タイトル:【虐愛】 実装石と人間の愛の形デスゥ
ファイル:あい.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4266 レス数:1
初投稿日時:2007/03/19-08:20:12修正日時:2007/03/19-08:20:12
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球根の水栽培の鉢の中には、黄色がかった栄養剤が満たされていた。
底のは緑色の小石がポツンと沈んでいる。
球根を置くべき場所にはギョロリと目を剥いた実装石の生首。

「やあ、今日も元気かい?」

男は棚の上に置かれたそんなオブジェに向かい、愉快そうに尋ねた。

『はやく殺して欲しいデス』

生首だけの実装石はそう答える。
男は困ったようにポリポリと頭を掻いた。

「僕は虫も殺せない人間だよ、まして愛するオマエを殺すことなんて
 できる筈ないだろ」

『お願いデス、殺してほしいデス』

「どうしたっていうんだい、不自由はさせていないのに
 そうか、最近はあまり相手にしてあげられなかったからね
 手のかからない子なんで、つい放ったらかしにしていたかも知れない
 おまえも僕が相手をしてあげないから、スネてるんだろう?」

『殺すデス、ワタシを殺すデス、お願いだから殺して欲しいデス』

「よしよし、新しいお友達を連れてきてあげよう
 一人きりでいつも僕のことを待っていてくれる可愛いおまえへのプレゼントだよ
 嬉しいかい?」

『……ワタシを殺すデス』



男が用意したのは細長い一輪差しだった。
例によってその口には仔実装の首が生けてある。

『ワタチ、どうなってるんテチか?』

仔実装の目は不安げにキョロキョロと辺りを見渡す。
その目が隣に並んだ、実装石の首の方へ向いた。

『テヒィ! オバちゃんどうしたんテチか!?』

『酷いデス、あんまりデス、こんな小さな子までこんな仕打ちに合わせるなんて……』

『テェェェン、大変デス、オバちゃん死んじゃうテチ、首だけだときっと死んじゃうテチ!』

『死んだ方が幸せデス、死ねないことの方が不幸デス』

『そんなことないテチ、生きてればコンペイトウやステーキやオスシ、美味しいものが
 一杯食べられるテチよ』

『そうデス、それが幸せデス、わたしも幸せだったデス、どうしてこんなことになっちゃったデスか……』

『テププ、オバちゃん大人のくせに泣いてるテチ、おっかしーテチ』



仔実装は三日で死んだ。

『ワタチ、オバちゃんと一緒なんテチか?』

それが最後の一言。

実装石はその死を嫉んだ。

「うーん、偽石の処理がマズかったかな
 仔実装のはちっちゃくて難しいんだ
 ……おいおい、黙ってないで何か言ってくれよ」

男はおもねるように実装石に言った。

「悪かったね、また用意するよ
 何、心配するな、次はもっと上手くやるさ」

実装石が生けられた大きなガラス鉢を挟んで、同じ形の小さな鉢が二つ並んだ。
賑やかになった棚の上を、男は満足そうに眺めた。

『そこのニンゲン、ワタチにコンペイトウをよこすテチ!』

「ははは、この子は冗談が上手いな」

『テチー、ウンチ出るテチー、いっぱい出るテチー』

「うふふはははは、聞いたかい、腹も尻もないのに、まったく愉快な子たちだ
 これでお前も寂しくないだろうね?」

実装石の意識は明瞭だった。
かつて主人と呼んだ人間の声は耳に届いていた。
その顔もはっきりと目に映っていた。
ただ、それらは何ら意味を為さなくなっていた。
あるのは今後満たされることはないであろう空腹だけだ。
それを訴えることはずっと前にやめた。
死を願うことは相変わらずだった。
それを訴えることももうない。
仔実装たちに対する哀れみも強いて捨てた。



「そろそろ、お前の子供が欲しいな」

ある日、男は実装石に向かってそう話しかけた。

「もちろん、僕の精液を使うよ
 マラ実装なんてもちろん、花であろうと君に触れることは許せない
 相思相愛の僕たちなんだ、きっとキレイな黒髪の子供が生まれるだろう
 生まれなかったら生まれるまで何度でも繰り返せばいい
 一緒に努力しよう」

目の前で嬲られている首のない体を、実装石は眺めていた。
男が腰を深く沈めて尻を震わせると、実装石の両目は緑色に染まる。
日が経ってその目が赤く色付く。

「ほら、見てごらん、僕たちの赤ちゃんだよ」

不思議そうな目で母の顔を眺める、親指ほどの小さな仔実装。
その頭巾からこぼれるのは栗色の豊かな髪束。

「でも、出来そこないだね
 次はもっと頑張ろうね」

男は生まれたばかりの仔実装を残らず握り潰した。
赤と緑の混じ入る肉汁の飛沫が、実装石の顔に斑点を描いた。

実装石はまだ泣くことのできる体に生まれたことを恨んだ。

そして、ひとつの決意をした。
この男を愛そうと。

「そう気を落とさないで、次はこんな生ゴミじゃなくて、黒髪をした
 ぼくらの愛の結晶を授かる筈さ」

男は傷ついたような力ない笑顔で、とりすがるように実装石に訴えた。

実装石はやさしく微笑みを浮かべて、投げかけられた視線に応える。




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1 Re: Name:匿名石 2023/03/07-10:17:58 No:00006894[申告]
とんでもない怪作
mayのスレにて話題に上がったのでイラスト保管
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