タイトル:【虐】 黒い塊 6
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:2418 レス数:2
初投稿日時:2007/02/17-11:17:09修正日時:2007/02/17-11:17:09
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                「黒い塊6」





授業の始まる前に先生がやって来ると、みんなを座らせ真面目な顔で話し出した。

『実はみんなに伝えたい事があるんだ』
『何日か前に実験室から硫酸が無くなってしまったんだ』
『誰がどう言う目的で盗んだかは分からないが、思い当たりのある人は後で名乗り出てくれ』
『名乗り出ない場合は警察に調べて貰う事になるので、隠してもいずれはばれてしまうからな』

10分ほど実験室の話をすると先生の話は終わった。



やばいな・・・やばい、やばい・・もしかしたらばれてしまうかも。
僕はそう思うと胸が締め付けられるように苦しくなった、そして一瞬だが僕は後ろを振り返った。

小夜子が僕をじっと見ている、僕の脳裏には小夜子の見つめる目が一瞬で焼きついてしまった。
ばれている・・・小夜子は僕を完全に疑っている、背中の視線を感じつつ舌が乾いて行くのを感じた。








5日目

水槽の濁りは更に酷くなり、液体の質も何かドロドロとした粘度の高い物に変わっている。
相変わらずカタワは水槽の実装石と何かを話している。
僕は学校での事が気に掛かり、実装石に集中できずにいた。
ばれる前に処分しようかと考えたが、カタワとの約束を破りたくないとも思っていた。
僕はこのまま終わりまで付き合う事に決めた。
 




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硫酸の件の翌日から小夜子は僕をじっと見る様になった。
小夜子にすれば、ばれているんだから申し出ろと言う意思表示なんだろう。

授業の間もずっと小夜子の視線は感じていた。
なぜだか嫌な感じはしなかったのは、好きな小夜子に見つめられていると感じたからだろう。

休み時間も絶えず僕をちらちらと見て僕に何かを伝えている。


放課後になり帰ろうと廊下に出た時、小夜子が僕を待っていた。

『「」君・・ちょっと話があるの、ここじゃ何だから屋上に行きましょう』

小夜子に連れられ僕は屋上へと上がって行った。
出入り自由の屋上には僕たち以外にも、何人かの人達が思い思いの話をしている。
小夜子がいきなりあの日の話を切り出してきた。

『硫酸を盗んだのはあなたでしょ』
『あの時の鍵って硫酸を入れていた棚の鍵ね』

僕は小夜子の質問を無視して、屋上の金網のある側に歩いていく。

『ちょっと!「」君ってばちゃんと答えなさい』
『そうでないと・・・そうでないと私・・』

小夜子の話を遮る様に僕は話し始めた。

『あぁそうだよ、君の言う通りさ』
『あの日、僕は硫酸を盗みに実験室にいた、そして運悪く君に見つかってしまった』

一瞬驚いた表情を見せたが、小夜子は僕に食って掛かってきた。

『分かっているんなら名乗り出なさいよ!』
『警察が来る前に名乗り出れば、先生だって悪い様にはしないと思うの』

小夜子の意見は至極まともで、僕に自首を勧める思いやりも感じられた。

『大原さん・・あのさぁ・・この事は黙って貰っていてくれないかい』
『名乗り出れば僕は、この学校にいられなくなる』
『分かるだろう』

『「」君、あなた何を言ってるか分かっているの、あなたの犯罪の手伝いを私が出来る訳無いでしょ』

小夜子の顔は興奮したのか赤みを帯びて来る。

『名乗り出ないんなら私、先生に話すから、嘘じゃないわよ!ちょっと聞いてるの!!』

僕は小夜子の話を右手を上げて制し、すかさず小夜子の弱みを話し始めた。

『「」駅近くのコンビニ知ってるよね、大原さん』

僕の言葉にドキリとしたのが顔色から分かった、動揺している間もなく僕は続けた。

『この学校はアルバイト禁止なのは知ってる?ばれると停学になっちゃうんだよな』

小夜子の顔が曇る、さっきまでの勢いが嘘の様だ。

『ずるい・・「」君・・それとこれとは別の話じゃない』

消え入りそうな声になった小夜子、やはり停学は怖いらしい。

『そうだね別の話だよ、でも硫酸の事だって君には関係無いと思わないかい』
『これは取引さ、お互い知らん振りをしていれば良いだけの話』

『で、でも・・』

『僕達はお互い秘密があって、秘密をお互い共有している』
『どうだろう一度この事について、ちゃんと話し合わないかい』
『今度の日曜日にでも僕の家に来てよ、納得がいけば僕は名乗り出る事にするから』

小夜子は少し考え込んでいたが顔を上げると僕を見た、どうやら決心したみたいだ。

『分かったわ、日曜日にちゃんと決着をつけましょう』









6日目


なんと水槽の実装石の意識はまだ残っている、カタワが懸命に話し掛けているせいだろうか。
水槽を揺らしてみると骨だろうか、時折薄っすらと白い固形物が見える。
リンガルにはカタワと実装石の会話が写る。

「オバチャンにも子供いるテチ?」

「いたデス、可愛い仔が五人もいたデス」

「もしかして公園で待ってるテチ」

「もういない殺されたデス・・・みんなニンゲンに殺されたデス」
「オマエもきっと殺されるデス」

「・・・」

どうやらこの実装石とカタワは仲が良いようだ。
カタワは気付いていないんだろうな。
意識を戻さずに放っておいた方が、この実装石にとって幸せだったって事を。






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7日目


今日は小夜子がこの家にやって来る、僕は実装石虐待を隠す為に朝から各部屋の掃除をした。
そしてカタワを連れて風呂場へやってきた。

7日目までとうとう実装石は生き残ってしまった、僅かだが意識はまだ残っている。
カタワは僕の足元で生き残った実装石の事で喜んでいる、まっ約束だ放してやるか・・・

『良かったなカタワ、生き残ったぞこの実装石』

「良かったテチィ・・カタワも嬉しいテチ」

僕は水槽の実装石に話しかける。

『約束通り君はこれで解放してあげるよ、好きな所へ行くと良い』

「デェデー・・本当デス・・・はやく・・早く帰りたいデス」

僕は首だけ出した実装石の後ろ髪を掴み、一気に持ち上げてみた。


ズルリ!と手応えの無い感触が手に伝わる、実装石の体は脊髄の一部と背骨を途中まで残しているだけだった。
まるで鶏がらの一部の様な奇妙な物体は、だらりと脊髄を垂らしポタポタと黄緑色の液体を滴らせている。

その姿を見たカタワの表情は、氷の様に口を開けたまま体を硬直させ微動だにしない。
カタワの反応は僕に少しばかりの喜びを与えてくれる、心の中でカタワに「それ見た事か」と呟いた。
しかしこの姿になっても良く生きている物だ、普通の実装石でもこうなれば死んでしまう。
自分がどうなっているか分からない無いからなのか、それともカタワの励ましのせいなのか。
何にせよ人間を遥かに超えた実装石の生命力は、現実を認識できない精神力から来ているからかも知れない。

「デェ・・どうしたデス?・・」

実装石は自分の姿を見る事も出来ず、僕とカタワの反応を不思議そうに見ている。
実装石がカタワに話しかけた。

「ありがとうデス・・オマエの・・お陰で帰れる・・デス」

実装石の語りかけにカタワは、信じられないという顔で見るだけで反応できずにいた。
僕は壁に固定された鏡の前にこの実装石を持っていった。
実装石は鏡に映るおぞましい姿に、不思議そうな顔を繰り返すだけだ。

『はは・・目の前の化け物は君なんだぞ、ほら』

僕は実装石の髪の毛や耳を引っ張ったりして、実装石に自分の姿を確認させる。
最初は変な顔をしていた実装石だったが、触られ遊ばれている内に鏡に映る化け物が自分だと認識した。

「こ・・これがワシタ・・デス・・デェ」

呆然とする実装石の頭をカタワの目の前に置いてやった。
カタワが実装石に触ろうとすると、実装石はいきなり大声を出した。

「さ、触るなっデス!!良いからほっとけデスッ!!」
「オマエのせいで・・オマエさえあの時・・」

相手を気遣い接触しようとカタワに、実装石は憎悪の目を向けている。
たじろぐカタワだったが、すぐに実装石へ慰めの言葉を話し始める。

「大丈夫テチ、生きていたらまだ方法はあるテチ」
「私達は実装石テチ、体はまた生えてくるテチ」

せっかくのカタワの気遣いだが、僕はあえてカタワの間違いを指摘した。

『この実装石の怪我は火傷と同じだから、また生えてくる事は絶対に無い』
『ほら・・カタワの右腕と同じだよ』

僕の言葉にカタワは無くなった左腕の袖を掴むと、僕の方へ向き首を振った。
表情からはこれ以上はやめて欲しいと言う感情が、ありありと見て取れた。

『カタワは本当に優しいんだな・・でもね、その実装石にとって君の行為は許される物じゃないんだよ』

「なんでテチ、カタワ頑張ったテチ!」
「オバチャンと一緒に頑張ったテチ!」

『じゃ、そのオバチャンは何でカタワの事が嫌いなの?』

僕からの疑問は実装石のカタワにとって、とても難しく答えの出る類の物ではない。

「分からないテチ・・カタワにはもう・・もうテチ」

カタワは膝を付きうずくまると、何も話せなくなってしまう。
僕は転がっている実装石の頭に話をした。

『言いたい事は分かるよ、あのまま何も知らずに死んだ方が幸せだった・・だろ』

「うるさい・・ニンゲンなんか・・死ねば・・いいデス・・」

『カタワの行為は、ただ苦しみを長く続かせるだけだった』
『あの時カタワが何もしなければ、この実装石は何も知らないまま静かに死んでいた』
『下手に意識を持たせ続けたから、その間中ずっとこの実装石は苦しんでたんだ』

「そ、そんなカタワは、カタワはただオバチャンの為に・・テチィィ!」

泣き出すカタワに僕は、全ての責任はカタワにある様に言い続けた。
カタワが僕の拷問に加担していると印象付ける為に。

『でっこの実装石の事はどうしたいんだいカタワ』
『もう体も再生しない、首だけで生きて行くしかない』
『カタワにだって分かるよね、どうすれば良いかは』

カタワはふらっと立ち上がると、横を向いて転がっている実装石の目の前まで歩いて行った。

「オバチャン・・もう死にたいテチ?」

実装石は何も答えなかったが、目はそう訴えている事がわかった。
カタワは僕を見上げると一度頷いて見せた、覚悟は出来た様だ。

僕は水槽の目張りをしてあるガムテープを全てはがし、蓋を取ると水槽の上で横向きに置いた。
水槽の開口部が半分ほど上から見える、カタワと実装石をその蓋の上に置いた。

『カタワ・・君の手で水槽に沈めるんだ、それで苦しみから解放される』

カタワは一言「テェ〜」と呟くと実装石の頭を押し始めた。
ボテッと音をたてて実装石は水槽に落とされる、粘度が高い為に音の割には水しぶきは無かった。

少しづつ沈んで行く実装石の頭を、カタワが蓋のふちを掴んで跪き覗きこんでいる。
実装石とカタワはお互いを見つめながら、何かを確認している様だった。
やがて静かに沈み始めると、カタワが見つめる中完全に黄緑色の液体へ消えていった。

『とうとうカタワも自分の手で同属を殺しちゃったね』
『カタワと僕は同じだね、実装石を自分の手で殺したんだ』

「・・そうテチ、カタワは実装殺しテチ」
「もう天国へは行けないテチ」

『ママには会えなくなってしまったね、カタワ』

「会えなくていいんテチ、カタワは地獄へ行くテチ」


水槽は時折ゴポリと泡をたて、その度に刺激臭が鼻を突く。
やがて実装石は、骨まで完全に溶けてしまうだろう。
黄緑色の液体はギラギラとした油で光りを放つ。
僕はその液体がとても美しいとさえ感じた。







——その日の昼過ぎ——


チャイムの音が鳴り、小夜子がこの家に来た事を知らせる。

小夜子を居間まで招き入れると、部屋の中を物珍しそうにキョロキョロと眺める。

『そこで寛いでいてよ、紅茶でも持ってくるから』

『お構いなく、話をしたらすぐに帰るから』

小夜子はラフな服装で僕の家に来た、ジーンズにセーター、上着は何かのブランド製のジャケットだった。
全体に暗めだがそのチョイスにはセンスの良さを感じた。
髪型は普段学校では一本に束ねていたが、今日は肩まで伸びる髪をそのままにしてある。

紅茶を持って行くと、小夜子はカタワのゲージに手を伸ばし遊んでいた。
カタワも網越しに小夜子を珍しそうに見ている。

『実装石に興味があるのかい大原さん』

僕の方へ振り返ると、実装石と遊ぶ小夜子は笑顔になっていた。

『実装石を飼ってるのね「」君、所でこの仔の腕はどうしたの』

『それね・・公園で見つけた時には無かったんだよ』
『可哀相なんで今は僕が飼ってるんだ』

『ふーん・・』

小夜子の返答はどこか信用していない風だった。


暫くの間はお互い無言で紅茶を飲んでいたが、小夜子はこの前の話を切り出した。

『「」君この前の取引だけど・・』

小夜子の顔がきつくなると、いきなり屋上の続きを始めた。

『良く考えたけど「」君と取引するつもりは無いの』

『そりゃ無いだろ、お互い黙っていれば平穏に暮らせるじゃないか』

『言い付けたければ勝手にどうぞ』
『そんな関係なんてお断りします』

『君は停学になっても構わないのかい』

『・・・構わないからそう言ってるの』
『アルバイトは今日で辞めて来たわ』
『これであなたは、自分で申し出るしか無くなった』

『僕は自分から自首する気は毛頭ないよ』

『・・・・・・・・・・・・・』

『・・・・・・・・・・・・・』


お互い暫く黙ったままで睨み合っていたが、根負けしたのか小夜子の方から話し始めた。


『話はこれで終わりよ、紅茶ご馳走様』

立ち上がろうとする小夜子の腕を、無意識に僕は掴んでいた。

『ちょっと!・・なんのつもり「」君!』
『キャッ!」

小夜子の腕を引っ張るとバランスを崩し畳の上に転び、小さな声を上げた。
僕は自分で自分が抑えられない、なぜ僕はこんな事を・・・

『僕が悪いんじゃない、僕はお互いの為に提案したんだ』
『それを小夜子が・・くそ!!』

感情の高ぶりが抑えられない、僕は自分に対してか小夜子に対してかは分からないが大きな声を出してしまった。



『ふざけるんじゃねーーー!!』



いきなりの大声に小夜子の顔が恐怖にひきつる。
僕は隠し持っていた安物だが、大きなナイフを出して小夜子を脅した。


『あ・・あぁ・・ヒィィ』

目の前にナイフを見せ付けると、小夜子は声も出せず脅えるだけだった。

『大人しくしてれば何もしない』
『いいか!殺されたくなかったら僕の言う事を聞くんだ』

小夜子はただ頭を上下するだけで何も出来ずにいる、完全に僕の支配下に置いた事が分かった。




小夜子を縛り上げると、父親の書室にあるひじ付きの椅子を居間まで持ってきた。
ナイフで脅しながら小夜子を座らせると、僕は椅子に縛り始めた。
足は椅子の足に縛り手は肘置きに縛り、完全に動けなくすると小夜子が声を上げ泣き始めた。

『助けて!助けて!「」君』
『いや・・いやよ!いやぁっ!』

小夜子の泣き声はナイフを見せても収まらず、僕はしょうがなく小夜子の顔を殴った。

両手にグウを作ると小夜子の左頬を一発殴り、返す拳で右頬にも一発殴った。
小夜子は小さく呻き声を上げると、口から血を流していた。
力は抑えて殴ったが、拳には小夜子の頬の感触が残っていた。

涙でぐしゃぐしゃになり手足を縛られ抵抗する術も無い、小夜子はもはや完全に僕の物だ。
これからの事を考えると、自分のペニスが勃起して行くのが確認できた。

『静かにするんだ小夜子、言う事を聞けば手荒な事はしない』

『ひっく、ひっく、お願い・・もう帰して』
『「」君の事は黙ってるから、ひっく』

『もうその事はどうでも良いんだよ、これからは僕の物になるんだから』
『小夜子の指はとてもきれいだ・・』

椅子の肘に縛られている小夜子の指に触ると、小夜子の顔が歪んだ。

『本当にきれいだ・・ああ』

もっと小夜子の指を触っていたかったが、時間を考えるとそうはいかない。
台所のフキンを持ってくると、それで小夜子に猿ぐつわをした。


小夜子を横から眺めながらこれからの事考えていた、また勢いでこうなってしまったがこのままで済む筈が無い。
こうなったからには帰す気は毛頭無かったが、実装石のようにはいかない。
僕の目には小夜子の指が映る、いっそ指だけでも僕の物にしたい。

思い立った僕はある決心をした、見つかるまで小夜子はここに閉じ込めて置こう。
もし捕まっても僕は未成年だし、罪にもならないかも知れない。
それにすぐには見つからないだろう、小夜子は出る時にアルバイトの事は話してないはず。
僕の家に行く事は秘密にしている筈だから、当分の間は小夜子と一緒の生活が出来る。
それには小夜子を肉体的にも精神的にも、僕が支配しなければ行けない。

僕は道具箱から糸を取り出すと、嫌がる小夜子の右手人差し指の根元に巻き強く縛った。

『痛いのは少しだけだから、血が鬱血して痛みを感じなくなったら、小夜子の指を一本だけ貰う』

僕の言葉を聞くと小夜子の顔が、引きつり椅子を揺らして懸命にもがく。

『契約みたいな物さ、指を見る度に僕への忠誠心を感じてもらう為の』
『君の見た実装石の腕を見たろ、あれも僕が切り落とした』
『カタワって言うんだ僕の家族だ、君にも僕の家族になって欲しい、うんっもうそろそろ良いかな』

僕は台所の一番切れる包丁を選ぶと、小夜子の前まで来た。
小夜子の目が涙で真っ赤に腫れ、その目が僕への情けを訴えている。
その目は何度も僕は見ている、拷問の時の実装石達と同じ目だ。
圧倒的な力の前に自分の非力さを際立たせ憐れみを貰う、そして僕はその願いを受け入れる事は無い。

僕は小夜子の人差し指の第2関節辺りに包丁をあてがうと、躊躇する事無く一気に押し当てた。

『むぅぅ!!んむむぅぅ!!』

猿ぐつわを噛まされた小夜子は声にならない呻き声を何度も上げ、唯一動く頭を何度も振った。

ゴリ!ゴリイ!一気に力を入れたが、骨に当たり上手く切り落とせない。
実装石とは違い人間の体はかなり固かった。

『くそ!くそ!何で切れないんだ』

『ンンンゥゥッ!!ンンムムゥゥゥーーーー!!』


糸で縛り血止めをしている筈なのに、切り口からはかなりの血が溢れてくる。
小夜子の右手は血でヌルヌルになり、押さえている僕の左手も血まみれになって行った。


ゴキン!

骨の外れるような音がすると小夜子の人差し指は皮だけ残しす、
力を入れ包丁を前後に動かすと、ブッツリと小夜子の指は切り落とされた。

小夜子は顔から涙や鼻水を出して目をつぶり、体中を細かく痙攣させている。
良く見るとジーンズはぐっしょり濡れ、小便は椅子を伝い畳みを濡らしていた。

血で汚れている小夜子の右手を新しいタオルで押さえると、じわりと血が滲んでくる。
僕は怖くなり慌てて救急箱を取りに、この部屋を出て行った。





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——残された小夜子—
  
(ここからは第三者視点に変わります)


包丁の刃がゴリゴリと骨を削る度に、信じられない激痛が小夜子を襲う。
椅子に固定され自分では逃げる事が出来ない、激痛は鈍痛となって頭に響く。
怒りや憎しみは既に無かった、ただこの痛みから逃げ出したかった。


ブチンと骨が切れる痛みが伝わると、その瞬間小夜子は失禁してしまった。
「」はそんな事に気付く事も無く、必死に包丁を押さえつけて来る。

自分の手を見ると指が一本無くなっている、痛みと哀しさで目をつぶり耐えるしかなかった。
なぜこんな事になってしまったのか、考えても答えは出なかった。
ただこの地獄から一刻も早く逃げ出したいだけだ、来るんじゃなかったと後悔するだけだ。

「」が小夜子の血を拭いている、おろおろした表情をすると切り離した指を持って部屋を出てしまった。

手の上に置いてあるタオルを見ると血が滲んでいる、心臓の鼓動に会わせてズキンズキンと痛みがぶり返す。
無くなった指を動かしてみるが、痛みとタオルで様子をうかがい知る事は出来なかった。

天井を見上げ鼻でフーフーと荒く息をすると、涙がボロボロと溢れてくる。


ガチャ・・ガチャ・・


「テチィ・・テチィ」


目の前で音がする、小夜子はビクリと体を震わせる。
音の主はさっき遊んでいた実装石だった。

片腕の実装石は一生懸命ゲージの壁を叩き、小夜子に何か話しかけていた。
小夜子がカタワの存在に気付くと、カタワは片手しかない手を広げ何かを話し出す。
その様子からは小夜子を気遣い、安心させようとしている事が見て取れた。

その行為は痛みや哀しさで溢れていた小夜子に、ほんの少しだが和らげる効果があった。

『ぐす、ぐす、何よあいつ・・指が無くなった・・私の指が・・ひっく・・』

「テチテチ、テチィィ」

カタワは自分の無くなった腕を小夜子に見せた、自分は腕が無い事を訴え小夜子を慰めていた。
恐怖で脅えて冷静さを失っていた小夜子も、カタワの様子を見ながら少しづつ冷静さを取り戻した。

「」は狂っている、異常者を相手に今の自分の出来る事を考えてみた。
取り合えず興奮させ無い様に取り繕って、逃げ出す機会を伺おう。

『カタワって言うんでしょ、あなたも酷い目に会ってるわね』

「テチ、テチ、テチ!」

カタワは首を振り、無くなった左腕の袖を掴む。

『まずは縛られたこの体制を何とかしなきゃ』

「チィィ・・」

小夜子の言葉にカタワが力なくうなだれる。

『あなたには期待して無いわよ、まずはあいつを騙さないと・・』


部屋の外から誰かが近づく音がする、小夜子は涙を流して絶望した振りをすると「」が来るのを待った。






続く



















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1 Re: Name:匿名石 2018/11/02-07:45:36 No:00005663[申告]
クッソキモい文体で長々続けてしかも未完
マイナスよ
2 Re: Name:匿名石 2023/07/19-22:54:45 No:00007575[申告]
関連にないけど完結編…あるで!
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