愛と憎しみの果て 数ヶ月前、男は公園で傷ついた仔実装を見つけた。 その仔実装は下半身を何者かに踏み潰され、糞と共に内臓が総排泄口から飛び出し、 このままでは数時間と持ちそうにない程弱っていた。 男はその仔実装を家に連れ帰ると栄養剤を飲ませ、傷ついた体から偽石を取り出し栄養剤につけたやった。 翌日になると、あのボロボロに傷付いていた体は嘘のように回復し、 仔実装は初めて見る人間の家を元気にはしゃぎ回っていた。 『あ、昨日のニンゲンさんテチ!』 仔実装は男を見つけると目を輝かせながらこちらに走り寄ってきてテチテチと何を言った。 男はリンガルを持っていないので何を言っているのか分からないのだが、どうやら挨拶をしているのだと推察した。 『助けてくれて、それと私を飼ってくれてありがとうテチ!』 腕を口元に添えてテチュ〜ン♪と言っている。 (これが俗に言う媚のポーズってやつか。 何を言ってるのかさっぱり分からんが、まあうちで飼ってもいいかな。家は一人で寂しいしな。) 男はこの仔実装を飼うことにした。 それから男と仔実装の生活が始まった。 男は実装石のことが特に好きではなかったが、仔実装のことはとてもよく可愛がった。 仔実装も男の言うことをよく守り、なるべく男に迷惑をかけるようなことはしなかった。 仕事が忙しいので昼間は家に一人きりにさせてしまったが、その分夜帰ってきてからは沢山遊んであげた。 ご飯やオヤツは毎日欠かさず用意してくれたし、汚くなったらお風呂にも入れてくれた。 フカフカの暖かい毛布を用意してくれた。 そして、夜は寝るまで一緒にいてくれた。 仔実装はすくすくと成長し、ようやく成体サイズになりかけた頃である。 男は仔猫を拾ってきた。まだ小さい仔猫で生後二週間程の仔猫である。 仔猫は男の腕の中で「ミィミィ」と小さく、しかし懸命に鳴いている。どうやら餓えているようだ。 男は仔猫を医者に連れて行き、ペットショップで仔猫用の哺乳瓶と粉ミルクを買ってきた。 「美味いか?」 チュピチュピと哺乳瓶の乳首を咥える仔猫を見ながら男は優しく微笑んだ。 男の優しい笑顔を仔実装は寂しげに見つめていた。 それから仔実装の生活に変化が訪れた。 男は今まで仔実装を第一に考えてくれていたのだが、仔猫を拾って以来仔猫に付きっきりになってしまったのだ。 男は勤務している会社に仔猫を連れて行き、数時間ごとに餌を与えた。 仔猫を育てている間、仔実装は殆ど放っておかれた。夜寂しくてテチテチと泣いても以前のようには来てくれなくなった。 男は決して仔実装を嫌いになったわけではなかったのだが、仔実装には男の考えが理解が出来なかった。 次第に仔実装は「アイツ(仔猫)がいるから、ご主人様は私を可愛がってくれないんだ」と思うようになっていった。 仔実装は男から教えられた約束事を次々と破り、部屋の至る所でパンコンをするようになり、 夜中にも関わらず大声で泣き叫ぶようになった。 流石にこれには男も困ったが、今は仔猫の方が大事だと判断し仔実装をキツク叱りつけるに留まった。 仔実装は男に叱られたことに泣き叫び逆上した。そして次第に仔猫に対して恨みを抱くようになった。 二月後、仔猫はすくすくと成長し、ようやく離乳食を食べられるくらいまで大きくなった。 男が会社に連れて行き世話をしなくとも生きられるようになったのだ。 男はほっとした。餌と水の用意をして出勤をすれば、それで済むからだ。 幸いこの仔猫はトイレも問題なく躾けられたので色んなところで粗相される心配も無い。 まだ遊びたい盛りだろうから、家に帰ってから遊んでやればいい。それは仔実装もそうだろう。 男はこれからは仔実装にも構ってやらなければとそう思った。 一方、仔実装は既に成体サイズの実装石となり、体つきも今までの仔実装とは違い大きな体へと成長していた。 それと同時に、実装石の仔猫への恨みは日に日に募っていた。 仔猫が成長し家にいるようになると、実装石はそれをチャンスだと思い始めた。 そして、今まで仔猫に対して抱いていた恨みが一気に噴出されたのである。 実装石は縁側で気持ちよさそうに日向ぼっこをしている仔猫に思い切り糞を投げつけた。 「ウニャッ!」 実装石の糞はとても臭く汚い。綺麗好きの猫にとってそれは堪らなかった。 実装石は親の敵のように仔猫に糞を投げ続けた。 仔猫は逃げ周り、実装石も仔猫を追い回し続ける。 結果として家の中は糞だらけになってしまった。 次に実装石が行ったことは、仔猫に対する暴力と餌の横取そしてトイレを荒らすことであった。 実装石は仔猫を徹底的に追い詰めるつもりだった。 仔猫に糞を投げつけただけでは飽き足らず、今度は暴力でもって排除しようと考えていたのである。 まず仔猫の餌と水を全て平らげる。仔猫の一日分の餌の量など成体の実装石ならば造作も無いことである。 続けて、猫のトイレの中で思い切り暴れ回り砂を外へ掻き出すと、トイレに大量の糞尿を垂れ流し、 トイレの容器ごとひっくり返した。 トイレ荒しが終わった後、実装石は針がむき出しのピンを持ち出し、 恐る恐る仔猫に近づくと疲れて寝ている仔猫の背中に向けて思い切りピンを突き立てた。 「みゃあん!!!!」 これには堪らず仔猫は声を上げて一目散に逃げ回った。 仔猫が座り込み油断をし始めたところをピンで突き刺す。 実装石はピンを持って、一日中仔猫を執拗に追い回した。 自宅に帰ってきた男は唖然とした。 家の至るところに実装石の糞がこびり付いており、異臭を放っているのである。 その上、可愛い仔猫が実装石の糞だらけになり、所々血を滲ませ怪我までしている。 トイレは裏返しになるほど荒され、山ほど盛っていた餌と水の容器は空っぽになっており、 仔猫は腹を空かせ男の足元で「にゃ〜にゃ〜」と物欲しそうに鳴いている。 そしてこの事件の犯実装石は涼しい顔で「デスゥ〜ン♪」とこちらを見上げてきた。 男は状況を見てすぐに実装石の仕業だと判断した。 そして、デスデスと男に媚を売りながら擦り寄ってくる実装石に生まれて初めて手を上げた。 バシン!!バシン!! 『デッ!!デエェェェン!デエェェェン!』 男に叩かれ、勢いで壁まで弾き飛ばされた実装石は、大声で泣き始め、そして盛大にパンコンをした。 「いいか、二度と仔猫を苛めてみろ。お前を殺してやるからな。」 男は実装石に釘を刺すと、仔猫に餌を与えた後で傷の消毒を行い、それが終わると自宅に散らばった糞の掃除をした。 この事件の後、実装石に対する男の態度は恐ろしい程一変した。 実装石が仔猫に悪戯をしようと近づこうものなら厳しく叱られた上に思い切り叩いた。 男の興味を引こうと所構わずに粗相をした時も先と同様思い切り叩かれた。 男の実装石を見る目は徐々に変化し、次第に汚らわしいゴミを見るような目つきに変わっていった。 餌は以前と同じく与えられてはいるものの、実装石が何を言っても無視をされ、実装石が男に近づこうとすれば追い払われる。 それでもしつこく男に付きまとうとすると叩かれ部屋を追い出される。 (ご主人様が私のことを全然構ってくれないデス。どうすれば構ってくれるようになるデス。) 実装石は自分の行動が原因であることに全く気づいていなかった。 現状の何とかしようと実装石は必死で打開策を考え抜いたが、結局何も思いつかなかった。 男の実装石に対する態度は日増しに冷え込んでいった。 男は実装石が悪さをすれば酷く怒り体罰を加えたが、何もしなければ特に危害を加えることは無かった。 実装石は男の関心をもう一度自分に向けられないかと考えながら、日々を過ごしていた。 ある日、いつものように実装石がテレビを見ていると、とあるドラマが放映されていた。 一年前に放映されたドラマの再放送だった。 そこには人間と実装石が愛し合い黒髪の子供が生まれるといったシーン等が映し出されていたのだ。 人間と実装石の二人がとても幸せそうにしているのを見て実装石はピンと閃いた。 (ご主人様と私との間に子供が出来れば、きっと昔のように可愛がってくれるようになるデス。) そう思った実装石は、男から決して入ってはいけないとキツク言われている男の寝室へと足を運んだ。 数日後、実装石の腹はぽっこりと膨らんでいた。 実装石は子供を身篭ったのである。 男は実装石の膨らんだ腹を若干不自然に思ったが、きっと花粉か何かで勝手に受精したのだろうと思っていた。 (ただでさえ面倒な実装石がこれ以上増えるのは勘弁だ。 しかし、捨てるのは嫌だ、殺すのも忍びない。生まれた仔実装は知り合いに引き取ってもらうことにしよう。) そう思い、男が里親探しに奔走している最中、実装石は一匹の仔実装を出産をした。 だが、実装石が出産したのはただの仔実装ではなかった。 人と実装石が交わった証、つまり「黒髪の仔実装」を出産したのである。 晴れて母親になった実装石は 『私とご主人様の子供デス♪優しく抱いてあげて下さいデス♪』 と言わんばかりに、媚びた笑顔で黒髪の仔実装を差し出してくる。 そして、これで幸せになれるデス、デププププ、と含み笑いをした。 とは言っても、上から覗き込んでいる形の男には一部始終が丸見えであったが。 男は黒髪の仔実装を見て不自然そうな顔を浮かべた。 (何だ、俺はこんな奴を一回も抱いた覚えがない。何でコイツは黒髪を出産したんだろう。 どこかの物好きなジックス好きが我が家に侵入してコイツを犯した?いや、家にはどこからも侵入された形跡は無い。 人間と交わらなければ実装石は黒髪を出産しない筈。もしや・・・) 実装石は依然としてデププププと笑いながら男の傍を離れない。 男は実装石の寝床を漁り始めた。 寝床の奥深くに不自然に置かれているティッシュの塊を男は発見した。 恐る恐る匂いを嗅いで見る。寝床で発見したティッシュからはイカ臭い男のあれ独特の匂いがした。 男は呆然とした。 まず絶対にそれはないだろうと思っていた最悪の予想が当たってしまったのだ。 (まさか、まさかとは思ったが、この実装石は 「 俺 が オ ナ ニ ー で 使 っ た テ ィ ッ シ ュ で 仔 供 を 孕 ん だ 」のか。) 実装石にそんな知能があるとは誰も思わない。 しかし、ティッシュが寝床に置いてあったという事実は揺ぎ無い。 (と言うことは、あの黒髪は俺の子供なのか。) 愛してすらいない、いやむしろ最近は憎んですらいる実装石との子供を無断で作られた。 その事実に男の怒りは沸々と込み上がってきた。 (あの糞蟲、今までは我慢してやったが今度という今度ばかりは容赦しないぞ。) 男は鬼のような形相で実装石を見るとこう言い放った。 「なあお前、それは俺の子供なのか?」 実装石は男がやっと自分を可愛がってくれるのだ、と勘違いをしているらしく、 デスゥ〜ン♪と媚びながら産んだばかりの黒髪を持つ仔実装を差し出した。 仔実装は 『テチュ〜ン♪初めましてテチ、貴方が私のパパテチね。可愛がって下さいテチ♪』 と生まれて初めての媚ポーズでそう言った。 勿論、リンガルを持たない男にはテチテチとしか聞こえていないが。 プツン・・・ 男の中で何かがブチ切れた。 男は大きく深呼吸をすると、掌に爪が食い込み血が滲むほど拳を強く握り締め、 そして人生で最も力を込めたであろう拳を振るうと、渾身の力で実装石を殴りつけた。 ドスンッ!! 『デッ!』 男に殴られた実装石は物凄い速度で後ろに吹き飛んで行き、そして凄まじい勢いで壁に叩きつけられた。 バァンッ!! 実装石が叩きつけられると、壁に赤と緑の交じり合った醜いマダラの染みが出来る。 「やってくれたな糞蟲。何を考えてやったのかは知らんが、俺は間違いなく人生で一番切れてるぞ。」 男はまるで般若のような形相で壁に叩きつけられた実装石を睨みつけている。 『デッ、デエエエエエエエェェェ!!!!』 『テチュアアアアアアアアァァァ!!!』 実装石は男の行動と怒りが想定の範囲外だったらしく、男に殴られめり込んだズキズキと痛む顔面を手で押さえながら、 デギャデギャとけたたましく騒ぎ始め、盛大にパンコンをした。 『何で怒ってるデス!!ご主人様との子供が出来ればテレビのお話みたいに幸せになれるはずデス!! 私はご主人様と幸せになるんデス!幸せになるんデス!幸せになるんデス!幸せに・・・』 「ギャアギャアうるさい糞蟲!いい仔にしていれば優しくしてやったのに付け上がりやがって。 仔猫はいじめるわ、部屋中クソだらけにするわ、勝手に俺の種を使って仔を産むわ、お前は本当にろくでもない最低の糞蟲だ。」 男は窓ガラスが割れるほどの大声で罵詈雑言を浴びせながら、ひたすら実装石を殴り続けた。 『デジュア!デジャッ!デエエエエエエェェ!』 殴られる度に実装石の体が少しずつ歪み、股間の緑色の膨らみはその度に大きさを増してゆく。 「この糞蟲!この糞蟲!この糞蟲!この糞蟲!」 『デッ!デジャッ!デギャッ!デエッ!』 数十発ほど殴りいい加減実装石の悲鳴が小さくなってきてから、男はようやく実装石を殴るのを止めた。 「はぁ・・・はぁ・・・」 男はまだ実装石を殴り足りないようだったが、ひとまず怒りは収まりつつあった。 『デ、デェェ・・・』 『マ、ママアァ!!』 仔実装が母実装に擦り寄る。 ガシッ! 『テチッ!』 男は仔実装を両手で掴み上げた。 『ママァ!パパに殺されるテチ!助けてテチ!』 仔実装はテチテチと騒ぎながら母実装に助けを求める。 男の仔実装を掴んだ両手に徐々に力が加わっていく。 ギュ、ギュウウウウウウウ 『い、痛いテチ痛いテチ痛いテチ!死んじゃうテチ!苦しいテチ・・・』 仔実装の体からボキボキと体中の骨がへし折れる音が聞こえる。 『テチュゥ・・・ギュゥア・・・ア・・・アァ・・・』 男は血涙を流し泡を吹いて痙攣する仔実装の姿を見て、握り締めた力を緩めた。 「くそっ、こんな糞蟲でも俺の子供か!一体どうすりゃいいんだよ!」 締め上げられ気絶した仔実装を床に落とすと、男は文字通り頭を抱え込んだ。 (自分で殺すわけにもいかないし、捨てるわけにもいかないし・・・ クソ!受験や就職でもこんなに悩まなかったぞ!これも全部あの糞蟲の・・・) ふと、偶然床に散らばった雑誌が目に入った。 月刊実装ライフ。それは男が実装石を飼い始めた頃から購読している雑誌であった。 実装石を始め、他の実装達を飼育する上での様々な情報が掲載されている月刊誌である。 男はその月刊実装生活の偶然開かれているページを読んだ。 (実装達の繁殖方法。ええとなになに、実装紅は・・・実蒼石は・・・実装燈は・・・これだっ!) 男は気絶しかけてはいるものの、まだ意識のある実装石に視線を移すとニヤリと笑った。 『デェェェ・・・』 男の黒く不敵な笑いに実装石は底知れぬ不安を感じ、小さく呻いた。 翌日、男は先日殴られた怪我がほぼ完治している実装石をロープで体が千切れる程キツク縛り上げてから巣に押し込み、 同じく怪我が治りピンピンしている仔実装を虫篭に入れてから外出した。 尚、実装石は縛り上げる際、機嫌を取ろうと媚びを売ってきたので、 数十発往復ビンタを加えた後、ドライバーで両腕両足を串刺しにしたら泡を吹いて気絶したので、そのまま縛り上げた。 それを見て仔実装が小うるさく騒いだので10発ほどデコピンを浴びせた後、 水に3分ほど沈めたら仮死状態になったので、虫篭に放り込んだ。 男はコンビニでお目当ての物を買うとそのまま公園に向かい、先ほど買った物をベンチに置き横で昼寝を始めた。 暫く経つと「ルトルト〜♪」という声が聞こえてきたので目を開ける。 目を覚ますと男の横には一匹の野良らしき実装燈が先ほど男が買ったヤ○ルトを両手で持ち上げ飲みながら歌を歌っていた。 『ルトルト〜♪』 「こんにちは可愛い実装燈ちゃん。」 『ルト?』 呼びかけられた実装燈は男の方を向くと、ヤ○ルトを飲みながら不思議そうに首を傾げた。 「実は君に頼みがあるんだ。頼みを聞いてくれたら、もっと沢山のヤ○ルトを買ってあげるよ。」 『ルトルト〜?』 男はリンガルを持っていないので実装燈の言葉は分からないが、どうやら承諾してくれたようである。 「君にやってもらいたいことは・・・」 男が公園で実装燈に頼みごとをした翌日、男の実装石と仔実装に対する態度が昨日とは打って変わって優しくなった。 「昨日まではゴメンな、ちょっと突然のことで驚いちゃってさ。」 男が昨日までのことを謝り大好物であるコンペイトウを大量にくれたので、実装石はあっさりと男のしたこと許してしまった。 『いいデスよ、これからはあの仔と3人で幸せになるデス♪』 デスデス、とコンペイトウを頬張りながら実装石は言った。 「ほら、たんとお上がり。ちゃんと食べないと大きくなれないよ。」 男は栄養価の高い高級実装フードを仔実装に与えた。 『テチ〜♪やっぱりパパは優しいテチュ〜ン♪』 黒い髪の仔実装は大喜びで高級実装フードに食いついた。 「ふふふ、美味しいかい?」 『美味しいテチュ〜ン♪パパ大好きテチュ〜ン♪』 仔実装はたまらなく幸せそうな顔で高級実装フードを頬張っている。 『ふう、お腹一杯テチ〜♪』 「ご飯を食べたら次はお風呂に入ろうか。」 『久しぶりのお風呂デス〜』 『お風呂テチ♪温かいお風呂テチ♪』 風呂という単語を聞いて、二匹の実装石ははしゃぎ回っている。 自慢の黒髪を男に洗ってもらい、仔実装は幸せそうな声でテチテチと笑った。 『お腹がちょっと痛いテチ、なんか突っ張ってる感じがするテチ。』 『それはご飯の食べ過ぎデス。美味しいからってあんなに食べると体に悪いデスよ。』 実装親仔は楽しそうに笑った。 翌日、仔実装の体調が変化した。何でもお腹が圧迫されるようにジンジン痛むのと体が少しフラフラするらしい。 しかし、男が微笑み風邪だと言って聞かせたので親実装も仔実装もそれ以上追求はしなかった。 『大丈夫デスか?今日はあんまり無理しない方が良いデス。』 『大丈夫テチ。パパの言う通りきっと風邪テチよ。』 親実装は少し心配そうであったが、男が食事を与えるとすぐに体調のことは忘れてしまい、夢中でそれを頬張った。 その日も終始男の優しさは変わらなかった。 その翌日、仔実装の体調が悪化した。お腹がキリキリと刺すように痛み時々体の自由が利かなくなるらしい。 男は風邪が悪化したと言い、今日は無理をしないでよく休み沢山食べていれば治ると実装親仔に言って聞かせた。 親実装は男の笑顔が昨日と変わらず優しかったので、それ以上の心配はしなかった。 『今日は無理せずゆっくり休むデスよ。』 『は〜いテチ。本当はパパやママと遊びたいけど我慢するテチ。』 『いい仔いい仔デス。』 『テチ〜♪』 実装親仔は幸せそうに笑い合った。 その様仔を男はニヤリとしながら笑っていた。 更にその翌日、仔実装の体調が急変した。腹痛が限界に達し、 仔実装は耐え切れずに痛みが体に走る度に『テチッ!テチッ!』と声を上げた。 体の殆どが動かせず痙攣が続き、激痛で血涙とパンコンが止まらない。 その様仔を親実装は心配そうに眺めていた。 『ご主人様、ホントにこの仔は大丈夫デスか?』 親実装はデスデスと男に問いかけるが、男は仔実装をニヤニヤと笑いながら激痛に耐える仔実装を 眺めたままで親実装の言葉には一切耳を傾けていない。 『テチッ!!テチッッ!!!マ、ママ、パパ、た、助けてテチッ!!デヂッ!!!!!』 急激に増してくる腹痛に仔実装の目の前は真っ白になる。 焦点の定まらない目で痙攣を続けている。 『ご主人様!この仔を病院に連れて行ってあげて欲しいデス!このままだと死んでしまうデス!』 男は変わらず笑顔でその後景を眺めている。仔実装はその間も『デヂッ!!』と声を上げ続けた。 「そろそろかな。」 やがて、仔実装の腹がメリメリと音を立て裂け始める。 『デヂュアアアアアアアアアアアア!お腹が!お腹が裂けるテチイィィィ!!!』 腹が裂けると同時に仔実装の悲鳴もより一層激しくなる。 『デスウゥゥゥゥ!!早くあの仔を何とかしてあげて欲しいデスゥ!!!ご主人様!ご主人様!ご主人様!ご主人様!!』 メリメリメリメリ!! 親実装と仔実装の叫びもむなしく腹は裂け続ける。 『デヂュアアアアアア!!死んじゃうデヂ!死んじゃうデヂィィィィィ!!!!!!!』 『デギャアアアア!ご主人様!ご主人様!ご主人様!ご主人様!ご主人様!!!!』 そして バリッ!! 『ルトルト〜〜♪』 仔実装の腹が完全に裂け、可愛い産声を上げて一匹の仔実装燈が誕生した。 『テ・・・・パパ・・・ママ・・・助け・・・テチ・・・・・』 パキィン 仔実装の偽石が割れた 『デギャアアアアアアアアアアアア!!!!!』 親実装は今までに無い程の大声で激しく泣き叫んだ。 男が公園で野良の実装燈に頼んだこととは、仔実装に実装燈の卵を産み付けてもらうことであった。 月刊実装ライフには、実装燈は実装石に卵を産み付け、それを栄養に繁殖を行う、と書いてあった。 野良の実装燈は初めは男の頼みに対し疑惑の目を投げかけていたが、 男が「生まれた子供は絶対に幸せにする」と誓うと快くOKをしてくれた。 そして野良の実装燈を自宅に招き、溺れて仮死状態になっている仔実装に実装燈の卵を産み付けてもらったのである。 男は強引に「俺の種で生まれた仔実装を媒介として生まれた実装燈ならば、それは間違いなく俺の子供である。」 と自分を無理矢理納得させた。 男の親実装や仔実装に対する態度が変わったのは、胎教に良くないと考えた結果であり、栄養価の高い高級な餌を与えたのは、 生まれてくる実装燈へ少しでも栄養を送ろうとする配慮であった。 そして、男が待望としていた実装燈が仔実装の腹を突き破りこの世に誕生したのである。 『ご主人様!!ご主人様!!あの仔の体から何か出てきたデス!!あの仔を早く助けて欲しいデス!!デスゥゥゥゥゥ!!』 男は親実装の方をチラリと一目見ると、既に息絶えた仔実装の亡骸の方へ歩き始め、そして 「初めまして実装燈ちゃん。僕が君のパパだよ。」 生まれて間もない実装燈を抱き上げ、優しくそう言った。 『デ!!ご主人様何を言ってるデス!!ソイツは私とご主人様の可愛い子供を殺した張本人デス!! 私とご主人様と可愛い子供では無いデスッ!!』 男は足元で騒ぎ立てる親実装を無視し、男はポケットから何かを取り出し仔実装燈に話しかける。 「君の名前はそうだな・・・銀にしようか。今日から君は銀ちゃんだよ〜」 『ルト?ルト〜♪初めまして銀のお父様、これから宜しくお願いしますルト♪』 男が取り出したのは実装リンガルであった。今日のこの日のために男がわざわざ実装ショップで買ってきた物だった。 ちなみに実装燈以外のリンガル機能は無効にしてある。 『デエッ!ご主人様がアイツに名前を付けてるデス!!私にもあの仔にも付けてくれなかったのに!!許せないデスッ!!』 親実装は幼い仔実装燈に大声で威嚇をした。 『私の娘を殺した上にご主人様まで取るなんて絶対に許せないデスウウウウウウ!殺してやるデスウウウウウ!!』 『ル、ルト!お父様ぁ〜変な生き物がこっち見て叫んでるルト〜』 「ああ、アレは糞蟲だよ。この世界でもっとも醜くもっとも汚らわしい実装石と言う糞蟲だ。覚えておきなさい。」 『は〜いお父様、分かりましたルト〜』 信用していた男からのまさかの言葉に実装石は激しく逆上した。 『何を言ってるデス!!!私は世界一美しくて世界一可愛い実装石デス!!!ご主人様こそそんな汚らわしいジャンクを早く放すデス!!』 ジャンク・・・と言う言葉に仔実装燈は反応した。 『わ、私がジャンク?お前は何を言ってるルト?』 仔実装燈の顔が敵を狩るハンターの顔へと変化する。 目は釣り上がり鋭い牙を見せ背中に生えた美しく黒い羽をバタつかせている。 「ははは、可愛い銀ちゃんがそんなわけないだろ?お前は世界一可愛い俺の娘だよ。 でもね、俺の可愛い銀ちゃんのことを馬鹿にしたあの糞蟲は処分しないといけないね?できるかい?」 実装石を指差して男はニヤリと笑い、そう言った。 『お任せ下さいお父様。そのくらいは勿論お手の物ルト。』 仔実装燈もまた、男と同じくニヤリと笑う。 『デ、デエエエエエエエエエエエエエ!!!!ご主人様アアアアアア!!!』 仔実装燈は男の手から離れると、黒く美しくそして鋭い翼で宙を舞い実装石の胴体を一瞬でバラバラにした。 『デギャアアアアアアアアアアアア!!!!!体が!体が千切れたデスウウウ!!』 かつて無い程の激痛が実装石を襲う。実装石には手も足も胴体さえもつながっていない。残っているのは頭だけであった。 普通の生き物ならはとっくに即死しているのだがが、実装石の生命力は生物の中では群を抜いて凄まじく、 頭だけになったくらいではそう簡単に息絶えない。半日程度ならば生きながらえる生命力を持ち合わせている。 「よく出来ました。流石俺の娘だね。」 男は笑顔で仔実装燈の頭を撫でる。仔実装燈も男に褒められてうっとりとしながら素直に頭を撫でられていた。 「にゃ〜ん♪」 そこに実装石に付けられた傷もすっかり癒え、元気一杯な仔猫が姿を現した。 『お父様?この仔は一体誰ルト?』 初めて見る猫の姿に興味を引かれる仔実装燈。 「ああ、この仔猫は俺が拾ってきたんだ。銀ちゃんより少しお兄さんかな。名前はマイケルって言うんだよ。」 『ふ〜ん、お兄様ルト〜』 「仲良くしてあげてね。」 『分かりましたルト、お父様』 「にゃ〜ん♪」 片手で仔実装燈を抱き上げ、もう片手で仔猫を抱き上げて、男は優しく微笑んだ。 『ご・・・主人・・・様・・・助けて下さいデス・・・・・助けて・・・助けて・・・』 男は仔猫を床に降ろすと、バラバラになった実装石と抜け殻のようになった仔実装をビニール袋に詰め込んだ。 そして、実装石の詰まったビニール袋を生ゴミ用の袋に投げ入れると、近所のゴミステーションへと運んでいく。 『デ、デエェェェ・・・ご主人様・・・助けて・・・助けて・・・デス・・・』 男はゴミステーションに着くと、電柱目掛けてポイとゴミ袋を投げ捨てた。 「さて、それじゃあ銀ちゃん。ご飯食べた後、お風呂に入ろうか。あ〜そういえば、マイケルもそろそろ洗ってあげないとな。」 『お父様ぁ〜大好きルト〜♪』 男と仔実装燈と仔猫は幸せそうに去っていった。 『助けて・・・助けて・・・助けて・・・助けて・・・』 ゴミステーションには実装石の悲痛な叫びだけがこだました。 ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ 『デ・・・スゥ〜ン・・・ご主人様・・・とても・・・優しいデスゥ・・・』 ゴミ収集車が次々生ゴミを回収してゆく。 ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・ 『デエェ・・・ご主人様と・・・私と・・・あの仔・・・3人で・・・とっても幸せ・・・イッパイデスゥ・・・』 バラバラにされゴミ袋の中に仔実装の亡骸と共に詰め込まれ、 意識が朦朧となって幸せな夢想に耽る今にも息絶えそうな実装石を グシャッ!バキバキッ! ゴミ収集車が無惨にも押し潰した。 −終− ※ こんにちは。最後まで読んで頂いてありがとうございます。 初スクな上に文章とか殆ど書いた経験がないので、文体とか表現方法とか会話の流れとかムチャクチャかもしれません。 実装燈は一応自分の知っている設定通りに表現したつもりなんですが、 実装歴が短いもので変な設定があったらごめんなさい。 実装燈の鳴き声は「ダワァ〜」と「ルト〜」のどちらにすべきか迷ったんですが、 どうやら「ルト〜」が主流のようなのでこちらにしました。 こんな作品ですが、楽しんで読んでもらえれば幸いです。
1 Re: Name:匿名石 2024/03/08-08:21:45 No:00008869[申告] |
実装だけが不幸になる話大好き |
2 Re: Name:匿名石 2024/03/08-09:31:15 No:00008870[申告] |
本人に落ち度はないが存在自体が罪なので惨死する黒髪いいね |
3 Re: Name:匿名石 2024/03/08-09:37:40 No:00008871[申告] |
仮にも自分の仔だから直には手を下せない男は優しいな
実装燈も良いね |
4 Re: Name:匿名石 2024/03/08-11:16:22 No:00008872[申告] |
糞実装と糞仔実装が悲惨な目にあっててスカッとするな
やっぱ実装石スクの基本はこういうのだよね |
5 Re: Name:匿名石 2024/03/09-15:27:01 No:00008878[申告] |
手を下すのは躊躇するのに虐待したり他の者にやらせる所に人間の業が出てて良い |
6 Re: Name:匿名石 2024/03/09-17:12:57 No:00008879[申告] |
娘に罪はないでしょうが…!パパを慕っていたのに可哀想に…!
糞蟲母親で真っ当な制裁と仔で理不尽惨殺が堪能できて良い作品でした |