タイトル:【虐】 実装石の魂の行く末
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:5315 レス数:6
初投稿日時:2006/10/06-14:10:29修正日時:2006/10/06-14:10:29
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「デス!デジャアアアアアアアア!」
一匹の蟲、実装石が泣いている。
子を殺され、自身もじわじわとなぶり殺しにされ、殺された。
その理由も全くの不幸というものだった。
家族そろって人間のいない山の方に移動する旅の途中に人間を怒らせた同属に巻き込まれたのだ。
当の実装石はあっさりと殺されたが、仲間だと思われたのか、彼女等も人間に捕まり殺された。
まず子を一匹ずつ苦しむようにじわじわと殺された。
その死に様を見せ付けられつつ自身も虐待された。
毛を引きちぎられた、
針で刺された、
千切られた、
切られた、
その他あらゆる拷問の末に偽石を自ら砕きやっと絶命した。
そう、この実装石は死後に自身の生の苦痛を悲しんでいたのだ。
「どうして・・・どうしてデスゥ・・・・私はニンゲンさんに失礼はしていないデスゥ。汚したりしていないデスゥ・・・・それなのに実装石というだけでどうして・・・・・・」
振り返れば彼女の実装生は幸せなものではなかった。
野良として生まれたが、実装石としてはありえないほど賢く冷静だった為に華族に疎まれ放逐された。
その後公園で暮らせるはずもなく、雑草を喰らい、通常の三倍の時を経てやっと成体になった。
そして愛護派の人間に運良く飼われたが、その愛護派も虐待派の圧力で破産に追い込まれ自殺。
もうここでは暮らせないと悟り旅に出たが遂に殺された。
細かく上げればきりがないがまさに苦痛の連続であった。
「デスゥ・・・・考えてみれば現世なんて何の未練もないデスゥ・・・死んで天国に行く方が幸せというものデスゥ」
死後に悟りを得る実装石。
「でもここは何処デスゥ?」
周りを見渡してみるがまるで森の中だ。
まるでというのは森特有の青臭い臭いを感じないからだ。
そして何よりあまりにも静かだ。
そんな中で何か聞こえないかと耳を澄ます実装石。
「?あちらからほんの僅かに何か感じるデスゥ」
その方向に歩いていく実装石。
死んだ後もやっぱり動きはトロイ。
「!」
森の中にある広場。
そこに一軒の大きな山小屋(ログハウス)があった。
とはいってもとても大きい。
「ニンゲンがいるデスゥ?」
ちょっと緊張する実装石。
しかし・・・・
「恐れる理由なんてないデスゥ!だってとっくに死んでいるデスゥ」
傍から見ればコントのような理由で納得する実装石。
とてとてとログハウスに近づいていく。
「ごめんくださいデスゥ」
もう死んでいるとここまで気が大きくなるのか、まるでご近所さんであるかのようにドアをノックする実装石。
しかし反応が無い。
「あの・・・・デスゥ?」
キイ・・・
簡単にドアが開いてしまった。
鍵を掛けていないどころの話ではない、鍵自体がこのドアについていないのだ。
「無用心デスゥ・・・・まるで・・・ご主人様みたいデスゥ・・・・グス・・」
僅かな間とはいえ自分を飼ってくれた飼い主を思い出す。
お人よしで性善説を信望しており、世の中「話せばわかる」「助けを求めれば助けてくれる」と信じていた飼い主。
しかし現実は非情だった。
実装石を飼っているというだけで周囲の人間は距離をとった。
その上虐待派に目をつけられた。
虐待派自分達を苦しめる卑劣な生き物。
彼らは虐待派同士で徒党を組み、組織化して愛護派を追い詰めていく。
金と人と物、集団組織化した故の社会的影響力。
かつての愛護派とは違い圧倒的な集団性により凶暴化した彼らは人の心など持たない。
愛護派であるというだけでありとあらゆる圧力を受け、骨までしゃぶられる。
やくざとて虐待派の組織には近寄らない。
彼らにとっては暴力は商売に過ぎないが、虐待派にとっては信仰なのだ。
関わるのは愚か者だ。
その彼らに目をつけられた飼い主は会社を失い、社会的信用を失い、何よりも希望を失った。
「サイムセイリ」といって飼い主の遺品まで奪った虐待派のあの悪魔のような目を忘れられない。
頭を振り、忌まわしい記憶を頭から追い出そうとする。
「もう終わった事デスゥ・・・・虐待派とももう会うことはないデスゥ」
キイ・・キイ・・・
何かが軋む音がする。
誰かいるのだろう。
「お邪魔しますデスゥ」
一応声を掛けて中に入る実装石。
奥にはロッキンチェアに腰掛ける老人の姿があった。
老人とはいっても弱弱しさは感じられない。
むしろ内側から何か得体の知れぬ力すら感じる。
ふと老人がこちらに気づいた。
「おや?何で糞蟲がここにいるのかな?何処から迷い込んだのかな?」
「!」
糞蟲・・自分達への最大の蔑称の一つ。
この老人は虐待派?
ここから逃げないと!
踵を返そうとするが何かの影が立ちふさがる。
見るといつの間にやら実装石がそこにいた。
ただし、実装石といっても自分達とは違う。
体躯は若干スマートであり、特有の臭いがしない。
何より特徴的なのがその目である。
眼球があるのだ。
実装石にも目ぐらいある。
しかし自分達の目はガラス球のような目だが、相手のは明らかに眼球がある。
すぐに気づく。
「こいつは似て非なる物である」と・・・・
「“実装石”そこの糞蟲を捕らえて」
間髪いれず“実装石”の手が伸びて捉えられてしまう実装石。
言いにくいので、最初からいたのを“糞蟲”
この家で現れた存在を“実装石”
と仮称しておこう。
(勘のいい人はもうこいつが何か解ったよね)
「放すデスゥ!止めるデスゥ!」
もがいて逃げようとするが動けない。
自分達と同じく物を掴むには適さない筈の腕で確実にホールドしている。
人間が見れば「掴める筈がない」と訝しがるだろう。
「落ち着きなさい糞蟲、どうやってここに来たか知りたいんだ」
老人がパイプを吹かし問いかける。
「何の事デスゥ?気が付いたらここに居ただけデスゥ」
この老人は何を聞いているというのだろう。
「いや、君達は死ねばすぐに生まれ変われるように作っておいた、この“領域”に到達する事はありえない」
解らない事を言う老人。
「でも自分はここに居るデスゥ・・・・・!・・・・作った?」
あるフレーズに反応する糞蟲。
「ああ、君達を作ったのはワシだからね」
あっさりと答える老人。
「私を作った・・・・デスゥ?」
何か聞いてはいけない事を聞いたように強張る糞蟲。
「違うよ、君を捕まえている“実装石”も私が作った。その後に実装紅、実蒼石、実装燈、実装雛、君達糞蟲、実装金、薔薇実装、を作った。つまり実装シリーズは私が作ったんだよ。」
それはつまり・・・・・・・
「神様デスゥ・・・・・・」
ポカーンとした顔をする糞蟲。
「ははは、そんな上等なものじゃあないよ、君達に限定するならばそうとも取れるだろうけどね」
パイプの灰を落とし、新しい葉を詰めながら言う老人。
「ああ紹介が遅れたね私は・・・・・・」
!
この老人が何かをした。
しかし何をしたかは解らない。
ただし、頭の中にイメージが伝わってくる・・・・この老人は・・・・・
「あなたは一人の存在ではないデスゥ、あなたも「概念」デスゥ!だから名前もたくさんあるデスゥ・・・「」「としあき」「無職」色々デスゥ。」
それを聞いてにこりと笑う老人「」
「今何をしたデスゥ?頭に直接イメージが沸いたデスゥ!」
先程の違和感を問う糞蟲。
「直接イメージを送り込んだ。面倒だからね」
まるで極普通の事だとでも言うように答える老人「」
「・・・・じゃああなたが私を作ったデスゥ?」
「正確には君達糞蟲をだけどね」
撃てば響くように答える老人「」
「何故デスゥ!どうして私はこんなふうデスゥ!そのせいで私達は苦しむデスゥ!幸福を得るのは天文学的確率デスゥ!それだけの力がありながらどうしてデスゥ!!」
感情を爆発させて怒鳴る糞蟲。
自分達をこのような形にし、苦しい生を押し付けた存在が目の前に居る、冷静で居られるはずもない。
「愛される存在を自分達で作り出したかったんだよ」
パイプの葉を炙りながら答える老人「」
「嘘デスゥ!私達は嫌われ者デスゥ!汚いといって嫌われる、性根が腐ってると嫌われる、醜いと嫌われる、何処が愛される存在デスゥ!!!」
その両目から血の涙を流して吼える!
「そうではない、君達が糞蟲であるおかげで他の実装シリーズが愛される、最初の実装石もカオスとして愛される。素晴らしいではないか」
ふう
支援を燻らせる老人「」
視線は既に糞蟲から外れている。
「・・・・・・じゃあ何デスゥ・・・私は他の実装の当て馬になる為に存在するデスゥ?」
震えながら声を絞り出す糞蟲。
「その通りだよ。いやそれだけではない、多くの「」達を実装石に引き止める役割を担っているではないか!忘れられれば即消滅するのだ。それを避け得る事ができる素晴らしい立場だよ。」
にっこりと笑いながら答える老人「」
「それならとっとと滅びたいデスゥ!苦しんで死んで、生まれ変わって、存在する事自体が私達にとって地獄デスゥ!いやデスゥ!もう嫌デスゥ!!」
手足をばたつかせてパンコンしながら悶える糞蟲。
「まあまあ、「」達に忘れられるまで頑張ってくれ。様々な世界で、様々な環境で」
近くのテーブルに置いてあったブランデーを飲み干す老人「」
「嫌デスゥ!生まれ変わりたくないデスゥ!ここに居るデスゥ!!」
何とかここにおいてもらおうと血涙を出しながら訴える糞蟲。
「嫌だよ、それにこの子達もそろそろデビューさせる予定だし」
ガチャリ
扉の向こうから二体の実装が現れる。
「この子は綺羅実装、カオスの流れを汲んだ強力な実装だ」
薔薇実装に似た別の強い何かが前に出る。
「この子は実翠石、君達糞蟲のデータを反面教師にして作り上げられた愛される実装だ」
実装石と同じ緑色の服を着ているが、その服には品があり容姿も愛らしい。
「冗談じゃないデスゥ!!今までよりももっともっと苦しい世界になるデスゥ!!嫌デスゥ!!」
生きていればとうの昔に偽石を自壊させている処だろうが、既に死んでいる糞蟲がこれ以上死ねる筈もない。
「“実装石”飲み込んで輪廻の輪に戻してあげなさい」
糞蟲を掴む手を上に持ち上げて口を少しづつ大きくしていく。
“実装石”名物巨大な顎だ。
「嫌デスゥ!もう苦しむのは嫌デスゥ!絶望するのは嫌デスゥ!他の何かの為の捨石になるのは嫌デスゥ!生きるのは嫌デスゥ!」
泣いて懇願する糞蟲。
「そう悲観するほどでもないよ、馬鹿な愛護派に飼ってもらえるかもしれないし、それに他にも・・・・・」
バクン!
噛まずに飲み込む“実装石”
老人「」が言い終える前に送られてしまった。
「ではこの子らも」
紫煙を実翠と綺羅に吹きかけると彼女らの姿が消えていく。
「これであの“世界”に送られる。どうか素晴らしき生を・・・・・」
糞蟲には決して祈られる事のない祈りが彼女達に与えられる。
だからといってこれから確実に幸せになれるとは限らない。
愛護派に疎まれ糞蟲の餌食にされるかもしれない。
そもそも存在を無視されて消えていくかもしれない。
実装の中で最も愛されているのは所詮「糞蟲」に過ぎないのだ。
虐待派は自身の攻撃性をぶつけ、愛護派は自身の薄っぺらい偽善に満足する。
望まれる事で存在できるものの中で幸運な存在といっていい。
大多数は一瞬登場して消えていくだけなのだから。
「やれやれ、糞蟲とはまさに贅沢な糞蟲だな」
そして先程“糞蟲”を飲み込んだ“実装石”も音もなく退出する。
「また思索にふけるとするか・・・・・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ある公園
腹を大きくし親糞蟲が胎教の歌を歌っている。
彼女は気づいていないがそれを聞きつけた虐待派が怒りを浮かべて歩いてきている。
「生まれるデスゥ、人生は楽しいデスゥ、ニンゲンを奴隷にして楽しく暮らすデスゥ」
罰当たりな歌を歌い胎教を行う親糞蟲。
程なく人間に始末されるであろう・・・・・しかし、
ドス!
彼女の腹から刃(?)が現れる
「デギャ!」
後ろを見る。
何も居ない。
ちなみに人間はまだここに到着していない。
グググ・・・・・
刃がゆっくりと上に上がっていく。
「デギャアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・・・・」
腹を“内側”から裂かれる激痛と恐怖に絶叫する親糞蟲。
必死に両手で刃の上昇を食い止めようとする。
しかし速度が若干落ちるだけで葉の歩みは止まらない。
既に裂かれた部分からは首を切られた子実装や親指がぽろぽろと零れ落ちる。
「デジャアアアアアア!!赤ちゃんが!赤ちゃんがー!」
既に両手も半分が切り裂かれている。
ややあって、
ズバッ!!
頭まで裂かれる親糞蟲。
ばたりと倒れる。
そしてその中からむくりと何かが起き上がる。
(実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、実装石は嫌デスゥ、)
「実装石は皆殺しポクー!!」
生まれ出でたのは緑の害虫ではない、蒼い狩人、実蒼石!実装石の対の存在である実装石ハンターの天敵種。

がさがさ・・・・・・

横を見ると一人の人間がこちらを見下ろしている。
「おっ実蒼石じゃん!もしかして野良か?だったら家に来いよ。糞虫が増えて困ってたんだ。家族みんな大歓迎だよ」
先程までとはうって変わってにこやかになる虐待派。
虐待派の特徴、対象外には意外と優しいという属性が発揮されているようだ。
「ポクーポク」
ぺこりと礼をする実蒼石。
「決まり!」
手をつないで新しい主と共に帰路に着く。
こうして少しづつ実蒼石は増えていくだろうか?
これが老人「」の言いたかったもう一つの道であろうか?
それを知るのは木の上から一部始終を見届けた“実装石”(「初期型」もしくは「カオス」)ばかりなり。

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1 Re: Name:匿名石 2016/12/04-14:18:25 No:00003033[申告]
スリザリンは嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だスリザリンは嫌だ
2 Re: Name:匿名石 2016/12/04-19:08:48 No:00003044[申告]
実質、始原で中心だった実装石ぐらいしか残ってない現状を考えると残った実装石こそが勝者なのかね
たまには愛護スクもあるし
愛誤派成敗の前振りとはいえ贅沢できる場合もあるし

※1
ポッターに吹いた
このスクが書かれた頃って原作はもう終わりが近づいてたと思うけど
映画はまだ前半の巻をやってた頃だっけ
3 Re: Name:匿名石 2016/12/04-22:49:42 No:00003054[申告]
実蒼くらいは復活させたいけど自分の拙いというかろくに書いたこともない腕じゃハンター兼嫉妬され役ぐらいにしかできそうもない
かと言って虐待される役にするぐらいなら復活しない方がマシだし難しいもんだ
4 Re: Name:匿名石 2024/01/01-15:05:40 No:00008580[申告]
18年して割とマジで他実装とか絶滅したに等しくなっちゃった
5 Re: Name:匿名石 2024/01/01-15:15:44 No:00008581[申告]
ごめん絶滅は言い過ぎた
6 Re: Name:匿名石 2024/06/02-03:40:30 No:00009155[申告]
他実装に再びフォーカスが当たってきた昨今
実装の明日は厳しい
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