タイトル:【虐】 川辺の蛆実装
ファイル:川辺の蛆実装.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:6934 レス数:1
初投稿日時:2007/05/18-22:01:36修正日時:2007/05/18-22:01:36
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川辺の蛆実装

 5年前に警察を退職して以来、悠々自適の毎日だ。
 昼飯の後コーヒーを飲んでから愛犬クンクンを連れて今日も散歩へ行く。

 一昨日の雨で増水していた川も水が引いていた。
 クンクンともども運動不足気味なので気まぐれに河原へ降りてみる。
 すると小さな悲鳴のようなものがどこからか聞えてきた。

 「レピャ〜 レピャピャアアアァ〜」

 周囲を見回すと小さな緑色の生き物が石の上で喚いている。
 近づいてみると蛆実装のようだ。
 人がイタズラしたのか実装石が置いていったのか知らないが、石の上で震えている蛆実装がいる。
 石の高さは地面から約30センチ。傾斜がきつく芋虫より貧弱な蛆実装の手足でここに登ることは
できまい。儚い蛆実装がここから落ちれば死ぬかもしれない。降りることもできず助けを呼んでいた
ようだ。

 周囲の匂いを嗅ぎまわっていたクンクンが水たまりの近くでワンワン吠えだした。クンクンの呼ぶ
ところを見ると、水辺に実装服の切れ端と僅かに残った肉片がある。こいつは事件の臭いがする。
 妻に最近ボケ具合がどうのこうのとさんざんボロカス言われている。この蛆蟲に何が起こったのか、
ボケ防止の頭の体操がてら捜査してみよう。


 とりあえず携帯のリンガルを起動し、この不審者を尋問することにする。



レフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフ



 「レフーレフー 蛆チャン疲れたレフおなかペコペコレフもう歩けないレフー」
 「我慢するテチ蛆チャン もうちょっとテチあそこまで頑張るテチ」


 アタシも公園を追われてからずっとろくにものを食べていない。
 ある日、公園で暮らしていたアタシ達をニンゲンの群れが襲った。
 たまたまアタシは末の蛆チャンと一緒に公園を囲む茂みの近くにいた。
 ニンゲンがたくさんやってきてみんなのおウチが持っていかれた。
 出てきて怒っていたオバサン達はみんな袋詰めにされた。
 さっきまで遊んでいた仔達も追いかけられて捕まった。
 誰が泣いても媚びても喚いてもムダだった。ママも妹チャン達も捕まった。
 アタシは蛆チャンを連れて公園の外にある深い溝に飛び込んだ。
 それからどこをどう逃げてきたのか覚えていない。
 気がつくとジメジメしたところで寝ていた。
 高い草と切り立った白い壁に囲まれた砂地で、目の前をたくさん水が流れていた。
 上のほうを見ると水が落ちてくる大きな丸い筒があった。
 あそこから落ちて流されてきたようだ。
 蛆チャンはアタシの服の中にいて無事だった。
 ここはママに教わった川というところらしい。

 川辺に住み着いてから数日経った。
 後ろの切り立った白い壁はとても登れない。
 高い草の茂みも通り抜けられそうにない。
 ジメジメした地面に枯れた草を敷いて寝床にした。
 川の石をひっくり返したら尻尾が2つある虫がいたので食べた。柔らかくて公園のバッタやダンゴムシ
より美味しかった。川の中にこげ茶色のカタツムリが這っていた。殻がカタツムリより固かったから石で
割って食べた。肉も硬かったけれど蛆チャンには口で噛み砕いて柔らかくして食べさせた。

 ある晩、雨が降ってきた。だんだん水かさが増してゆく。
 白い壁ぎりぎりまで水が迫ってきた。どこにも逃げようがない。
 その時目の前にニンゲンが飲み物を入れる透明な入れものが流れてきた。
 蛆チャンを服の中に抱えこみ必死でそれにしがみつく。


 ……… ここはどこだろう?
 目を覚ました時、別の川岸にいた。
 
 助かったんだ。服の中で蛆チャンがスピスピ寝息をたてている。
 しがみついてきた透明な入れものが近くに落ちていた。
 昨日までいたところと違って高い草がまばらで、白い壁に上へ続いた道がついている。
 おなかは空いていたけれど、疲れきった体と心に少し希望が戻ってきた。

 しばらくして背中で寝ていた蛆チャンも目を覚ました。
 「オネーチャ おはようレフご飯どこレフー?」

                    ・
                    ・
                    ・

 水たまりを避け、ぬかるんだ地面に足をとられながら白い壁へ向かって歩いていく。
 アタシも疲れていたので蛆チャンには自分で歩いてもらうことにする。 
 日が暮れるまでに安全なところを見つけたい。できたら食べ物が欲しい。
 疲れたおなかが空いたと蛆チャンが何度も駄々をこねる。

 「レフ? レピャァァァァッ!!! オネーチャ助けてレフ!オネェェチャーー!!!」

 何度目かの蛆チャンの泣き声に、またかと後ろを振り返ったとき目を疑った。

 蛆チャンを岩が追いかけてる?

 違う!鱗に覆われた蛇のような頭が見える。大きな顎をパックリ開けている。
 まるで岩を背負った蛇だ。蛆チャンに噛みつこうとノソノソ追いかけてくる。
 公園にいたころ蛇には妹チャンが一人飲み込まれている。あんな素早い生き物に襲われたらアタシでも
逃げ切れない。でもコイツは蛇より足が遅そうだ。もしかしたら逃げきれるかもしれない。蛆チャンを抱
えて一目散に逃げだした。

 水辺のぬかるみに足をとられながら精一杯走る。
 きっと逃げ切れる。今度も助かる。
 イタイ!
 足に激痛が走った。
 バケモノに咬みつかれた。
 追いつかれた?どうして?
 イタイ!!
 転んだアタシの足をバケモノが咬み千切った。

 腕に抱えた蛆チャンが泣き喚く。
 ここで終わりなの? ゴメンね蛆ちゃん。

 涙にかすんだ目の前に大きな岩が見える。
 巨大なバケモノだが、背はあまり高くない。
 ひょっとしたら蛆チャンだけは助けられるかも知れない。
 ヤツの背が届かないことを祈って、力の限り蛆チャンを放り投げる。

 「レピィィィ〜〜?! オネェエェェチャァァァァァァァ〜!!」

 蛆チャンを投げた次の瞬間、残った足にバケモノが喰らいついた。
 体をねじってバケモノを叩いた。
 ポフポフと響かぬ音をたてただけだった。  
 その腕もバケモノの顎に齧りとられた。
 少しずつ冷たくなってゆく闇の中で、蛆チャンの泣き声だけが最後まで聞こえていた……





レフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフレフ


 「レフー」

 不明瞭な発言が多く尋問に時間がかかった。
 川の中州を眺めるとカメが何匹か気持ちよさそうに日向ぼっこしているのが見える。
 先週の日曜日に町内会のボランティアで近所の公園掃除に駆り出された。
 状況証拠から見てこやつの発言に嘘はあるまい。謎は全て解けた。
 疑いの晴れた容疑者を元の場所に開放してやることにする。

 「レピャー」

 帰るぞクンクン。おやつの時間に遅れる。




−− 終わり −−

春の味                  初スク
春の味2 実竹煮             2スク
春の味3 身近な野草の天婦羅       3スク
実装のいる風景1 春の思い出       4スク
実装のいる風景2 春の災難        5スク
実装ストーンステーキ           6スク
川辺の蛆実装               7スク

 も氏のgifアニから連想していったら何故かこんな風になりました。
 親蟲子蟲の非常食争奪戦の果ての方がお似合いですが、まあ可能性の一つだと思って。
 ところで実装石視点の距離感ってどんなものなんだろう?


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1 Re: Name:匿名石 2019/08/19-02:09:47 No:00006086[申告]
蛆を見捨ててあっさり帰るというオチにワロタ
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