無視してクズを労わるように隣に寄り添っていた妹蟲を摘み上げる。 「コイツをお前の黄泉路の供にしてやろう。 お前のお気に入りの子蟲なんだろう、コイツは? 親子仲良く地獄に逝けるなんて幸せな死に方だなぁ。」 さっきまでの横暴な態度を急に改め、必死の土下座で妹蟲の命乞いを始める親蟲。 「お、お、お、お許しくださいデスゥニンゲン様ぁ!!!! ワタシの頭が悪いからニンゲン様のおっしゃることが理解しきれなかったんデスゥ!!! なんでもしますデス!!だから・・・だから・・その子の命だけは・・・・・・。」 「じゃあ、お前の誠意を見せろ。」 少し考えた後、 親蟲は自分の服を脱いで、実装石の証である服を破き始めた。 「まだだな、その程度ではお前の罪は清算されない。」 目を剥いて抗議しようとする親蟲。 自分のもっとも大切な財産を捨てたのに足りないというのかという顔をしている。 だか、妹蟲の悲痛な顔を見るなり態度を再度改め考え込む。 そして・・・。 「デスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」 雄叫びと共に自分の後ろ髪を引き千切り、ムシャムシャと喰い始める。 完食した後、血涙を流しながら残る前髪も全て毟って俺に差し出してくる。 「まあ良いだろう。では生かしておきたい子蟲を選べ。」 親蟲の差し出してきた前髪を持った手を枯枝で打ち払って散らし、 無気力に笑うクズとパンコンして泣く妹蟲を親の前に並べて選択を始めさせる。 しばらく視線を2匹の上で泳がせた後、震える手を伸ばして妹蟲を選ぶ。 「ま、ママァ♪」 「ワタシの希望はもうお前だけなんデス・・・。 ワタシが居なくなってもワタシの教えたことをよく思い出して・・・この世界を生きてくださいデス・・・。 そして・・・ニンゲンさんの迷惑の掛からない所で子供を一杯作って・・・幸せになってほしいデス・・。」 ぬるい虐待派が見たら愛護派に転向してしまいそうな位、真に迫った演技だが俺には関係ない。 三文芝居をさっさと打ち切ってクズの処分をさせる。 「じゃあ、いらないクズを処分しよう。 俺とお前どちらが殺すのかな?」 「デェ!!!な、なんでワタシが・・・。」 「そうかい、じゃあ俺が長い時間を掛けてじっくりいたぶり殺そう。 俺のもてなしを受ければそのクズも正気を取り戻して、 ママーー!!痛いテチュゥーー!!たちゅけてェーーー!! なーんていうかもなぁ。」 真っ青になる親蟲。 本命の仔が確実に助かることは確定したが、選ばれなかった仔は自身の手で一思いに殺してやらなければ この残忍な人間の手で嬲り殺される・・・・。 態度が気に入らないといって生まれたての仔をここまで壊した人間のことだ・・・・、 長い時間を掛けて嬲り殺すと言ったからには本当に実行するだろう。 だらだら脂汗をかく親蟲・・・。 「じゃあ、殺すかな?」 「ま、待って下さいデスゥ!! ワタシが殺しますデス!!ワタシの手でこの仔の命を絶つデスゥ!!」 親蟲は血涙を流しながら妹蟲から離れ、クズの所に向かう。 意味もなくヘラヘラ笑っているクズを抱きしめた後、 クズを背向きにし大口を開けて後頭部を一口で食い千切る。 ・・・・これで死んだはず・・・・・・・? 親蟲はクズが死んでいないことに気付いた。 確かに命の石がある場所を食いちぎったはずなのにどうして・・・・。 「チャァァァァアアアアアアァァァーーーーー!!!!!!! みゃみゃみゃみゃぁぁァーーーーー!!!! なひふぉちゅちゅんてちゅぅ!!!!」 脳みそを傷つけられたショックでクズが正気に返ったようだ。 口の周りがまるで再生していないのでまともに喋ることも出来ないクズを親蟲は掴み、 今度は首を一回転させる。 「ヒュブゥ!!!!! ひゃべて、ひゃべてヘヒュゥ!!! ひょうひてほんはひほいほほぅ!!!」 今度は心臓を潰そうと胸を踏みつける。 「みゃみゃァァァーーーー!!ひゃべてぇぇーーー!!! ワハヒはひにはくなひぃーーーー!!!ワハヒはひにはくなひヘヒュゥ!!!」 それから5分ほど親蟲の悪戦苦闘は続き、ようやくクズに止めを刺した時には原型を留めていなかった。 自分を助けてくれると信じていた親蟲に裏切られ、 最後の最後まで親蟲に助けを求めてながら喰われて死んだクズ。 「ご苦労さん、最後の晩餐はうまかったかい?」 「・・・・・・・・・・・なんで・・・こんなに・・・しぶとかったんデス・・・。」 いい感じに絶望の表情をした親蟲はクズのしぶとさに不信感を抱いているようだ。 それはな、偽石を抜かれて実装活性剤に漬けられているからだよ。 実装活性剤の偽石保護効果のお陰でショック死耐性が付き、並みの致命傷では死ねない。 それでもコイツのしぶとさは尋常ではなかったな・・・。 だいたい3〜5回目の仮死で偽石が割れるはずなのに、 コイツは10回の仮死を迎えて、ようやく偽石が崩壊した。 クズは生きたがりの個体だったのだろうな。 「さあ、今度はお前の番だ。」 親蟲を両手で掴み火刑台の中心に設置した先端を鋭利に尖らせた竹に親蟲の総排泄口をあてがう。 そしてジワジワと押し込んでゆき、心臓を避け、頭の付け根から竹の先端が出るように突き出して そのまま積み上げられた流木の3cm手前まで押し込んで止める。 「ニ、ニンゲン・・さま・・・どうか・・その仔を・・・おねがい・・します・・デェ・・ス・・・。」 いよいよ最後のときが迫ってきているのが分かるのだろう。 驚くほど静かな表情を湛えた親蟲。 「そうだな・・・コイツはお前に似て、そこのクズよりは見所が有りそうだから分類石候補生として 飼ってやろう。ただしその後のことはコイツ次第だがな。」 俺の答えにニコリと微笑む親蟲。 とりあえず自分の血筋を何とか残せたことに満足したようだ。 だが、親蟲を満ち足りた表情のまま死なせてやるのは釈然としないし、このままでは虐待としても意味が無くなる。 親蟲に実装活性剤を5倍に薄めた物を注射し、 ボロキレをグルグルと巻き付けてから親蟲と火刑台に灯油を満遍なく掛けて準備を完了する。 「それではお別れだな親蟲。」 「は・・・はいデェ・・ス・・。」 「最後に聞いておこうと思うんだがな・・・。 実装石の去勢の仕方についてお前は飼い主になんと聞いている?」 「・・・・ええっと・・たしか・・お腹を切り開いて・・・大きな袋を取り出して・・ 焼いた鋏で切り取って二度と・・再生しないようにする・・とご主人・・さまは言ってた・・デス・・。」 随分と古い知識だな・・・。 でもな、本当の去勢方法は至極簡単なことなんだよ。 震えて棒立ちになっている妹蟲を摘み上げ、 「お前は子供を去勢したら死んでしまうといってたな・・・。」 「は・・いデス・・。お腹を開いて内臓を切り取ったら・・か弱い子供は・・簡単に・・死んでしまう・・デス。」 「だがな、お前の知識は古い。 これは飼い実装の避妊処置に良く使われる手でな、子供でも出来るくらい簡単なことだ。」 そういって子蟲の顔を掴み、手にした枝で右の赤目を抉り取る。 「ジュウウゥゥゥゥゥゥーーーーー!!!!!!!!」 「デェェェ!!!!な、何をするんデスゥ!!」 「これでコイツは一生子供を産むことは出来ない。」 そういって抉りぬいた赤目を握り潰す。 悟りを開いたような顔をしていた親蟲の表情が絶望で歪む。 「何かの間違いで妊娠したとしても決して生むことは出来ない。 赤目がないから出産モードになれずに腹の中で子供が腐るか、消化してクソになるかのニ択しか無い。 お前たちは目の色の変化で子供を妊娠出産する、生物にあるまじきデタラメな体の作りだもんな。 腹を開いて生殖機能を去勢するよりもこの方が効果が高いというのはどういうことなんだい?」 この仕打ちが親蟲にとって決定打となった様だ。 今までの落ち着いた物腰は消え失せて猛烈な勢いで暴れ出し、 死にたくない、私を自由にして代わりにその産まず女を火炙りにしろ、 など知能と感情が一気に糞蟲になってしまった様子。 全ての望みは絶たれ、もう演技をする必要は無いのだからこうなってしまうのも当たり前だろう。 自分の血筋を継いで子孫を増やしてはずの仔が産まず女にされてしまい あらゆる不条理を我慢して俺から取り付けた約束も意味のない物に成り果てた。 自分の子供達、実装石の証である美しいと思っている服と自慢の髪、そして自分自身の命。 全ての犠牲が無駄で無意味な物だった。 そう、お前は昨日俺が子蟲と服を取り上げて帰った後、急いでこの街から逃げ出すべきだったのだよ。 子供はまた産めはいいだろうし、服もその辺の実装石を闇討ちして奪えばよかった。 それを賢しく愛情深いフリをして虐待派と渡り合おうと考えるからこういう目に遭うんだ。 でも、いままで良く我慢して根気強く賢く愛情深い親を演じてきたものだよ。 見苦しく足掻く親蟲の様子に満足した俺は、 クズの遺品の服を枝に巻き付けて針金で縛り灯油に浸して即席の松明を作る。 「さあ、ママを地獄に送ろうか?」 火を付けた松明を右目を抉られた子蟲に渡し、火刑台に点火するように促す。 「な、なんで・・・ワタチなんテチュか・・・。」 「そりゃ面白いからさ。」 いい顔だ子蟲。 これからのお前の一生はこんな事しか無いのだから今のうちから慣れておいたほうがいい。 「止めやがれデスゥ!!そんな事をしたら美しいワタシが死んでしまうデスゥ!!! お前もワタシの子供なら気合を入れてそこのクソニンゲンを殺すデスゥ!!! 子供も作れなくなった役立たずはまだ子供を産めるワタシのために戦って死ぬデスゥ!!!!!」 「本性まるだしだなぁ親蟲さんよう。 いいのかい?お前の生死はこの子蟲が握っているんだぞ。」 もう理解することを放棄したのか、ただ悪罵を吐き散らすだけの生ゴミと化した親蟲。 「もう五月蝿いから火を付けろ。 お前が生きていたいなら・・・・俺の命令を実行するがいい。」 親蟲の豹変にショックを隠せない子蟲は手の内にある松明を呆然と眺める。 そして凄惨な笑いを浮かべる俺を縋るように見つめてくる。 「俺に飼われて生きるということはこういうことを死ぬまで味わうということだ。 その松明が消えるまでがお前に残された時間だ。 ここでママと一緒に死ねばきっと楽だろうなぁ・・・・。 でもママが正気だった時にお前に何を託したかな? それらの事を熟考してお前自身の今後を決めるといい。 死ぬのも生きるのもお前の自由だ。 最後にもう一度だけ言おうか・・・生きていたいと願うのならその松明で親蟲を焼き殺せ。」 なまじ賢いがゆえにこの状況を覆す手段は無いことを悟ってしまったのだろう。 子蟲の残った左目の色がより深い緑色へと変化する。 ここで立ち止まるも死、 たとえ親を焼き殺し、浅ましく生き延びたとしても 更に過酷で報われない日々といつか訪れる親蟲以上に凄惨な死が待っているだけ。 生まれてわずか2週間で本当の絶望というものを知った子蟲。 その松明の火は長持ちしないから手早くものを決めた方が良いぞ。 ここが生と死の境界線だ 松明の火があと少しで燃え尽きようとしていた時、子蟲は親蟲の方へ歩いてゆく。 そうか、親蟲の詭弁を支えにして生き延びることにしたか。 「や、やめるデスゥゥゥ!!!!こっちに来るなデスゥ!!! ワタシがどれだけ苦労してお前を育ててきたか分かっているんデスか!!! 親殺しは大罪デスゥ!! 醜い餓鬼が世界の至宝たるワタシを手に掛けて神様が黙っていると思ってるんデスかァァ!!!! やや、や、あ・・・・デギャァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!! 助けて・・・助けて・・助けて、助けてデスゥ!!! ご主人様!!!ご主人様ァァァアァ!!!! 何でワタシを捨てたんデスゥ、とってもいい子にしていたのにぃ!!! ごめんなさいデスゥ、もう摘み食いしたりしないデスゥ!!だから捨てないでっぇぇぇぇ!!! ご主人様!!ご主人様!!ワタシのご主人様ァァァアアァ!!!!!!!」 親蟲はもう錯乱して何が何だか分からない有様だ。 子供に焼き殺される恐怖と絶望から現実逃避を始めてしまったらしい。 現在と過去の記憶が混ざり合い、最悪の部分だけが頭の中で再生されているようだ。 何度も何度も自分を捨てた優しい飼い主を呼び、助けを請うている。 無駄だよ親蟲、お前の大好きなクソ袋はお前のことなんかとうの昔に忘れてしまって、 今頃実翠石辺りと楽しく暮らしているんじゃないかなぁ・・・。 火刑台に辿り着いた子蟲は串刺しのままバタバタ暴れている親蟲を見上げ・・・、 「ママ・・・ワタチは生きるテチュ・・・。 まともだったママがいってたように・・ワタチはきぼうをすてないで・・・いきるテチュ・・。 だからママ・・・・・ワタチをゆるちてテチュゥ!!」 親蟲に別れを告げて、消えかかった松明を火刑台の薪の上に投げる。 「デッギャァアァアアァアアアァアアアアァァァァアアァアアアァアァアァァァァアアァァァ!!!!!!!!」 あっという間に火は火刑台を覆い尽くし、親蟲は紅蓮の炎の中でここにはいない元飼い主に助けをもとめる。 「ご主人さまぁ、ご主人さまぁ・・・ワタシは死にたくないデスゥ・・・・。 いい子にしますデス、掃除もちゃんと毎日やりますデス、ご飯の好き嫌いも言わないデス・・・・ だから・・・・だから・・・ワタシを助けぇ・・・・・・・。」 親蟲は自分勝手で聞くに堪えない命乞いを最後まで言い切ることは出来なかった。 炎の熱と煙で喉を潰されたのだろう、くぐもった呻き声だけが炎の中から聞こえてくるだけになった・・・。 「お前は生きることにした様だな。」 「は・・・はいテチュ・・・ニンゲンさま・・・。」 「では親蟲と約束した通り、お前を分類石候補生として飼うことにする。 丁度、分類石候補の調教を始めた所だからそこに編入して分類石になるために努力しろ。 俺が譲歩するのはそこまでだ。 この後は試験を受けて、合格すれば分類石として生きられるし、 不合格ならばそこの親蟲よりも酷い目に散々合わせてから地獄に送ってやる。」 「わかりまちたテチュ・・・。」 不景気な顔で新たな門出を迎える子蟲。 まったく・・・2ヶ月は少なくても無事に生きられると決まったのになんて顔だ。 しょうがない・・・コイツに贈り物をしてやろう。 「おい子蟲。 今日からお前は俺の所有物になるわけだが、 はっきり言って人間には実装石の区別なんて物は付けられないんだ。 お前たちは皆同じような顔をしているからな。 だからこれからお前に名前を与えて、他の子蟲と見分けが付くようにする。 わかりやすいように体に書くかな・・・。」 「テ、テェ!!ワタチのふくにラクガキするんテチュか!!」 「ラクガキとは失礼な・・・、ちなみに俺の飼う実装石は例外なしに全裸で過ごさせているんだ。」 そういって子蟲の服を毟り、火刑台に投げ込む。 「ワ、ワタチのふくがぁぁーーー!!! なんてことをちゅるんテチュ!これじゃもうおそとでいきていけないテチュゥ!!」 「何をいってる? お前は金輪際、外を見ることも無く一生を暗く狭い地下で過ごすことになるんだ。 そこには髪も服も無い禿裸の実装石しかいないから安心しろ。」 「テェェ・・・ワタチは・・・どうなるテチュ・・・?」 いまさら自分の愚かさと不運を呪う子蟲。 実装石という代物は全てが一拍子遅れているよな・・・。 まあいい、コイツに名前をやるんだったな。 油性マジックを取り出し、子蟲の胴体にデカデカと縦書きでこの子蟲の名を書いてやる。 「ごちゅじんちゃま・・・ワタチにつけてくれたなまえはなんなんテチュ?」 「聞いて驚くなよ、お前の名前は「親殺し」だ。」 自分の名前を聞いて固まる子蟲改め「親殺し」。 「良い名前だろう?「親殺し」。 自分が生き残るために親を殺したお前に相応しい名前だ。 あと、俺の飼っている実装石どもの小屋に入ったら大人しくすることをお勧めするよ。 許可無く鳴き声を出したり、勝手な行動をしたら連帯責任で罰を与えることになっているから 他の連中の気に触るようなことは慎むようにな。 さもないと・・・仲間から凄惨なリンチを受けて分類石になる前に死んでしまうぞ♪」 実装石は特別なものを持っている同族を妬み憎む性質を持っているのでコイツは何処まで生き残れるかな? 「親殺し」なんて最低な名前でも他の実装石からすれば妬みの対象、 しかも生まれて2週目の餓鬼が名前持ちなんてことが判れば古参の連中からの嫌がらせは必至。 俺が虐待とその他の目的のために飼っている実装石どもに名前なんて上等な物はない。 1番2番などの数字で呼ばれるだけで、その数字で呼ばれる連中も幸せな方だ。 そいつ等は実装石を仕分けて育てる分類石と育児石であって、 その他は名前はおろか存在さえも認知されずに死んでゆく連中のみ。 「親殺し」が古参や他の分類石候補生の嫌がらせをいかにして擦り抜けてゆくのか楽しみだな。 そうしている内に火刑台の親蟲も力尽き、炎に芯まで焼かれて炭の塊に成り果てる。 生きていた頃よりは幾分かマシな格好だな親蟲。 苦悶と絶望の貌を貼り付けた炭人形を蹴り飛ばし粉々にする。 そして自分の前途が真っ暗だということを完全に理解して途方にくれる「親殺し」に声をかける。 「どうだい、自分の選択は正しかったと思うかい?」 「親殺し」は粉々になった親蟲の成れの果てを見つめながら言った。 「はい・・・テチュ・・・・ママはいってたテチュ。 いきていればきっといいことがあるって・・・・だからこれでいいんテチュ・・。」 「それは上々。 まあ、お前の頑張り次第で色々な褒美が有るかもしれないぞ。 たとえば、子供が産めるようになるとか・・・。」 「ほっ、ほんとうテチュか?」 「本当だとも、ただしこれからの生活は地獄そのものだ。 底意地の悪い同族たちと実装石の頭では理解しきれない勉強の数々。 それらの困難を無事乗り越えて分類石になったとしても、 生まれたての子蟲を分別し地獄に送り込む畜生以下の仕事をこなす毎日。 むろん手落ちがあれば苦痛に満ちた仕置きが待っているぞ。 まあ、それ以前に無能な親蟲の仔であるお前が並居る候補を押しのけて分類石になれるかが見物だがな。」 泣きそうなのを懸命に堪えている「親殺し」。 「まあ、お前の代わりなんて幾らでも調達できるからどうでもいいのだが、 精々頑張って家族の分も生きてみるがいい。 そうしなければ親蟲の努力もクズたち姉妹の犠牲も何の意味も無くなる。 そうだ、昨日お前は面白いことを言っていたな・・・・。 今この場でもう一度聞いてみようか?」 俺は屈み込んで、俺のほうを真っ直ぐ見据えていた「親殺し」の顔を覗きこみ、こう言った。 「俺は善い人かい?」 「親殺し」は表情を変えず、残った左目から血涙を一滴流した・・・。 日課の朝の散歩中にエサの袋を背負った実装石を見つけた。 中型のコンビニ袋に生ゴミを満載し、辺りを警戒しながらヨタヨタと歩いている。 ・・・・・何時見ても無様な生き物だ。 実装石規制法が施行された今ではほとんど見かけることはなくなったが昔は酷かった。 生ゴミの日にはそこら中のゴミ集積所に実装石が群がりゴミを散らかし、デスデスと騒ぎ立てていたものだ。 散歩中に見つけた連中は裁判キャンセルで即死刑に処していたが一向に数が減らなかったな。 100匹単位で殺していても減らなかった実装石も人間の本格的な駆除の前には歯が立たず、 今では野良猫よりも珍しい存在になっている。 糞蟲は全て死に絶え、生き残った賢い個体も人間の機嫌を損ねないようにコソコソと街の隙間で へばり付く様に生きているこの時世に住宅街を歩く実装石・・・。 見つからないように尾行してゆくと最近町内で問題になっているゴミ捨て場と化した空き地に入ってゆく。 何時の頃からか親の躾のなっていない連中がこれでもかと捨てた家電ゴミと袋入りのゴミの間を 縫うように進んで行くと中程の所に3畳ほどのスペースが現れる。 広場の隅のほうに置かれた段ボールハウスから仔実装の楽しそうな鳴き声が聞こえてくる。 なるほどな・・・。 この家族はあぶれ者の様だ。 実装石規制法が施行されてから日陰で生きなければならなくなった実装石達は、 人間の死角である商業地の隙間に住居を構える様になっていた。 そこならば虐待派や清掃局員からも身を隠せる上に、安全に子育ても出来る。 何よりもレストランなどから出る生ゴミを少量とはいえ確実に手に入れることが出来るので 駆除を生き残った賢い実装石にとっては最高の生活空間と言えた。 でもそんな好条件な場所は限られており、おのずとあぶれる者が出てくる。 そうしたあぶれ者は自然の多く残る山野に落ち延びてゆくか、 危険を承知で住宅街や公園に住居を構えるしかない。 この家族もそうした中の一つなのだろう。 コイツ等もコイツ等なりに危険と悪意に満ちたこの世界で懸命に生きて来たのだろうな・・・。 でも、害蟲は駆除しないといけない。 糞蟲親子が一家団欒をしている段ボールハウスを思いっきり蹴り飛ばし、 壁のようにそそり立つ冷蔵庫の山に叩きつける。 「デウウゥゥ!!!デスゥ!!デスゥゥウウウゥ!!!」 グシャグシャに潰れたダンボールから親蟲が慌てて飛び出してきて辺りを警戒する。 蹴り飛ばされたショックで混乱しているのか5秒ほどしてからようやく巣を破壊した俺を視認した。 定番通りデスデス文句を垂れるのかと思いきや、唸り声を上げて巣内に残るわが子を守ろうとしている。 コイツは愛情のあるフリをしている個体の様だな。 問答無用で俺は親蟲の両足を掴み、7〜8回ほど完全死しない程度の力加減で地面に叩きつけて仮死させる。 「テギャ!!ギュブゥ!!デベッ!!ジュバッ!!デズゥッ!!シュブゥッ!!キュウゥッ!!デブッ!!」 顔を赤緑の体液で染め、舌をだらしなく垂らして仮死した親蟲を投げ捨てて段ボール箱内の子蟲達を覗く。 潰れた段ボール箱内では、8匹の子蟲達が抱き合って震えていた。 親が静かにしている内に子蟲の性格を確かめておこう。 その辺にあった空き箱に取り出した子蟲達を放り込み様子を見る。 少しすると、3匹が頭から湯気を立てて俺に猛烈に抗議を始め、 残りの5匹のうち3匹は隅の方で抱き合って震え、2匹は震える姉妹を慰めているようだ。 なるほど、この二匹が家族内の賢い仔実装か。 「ニンゲン、カワイイワタチにこんなぶれいをしてゆるされるとおもっているテチュか!!」 「そうテチュ!!どげさをしてあやまればゆるしてやるテチュ!! そしてカワイイワタチにほうしをしてつみをつぐなうきかいをやるテチュ!! おまえのわるいあたまでもわかるようにいうと、カワイイワタチをかわせてやるテチュ!!」 「ごはんのじゃまをしたばつとしていますぐおいちいごはんをくわせろテチュ!! えーーっと・・なんていうテチュか・・・とにかくおいちいごはんテチュ!!」 バカ3匹はスーパーピンチな状況も理解できないらしい。 リンガルに表示される言葉遣いをみるとまだ生まれて間もない様だ。 服こそ生え揃っているもののまだ10cmに満たない体格で、 自分の17倍以上もある人間に無礼な発言を平気で行なえる能天気さ。 こいつ等には慎ましさというものは無いのかねぇ・・・まあそんな高尚なものが有れば 大駆除の憂き目に遭うこともなかっただろうしな。 どうしようもないバカ3匹を摘み出し地面に下ろすと、一番バカそうな子蟲を選び出して罰を与える。 まずご自慢の髪の毛を全て毟って腹が減ったを申していた口に捻り込む。 次に詰め込まれた脂まみれの汚い髪を吐き出そうとえずいている子蟲の服を毟り、 それを3つに細く裂いて簡単な三つ編の紐を即席で作る。 目玉を見開き何とか汚い髪の毛を吐き出した子蟲を捕まえて、再度口に自身の汚い髪の毛と頭巾を捻り込み 今度は吐き出せないように服から作り出した紐を猿轡の様に咬ませて頭の後ろで3重の固結びにしてやる。 「ヒョフォウウウゥ!!ホウウ!!フッオウウッ!!」 血涙を流し、転がりまわる姉妹を見てようやく事の重大さを認識したらしい残りのバカ2匹。 抱き合って後ずさりしながら此方を根目上げてくる。 「チュゥウウ・・・。こ、こんなむほうがゆ、ゆるされるテチュか・・・。」 「そ、そうテチュ・・・・。マ、ママさえいればおまえなんかいちころテチュ!」 ・・・・・俺の早とちりだったようだ。 まあいいどうせ罰を与えるつもりだったのだからな。 とりあえずバカ2匹の前髪を毟り、ライターで焼き払う。 「「チュウウウウウウウゥゥウウゥゥゥーーーー!!!!!」」 この世の終わりみたいな絶叫を上げて燃えカスに群がるバカ2匹。 血涙を流しながら燃えカスを掴み、何度も何度も額に押し付けて元に戻そうと足掻く姿はなんとも微笑ましい。 さて、残りの子蟲ちゃんはどうしているかな? 空き箱の中に放り込んである残りの子蟲の様子を見る。 俺のバカな姉妹に対する行動を見ていた子蟲達は露骨な警戒心を剥き出しで威嚇をしてくる。 そんな虚勢も俺が手を伸ばすと粉々に砕け散り、優雅に居眠りをしている親蟲に必死で助けを求める。 「「マ、ママーーー!!たちゅけてぇーーーー!!どこにいるテチュゥーー!!」」 「こわいテチュ・・・。ママァ・・ママ・・。」 「やめてテチュゥ!!こっちにこないでテチュ!!ママはなにをしてるんテチュゥ!!ママァーーー!!」 「いもうとたちにはゆびいっぽんふれさせないテチュゥ!!おまえなんかどっかいっちゃえテチュ!!」 賢いと思われる2匹は丸まって震える三匹の妹を庇う様に立ちふさがり、 震えながらテチュテチュ鳴いて俺を追い払おうと必死になっている。 健気に姉妹を庇っている賢いと思われる2匹を摘み出し、中型の冷蔵庫の上に置いてやる。 「「チュゥゥゥウウウゥウゥーーーー!!!!!」」 自力では脱出出来ない高所に置かれ、我が身に降りかかるであろう苦痛と恥辱を想像し泣き震える2匹。 血涙を流して泣いている所をみると本気で死ぬと思っているようだな・・・・。 「ママ・・・・ママァ・・・。」 「こわいテチュゥ・・どうしてママはたちゅけにこないんテチュ・・・?」 「まあ落ち着けよ子蟲ども、お前達はまだ殺さない。 だから静かにしてお行儀良くそこに立っていろ。 さもないと・・・そこのバカどもよりも酷いことをしてやるからな♪」 俺の恫喝で静かになり、気を付けの体勢で立っている子蟲ども。 人間の恐ろしさを理解し、命令を聞かなければどうなるかを想像できる程度の知恵を持った個体か・・。 まあまあの代物だな、さて本命の親蟲の賢さはどの程度の物かな? 子蟲でこのぐらいなのだから親蟲にも期待が持てそうだ。 仮死から脱出し呻き声を上げながら地面で伸びている親蟲を持ち上げて その辺に転がっていた塩ビ製パイプで2〜3発顔をシバいて意識をこちら側に帰還させる。 「デゥゥゥウゥ!!!い、いったい・・・私はどうしたんで・・・・デウゥ!!」 人間に捕えられていることにようやく気付き狼狽する親蟲。 まったく愚鈍な生き物だな。 こいつを地面に降ろしてやり状況の確認をさせてやる。 悶えるバカ3匹と高い所にいる賢い2匹、そして箱の中で震える普通の3匹・・・・。 間引きする予定のバカ三匹の惨状を見て驚いたようだが、 子供はまだ全員生きていることを確認して安堵する親蟲。 だが俺と目が合い狼狽する。 さて、この後は何を見せてくれるのか。 猛烈な抗議をしてくるかと思いきや、この親蟲はいきなり土下座をして許しを請い始めたではないか・・・。 「お許しくださいデスゥニンゲン様ァ!! ワタ、ワタシ達はニンゲン様方に迷惑を掛ける様な不始末はしていないデスゥ・・・。」 なんとも実装らしからぬ丁寧な言葉使い。 コイツはもしかして元飼い実装か? 不審に思った俺は土下座してペコペコ謝る親蟲の頭巾を剥ぎ取り、後頭部を見る。 あった・・・。 特級実装石B1163号、2003、9/18登録 などの文字列とバーコードが後頭部の髪の生えていない所に刻印されていた。 特級実装石というのは一昔前にペット実装石ブームなどというものがあった頃に創られたモノ。 普通のペット実装石には有り得ないほどの知性と感情、 実装石の出来うる限りの家事を完璧にこなし、 実蒼石と見紛うほどの慎ましさと気遣いを持つ異端の実装石のことだ。 こんな不自然な物を作り出すのには並々ならぬ努力が必要なのは言うまでもない。 先ずは賢くて情緒の豊かなフリをするのが上手な実装石を揃え、 そいつ等の身動きを封じて舌を抜いた後特殊な妊娠誘発剤で受精させる。 妊娠した実装石の腹にスピーカーを貼り付けて洗脳用のカリキュラムをエンドレスで流し続ける。 賢い仔実装が生まれやすいとされる最良の湿度と温度、 胎内の仔実装用の各種薬剤、親用の安定剤、栄養剤を取り混ぜた点滴 幸せに生活しているなどの親を騙す用の擬似記憶などを3週間の妊娠期間の間十二分に与えておく。 出産する直前に開腹して仔実装を取り出し、偽石を抜かれた者が特級実装石候補生となる。 誕生してから半日も経たない大体300匹ほどの仔実装を揃えてから最初の試験が行なわれる。 普通のペット実装石の場合は簡単な○×問題程度なのだが、特級実装石の場合は胎教で刷り込まれた 人間に対する忠誠心と礼節の確認を行なう。 この時点で90%の仔実装が人間に対して非常に高い忠誠心と礼節を実装石の本能以上に インプットされているが所詮は実装石なのでテストを行い不要なカスを振るいに掛ける必要がある。 そうすることで無駄なコストを抑え、残りの仔実装に過酷な現実を理解させる手助けにもなる。 提示された問題に正確に回答できれば合格、間違えたり質問の意味自体を理解できない低脳は 耐熱ガラスを使って中が見えるように加工された高熱炉で焼却処分される。 この際、処分するカスどもに実装活性剤を薄めた末期の水を飲ませてから炉の中に投入する。 整列させられた合格者達は生きながら焼き殺される不合格者の末路を最後まで見学させられたのち、 生まれて初めての食事となるコンペイトウを1匹1粒ずつ渡して食わせた後就寝させる。 此処までに残っている仔実装は70%ほど。 次の日からは過酷な訓練とマズイ食事の苦行が始まり、ここで20%が脱落し火炙りに処せられる。 一週間に一度、様々な誘惑と外に逃げられる隙間などが用意された小部屋の中で過ごすことを許される。 といってもいつも通りの規律が適応され、自分勝手な行動は許されず、 ここでも本能に負けたクズが40%ほど脱落する。 こうした海兵隊キャンプ並みの過酷な調教を施してから一ヶ月半、 生き残って技術の調教課程終了した仔実装は最初の10%ほどになってる。 確立から言えばかなりの数が生き残っているように思われるが、 知能レベルが高いのでこの数でも少ないぐらいだという話。 一ヶ月半もすれば大仔実装位の大きさになっているように思われるが、 始めに行なった偽石の加工とエサに混ぜ込んだ薬剤のお陰でまだ10cmほどの大きさにしか 成長していない仔実装達。 成体にまで成長した実装石に商品価値はまったく無いので、 高級ペット用仔実装にはペットショップの店頭に並んで客に買われるまでは こうした成長阻害措置という物が良く行なわれている。 こういう処置をされていない安物のペット用仔実装は大仔実装程度に成長した時点で処分される。 殆どが叩き売りの安値で虐待派に買われてゆくそうだ。 そうなってしまえば今までの努力も我慢も全て無駄になり、なまじ賢く情緒が豊かなのが災いして 長く苦しめられて最低な死に方を迎える運命しか残されていない。 なお、客の中には一生仔実装のまま飼いたいという者が数多くいるので 成長阻害措置用の薬剤を混入した高額なエサが飛ぶように売れているそうな。 俺は実装石を虐待用以外でに飼育しようなんて思わないのでなんともいえないが 世の中には汗水たらして稼いだ金をドブに捨てる奇特な連中がいるのだなと感心するばかりだ。 話が逸れたが、特級実装石の最低条件をクリアした仔実装達に与えられる次の課題は実地訓練だ。 1LDKの部屋の中で人間と仔実装数匹が1週間ほど暮らし、 様々な状況を体感させて今まで学んできたことをフルに生かせるように調教するというものだ。 集団生活が始まる前に仔実装を眠らせ気付かれない様に偽石を抜き取って、 PCに接続した超高性能実装リンガル(偽石から実装石の心の声まで抽出できる優れもの)に 偽石をセットして実地訓練を始める。 始めの4日は優しく接し、残りの3日は仔実装が死ない程度に虐待する。 こうする事で人間に対する恐怖心と不信を植え付け、人間への服従を徹底させる。 それを4セット繰り返して実地訓練を終了する。 この実地訓練は性能のランク付けと演技をしている者の判別を行なう振るいの役目を持っている。 特級実装石に必要とされるものは性格の良さと人間の役に立つ技能を使いこなせる知能を持っていること。 どんなに優れていようと性格が糞虫ならば廃棄され、 多少不器用でも性格が良ければ生き残れる可能性があるということだ。 ちなみにここまでに生き残った仔実装は全体の3%ほど。 そうして数々の苦行に耐え忍び、シリアルとバーコードを刻まれた仔実装は晴れて特級実装石となり、 金持ちの愛護派に高級車並みの値段で売られていって幸せに暮らしましたとさ・・・・・、 で話は終わるはずだったのだが、野良どもの悪行が原因で施行された実装石規制法のお陰で状況は一変する。 実装石規制法にある実装石飼育についての項 実装石飼育免許を持たない者が実装石を無断で飼育した場合、 執行猶予なしの禁固1年以上の実刑と100万〜1億の罰金を支払うこと。 という物が出来てしまい実装石飼育免許を持つ虐待派か実装関係の仕事をしている人間しか 実装石を取り扱うことが出来なくなり、特級実装石を含むペット実装達は苦境に立たされた。 実装石飼育免許は別名実装石虐待免許と呼ばれるぐらい過激な代物で、 試験の内容は参考書を流し読みして、試験の対策と傾向をなぞる程度で80点は取れる程度の代物だが、 問題は試験官相手の実技と面接だ。 実装石のことを虐待用の玩具かただの肉塊程度に思える人間でないと到底取得できる代物ではない。 また、自分の可愛いペット実装と暮らすために努力すればするほど実装石の本質を知ることになり、 自分のペット実装も野良の糞蟲と同じ考えなのでは・・・・という疑心暗鬼に陥ることになって 最終的には保健所もしくは購入したペットショップに送られるか、 飼い主自身が虐待派に転進して嬲り殺されるという憂き目にあった。 そうした過酷な状況の中でコイツはよく生き残ったものだ。 特級実装石は飼い主が公園や野原に運良く捨てくれたとしても、 飼い実装のことを妬み憎んでいる同族や野生動物に見つかり嬲られた後喰われて影も形もなくなっているはず。 ・・・・・いくつもの偶然と奇跡がコイツを助けて、今日まで生き残って来たのだろう。 だがその奇跡も今日で打ち止めだな。 「おい、糞蟲。 人間様の土地を不法占拠した上にこんなに汚しやがって・・・・。 死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?」 音が聞こえるほどガチガチ震えながら親蟲は許しを乞い続ける。 「お許しくださいデスゥ!! ワタシ達家族は住むところを他の同族に奪われて仕方なしにここに住まわせていただいていただけデスゥ! 悪気は無かったんデス。でもこのゴミ捨て場は私が初めて来た頃からこんな感じだったデスゥ・・。」 土下座でペコペコ許しを請う親蟲の背中を塩ビ製パイプで何度も打ち据える。 実装石の苦痛の鳴き声が心地よく響き渡る。 「おまえの言い訳はいい・・・・・・ところでお前は生きていたいか?」 唐突な質問に固まる親蟲。 「だ・か・ら、お前は生きていたいかと聞いているんだ。 黙っているということは惨たらしく嬲り潰されて家族仲良く地獄に落ちたいのかな?」 「ち、ちがいますデス!!もちろん生きていたいデス!」 「そうか、生きていたいか・・・・。 だったら、何か人間のためになることを実践してこの世界にとって 自分は必要不可欠な存在だということを証明してみせろよ。 人間に仕えるためだけ生まれてきた元特級実装石のお前なら簡単なことだろう。」 「し、証明デスか・・・・。」 「そう、証明。 高級車並みの値段のしていたお前に相応しい仕事はな・・・・・。 ・・・・これでいい、この空き地を明日のこの時間までに清掃しておけ。」 目に見えて青ざめる親蟲。 60坪ほどある空き地の中には山積みのゴミが存在し、10tトラック2台分は軽くありそうだ。 特級実装石の掃除といえばク○ックルワイパーでフローリングを撫ぜまわしたり、 食器を洗浄器に入れてスイッチを押す、ゴミの分別をして軽いゴミを捨てに行く程度の能力でしかない。 背が低いので床以外の掃除は出来ない上に、実装石の手先は絶望的に不器用なので細かい作業は無理な話。 家財に被害を出さずに何とか完璧にこなせる仕事はこの程度しかなかったのだ。 不器用で鈍臭い実装石がこれだけの事をこなすだけでも奇跡なのに 俺はコイツの能力の100万倍以上のことを注文している。 人間でも5人がかりでまる3日は掛かりそうな仕事を押し付けられていることに気付いた親蟲は・・・・。 「む、無理デスゥ!! こんなに沢山のゴミをワタシ一人で始末する方法を学校の先生達は教えてくれなかったデスゥ!! 絶対無理デス!お願いしますデス!どうか他の仕事に変えて欲しいデスゥ!!」 塩ビ製パイプが唸り親蟲の背中を打ち据える。 「デゥゥ!!絶対無理デスゥゥウ・・・・。」 命令を拒否しようとする親蟲。 基本的に特級実装石は人間の命令に絶対服従になるように調教してあるのだが、 コイツは野良の生活が長いようなので人間に対する忠誠心が薄れているようだ。 「できないか?」 「無理デスゥ!!」 「そうか。」 では、はいと言うまで打ち据えるとしよう。 一体何分ぐらいで人間への忠誠心を思い出すかな? 10分後、背中の肉が爆ぜ背骨と肋骨が丸見えになるまで打ち据えられてようやく命令を受け入れた親蟲。 息も絶え絶えでふらつく親蟲のを元気つける為に親の惨状そっちのけで、 自分の心配しかしていなかったバカ3匹の両腕を引きちぎり、親蟲の口に突っ込んで命ずる。 「これからこなす仕事の英気を養うために肉を食わせてやろう。 嬉しいか?嬉しいだろうなぁ、 野良になってからは他実装の仔や間引く時に食った自分の仔以外は肉なんて口に出来なかっただろ? 良く咬んで、味わってから飲み込め。」 子蟲達にも良く聞こえる様に続ける。 「今食わせてやった肉はお前自身があと1,2日以内に間引く予定だった どうしょうもない糞蟲になる予定の子蟲の肉だ。 まだ足りないなら遠慮することはない、間引くときのように腹一杯貪り食うがいい。」 悲嘆に暮れた顔で俺の与えた肉をクッチャクッチャ汚らしい音を立てて咀嚼している親蟲。 笑顔が足りないな、 「親蟲、嬉しいときは笑え!!」 すぐさま甘い物を与えられた時のような至福の笑みを浮かべる親蟲。 特級実装石の心得を思い出し俺の命令に素直に従っている。 この卑しい糞蟲の浮かべている笑顔・・・・。 こいつ等の混じりけなしの感情なんて物は完全死を迎えかねない状況でしか見られない。 絶望した貌、生を繋ぐ為の必死の懇願の貌、死ぬ直前の全てが抜け落ちた貌。 こいつ等のナマの感情などこの程度だ、他の感情など人間に媚びて楽をするための方便でしかない。 親子が仲良くしているのも演技、仔を労わっているのも演技、仔と遊んでやるのも演技、 こいつ等が見せる行動全てが人間の歓心を得るための演技に過ぎない。 ペット実装とはこの習性を利用して演技する生き物を量産しているにすぎない。 人間が好む行動、表情以外を全て去勢し、出来の良い物は高値で何も知らない愛護派が買い取り、 劣る物や愛護派に選ばれなかった運の無い奴は、実装石のナマの表情を拝むことが大好きな虐待派の もてなしを受ける羽目になるだけ。 演技がお上手な親蟲にバカ3匹分の両手と下半身を吟味させ、精がついたところで残りの子蟲の始末をする。 普通と思われる3匹はその辺にあった壊れた洗濯機の中に投入。 何か文句を垂れているようだが、意地の悪い笑顔を浮かべて覗き込んでやると黙り込む。 素直が一番だ子蟲どもよ。 そして親蟲の期待の星の賢い2匹のことは・・・。 「おい親蟲、お前の服を脱いで俺に差し出せ。」 「な、何でデスか・・・・?」 「お前が逃げ出さないための保険だよ。 実装石はどんなに慈母ヅラしていてもいざというときは子供を見捨てて逃げ出すものだ。 俺が今まで駆除してきた連中は皆そうだったな・・・。 子供を好きにしていいからワタシを見逃して欲しいデスゥ〜〜とな。」 「ワタシはそんなことはしないデス!大切な子供達を見捨てて逃げるなんて出来ないデス!!」 「ご立派な答えだが、俺は実装石の言葉など信用する気は無い。 だからお前の命の次に大事なその薄汚い服を担保として寄越せ。」 黙り込む親蟲・・・・。 特級実装石の心得が服を差し出すことを望まない本能を何とか押さえつけている様だ。 いいえと言ってしまった時が自分と子供達の最後と分かっていても 実装石の証である自分の服を人間に差し出すのは抵抗があるらしい。 1分後・・・・血涙を流しながら服を脱ぎ、俺に差し出してくる。 可能なかぎり手入れをしている様子の薄汚い服を結んで袋状にして、その中に賢い子蟲を押し込んでおく。 「この2匹も服と同じように預かっておく。 心配するな、明日になるまでは絶対に殺さない。 お前たち家族の生死はママであるお前の双肩に係っているんだ、しっかり働けよ。 じゃあ、明日のこの時間にまた会おう。 せいぜい頑張りな。」 地面に虫の息で転がっていたバカ3匹を先に子蟲を入れた洗濯機に放り込んで蓋を閉め、 賢い子蟲を連れて家に帰るとしよう。 何か言いたげな裸親蟲の視線を背中に受けつつ俺と2匹の子蟲は家路についた。 20分ほどの道のりを歩き、我が家に到着する。 一人で住むには随分広い、築年数30〜40年は経っている6LDKの家の前で道を掃除をしている人影。 140cmほどの身長の少女だが、俺の妹ではない。 大学に居た頃に購入した狩猟用仔実蒼石を実蒼さんにまで成長させた個体、名を「星華」という。 「お帰りなさい、旦那さん。」 「ああ、ただいま。 星華、仔実装鍋は何処に放り込んであったか知っているか?」 「アレは確か・・・、裏の物置でしたか? さがしてお持ちしましょうか。」 「お願いするよ、縁側のほうにいるからそっちに持ってきてくれ。」 そういって庭のほうに向かう。 郊外にある古い家なので何もかもが広めに造られており、 家庭菜園にしてもまだまだ余裕のある庭を通り過ぎ、居間の前の縁側に向かう。 ブルブル震えている子蟲どもを縁側の近くにある水場の受け皿の上に降ろし、 「これからお前たちに仕事を与える。 自分の着ている汚い服とママの汚い服を洗濯してもらう。 それが完全に終わるまではエサも与えないし、 明日ママの所に帰るまでに与えた仕事をこなしていなければ・・・・・・。 この先は言わなくても賢いお前たちにはわかるよな?」 受け皿に水を張り、洗濯を開始させる。 服を脱ぎ水に浸すまでは分かるようだが、その後何をしたらいいのか分からないらしい。 「水に浸した服をたたんで踏みつけろ。 そうして汚いもやが出なくなるまで踏みつけたら絞って、縁の所にでも掛けておけ。 まあ、念のために言っておくが・・・もしも逃げ出したりしたら生まれてきたことを猛烈に後悔しながら 長い時間をかけて死ぬことになるからその辺の所を宜しく。」 引きつる子蟲どもを尻目に、俺は朝食を摂りに縁側から家の中に戻る。 朝食後1時間ほどだらだらして午前9時ぐらいになった頃、 子蟲達の様子を見に縁側に出る。 既に自分達の服を洗い終わり、親蟲の大きな服を2匹がかりで踏みつけている。 実装石の中では性能の高い部類に入る特級実装石の産んだ賢い子蟲ならこの位の事は出来て当たり前か。 まあ親蟲は生まれたときからこの程度のことが出来るように胎教を施されていたのだろうから その性質が劣化して遺伝しているのだろう。 でもそんなことは関係ないな。 恒例の姑的イジメを子蟲どもに行なう。 星華に探してきてもらった仔実装鍋(燃えないゴミの日に捨てられていた芋煮用の大鍋)の中に水を張り、 子蟲どもの服を浸して軽く揉む・・・・・・やはり大量の緑色のもやが水中に撒き散らされる。 「おい、子蟲ども!!全然綺麗になっていないじゃないか!」 「テェ!!そんなことはないテチュ!! いっぱいふんできたないもやがでなくなるまでちゃんとやったテチュ!」 「ほう・・・これはなんだ?」 口答えした強気な子蟲を吊るし上げ、鍋の中身を確認させる。 「テェェ!!なんでテチュ・・・。あんなにいっぱいふんだのに・・・。 そうテチュ!ニンゲンさんがさわったからよごれがついたんテチュ♪」 「なるほど・・・あくまで自分の責任では無いと?」 「そうテチュ!ワタチはいっそうけんめいやってるテチュ! ニンゲンさんのいじわるにきまっているテチュ!いいがかりはやめてほしいテチュ!!!」 とりあえずこの脳タリンの両腕を揉み潰し、紐みたいになった両腕を後ろ手で蝶々結びにして、 そのあとデコピンを脳天に打ち込んで水場の受け皿に叩きつける。 「チュウウウウウウ!!!!!い、いたいテチュウゥゥゥゥウウウ!!!!! な、なんにもわるいことをしていないワタチがどうしてこんなひどいめにあうんテチュゥ!!」 「お前は並みの実装石のようだな。 特別な親から生まれた並みの実装石ねぇ・・・。 ようするにクズってことだな。」 「うっうるさいテチュ!!クズっていったほうがクズテチュ!!」 「おい、もう一匹の方。 コイツの罪状は何だ?」 「テ、テェェェ!!ワタチテチュか!?」 「そう、お前だ。 こいつの犯した罪を上げて見ろ、今すぐに。」 震えて糞を漏らす子蟲。 また洗濯が困難になるな・・・・。 「え・・・・えっと・・・まずはニンゲンさまにくちごたえをちたつみテチュ・・・。」 「他は?」 「・・・・・ニンゲンさまをばかにして、しごとのふできをニンゲンさまのせいにちましたテチュ・・。 あとは・・・じぶんのおかしたつみをみとめずひらきなおったことテチュ・・・。」 「ふむ・・・全部拾い上げているようだな、いいだろうお前は不問に処す。 本当はエサをくれてやろうかと思っていたのだが、仕事はまるでダメ、口答えをしてあまつさえ 自分の不備を俺のせいにして開き直るクズの所為で朝飯は無しだ。 次来るまでに自分の服ぐらいは綺麗にしておけよ。さもないと明日ママに会えなくなるかもしれないぞ。」 「「チュウウウウウッ!!」」 悲痛な叫び声を上げる子蟲ども目掛けて鍋の中の水ごと服を受け皿の中に流し込んでやると、 水流に揉まれてあちこちに叩きつけられて満身創痍になる。 水場の栓を抜き、新しい水を張り直してやって作業を再開させる。 両手を潰されたカスはやり難さと痛みにブツブツと文句を垂れながらいい加減に踏み、 真面目な子蟲のほうは今まで以上に懸命にたたんだ服を踏みつけている。 まあ、アドバイスぐらいはやるか。 何時までも洗濯させていても面白くないからな。 「子蟲ども、20回ぐらい踏んだら一度開いてもう一度たたみ直してから踏めよ。 そうしないと何時までたっても洗濯は終わらんぞ。」 なんとか2匹とも理解したようだ。 それなりの頭は2匹とも備えているようだな。 真面目な子蟲はアドバイス生かしているが、クズの方は腕が使えないためただ踏むことしかできない。 クズの悪戦苦闘を見かねた真面目な子蟲が服を裏返してやろうとすると物凄い剣幕で、 「ジャマをするなテチュゥ!!ワタチにはワタチのやり方があるんテチュ!! ニンゲンにおべっかをつかううらぎりもののてはかりないテチュ!!」 と大声でぬかしておられる。 まあいい精々頑張りな。 実装石が洗濯を完了させることなどは決してないからな。 実装石の体格では汚れを揉み出すために必要な力も体重も不足しているため、 決して洗濯物が綺麗になることは無い。 野良でありながら綺麗好きで知られる賢い実装石であっても所詮は野良。 小奇麗に見えても近くに寄ってくると不快な実装臭が漂ってくる。 これは実装石の体のつくりと生活にも問題がある。 凄まじい再生能力の副作用で新陳代謝が激しいため、毎日洗濯していたとしても臭いは摂りきれず、 腐りかけの生ゴミを主食にしているため体臭を消すための根本の改善ができない。 悪循環が多く重なり世間一般では実装石は不潔で臭い生き物というイメージが定着している。 大粒の涙を流しながら黙々と作業に打ち込む子蟲達。 なぜ、ワタチたちはこんな酷い目に遭わなければならないのか・・・。 なんて下らない事を考えているのだろう。 クズは無論、真面目な子蟲ですら作業する姿から不満が滲み出ている。 まだお前たちは幸せな方だよ・・・、 問答無用で殺され無い上に明日になればもう一度だけ大好きなママに会えるのだからな。 さて、折角のいい天気だ。 家庭菜園の手入れでもするかな。 アレから3時間が過ぎた・・・・・。 つい菜園の手入れに熱が入り、すっかり子蟲達のことを忘れていた。 「昼ごはんができましたよ〜〜。」 と声を掛けられて、作業にけりを付けて縁側に歩いていく途中でふと目に止まるもの・・・・。 ・・・・水場で仮死している子蟲が2匹・・・・・。 極限の過労で力尽き仮死を迎えたようだな。 直前まで踏んでいた洗濯物に覆いかぶさるように仰向けで倒れ、薄く張られた水の上をプカプカと浮いている。 しょうがないな・・・・。 急いで家に上がり作業部屋の冷蔵庫の中から実装活性剤を持ち出してきて、 各子蟲どもに1ccづつ注射しておく。 すると目に見えて子蟲達の体に生気が通って行き、10秒もしないうちに目を覚ます。 「テェェ・・・。おいちいごはんは・・・・どこにいっちゃったテチュゥ・・・?」 「・・・・・・あれぇ・・、なんでママがいないんテチュ?」 まだ夢の世界に片足を突っ込んでいるようだな。 受け皿を蹴り、子蟲達の意識を此方側に帰還させる。 「仕事中に居眠りとはいい度胸だな。 もちろん仕事は終わったんだろうな?」 「も、もちろんテチュ!だからワタチたちをさっさとママのところにかえすテチュ!!」 「お、おねえちゃん・・・。 ニンゲンさまにそんなくちのききかたをしちゃだめだってママがいつもいってるテチュ・・・。」 「うるちゃいテチュ!!これはワタチたちのとうぜんのけんりテチュ!! せんたくをおわらせたんだからサッサ・・・バチャアアアアァァ!!!!」 わきの下から枯枝を突き刺し、両肺と心臓を串刺しにしてやる。 ここまで無礼で脳タリンの糞蟲に当たったのも久方ぶりだな。 2〜3度枝をこねくり回してから引き抜き、クズを地面に投げ捨てる。 口と総排泄口、わき腹の傷口から盛大に体液と糞を垂れ流して悶絶するクズ。 肺に血が溜まって息が出来ず、陸に居ながら溺れている愚かな子蟲。 「さて、本当に綺麗になっているか確かめさせてもらうぞ。 まずはお前のだ。」 真面目な子蟲は震えながらも洗濯した自分の服を俺に手渡し裁定を待つ。 水に浸して揉んで見ると・・・・やはり汚れが落ち切れていない、 だがコイツは一生懸命努力していたからこれに関しては許してやろう。 「よし、お前は合格だ。」 空の仔実装鍋の中に摘んで移し、市販の実装フードを与える。 水気がなくモサモサして喰いずらそうな代物だが、 子蟲は血涙を流しながらそれを無我夢中で食いついて腹の中に収めていた。 まったく・・・あんな物で喜ぶなんて安い嗜好だな。 「次はお前だなクズ。 大口を叩いたからには完璧な仕事をこなしていなければどうなるか・・・・。」 4時間と大差ない出来・・・・。 コイツは知恵は多少回るが仕事はダメ、人間に対する脅威も認識できない欠陥品ということだな。 やはり野良の過酷な環境では優性遺伝子を持つ特級実装石でも子供の出来は良くないらしい。 いや、一匹だけでもまともそうな仔がいるだけでも上出来とすべきか・・・・。 実装活性剤のお陰で失血による完全死を免れ、高速再生が始まって傷が治りかけているクズを摘み上げ、 自分の不出来さを確かめさせる。 「・・・・このクズ!!。 妹はちゃんと仕事をこなしたのにお前は大口叩いておいてこの様か・・・。 この出来損ないの糞蟲め!今からお前の名前は「クズ」だ!! どうだ嬉しいかクズ、実装石にとって名前は特別な物だもんな。 お前に相応しい名前だなクズ、そのまんますぎて笑っちまう。 どうしたクズ、返事は!?」 憤怒の相で俺を睨み付けているクズは、 「クズ、クズいうなテチュ!!ワタチはクズじゃないテチュゥ!!! ニンゲンのくせにいいかげんにしないとぶっとばすテチュゥ!!!」 何も言わずにデコピンを喰らわす。 「チュウ!!いいかげんにするテチュ!!」 更にデコピンを喰らわす。 「いたぁーーいテチュゥゥゥ!!!なんでワタチがぁ!!」 更に更にデコピンを喰らわす。 「なんでこんなひどウィ!!!」 更に更に更にデコピンを喰らわす。 「チィィィィイイイイ!!!!!やっめてテチュゥウウゥゥ!!!」 更に更に更に更にデコピンを喰らわす。 「ごめんなさい、ごめんなさいテチュゥゥゥウウ!!!」 更に更に更に更に更にデコピンを喰らわす。 「なんでもいうことをきくテチュゥ!!だからもういたいことしないでくだちゃいテチュゥゥ!!!」 額が陥没し、めり込んだ肉に圧迫されて両目が飛び出し、出目金のような顔になったクズ。 ブサイク以外形容の仕様がない面を血涙で濡らしながら俺に許しを請い始める。 「では聞こうか? お前の名前は何だ?」 「ええ・・・っと・・・・。」 溜めを行ったデコピンを見せる・・・。 「ワタチの・・・名前は・・・ク・・・ク、ク・・・クズ・・・テチュ・・・。」 「何だって?良く聞こえんなぁ? もう一度大きな声で名乗れ。」 「わ、ワタチの名前は・・・・クズテチュゥ!」 「良く聞こえん!!!もう一度!!!」 「ワタチの名前はクズテチュゥ!!」 「良く聞こえんな!!!もう一度!!!」 「ワタチのぉ名前はクズテチュゥ!!!!」 「声が小さぁーーーーーい!!!!!玉落としたか!!!!!もう一度!!!」 「ワタチのぉ名前はぁクズテチュゥ!!!!!!!!!!」 俺は妹蟲の方を向き、 「だそうだ、これからはこの仔実装のことを「クズ」と呼べ。 それ以外は許さん。 お前が俺の命令通りに行動してこのクズに苛められたりしたら遠慮なく言うがいい。 強烈な仕置きを施し性根を叩き直してやる。お前も俺の命令を実行しなかったら同じ目に合わせてやる。 いいな、コイツをクズ以外の名で呼ぶことは許さん。」 「は、はいテチュ・・・。ニンゲン様・・。」 「よろしい、ではクズから改めて自己紹介があるそうだ。」 クズを妹蟲の居る鍋の中に降ろし、気を付けの体勢で立たせて自己紹介をさせる。 「わ、ワタチの名前は・・ク、クズテチュゥ!! よろしくおねがいちまちゅテチュ!!」 「こ、こちらこそおねがいしまちゅテチュ・・・ク、クズ・・・さん・・。」 ビキッとクズのこめかみに青筋が浮かぶ。 ・・・・面白いことになりそうだ。 「あの〜・・・、旦那様。 ご飯冷めちゃいますよ?」 居間のガラス戸から蒼い割烹着を着た少女が顔を出して俺を呼ぶ。 この少女も星華と同じく実蒼さんの「彩華」という。 狩猟用実蒼石は2〜4体の同じ親から同時期に生まれた姉妹が一セットで販売されている。 その理由は実蒼石の持つテレパス能力を使用した狩りを有効的に行うため。 血縁の無い個体同士でも簡単な通信は行えるが、やはり姉妹のほうが通信範囲が広い上に精度も格段に高いので 深山で行われる山実装狩りに使われる狩猟用実蒼石は姉妹単位での流通がメジャーとなっている。 それに実蒼さんにまで成長させれば人間の言語も喋れる様になるし、 格段に戦闘能力が上昇する(成体実蒼石の約100倍)上に、見た目も人間の美少女そのものになるので 実蒼石というものは素晴らしい生き物だと俺は思う。 ちなみに彩華のほうが姉だ。 そうそう昼めしだったな・・・。 クズは罰として飯抜きに処して、俺は家の中に戻る。 30分後、食事を終えて庭に出ると鍋の中が騒がしい。 「なんでおまえだけがごはんをたべてカワイイワタチがごはんぬきなんテチュか!!」 「おね・・・クズさんはニンゲンさまにあんなにたてついたからテチュ・・・。 でも、あのニンゲンさまはママがいっていたこわいニンゲンとちがってちゃんといいこにしていれば ひどいことはしないみたいテチュ・・。」 「クズいうなテチュ!!いもうとのくせになまいきテチュゥ!! あのクソニンゲンはまちがっているテチュ。ワタチのようにかわいいじっそう石をかわいがらないで いじめるなんてしょうねがまがっているテチュゥ!! なんでカワイイワタチがぁ・・・・・。 ・・・・・どうしたんテチュ?そんなまぬけなかおをして・・・・。」 妹蟲の表情を不審に思ったクズは恐る恐る後ろを振り向く・・・・・。 そして固まる。 満面の笑みを浮かべた俺に戯言を全て聞かれてしまったのだから・・・・。 さて、どうしてくれようかな♪ 「どうもすいませんねぇ、性根が曲がっていて。 さて、とても素晴らしい御高説を拝聴し、 是非とも特別なもてなしをクズさんに馳走したいのですが、 3つほどあるのでどれか好きな物をえらんでくださいな。」 ガチガチ震えるクズを摘み出し、縁側の上に載せて問う。 「一つ、賢い実装石の大好きなお風呂 二つ、食べきれないほどの食事 三つ、子供には早いかもしれないが夜の遊び さて、どれがいい?」 問答無用で嬲り潰されると思っていたクズは不審な顔している。 「何だ?どれも要らないのか。 じゃあしょうがないな、いい子にしていた妹の方に・・・。」 「お、おふろがいいテチュ!!」 なるほどねぇ・・・。 賢いという言葉に引かれて風呂を選んだか。 ・・・じゃあ準備するとしようか。 20分後、鍋の中に入れられ、首まで水を注がれてガチガチ震えているクズを眺めている。 「じゃあ楽しいお風呂を始めようか。 だがなクズ、お前は風呂がどんな物だか知っているのか? 三つ目は兎も角、腹いっぱいエサが喰える機会を逃してまでどうして風呂なんだ?」 「ママがおしえてくれたテチュ・・・。 ママをかっていたニンゲンさんがまいにちかかさずいれてくれてたそうテチュ。 あったかくてきもちがよくて、おわったあとはいいにおいがするっていってたテチュ。 だからワタチもママとおなじようなきぶんをあじわいたいテチュ♪」 野良の上、生まれて間もないこいつが風呂なんて物を親から教えられたとはいえ理解していることは驚きだが、 下らない見栄が実装石の食い意地を押しのけたことも驚愕に値するな。 大駆除が行われてから同じ行動しかしない糞蟲が消え去り、 生き延びる努力をした賢い実装石の生み出した様々な個性を持つ仔実装が現れ始めた。 一概に糞蟲候補の低脳ですら個性らしき物が表われ、実装石も絶滅しまいと様々な努力をようやく始めた様だ。 だが、虐待派が少なくなった実装石を求めて常に街を虱潰しに徘徊しているし、 清掃局員も一匹捕まえるごとに手当てが出るようになっているから真面目に仕事に取り組んでいる。 捕獲される数が減ったとはいえ毎日100〜200匹の実装石が捕獲されており、 いくらデタラメな繁殖力を誇る実装石といえど、このままでは真綿で首を絞められるように絶滅してゆくだろう。 仮に人間を出し抜ける個体が生まれたとしても人間の傍で生活を続けようとするかぎりは、 現状の数を維持するのが精一杯で昔のように都市を埋め尽くすなんて時代は二度と訪れないだろう。 まあいい、望み通り風呂に入れてやろう・・・熱々のヤツにな! 大型のトングで先ほど熾した焚き火の中に放り込んでおいた拳大の石を取り出し鍋の中に放り込む。 「チュウゥゥゥゥウウウゥゥ!!!!!あぶないテチュゥ!!なにをするテチュ!!」 「なんだいこんな物も知らないのか? コイツは石焼風呂といってとっても特別な風呂なんだぞ。 人間だって滅多に入らない珍しい物なんだ、ママだって入ったことはないだろうなぁ・・・。」 「・・・・そうなんテチュか・・? ママもはいったことのないとくべつなおふろ・・・。 いいかんじテチュ♪じゃんじゃんいれてほちいテチュ♪」 俺は嘘は言っていない。 キャンプとかをする時に川の浅瀬を即席プールのように囲んでその中に熱した石をこれでもかと放り込んで 即席の風呂を作る方法があると何かの本で読んだ事がある。 まあ日本でそんな本格的に野営をする物好きはいないだろうから滅多に入らない珍しい物と言ったのだが・・・。 とりあえずあと2つほど石を放り込んで様子を見る。 水の量が多いから中々温度が上がらないらしい。 「なんだかぬるいテチュ・・・。これがとくべつなんテチュか?」 さらに3つ投入する。 クズから鼻歌めいた唸り声が聞こえるようになってきた。 「湯加減はどうだい?」 「さいこうテチュゥ♪」 なるほどこの辺が安全圏か・・・。 それが分かればもう容赦はいらないな。 焚き火の中から次々と石を取り出して鍋の中に放り込んでゆく。 石が増えるごとに顔色が悪くなり、足場も焼けた石に占領されて無くなってゆく。 「も、もういいテチュゥ・・・。あついテチュ・・・・。」 「何を言っている、これからが本番だろうが!! 特別な風呂なんだぞ、頑張れよ!!」 無責任なことを言い放ち次々と焼け石を投入する。 水面に泡が立ち始め、そろそろ沸点間近のようだ・・・。 俺は鍋の蓋を持ち、一際大きい石を摘んで・・・、 「さあ、これで最後だ!!」 一際大きい石を放り込み、急いで蓋をする。 数秒の静寂の後・・・・・・。 「ジュアアアアアアアァァァッァァアアアアァァァァァアアアァァァァァーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」 魂千切る絶叫と共に薄く緑色に染まった湯が勢い良く蓋の隙間から噴き出した。 蛙を鍋に入れて水から煮出してやると沸騰するまで生きているなんて話があるがこいつ等も同じ様なものか。 鍋に背を向け丸まって震えている子蟲を吊るして、 「これが終わったら次はお前だ。」 「テェ!!ごめんなさいテチュゥ!!どうかゆるしてくだちゃいテチュ!!」 「まあそんなに固くなるな。クズの無様な様子を目を逸らすことなくちゃんと見れたら勘弁してやろう。 あとクソを漏らしたらお前も嬲り潰すから気を付けろよ。」 悲鳴が絶えない鍋を凝視させる。 ピンクローターの様にブルブル震えているが俺の命令通りクズの惨状を瞬きもせずに凝視している。 コイツは中々意思の強い子蟲のようだ、この惨状を見てクソも漏らさずなんとか我慢している。 親蟲の本命はこの真面目な子蟲の方だろうな・・・。 いくら特級実装石の産んだ仔実装といえども大体はそこで煮えているクズ止まりの出来の仔実装が殆どで、 コイツのように慎ましく、物事を理解して状況判断の出来る仔実装など本当にごく稀・・・・・ 10万匹に1匹いるかどうかという確立の低さ。 それゆえ実装石ブーム時にはこういう子実装は上級サラリーマンの年収を軽く上回る値が付けられて 新聞の三面を驚かせていたものだ。 いまではこいつ等の10倍以上の知性とやさしい性格と愛らしい風貌を持つ実翠石が 実装ペット業界を席巻しているのでいまさら実装石の出番などない。 要するに愛玩用ペットとしての価値が失われて、ただの物として取り扱われるになっている。 俺のような虐待派か実装畜産業者、もしくは試薬実験や生体実験用のマルタとして飼われる程度の需要しかない。 お前さんもあと2〜3年早く生まれてくれば少しはこの世の春を謳歌できたかもしれないのにね。 5分ほどが経ち、沸騰もクズの悲鳴も収まり、鍋の中が静かになる。 蓋を外すと、真っ赤に茹で上がったクズが緑色に染まった熱湯の中に浮いていた。 「テェェェ・・・・。」 もう何も言う気力も残っておらず、ただ力なく呻くだけ。 偽石を抜き忘れたから死んだかと思っていたが、実装活性剤の効果が残っている様でしぶとく生きている・・・。 トングで茹で上がったクズを取り出し地面に投げ捨てておく。 身動き一つ取れないところを見ると神経が全て死んでる様子で、 重度の全身火傷で皮膚の再生も儘ならずただ息をしているだけの肉塊に進化したクズ。 いよいよ相応しい相貌になってきたな。 親蟲との約束を守るためにコイツを生かしておかなければならない。 またまた実装活性剤を1CCほど打ち、水を張った受け皿に入れておく。 意識は空高く飛んで行ってしまっているのだろう・・・ 心臓に直接注射してもウンともスンとも言わず、ただ意味の無い呻き声を漏らしているだけで面白みがない。 あと2〜3時間は使い物にならないな。 真面目な子蟲を普通の風呂に入れてやろうかな。 鍋に残っていたクズのだし汁を排水溝に流し、新しい水を注いで子蟲を入れる。 クズの惨状を腹いっぱい見せられていたので今度は自分の番か・・・と身を固くして震えている。 「お前さんの方は褒美として風呂を与えよう。」 とりあえず震える子蟲の頭を撫でて落ち着かせる。 それからさっき確かめた限界点の6個の焼き石を静かに入れて水を丁度いい温度に沸かす。 「チュウゥ〜〜ン♪なんだかとってもきもちいいテチュゥ〜〜。」 極楽にでも居るかのような至福の表情で湯を楽しむ子蟲。 実装石のことを何も知らない愛護派ならかわいいとほざくのだろうが俺にはどうでもいいことだ。 でも人間向けに演技をしているのだろうが、なんとも真に迫った表情だ・・・。 ここ数年間の過酷なサバイバルの中で実装石にも本当の感情という物が芽生えてきたのだろうか? 今度実験をしてみるか。 人間の興味を引くための擬態ではなく、 自分自身の心から染み出してきた感情を素直に表している様に見える子蟲を鍋の中から取り出し、 薄く湯を張ったバケツの中に移す。 今度は髪と体を洗ってやろう。 スポンジに脂汚れによく効く食器洗浄用の中性洗剤を垂らして優しく全身を洗う。 親と同じように毎日水浴びぐらいはしていたのだろうが想像以上の汚れだ・・・・・・。 クズを煮出した為に深い緑色の汚水となった風呂の水についても得心がいく。 三度スポンジを絞って全身をくまなく洗ったあと、問題の髪に移る・・・。 フィギュアの髪のように髪型が形成されているのを疑問に思わず、 野良を拾ってペットとして飼おう考えた勇者達の白雉振りを称えてやりたくなるな・・・。 洗剤を掛けて揉み解すこと25分・・・・自分の髪だってこんなに時間を掛けて洗ってことは無い・・・。 なんとか様になった髪に人間用のリンスを使って仕上げを行い、洗剤を綺麗に洗い流してまた鍋の中に戻す。 「ママはまいにちこんなてんごくをあじわっていたんテチュか〜〜♪ でも、ニンゲンさまはどうちてワタチにやさしくしてくれるんテチュか?」 「さてね・・・そのうち分かるだろうて。 まあ、今は初めて入る風呂を目一杯楽しむがいい。」 のん気に鼻歌が出てくる子蟲をその場に残し、倉庫に向かう。 10分後、子蟲を鍋から引き上げ体を拭いてから倉庫から持ってきた 洗濯済みの仔実装服(前に虐待した子蟲の遺品)を着せて縁側に座らせておく。 そうしている内に次の仕込を開始する。 服と一緒に出してきた仔実装用の飼育水槽(持ち上げる為の優待仕様)を清掃し、庭にある棚の上に置く。 その中に風呂の余韻を味わっている子蟲を入れてくつろがせる。 初めて見る綺麗な個室、清潔な布団と皿の上に山盛りに置かれた金平糖、 親蟲のかつての生活の一端を目の当たりにして感無量の子蟲。 「これから夕飯までこの水槽の中で好きにしていいぞ。今日に限ってこの水槽の中にある物全てがお前の物だ。」 「チュゥ!!これをワタチがすきにちていいんテチュか・・・?」 「そうとも。 これらはお前のママが飼い実装だったころの生活の一端を再現して見たものだ。 ママがどれくらい幸せだったか体感してみるといい。」 「ありがとうございまちゅテチュ♪・・・・でもおね・・クズさんは・・・?」 言いつけはちゃんと憶えているようだな。 第一段階は合格だ。 「クズは反省中だ。 だから楽しいことは一切なしだ。 だが安心しろ、まだ死んではいないぞ。 明日になれば姉妹仲良くママの所に帰れるだろう。」 「はい・・・わかりまちたテチュ。」 そう言って水槽の蓋を締め、一匹にしてやる。 人間に見られていてはリラックスも出来ないだろうからなぁ。 全面がマジックミラー仕様になっているこの水槽は強い絆で結ばれた姉妹を仲たがいさせる用に創った物。 優位なものを虐待し、隷属していたものをこの水槽で散々甘やかしてから引き合わせて楽しむという趣向だ。 100組ほど試して、90%の子蟲姉妹は仲違いをして殺し合いを始める。 残りの10%は自分の優位を信じて疑わなかった姉蟲が妹の優遇ぶりを見て憤死したというもの。 さて、こいつ等はどんなドラマを見せてくれるかな? 瀕死のクズもなんとか息を吹き返し、辺りの様子を窺うまでには回復していた。 神経が完全に復元できていないので起き上がることは出来ないらしい。 「おい、気分はどうだいクズ蟲。」 「いたくて・・・からだがうごかなくて・・・とってもくるちいテチュ・・・。 もうなまいきなことをいわないテチュ・・・だからもうゆるちて・・・テチュ・・・。」 「お前は糞蟲候補の仔実装だということが判ったからなぁ。 処分されないだけでも有り難いと思え。 それとお前の妹蟲のことなんだがな・・・・。」 言葉を区切り、クズを板切れの上に寝かせて丁度水槽の内部が良く見える様に設置してやる。 視力の戻っていたクズは妹蟲の優遇ぶりに目を剥く。 「いい子だから褒美を与えた。 お前は馬鹿だねぇ・・・ちゃんと言うことを聞いて真面目に仕事をしていればお前もあそこに居たのに・・。 かつてお前のママが味わっていた楽園の生活を部分的に再現してみたんだ。 見ろよ、あっま〜い金平糖をあんなに頬ばって幸せそうなツラをしているじゃないか。」 「テェェ・・・い、いもうとのくせに・・それはワタチのようなカワイイじっそう石のために・・あるのにぃ・・。 からだがうごけば・・・あのバカを・・ぶちのめちて・・・やるテチュゥ・・・。」 まだカワイイとかの寝言が出るかねぇ・・・。 コイツは自分の姿がどうなっているのか分からないらしい。 現在の自分の姿を見たら実装活性剤を使っていてもショックで偽石を割りそうだな・・・。 とりあえずコイツの偽石を抜いておこうか。 偽石サーチャーでクズの全身をなぞり・・・コイツの偽石は後頭部に有るようだ。 どうりで額を陥没させても、胸部を串刺しにしても死なないはずだ。 痛覚の失われたクズを裏返し、実装包丁で開頭して偽石を取り出す。 コイツの偽石は歪な形をした小石ぐらいの大きさで、通常の透き通った翡翠色ではなく 黒ずみドブの汚水の様な色をしていた。 極限のストレスで偽石が崩壊兆候を見せているな・・・。 実装活性剤を10倍に薄めた溶液を満たした小瓶の中に偽石を静かに入れ放置する。 「な、なにを・・・ちたんテチュ・・? なんだかソワソワちて・・・おちつかなテチュ・・・。」 偽石を抜かれたことも分かっていないらしい・・・お前の命なんだぞこの歪な小石は・・・。 テチテチ五月蝿いクズに軽いデコピンを打ち込んで妹蟲の様子が良く見えるように即席で立てた棒に括り付け、 この世の春を満喫している妹蟲の様子をこれでもかと見せ付ける。 小癪にも目を瞑るなどの反抗的な態度を見せたので瞼を加熱したメスで切り取ってやり、 頭が正面を見据えるように完全に固定して放置する。 「いやテチュゥーーー!!なんでかわいくてかしこいワタチがこんなひどいめにあって、 グズでのうたりんのいもうとがてんごくにいるんテチュゥゥゥウウ!!! こんなものみたくないテチュゥ!!どうちてこんなことになったたんテチュゥ!! ママァーーー!!ママァーーー!!ママァアーーーッ!!!!!」 コイツは模範的な糞蟲だな・・・。 だが、他の奴は更に酷いのだろうから、親蟲も苦渋の選択でコイツを選んだのだろうな。 親は産み出す仔を選べないし、仔も親を選べない。 実装石の一生とは無常な物だ。 アレから2時間、クズも体が動かせるようになったのでそろそろお楽しみを始めようかな。 天国でまどろんでいた子蟲を取り出し、地面に置いて揺すり起こす。 「テ、テェ・・・!な、なんテチュかニンゲン様・・・。」 「クズが元気になったから会わせてやろうと思ってな。 さっき心配していただろ?」 「おね・・クズさんはだいじょうぶなんテチュか?」 おろおろしている子蟲の後ろを指差してやる。 後ろを振り向き固まる子蟲。 そこには立って歩ける程度にまで回復したクズがいた。 「テ、テェェェェエエエエェ!!!!お、お、おばけがいるテチュゥ!!!!」 「このクソがッ!!!かわいいワタチをさしおいてなにたのしんでいやがったテチュゥ!! ばつとしてまるはげにしてやるテチュゥ!!!!」 姉妹の追いかけっこが始まる。 鬼の形相で追いかけるクズ、血涙を流しながら逃げ惑う妹蟲。 「こないでテチュゥゥゥーーー!!!わたちをたべてもおいちくないテチュゥゥゥーーー!! おばけはどっかとおくにいっちゃえテチュゥゥゥゥーーー!!!!!」 「ジュゥゥゥゥゥウウウゥ!!!!!!!!このクソいもうとがぁぁぁ!!! かわいいワタチをバケモノよばわりちてただでちゅむとおもってるんテチュかぁぁぁぁーーーー!!! つかまえたらどれいにちてやるテチュゥゥ!!!!!」 暢気な速度で庭先をぐるぐる回り続ける子蟲達・・・・・。 リンガルの訳なしでその様子を見ていれば、 ただのかけっこにも見えなくはないが中身は修羅の世界だ。 殺す、奴隷にする、はらわたを引きずり出して食ってやるなど 生まれてから1週間も経っていない仔実装が言い放つのには 相応しくない単語を連呼しながら妹蟲を執拗に追い掛け回すクズ。 必要な所に頭が回らず、下らない実装石的思考や悪罵の類に関しては天才的な片鱗を見せるクズ 本当にどうしょうもないクズだな・・・。 5分もするとクズの息が上がり始め、カタツムリ以下の速度でノロノロと歩き、最後には力尽きて倒れこむ。 「お、おかちいテチュ・・・・なんでグズのいもうとに・・・おいつけない・・・テチュゥ・・・。 それに・・・なんだか・・・からだが・・いうことをきかない・・テチュ・・・。 なん・・でいもうとは・・・かわ・・いい・・ワタチを・・おばけよばわ・・り・・・ちたん・・テチュ・・?」 自分の姿の変化に気付いていないクズは息も絶え絶えで、無意味で下らないことを煩悶していた・・・。 なんだかんだで目に映る自分の手や体を見れば分かりそうなのものだが、そんな所には頭が回らないのだろう。 実装石の悪性のみが特化していて、他の能力は並みの出来というわけか・・・。 それに何を根拠に自分が妹蟲よりも可愛く、優れていると思っているのか? これは人間には永遠に理解できないことの一つだろう。 人間から見れば・・・いや超愛護派を自認する連中でも実装石の美の基準を見極めることは不可能だろう。 顔の作りの差の多少の判別はついても芸術的なまでにブサイクな顔の何処に美点を見出せというのか? 妹蟲を回収し、優待水槽に戻しておく。 「テェ、テェ、テェェ・・・。 な、なんだったんテチュ・・・おねえ・・クズさんのこえがしたとおもってうしろをむいたら、 あんなおばけがおそってくるなんてテチュゥ・・・。 でもみためとちがっておそいからたべられずにちゅんだテチュ♪」 ・・・・・なんとなくコイツに質問をしてみたくなった。 知能レベルが高く、人間に対して嘘や媚を行わないこいつなら俺の疑問の一端に答えを出してくれるかも知れない。 「そういえばクズとお前、どっちの方が総合的に優れているんだ?」 「たぶんおね・・クズさんテチュ。」 「どの辺が?」 「ええっと・・・ママのおべんきょうやものをかんがえるのはワタチのほうがとくいテチュが、 でも・・・クズさんはとってもつよいんテチュ。 ケンカはまけたことないし、ワタチいがいのいもうとのだれよりもかしこいテチュ。 だからママがいないときは・・クズさんがみんなをまとめていたテチュ。」 「で、自分とクズどっちの方が可愛いということになっているんだ? 家族と自分の意見を嘘偽り無く言うがいい。」 「テェェェ・・・・。 そうテチュね・・・みんなはやっぱりじぶんがいちばんだとおもっているテチュ・・。 でも・・・ママがいるときはママがいちばん、ママがいないときにはクズさんがいちばんテチュ。」 こいつ等は強い物が可愛いといえば可愛いと右を倣えで生きているわけか・・・。 実装石の可愛いという基準は順列の優劣で推移しているのか? ますます分からなくなってきた・・・。 「まあいい、夕食までゆっくりしているといい。 ここならバケモノも入ってこないからな。」 そういって蓋を閉め、家に戻る。 そうしてお楽しみの夕食の時間。 自分の食事よりも先に子蟲達にエサを与えておこう。 飯を食うと楽しいことでも動くのが億劫になるからな・・・。 クズと妹蟲を地面に置き、其々の食卓に配置する。 クズのディナーは・・・野菜クズと魚の内臓類、市販の虐待用実装フード(胃の粘膜を吐き出すぐらいマズイ) をミキサーですり潰し、エサ皿(昔虐待していた子蟲の遺品)に口いっぱい盛ったもの。 対して妹蟲のディナーは・・・絵皿(拾ってきた)に乗った大判のハンバーグ(生まれたて仔実装肉100%) と付け合わせの野菜類、白いご飯とデザートのレアチーズケーキ(コンビニ物) 天と地の待遇差に当然文句の程走るクズ。 「ど、ど、ど、どうちて!!!こんなにさがあるんテチュ!!!! ニンゲンのしんびがんはゆがんでいるテチュゥ!!! いますぐていせいすればどげざでかんべんしてやるテチュ!! さあ、はやくいもうととせきをこうかんするテチュ!!」 大きく出たものだ・・・・。 度重なるもてなしのせいで実装石特有の現実逃避癖が出て、知能が低下し始めたかな? でもそんな物は言い訳にはならない、自分の立場を再認識させてやろう。 星華に命じて針と細い針金と漏斗を持って来てもらう。 それらを手にして庭に出てテチテチ文句を垂れるクズの元に向かう。 「な、なんテチュ?!ようやくワタチのただしさをりかいちたテチュか。 まったく、ニンゲンはの・・・テベェェェ!!!!」 無駄口を最後まで聞くのは癪に障るのでさっさと握り潰してから持ち上げる。 クズは口と総排泄口から出血して悶えているが気にしない。 総排泄口と鼻を針金できつく縫い止めておき、 半開きの口に漏斗を突っ込み、喉の奥まで突起を押し込んだ後、口を塞げない様に顎の関節を押さえつけておく。 「五月蝿ぇよこのクズが!! 余程死後の地獄に興味が御ありのようですな。 だったらその一端をこれから体験させてあげよう。」 エサ皿一杯の毒汁を漏斗に注ぎこみ、中身が全てクズの胃の中に入ったのを確認した後、 吐く間も与えずに口をきつく固く縫い止める。 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 MPが吸い取られそうな前衛芸術的な踊りを舞って全身で喜びを表すクズ。 顔色が信号機のように変化し、体中に脂汗が滲み出してくる。 醜い顔に血管を浮き上がらせて胃の中の毒液を吐き出そうと苦悶している。 無駄無駄ァ! お前ごときの力では二重に縫い付けた針金は千切れまい。 5分も悶絶していると・・・・・・。 とうとう顔を真っ黒にして、耳の穴と目から毒汁を勢い良く噴き出して仮死を迎えた。 モザイクを掛けた方がいい死に顔を晒しているクズを鍋の中に放り込み、妹蟲に食事を始めるように促す。 俺の放つ強烈な負のオーラに気押されてパンコン寸前の妹蟲。 外は真っ暗なのと家から漏れる照明のお陰で妹蟲には俺の顔が見えていないようだ・・・。 たぶん見えていたら・・・・・、パンコンどころか偽石を割ってしまうほどの恐怖を味わって死んでいただろうな。 ・・・・・・自分でも抑えきれないくらいに感情が昂っている。 血圧が7割り増しぐらい上昇し、狂気を帯びた三日月の様な笑顔を浮かべているのが手に取るように分かる。 不味いな・・・・こんな所で弾けるのは宜しくない・・・。 ・・・・3分ぐらいで何とか発作を抑え、勤めて優しい声で妹蟲に再度食事を開始するように促す。 おずおずと皿に向かい少々冷えたハンバーグを口にする・・・・。 「チュ?、チュウ、チュウウゥゥゥ〜〜〜ン♪♪♪ な、なんておいちいんテチュゥ♪よのなかにこんなにおいちいものがあったなんてしらなかったテチュ。」 「それは良かったな子蟲。それは全部お前のものだ、好きなだけ時間をかけて存分に味わうがいい。」 さっきまでの陰鬱な気分は吹き飛び、一心不乱でご馳走に挑みかかる妹蟲。 服の汚れるのも構わず犬食いでハンバーグを食い散らかしテーブルマナーもあったもんじゃない。 所詮は野良なのでそういう手合いの物を期待すること自体が酷というものだが、もう少し綺麗に喰えないものかねぇ。 喰い方は汚いが実装石とは思えないぐらい素直な笑顔を浮かべている妹蟲。 コイツは親蟲の影響を多大に受けていて、尚且つ情緒の発達した個体なのだろう。 こういう連中ばかりなら実装石も迫害されることは無かっただろうに・・・。 わずか3分で120gのハンバーグを片付けて、本命のデザートに移ろうとしている妹蟲。 「口をゆすいでからにしたほうがいいぞ。さもないと折角の甘味が台無しになる。」 俺の忠告を理解し、実行する程度の理性は残っていたようだ。 忠告通りに行動し、待望のデザートにむしゃぶりつく。 まあいい、こいつは逃げ出す心配もないし・・・。 幸せ一杯の子蟲を尻目に家の中に戻って夕食にする。 一時間後、庭に出て子蟲達の様子を確認する。 鍋の底でまだ悶絶しているクズと地面の上に大の字で寝ている妹蟲。 どちらも叩き起こし、並んで整列させる。 「で、俺のもてなしは楽しんでいただけたかな?」 「はいテチュ♪ ママがいってたとおりニンゲンさんのなかにはとってもいいひとがいるっていってたのはほんとうだったテチュ。 こんなおいちいごはんとあったかいおふろにいれてくれて、きれいなへやでねかせてくれる ニンゲンさまはとってもいいひとだとおもうテチュゥ♪」 「・・・・・・・・・・・・・・」 ああそうか・・・クズは口を針金で縫いとめてあるから喋れないのだったな・・。 ニッパーで肉ごと針金を切り落とし常時歯茎剥き出しスマイルが可能な状態にしてやる。 さて、クズちゃんの感想は? 「へふあぁ・・・まう・・まうゆふひて・・・へヒュ・・・・。」 言葉すらまともに喋れなくなったクズの前に手鏡を置いてやる。 固まるクズ・・・・・・。 「どうしたクズ? 自分の姿に感動して言葉もでないか?」 「ヘフェェェッッ!!!ワハヒはかふぁひいへヒュゥ!! こふはビャケモフといっひょひふふなへヒュ!! ふひゅかひはビャケモフふぉどひょうかにすへふへヒュゥ!!!」 クズの頭を摘み上げ、手鏡の前で左右に振ってやる。 物凄い勢いで顔色と表情が変化し、ブルブル震えだす。 足りない頭でもここまで明確な証拠を突きつければなんとか理解できるらしい。 「フェ・・・フェェェェェェェーーーーーーー!!!!!!! ワハヒは・・・・ワハヒは・・・・・ワハヒはぁぁ!!!!!!!!! フヒュヒュヒュ・・・・・かふぁひくなひ・・・。 ・・・ワハヒはかふぁひくなひ・・・へチュゥ・・・。 ・・・・・・・・・へへへえへっへへっへっへっへ・・・・・・。 ・・・ワハヒはかふぁひくなひんへチュゥ♪・・・。 フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィィィイイイィィィィーーーーーーーーーー!!!!!! ジュブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッゥウゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」 とうとう発狂したクズ。 やはり実装石は自分が可愛くないと認識させるとおもしろいな。 こればかりは賢い個体よりも糞蟲の方が良い反応を見せてくれる。 妹蟲もようやく隣の発狂したバケモノの正体に気付いたらしい。 実装石が家族を見分けているのは家族独特の臭いと実装石のみに分かる姿形の違いで判別を付けているらしい。 このクズからはその二つが消失していたから妹蟲は自分の姉だと分からなかったようだ。 熱湯で煮詰められて臭腺が全て潰されて家族独特の臭いを消された上に 全身火傷を放置した状態で実装活性剤を投与したため、 皮膚が出鱈目な再生をしてガンモドキの出来損ないの様な姿になっていたのだ。 このクズは家族内では親蟲を除きもっとも強い個体だったのだろう。 妹蟲の話を鵜呑みにしたとして、強い=可愛いと思っているなら こいつは自分のことを世界最高の美少女と自認していたのだろうな。 発狂したクズを見て盛大にパンコンしてしまう妹蟲。 その顔に凄まじい恐怖を宿し、血涙を流して震える妹蟲に問いかける。 「俺は善い人かい?」 妹蟲はそのまま気絶した・・・・・・。 次の朝、笑い続けるクズとガチガチ震える妹蟲をゴミ袋に押し込み親蟲の元に向かう。 あの後クズの正気は戻ることなく、妹蟲も姉の無残な有様に発狂寸前にまで陥っていた。 さすがにこうなってしまえば金平糖を与えても無駄。 食欲よりも恐怖の方が勝り、妹蟲が俺を露骨に警戒するので二匹一緒に鍋の中に放り込んでおく。 そうして一晩中、鍋の中では妹蟲が一生懸命クズの正気を取り戻そうと無駄な努力を繰り広げていた・・。 20分の道のりを歩み、例の空き地にやってくる。 ・・・・はっきりいって何も変わっていない。 ゴミを掻き分け奥に進んで行くと・・・。 必死でゴミを分別し、破れた袋に押し込んでいる親蟲を発見した。 巣の周りだけはまあ掃除したと言ってもいい位の状態だが、その他は昨日と大差ない。 「おはよう親蟲。今日は死ぬにはいい日だな・・・。」 「デ、デゥッ!!!!お、おはようございますデス・・・ニンゲン様・・・。」 ワザとらしく周りを見渡し、溜息を付く。 「所詮は実装石か・・・・。 丸一日掛かって巣の周りだけか? 要するに生きていたくない、親子仲良く俺に処刑されたいらしいな。」 「ッ・・・・!!お、お許しくださいデスゥ!!ワタシの能力では過ぎた仕事量だったんデスゥ!!! だから・・・無理だといったの・・・デズゥッ!!!」 土下座して言い訳をしていた親蟲の顔面に前蹴りをぶち込んでフッ飛ばす。 歯と体液を撒き散らしながら冷蔵庫の山に勢い良くぶち当たってゴミの山の中に落ちる。 ピクピク悶絶している親蟲を引きずり出して無理矢理起立させ、昨日預かっていた子蟲と服を返す。 「ママァーーーーー!!!!!おね、おねえちゃんが・・・おねえちゃんが・・・。」 「ふぇぺっぺっぺぇ・・・・・ひゅべぶぅ・・・・。」 凄まじいショックを受けて棒立ちになる親蟲。 発狂したクズの惨状が御気に召さないようだな。 「ニ、ニ、ニンゲン・・・様・・・これは・・・どういうことデス・・・・。」 「どうもこうも、もてなしてやっただけだよ。 お前たちの服を洗濯させ、風呂に入れて、エサを食わせてやった。 その際にそこのクズはグダグダと文句を垂れて不貞腐れたんで、ちょいと仕置きを施しただけだ。 それに妹蟲は無傷だろ? こいつはお前みたいにクソ真面目に俺の言いつけを守ったから少しは楽しいことを体験できたんだ。」 「でも・・・、これはやり過ぎデス・・・。 この仔がいくらい言いつけを守らないからといって・・・・こんなになるまで・・・・・。 ・・・この仔はまだ生まれて間もないんデスゥ・・・。」 「ふざけるなよ親蟲。糞蟲の分際で下らない意見を吐くか? 人間様に歯向かったクズを生かしてもらっているだけで有り難いと思え。」 服も着ないで二匹の子蟲を抱きしめ、自身も泣きながら子供を慰めている親蟲。 人間が好む行動を如何なる状況でも実行するように躾けられているこの親蟲の行動自体が既に媚。 行動と表情が一致していないぞ親蟲。 子供を労わるフリをして時間稼ぎをして、何か策を考えているのだろう。 なんとかこの状況を生き残り、家族を再建する手筈を練っている様子。 「まあいい言い訳と命乞いは処刑場で聞こう」 有無を言わさず親蟲を子蟲二匹をゴミ袋に入れて河原に移動する。 「ま、まってくださいデスゥ!!!洗濯機の中の子供達を忘れているデスゥ!!」 「ああ・・・アレか。アレは俺の特別の温情で見逃してやるよ。」 「だったらせめて外に・・・。」 「害虫を見逃してやるという俺の優しさに浸けこんでまだ何かを要求するかね? あくまで俺が手を下さないということだ。あとは好きにしろといっているんだ。 脱出しても良し、中にとどまるも良しということ。 好きなんだろ、自分で選択できる自由ってのが?」 「で、でもあの仔達じゃ洗濯機から出れないデス。 だ、だから・・・。」 「じゃあ、あの子蟲達の代わりにお前があそこに入ってみるか?」 「デ、デスゥッ!!・・・・・・・・・。」 黙り込む親蟲。 まあ、御身は大切だろうからなぁ。 並みの子蟲達のためには命は張れないか。 選択としては正しいが特級実装石としては減点ものだな。 洗濯機の中からはテチテチと耳障りな鳴き声が聞こえてくる。 子蟲の入った洗濯機が見えなくなるまで親蟲はゴミ袋の中で残された子蟲達を呼び続けた・・・。 空き地から10分ほど歩き、河原に到着する。 ゴミ袋内の糞蟲親子に別に逃げてもいいがそのときは、 死を超える苦痛と恐怖を長い時間を掛けて味合わせてやると警告して材料の調達に向かう。 中ぐらいの太さの竹や大量の流木を集め、親子の待つ地点に戻る。 偉いな、逃げ出さずに袋の中で固まっているよ。 これから何をされるのか皆目見当の付かない親子は不安で一杯のようだ。 そんな親子を尻目に即席の火刑台を建造する。 河原特有の粘土みたいな地面に穴を掘り、先ほど切り出してきた竹を突き立てて根元をしっかりと踏み固め、 大きめの石を組み合わせて支えにする。 竹を中心に流木を組み合わせ、その隙間に枯れた草を大量に敷き詰めて完成。 親子を袋から取り出し、一列に整列させて・・・ 「さて、掃除の不始末の落とし前を付けて貰おうか・・・。 親蟲か、子蟲か、3匹のうち2匹どれが死ぬ?」 唖然とする親蟲。 質問の意味を分かりかねている様子だ。 「だから、どの2匹が死んで責任を取ってくれるんだと聞いているんだよ。 生き残れるのは一匹だけだ。 もしかして家族仲良く焼け死にたいのか?」 「ち、違いますデス・・・。 ワタシか子供たちのどちらかが死ななければならないんデスか・・・?」 「そうだ、お前の無能が招いた事態だ。 子供を犠牲にして一からやり直すか、1匹の子蟲に未来を託して自分が死ぬかの二択だ。 好きな方を選ばせてやるから今すぐ決めろ。 あと3分後に答えを聞こう、その時答えられなかったら・・・・・。 その先は言わなくても分かるよな。」 粗末な顔をこの上ないぐらい歪めて物思いに耽る親蟲。 その傍らで不安そうに親蟲の顔を覗きこむ妹蟲。 ただ一匹夢の世界を散歩するクズ。 あと3分後には2匹が死ぬことになり、1匹が生き残る次第。 3分たった・・・・。 「で、どれが死ぬんだ?」 俯いていた親蟲が顔を上げ、俺の問いにどもりもせずに答える。 「ワタシが死にますデス。」 ・・・・・ほう、そうきたか。 糞蟲にしては考えたものだな、理由を聞いてみるか。 「ニンゲン様は子供を犠牲にして助かろうするワタシの命を助けてくれるはずデス。 でも・・・きっと、ワタシが二度と子供が産めない様にすると思うんデス。 ワタシたち実装石にとって子供が産めなくなるということは実装石の証を失う以上に辛い事デス。 でも、子供相手ならば・・・そんな無茶をすれば死んでしまうデス。 それでは約束違反になるデス。ニンゲン様はたぶんワタシ達が相手でも約束を守る人だと思うんです。 ワタシのご主人様もそういってたデス・・・・。 だからワタシが死んで責任を取り、子供たちを生かすデス・・・。」 なるほど、なるほど・・・・。 コイツは飼い主に捨てられる前に生きてく術を伝授された飼い実装の様だな。 たしかに虐待派は糞蟲と遊ぶときに何かしらのルールを設定するものだ。 ただストレス解消のためにいたぶり殺す時はともかく、知的な虐待を楽しむ場合は一定のルールを定めたら、 たとえ糞蟲相手であっても約束を破ったり都合が悪いからとルール変更をすることは余程のことがないかぎりしない。 ゲームとはルールを遵守して楽しむからこそ面白いのだと思うからだ。 こいつの主人はなかなか正鵠を得た思考をこの親蟲に刷り込んだものだ。 虐待派の思考を押さえ、その後の対処法を的確に判断するように躾けた様子。 コイツの主人は元虐待派だったのかもしれないな。 虐待派から転向した愛護派や実装石の実態を知りながら飼っていた物好きの一部が 免許を取得することができず、自分の飼い実装を手放さなくてはならなくなった時に 自分の知りうる知識を出来るかぎり飼い実装に教え込み、野に放したという話があった。 この親蟲もそうした中の一匹なのだろう。 飼い主としては保健所で自分の飼い実装が公園等で捕獲された野良と一緒に焼却処分されたり、 ペットショップに出戻りした自分の飼い実装が叩き売りの安値で虐待派に売られ、悲惨な末路を辿るよりは 危険や困難が多々有るにしても生き残る可能性のある自然に放してやった方がいいと思うのが人情なのだろう。 だが、いくらそんな知恵を授けても実装石には活用する知能も能力も足りない。 そんな無駄な努力をしても、せいぜい俺のような残虐な真性虐待派を大いに喜ばせるだけだ。 この親蟲も目の付け所は良いが、肝心な所が抜けている。 「いいだろう、お前が死ぬんだな? これが最終確認だ、これ以降の変更は一切認めない。」 「はい・・・・・・・デスゥ・・・。」 「よろしい、では残したい子蟲を一匹だけ選び出せ。」 「・・・・・デ・・デスゥッ!!・・・・。 い・・今なんて言ったんデス・・。」 「なにが? 俺は生かしたい子蟲を一匹だけ選べと言ったんだ。 質問の意味が難しすぎて分かりませんか? 糞蟲お母さん?」 「だ、だって・・・約束違反デス・・。 子供達は生かしてくれるっていったデス・・。」 「おいおい、俺の話をよく聞いていなかった様だな。 生き残れるのは一匹だけだと初めに言っただろう? 害蟲が2匹も生き残れると思っていたのか。」 「そ・・・そんな・・・。 だまされた・・・デスゥ・・。」 わなわなと震えだし、顔に憤怒の貌を刻んだ親蟲。 特級実装石でも所詮はこの程度か。 自身の幸せ回路で勝手に解釈した話を人間に押し付けようと躍起になっているようだ。 デスデス鳴きながら俺の脚をポカポカと殴りつけている。 「まあいい、それじゃあ俺が選んでやろう。」 親蟲を無視してクズを労わるように隣に寄り添っていた妹蟲を摘み上げる。 「コイツをお前の黄泉路の供にしてやろう。 お前のお気に入りの子蟲なんだろう、コイツは? 親子仲良く地獄に逝けるなんて幸せな死に方だなぁ。」 さっきまでの横暴な態度を急に改め、必死の土下座で妹蟲の命乞いを始める親蟲。 「お、お、お、お許しくださいデスゥニンゲン様ぁ!!!! ワタシの頭が悪いからニンゲン様のおっしゃることが理解しきれなかったんデスゥ!!! なんでもしますデス!!だから・・・だから・・その子の命だけは・・・・・・。」 「じゃあ、お前の誠意を見せろ。」 少し考えた後、 親蟲は自分の服を脱いで、実装石の証である服を破き始めた。 「まだだな、その程度ではお前の罪は清算されない。」 目を剥いて抗議しようとする親蟲。 自分のもっとも大切な財産を捨てたのに足りないというのかという顔をしている。 だか、妹蟲の悲痛な顔を見るなり態度を再度改め考え込む。 そして・・・。 「デスゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」 雄叫びと共に自分の後ろ髪を引き千切り、ムシャムシャと喰い始める。 完食した後、血涙を流しながら残る前髪も全て毟って俺に差し出してくる。 「まあ良いだろう。では生かしておきたい子蟲を選べ。」 親蟲の差し出してきた前髪を持った手を枯枝で打ち払って散らし、 無気力に笑うクズとパンコンして泣く妹蟲を親の前に並べて選択を始めさせる。 しばらく視線を2匹の上で泳がせた後、震える手を伸ばして妹蟲を選ぶ。 「ま、ママァ♪」 「ワタシの希望はもうお前だけなんデス・・・。 ワタシが居なくなってもワタシの教えたことをよく思い出して・・・この世界を生きてくださいデス・・・。 そして・・・ニンゲンさんの迷惑の掛からない所で子供を一杯作って・・・幸せになってほしいデス・・。」 ぬるい虐待派が見たら愛護派に転向してしまいそうな位、真に迫った演技だが俺には関係ない。 三文芝居をさっさと打ち切ってクズの処分をさせる。 「じゃあ、いらないクズを処分しよう。 俺とお前どちらが殺すのかな?」 「デェ!!!な、なんでワタシが・・・。」 「そうかい、じゃあ俺が長い時間を掛けてじっくりいたぶり殺そう。 俺のもてなしを受ければそのクズも正気を取り戻して、 ママーー!!痛いテチュゥーー!!たちゅけてェーーー!! なーんていうかもなぁ。」 真っ青になる親蟲。 本命の仔が確実に助かることは確定したが、選ばれなかった仔は自身の手で一思いに殺してやらなければ この残忍な人間の手で嬲り殺される・・・・。 態度が気に入らないといって生まれたての仔をここまで壊した人間のことだ・・・・、 長い時間を掛けて嬲り殺すと言ったからには本当に実行するだろう。 だらだら脂汗をかく親蟲・・・。 「じゃあ、殺すかな?」 「ま、待って下さいデスゥ!! ワタシが殺しますデス!!ワタシの手でこの仔の命を絶つデスゥ!!」 親蟲は血涙を流しながら妹蟲から離れ、クズの所に向かう。 意味もなくヘラヘラ笑っているクズを抱きしめた後、 クズを背向きにし大口を開けて後頭部を一口で食い千切る。 ・・・・これで死んだはず・・・・・・・? 親蟲はクズが死んでいないことに気付いた。 確かに命の石がある場所を食いちぎったはずなのにどうして・・・・。 「チャァァァァアアアアアアァァァーーーーー!!!!!!! みゃみゃみゃみゃぁぁァーーーーー!!!! なひふぉちゅちゅんてちゅぅ!!!!」 脳みそを傷つけられたショックでクズが正気に返ったようだ。 口の周りがまるで再生していないのでまともに喋ることも出来ないクズを親蟲は掴み、 今度は首を一回転させる。 「ヒュブゥ!!!!! ひゃべて、ひゃべてヘヒュゥ!!! ひょうひてほんはひほいほほぅ!!!」 今度は心臓を潰そうと胸を踏みつける。 「みゃみゃァァァーーーー!!ひゃべてぇぇーーー!!! ワハヒはひにはくなひぃーーーー!!!ワハヒはひにはくなひヘヒュゥ!!!」 それから5分ほど親蟲の悪戦苦闘は続き、ようやくクズに止めを刺した時には原型を留めていなかった。 自分を助けてくれると信じていた親蟲に裏切られ、 最後の最後まで親蟲に助けを求めてながら喰われて死んだクズ。 「ご苦労さん、最後の晩餐はうまかったかい?」 「・・・・・・・・・・・なんで・・・こんなに・・・しぶとかったんデス・・・。」 いい感じに絶望の表情をした親蟲はクズのしぶとさに不信感を抱いているようだ。 それはな、偽石を抜かれて実装活性剤に漬けられているからだよ。 実装活性剤の偽石保護効果のお陰でショック死耐性が付き、並みの致命傷では死ねない。 それでもコイツのしぶとさは尋常ではなかったな・・・。 だいたい3〜5回目の仮死で偽石が割れるはずなのに、 コイツは10回の仮死を迎えて、ようやく偽石が崩壊した。 クズは生きたがりの個体だったのだろうな。 「さあ、今度はお前の番だ。」 親蟲を両手で掴み火刑台の中心に設置した先端を鋭利に尖らせた竹に親蟲の総排泄口をあてがう。 そしてジワジワと押し込んでゆき、心臓を避け、頭の付け根から竹の先端が出るように突き出して そのまま積み上げられた流木の3cm手前まで押し込んで止める。 「ニ、ニンゲン・・さま・・・どうか・・その仔を・・・おねがい・・します・・デェ・・ス・・・。」 いよいよ最後のときが迫ってきているのが分かるのだろう。 驚くほど静かな表情を湛えた親蟲。 「そうだな・・・コイツはお前に似て、そこのクズよりは見所が有りそうだから分類石候補生として 飼ってやろう。ただしその後のことはコイツ次第だがな。」 俺の答えにニコリと微笑む親蟲。 とりあえず自分の血筋を何とか残せたことに満足したようだ。 だが、親蟲を満ち足りた表情のまま死なせてやるのは釈然としないし、このままでは虐待としても意味が無くなる。 親蟲に実装活性剤を5倍に薄めた物を注射し、 ボロキレをグルグルと巻き付けてから親蟲と火刑台に灯油を満遍なく掛けて準備を完了する。 「それではお別れだな親蟲。」 「は・・・はいデェ・・ス・・。」 「最後に聞いておこうと思うんだがな・・・。 実装石の去勢の仕方についてお前は飼い主になんと聞いている?」 「・・・・ええっと・・たしか・・お腹を切り開いて・・・大きな袋を取り出して・・ 焼いた鋏で切り取って二度と・・再生しないようにする・・とご主人・・さまは言ってた・・デス・・。」 随分と古い知識だな・・・。 でもな、本当の去勢方法は至極簡単なことなんだよ。 震えて棒立ちになっている妹蟲を摘み上げ、 「お前は子供を去勢したら死んでしまうといってたな・・・。」 「は・・いデス・・。お腹を開いて内臓を切り取ったら・・か弱い子供は・・簡単に・・死んでしまう・・デス。」 「だがな、お前の知識は古い。 これは飼い実装の避妊処置に良く使われる手でな、子供でも出来るくらい簡単なことだ。」 そういって子蟲の顔を掴み、手にした枝で右の赤目を抉り取る。 「ジュウウゥゥゥゥゥゥーーーーー!!!!!!!!」 「デェェェ!!!!な、何をするんデスゥ!!」 「これでコイツは一生子供を産むことは出来ない。」 そういって抉りぬいた赤目を握り潰す。 悟りを開いたような顔をしていた親蟲の表情が絶望で歪む。 「何かの間違いで妊娠したとしても決して生むことは出来ない。 赤目がないから出産モードになれずに腹の中で子供が腐るか、消化してクソになるかのニ択しか無い。 お前たちは目の色の変化で子供を妊娠出産する、生物にあるまじきデタラメな体の作りだもんな。 腹を開いて生殖機能を去勢するよりもこの方が効果が高いというのはどういうことなんだい?」 この仕打ちが親蟲にとって決定打となった様だ。 今までの落ち着いた物腰は消え失せて猛烈な勢いで暴れ出し、 死にたくない、私を自由にして代わりにその産まず女を火炙りにしろ、 など知能と感情が一気に糞蟲になってしまった様子。 全ての望みは絶たれ、もう演技をする必要は無いのだからこうなってしまうのも当たり前だろう。 自分の血筋を継いで子孫を増やしてはずの仔が産まず女にされてしまい あらゆる不条理を我慢して俺から取り付けた約束も意味のない物に成り果てた。 自分の子供達、実装石の証である美しいと思っている服と自慢の髪、そして自分自身の命。 全ての犠牲が無駄で無意味な物だった。 そう、お前は昨日俺が子蟲と服を取り上げて帰った後、急いでこの街から逃げ出すべきだったのだよ。 子供はまた産めはいいだろうし、服もその辺の実装石を闇討ちして奪えばよかった。 それを賢しく愛情深いフリをして虐待派と渡り合おうと考えるからこういう目に遭うんだ。 でも、いままで良く我慢して根気強く賢く愛情深い親を演じてきたものだよ。 見苦しく足掻く親蟲の様子に満足した俺は、 クズの遺品の服を枝に巻き付けて針金で縛り灯油に浸して即席の松明を作る。 「さあ、ママを地獄に送ろうか?」 火を付けた松明を右目を抉られた子蟲に渡し、火刑台に点火するように促す。 「な、なんで・・・ワタチなんテチュか・・・。」 「そりゃ面白いからさ。」 いい顔だ子蟲。 これからのお前の一生はこんな事しか無いのだから今のうちから慣れておいたほうがいい。 「止めやがれデスゥ!!そんな事をしたら美しいワタシが死んでしまうデスゥ!!! お前もワタシの子供なら気合を入れてそこのクソニンゲンを殺すデスゥ!!! 子供も作れなくなった役立たずはまだ子供を産めるワタシのために戦って死ぬデスゥ!!!!!」 「本性まるだしだなぁ親蟲さんよう。 いいのかい?お前の生死はこの子蟲が握っているんだぞ。」 もう理解することを放棄したのか、ただ悪罵を吐き散らすだけの生ゴミと化した親蟲。 「もう五月蝿いから火を付けろ。 お前が生きていたいなら・・・・俺の命令を実行するがいい。」 親蟲の豹変にショックを隠せない子蟲は手の内にある松明を呆然と眺める。 そして凄惨な笑いを浮かべる俺を縋るように見つめてくる。 「俺に飼われて生きるということはこういうことを死ぬまで味わうということだ。 その松明が消えるまでがお前に残された時間だ。 ここでママと一緒に死ねばきっと楽だろうなぁ・・・・。 でもママが正気だった時にお前に何を託したかな? それらの事を熟考してお前自身の今後を決めるといい。 死ぬのも生きるのもお前の自由だ。 最後にもう一度だけ言おうか・・・生きていたいと願うのならその松明で親蟲を焼き殺せ。」 なまじ賢いがゆえにこの状況を覆す手段は無いことを悟ってしまったのだろう。 子蟲の残った左目の色がより深い緑色へと変化する。 ここで立ち止まるも死、 たとえ親を焼き殺し、浅ましく生き延びたとしても 更に過酷で報われない日々といつか訪れる親蟲以上に凄惨な死が待っているだけ。 生まれてわずか2週間で本当の絶望というものを知った子蟲。 その松明の火は長持ちしないから手早くものを決めた方が良いぞ。 ここが生と死の境界線だ 松明の火があと少しで燃え尽きようとしていた時、子蟲は親蟲の方へ歩いてゆく。 そうか、親蟲の詭弁を支えにして生き延びることにしたか。 「や、やめるデスゥゥゥ!!!!こっちに来るなデスゥ!!! ワタシがどれだけ苦労してお前を育ててきたか分かっているんデスか!!! 親殺しは大罪デスゥ!! 醜い餓鬼が世界の至宝たるワタシを手に掛けて神様が黙っていると思ってるんデスかァァ!!!! やや、や、あ・・・・デギャァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!! 助けて・・・助けて・・助けて、助けてデスゥ!!! ご主人様!!!ご主人様ァァァアァ!!!! 何でワタシを捨てたんデスゥ、とってもいい子にしていたのにぃ!!! ごめんなさいデスゥ、もう摘み食いしたりしないデスゥ!!だから捨てないでっぇぇぇぇ!!! ご主人様!!ご主人様!!ワタシのご主人様ァァァアアァ!!!!!!!」 親蟲はもう錯乱して何が何だか分からない有様だ。 子供に焼き殺される恐怖と絶望から現実逃避を始めてしまったらしい。 現在と過去の記憶が混ざり合い、最悪の部分だけが頭の中で再生されているようだ。 何度も何度も自分を捨てた優しい飼い主を呼び、助けを請うている。 無駄だよ親蟲、お前の大好きなクソ袋はお前のことなんかとうの昔に忘れてしまって、 今頃実翠石辺りと楽しく暮らしているんじゃないかなぁ・・・。 火刑台に辿り着いた子蟲は串刺しのままバタバタ暴れている親蟲を見上げ・・・、 「ママ・・・ワタチは生きるテチュ・・・。 まともだったママがいってたように・・ワタチはきぼうをすてないで・・・いきるテチュ・・。 だからママ・・・・・ワタチをゆるちてテチュゥ!!」 親蟲に別れを告げて、消えかかった松明を火刑台の薪の上に投げる。 「デッギャァアァアアァアアアァアアアアァァァァアアァアアアァアァアァァァァアアァァァ!!!!!!!!」 あっという間に火は火刑台を覆い尽くし、親蟲は紅蓮の炎の中でここにはいない元飼い主に助けをもとめる。 「ご主人さまぁ、ご主人さまぁ・・・ワタシは死にたくないデスゥ・・・・。 いい子にしますデス、掃除もちゃんと毎日やりますデス、ご飯の好き嫌いも言わないデス・・・・ だから・・・・だから・・・ワタシを助けぇ・・・・・・・。」 親蟲は自分勝手で聞くに堪えない命乞いを最後まで言い切ることは出来なかった。 炎の熱と煙で喉を潰されたのだろう、くぐもった呻き声だけが炎の中から聞こえてくるだけになった・・・。 「お前は生きることにした様だな。」 「は・・・はいテチュ・・・ニンゲンさま・・・。」 「では親蟲と約束した通り、お前を分類石候補生として飼うことにする。 丁度、分類石候補の調教を始めた所だからそこに編入して分類石になるために努力しろ。 俺が譲歩するのはそこまでだ。 この後は試験を受けて、合格すれば分類石として生きられるし、 不合格ならばそこの親蟲よりも酷い目に散々合わせてから地獄に送ってやる。」 「わかりまちたテチュ・・・。」 不景気な顔で新たな門出を迎える子蟲。 まったく・・・2ヶ月は少なくても無事に生きられると決まったのになんて顔だ。 しょうがない・・・コイツに贈り物をしてやろう。 「おい子蟲。 今日からお前は俺の所有物になるわけだが、 はっきり言って人間には実装石の区別なんて物は付けられないんだ。 お前たちは皆同じような顔をしているからな。 だからこれからお前に名前を与えて、他の子蟲と見分けが付くようにする。 わかりやすいように体に書くかな・・・。」 「テ、テェ!!ワタチのふくにラクガキするんテチュか!!」 「ラクガキとは失礼な・・・、ちなみに俺の飼う実装石は例外なしに全裸で過ごさせているんだ。」 そういって子蟲の服を毟り、火刑台に投げ込む。 「ワ、ワタチのふくがぁぁーーー!!! なんてことをちゅるんテチュ!これじゃもうおそとでいきていけないテチュゥ!!」 「何をいってる? お前は金輪際、外を見ることも無く一生を暗く狭い地下で過ごすことになるんだ。 そこには髪も服も無い禿裸の実装石しかいないから安心しろ。」 「テェェ・・・ワタチは・・・どうなるテチュ・・・?」 いまさら自分の愚かさと不運を呪う子蟲。 実装石という代物は全てが一拍子遅れているよな・・・。 まあいい、コイツに名前をやるんだったな。 油性マジックを取り出し、子蟲の胴体にデカデカと縦書きでこの子蟲の名を書いてやる。 「ごちゅじんちゃま・・・ワタチにつけてくれたなまえはなんなんテチュ?」 「聞いて驚くなよ、お前の名前は「親殺し」だ。」 自分の名前を聞いて固まる子蟲改め「親殺し」。 「良い名前だろう?「親殺し」。 自分が生き残るために親を殺したお前に相応しい名前だ。 あと、俺の飼っている実装石どもの小屋に入ったら大人しくすることをお勧めするよ。 許可無く鳴き声を出したり、勝手な行動をしたら連帯責任で罰を与えることになっているから 他の連中の気に触るようなことは慎むようにな。 さもないと・・・仲間から凄惨なリンチを受けて分類石になる前に死んでしまうぞ♪」 実装石は特別なものを持っている同族を妬み憎む性質を持っているのでコイツは何処まで生き残れるかな? 「親殺し」なんて最低な名前でも他の実装石からすれば妬みの対象、 しかも生まれて2週目の餓鬼が名前持ちなんてことが判れば古参の連中からの嫌がらせは必至。 俺が虐待とその他の目的のために飼っている実装石どもに名前なんて上等な物はない。 1番2番などの数字で呼ばれるだけで、その数字で呼ばれる連中も幸せな方だ。 そいつ等は実装石を仕分けて育てる分類石と育児石であって、 その他は名前はおろか存在さえも認知されずに死んでゆく連中のみ。 「親殺し」が古参や他の分類石候補生の嫌がらせをいかにして擦り抜けてゆくのか楽しみだな。 そうしている内に火刑台の親蟲も力尽き、炎に芯まで焼かれて炭の塊に成り果てる。 生きていた頃よりは幾分かマシな格好だな親蟲。 苦悶と絶望の貌を貼り付けた炭人形を蹴り飛ばし粉々にする。 そして自分の前途が真っ暗だということを完全に理解して途方にくれる「親殺し」に声をかける。 「どうだい、自分の選択は正しかったと思うかい?」 「親殺し」は粉々になった親蟲の成れの果てを見つめながら言った。 「はい・・・テチュ・・・・ママはいってたテチュ。 いきていればきっといいことがあるって・・・・だからこれでいいんテチュ・・。」 「それは上々。 まあ、お前の頑張り次第で色々な褒美が有るかもしれないぞ。 たとえば、子供が産めるようになるとか・・・。」 「ほっ、ほんとうテチュか?」 「本当だとも、ただしこれからの生活は地獄そのものだ。 底意地の悪い同族たちと実装石の頭では理解しきれない勉強の数々。 それらの困難を無事乗り越えて分類石になったとしても、 生まれたての子蟲を分別し地獄に送り込む畜生以下の仕事をこなす毎日。 むろん手落ちがあれば苦痛に満ちた仕置きが待っているぞ。 まあ、それ以前に無能な親蟲の仔であるお前が並居る候補を押しのけて分類石になれるかが見物だがな。」 泣きそうなのを懸命に堪えている「親殺し」。 「まあ、お前の代わりなんて幾らでも調達できるからどうでもいいのだが、 精々頑張って家族の分も生きてみるがいい。 そうしなければ親蟲の努力もクズたち姉妹の犠牲も何の意味も無くなる。 そうだ、昨日お前は面白いことを言っていたな・・・・。 今この場でもう一度聞いてみようか?」 俺は屈み込んで、俺のほうを真っ直ぐ見据えていた「親殺し」の顔を覗きこみ、こう言った。 「俺は善い人かい?」 「親殺し」は表情を変えず、残った左目から血涙を一滴流した・・・。
2021/10:塩保消滅によりスクが見れなくなりましたので当保管庫の保存したキャッシュを表示します
1 Re: Name:匿名石 2023/11/17-23:06:31 No:00008475[申告] |
実翠石いる? |
2 Re: Name:匿名石 2023/11/18-22:59:58 No:00008477[申告] |
実装石がペットとして完全に終わってることを示す小道具
あとは実装石に対しては感情の有無すら疑って神のように振る舞うくせに見た目のいい近似種にはころっと騙されてる男の間抜けぶりも示してるのかも? |
3 Re: Name:匿名石 2023/11/19-02:06:42 No:00008478[申告] |
居座れる場所を徹底的に潰して無い価値を更に奪う為のちょっとした要素ぐらいかな?完全なトドメ的な
オーバーキルを旨としてるし |
4 Re: Name:匿名石 2025/02/03-14:52:59 No:00009501[申告] |
>大学に居た頃に購入した狩猟用仔実蒼石を実蒼さんにまで成長させた個体、名を「星華」という。
わぁ~・・・きもお・・・ |