タイトル:【虐他】 実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ2
ファイル:実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ2.txt
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初投稿日時:2025/02/24-17:04:40修正日時:2025/02/24-17:04:40
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実翠石との生活Ⅲ 短編まとめ2
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安易な餌やりは止めましょう


「またやってる・・・」
思わずため息混じりの声が出る。
実翠石の常磐を連れたお出かけの帰り道。
通りかかった公園では、愛護派と思しき中年女性が数十匹の野良実装達(その多くは仔実装以下の個体だった)に向かって、実装フードやら金平糖やらを撒いていた。
『ニンゲンさん、ありがとうデスゥ〜!』
『コンペイトウテチ!アマアマテチ!』
『これで今日も生きられるデスゥゥゥッ!』
野良実装達はデスデステチテチ鳴きながら、ある個体は必死になってフードを拾い集め、ある個体はこれまた必死になって口に押し込んでいる。
当の愛護派としては良かれと思ってやっているのだろう。
昨年の短すぎる秋は、野良実装達から冬籠りの準備時間を容赦なく奪っていった。
困窮する野良実装達を見るに見かねて、こうして餌を撒いているのだろう。
だが、その餌やりが野良実装の個体数を増加させ、さらなる困窮へと追いやることにまでは、きっと想像が及んでいないのだろうな。
「お姉さま」
私と同様に複雑な表情で公園を見ていたはずの常磐が、くいくいと私の腕を引っ張る。
「はい、あーん、です」
カイロ兼おやつとして買った鯛焼きを差し出されたので、そのまま口に含む。
口の中に広がるつぶ餡の甘みに、不思議と気分が和らぐのを感じた。
「そんなお顔をしてたら幸せが逃げちゃうです。お姉さまには、笑っていてほしいです」
そう言って笑顔で腕に抱き着いてくる常磐に、私は身も心も温かくなるのを感じていた。


『デギィィィィィィッ・・・!』
そんな常磐と主人の様子を、野良実装達は怒りを滾らせながら睨みつけていた。
暖かく綺麗な服に身を包み、甘い香りを漂わせる食べ物を与えられ、主人であるニンゲンにじゃれつくヒトモドキのデキソコナイ。
汚れやほつれの目立つみすぼらしい実装服に身を包み、ニンゲンからの施しで何とか食いつなぐだけの、貧しい野良生活を送らざるを得ない自分達とは雲泥の差だった。
出来ることなら今すぐでも飼い主のニンゲン共々糞まみれの
ドレイにしてやりたかったが、両手に抱えたフードやコンペイトウを放り出すわけにはいかなかった。
そうした現実は、野良実装達のプライドをズタズタに傷付けていた。


翌日。
愛護派の中年女性は、いつもと同様に徳用実装フードと金平糖を集まっていた野良実装達に投げ与えたが、今日に限っては何故か食いつきが非常に悪かった。
いつもは媚びへつらい、這いつくばりながらフードや金平糖を口にしていた野良実装達が、撒かれた餌に見向きもせずに中年女性を睨み付けている。
不思議に思った中年女性はリンガルを通して話しかけた。
「どうしたの?せっかくのご飯なのに食べないの?」
中年女性の言葉に触発されたのか、野良実装達は口汚く喚き始めた。
『もっとウマいもの持って来いデシャアァァァッッ!!』
『気の利かないクソニンゲンテチ!』
『こんなもの食えるかテチャァァァァッ!』
撒いた餌を投げ捨てるならまだしも、これみよがしに踏み潰したり、あまつさえ糞をひり出してみせたりと、昨日までの態度を一変させた野良実装達。
口汚く唾を飛ばし、怒りで顔中に皺を寄せて歯を剥き出す地獄の餓鬼を思わせる有様に、さすがの愛護派でも愛想が尽きたのか、中年女性はそそくさと公園を後にした。
野良実装達としてはヒトモドキにさえ与えられていたものを当然の権利として要求したに過ぎなかったのだが、そんな事など中年女性は知る由もなかった。
たとえ知っていたとしても、対応は変わらなかっただろうが。


唯一の命綱だった愛護派からの施しを自らの手で断ち切った野良実装達は、飢えと寒さで瞬く間にその数を減らしていった。
『・・・おなか・・・すいたテチ・・・』
『コンペイトウ・・・食べたいテチ・・・』
『たべないでテチ・・・たべちゃいやテチ・・・』
衰弱して動けなくなった個体から共食いの対象とされるが、唯一の食料である同族すら間もなく尽きようとしている公園に、救いの手が差し伸べられる事は二度となかった。


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他人の物を無闇に欲しがってはいけません


「んーっ、甘くておいしいですぅ!」
実翠石の常磐を連れてのお出かけ中。
冷えた身体を温めようと、カフェで買い求めたストロベリーマキアートに口を付けた常磐が瞳を輝かせた。
ふわりと漂う苺の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
私も同じのを頼めばよかったかな、とキャラメルマキアートに口を付けながら思った時だった。
『チシャァァァァッッ!!』
商店街の街中華店の前で、私達の行く手を遮るように、四つん這いになった野良と思しき仔実装が歯を剝いて威嚇してきたのだ。 
よほど苦労していたのか、実装服はところどころほつれ破れて、酷くみすぼらしい有様となっている。
『チシャァッ!ヂシャァァァァ!』
必死に鳴き声を上げて立ち塞がる仔実装を前に、私と常磐は足を止めざるを得なくなる。
「お姉さま・・・」
困ったように私を見つめる常磐だったが、私とてどうすればよいか迷うところである。
まさか常磐の前で踏み潰す訳にもいかないだろう。
かといって、放っておいて臭いを辿って家まで付いてこられるのも避けたい。
さてどうしようかと悩んでいる間に、事態はあっさりと決着がついた。
街中華店のアルバイトさんと思しき若い女性が店から出てきて、野良仔実装をトングで掴み上げるとゴミ袋に放り込んだのだ。
アルバイトさんはこちらに小さく会釈すると、そのままゴミ袋を持って店の裏手へと去っていった。
店前で野良実装が騒いでいる状況は、飲食店としては看過し得なかったのだろう。
思わず私と常磐は顔を見合わせた。
「・・・行こっか」
「はいです・・・」
野良仔実装はおそらく気の毒なことになるだろうが、私としては手を汚さずに済んで大変ありがたかった。


常磐とその主人は知る由もないが、この仔実装は中々に過酷な日々を送っていた。
短すぎる秋のため冬籠りの準備が間に合わなかった野良実装の一家が、商店街で託児に失敗した挙げ句に怒り狂った人間に虐殺される。
この仔実装は、そんな冬場にはどこにでも見られる光景の、
その生き残りだった。
蹴り潰され、踏み潰されて染みと化す母実装や姉仔実装達を尻目に、蛆実装を抱えた妹仔実装の手を引いて、命からがら逃げおおせたのだ。
だが、仔実装姉妹の苦難はそれからが本番だった。
親実装の庇護なく仔実装が生き残れる可能性は限りなく低い。
それでも仔実装姉妹は懸命に生きた。
エアコンの室外機の下に潜り込んで雨風をしのぎ、虫の死骸とドレン水で飢えと渇きを満たし、姉妹寄り添って互いの体温で温め合う日々。
そんな日々すら長くは保たず、妹仔実装と蛆実装の命は尽きようとしていた。
『妹チャン、蛆チャン!しっかりするテチ!』
『テ・・・テチィ・・・』
『レヒャ・・・レッ・・・』
衰弱が激しく、返事すらまともに出来ず横たわる妹と蛆。
何か食べる物を探さなくてはと室外機の下から這い出たところで、仔実装は見かけてしまった。
あの忌々しいヒトモドキのデキソコナイである実翠石を。
人間に飼われている証拠に、左手中指に煌めく指輪。
暖かそうな綺麗な服に身を包み、ひどく甘くて美味しそうな飲み物を労せず口にしている。
それに対して自分達はどうなのか。
ほつれや破れが目立つ実装服は、洗濯など出来ず汚れて異臭を放っている。
匂いだけでアマアマだと思える美味しそうなものなど、これまで口にしたことなど無い。
そして、ママもお姉チャン達もみんなカナシイことになってしまったのに、あの肉人形はニンゲンに飼われて見るからにシアワセに過ごしている。
デキソコナイの分際で恵まれた生活を送っているなんて許せない!
ヒトモドキの持ってるアマアマを分捕って、妹チャン達に飲ませてあげよう!
そう思うが早いか、仔実装は実翠石達の前に飛び出して威嚇し始めた。
『そのアマアマを寄越せテチャァァァァッ!!』
立ち止まったヒトモドキに向かって、仔実装は更に威嚇を続ける。
『そのアマアマがあれば妹チャン達が助かるテチィ!!デキソコナイはそいつを置いてけテチャァァァァッ!!』
精一杯威嚇を続ける仔実装だったが、それ故に自身に向かってくる脅威に気付けなかった。
『テチャッ!?』
何かに挾まれる感触と浮遊感の後、仔実装はゴミ袋の中に放り込まれた事に気付く。
『テ、テェッ?』
訳が分からぬままいるうちに、ゴミ袋の上からニンゲンの足らしいものが降ってきた。
『ヂッ!?』
踏み潰された瞬間、全身を襲う激痛と、口と尻から体内の物が全て押し出される不快極まる感触、そして命の源である偽石が割れる苦しみを同時に味わって、仔実装は死んだ。
妹仔実装と蛆実装も、さほどの間を置かず、栄養失調により仔実装の後を追うこととなった。


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福は内、と言うけれど・・・。


今日は節分、というわけで、近所の神社では節分祭りが行われていた。
年男や年女といった方々が、参拝者に豆やらお餅やら福銭やらを投げてくれるイベントもあるため、そこそこの賑わいを見せている。
私も実翠石の常磐を連れて来たのだが、これがどうしてなかなか楽しい。
「わぁ〜い!」
小さい子供達に混ざってはしゃぐ常磐の様子が微笑ましくて、これだけでも来た甲斐があったというものだ。
「これ、どうぞです」
「えっ、あっ、ありがとう!」
なかなかキャッチできずに悲しそうな顔をしていた女の子にに、常磐が自身がキャッチしたお餅を分けてあげるなんて一幕もあった。
そんな良い娘の常磐には特別なご利益があったのか、ゲットした福銭が商品券三千円分とお菓子詰め合わせに交換できたなんて嬉しい誤算まであったりした。
「すごいわね、おめでとう、常磐」
「お役にたててうれしいです、お姉さま!」
抱きしめて撫でくり回すと、常磐もぎゅっと抱き締め返してくる。
やはり常磐は私にとって幸福の遣いなのかもしれないな、などと常磐の体温を楽しみながらしみじみ思う私だった。


節分祭りが終わり、人気の失せた会場で、一匹の野良実装が項垂れていた。
その足元には、ニンゲンに踏み潰されて染みと化した娘だったものがあちこちに広がっている。
『ヒトモドキの分際でナマイキテチ!』
『媚びるしか能がない肉人形なんてブッコロしてやるテチ!』
『ワタチタチにもウマウマよこせテチャァッ!』
常磐がニンゲンに混ざってはしゃいでいるのを見て激昂した娘達は、無謀にもニンゲンがひしめいている会場に突っ込んでゆき、
『チベッ!?』
『テベチャァッ!?』
『ママァ!助けテチ!たすテヂベッ!?』
ニンゲン達に意図せず無惨に踏み潰されてその命を散らしていった。
冬の寒さにもめげず、娘達を養うために餌取りに精を出し、疲れて昼寝している合間の出来事だった。
目を覚まし、姿の見えない娘達の臭いを辿った先に広がる赤と緑の汚い染み。
それが愛情を込めて育てて来た娘達の成れの果てだった。
遠目にニンゲンの親子が抱き締め合っているのが見える。
野良実装が抱き締めるべき、幸福の象徴のはずの娘達は、もうどこにもいなかった。


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シアワセになれるはずだった蛆ちゃん


『えっへへ〜』
ちょっぴり胡散臭い顔付きをしたウサギのぬいぐるみを抱き締めて、実翠石の常磐はご満悦だった。
お出かけ中に通りかかった小さな玩具店、その店先で飾られていたぬいぐるみに、常磐の視線が釘付けになっていた。
いつも良い娘にしている常磐にたまにはプレゼントでも、と考えていた矢先だったので、私としてもタイミングが良かった。
『ありがとうです、お姉さま!』
『気に入ってくれたようで、私も嬉しいわ』
眩さすら覚える程の常磐の笑顔に、私もつられて笑みが零れる。
こういうささやかな幸せを、常磐と一緒にちょっとずつ増やしていきたいな、などと思う今日この頃だった。


『テヂィィィィィッ・・・!』
そんな常磐達の様子を、飼い仔実装のテチミは飼い主の持つペット用キャリーバッグの中から憎々しげに睨み付けていた。
『おねチャ、どうしたんレフ?おカオがこわいレフ〜』
腕に抱いていた蛆実装が、不安そうな顔でテチミを見上げる。
この蛆実装、あまり構ってやれなくて寂しそうにしているテチミに、情操教育も兼ねてと飼い主が先ほどペットショップで買い与えたばかりのものだった。
『今日からワタチがお姉チャンテチ!』
『蛆チャうれしいレフ〜、おねチャ、だいすきレフ〜』
そんな微笑ましいと言えなくもないやり取りを交わしたばかりだというのに、テチミの内心は実翠石への嫉妬と憎悪ではち切れんばかりになっていた。
あのデキソコナイはナマイキにも綺麗な服で着飾っていた。
ワタチはいつも同じ服なのに。
あのヒトモドキはクソニンゲンと手を繋いでもらっていた。
ワタチはゴシュジンサマにあんまり構って貰えないのに。
そして何より、あのニセモノはあんなに可愛いぬいぐるみをプレゼントされていた。
ワタチには蛆ちゃんだったのに!
ほんの数十分前まであれ程可愛く思えていたはずの蛆ちゃんが、今のテチミにはひどく忌々しく思えてならなかった。


飼い主の家に帰って来た後も、テチミの嫉妬と憎悪は治まるどころかいや増すばかりだった。
飼い主はそんなテチミの様子をいぶかしみながらも、蛆実装と一緒に住処の水槽に移してやった。
『おねチャ、さっきからどうしたんレフ?蛆チャ、プニプニしてほしいレフ〜』
そんな蛆実装らしい言動が、テチミにはとうとう我慢ならなくなった。
プニプニしてほしくて仰向けになっていた蛆実装の腹を、テチミは思い切り踏み付ける。
『レピャァッ!?』
『うるさいテチ!うるさいテチ!高貴なワタチには蛆ちゃんなんてふさわしくないテチィッ!』
非力な仔実装の踏み付けとはいえ、それ以上に脆く弱々しい蛆実装には十分な威力だ。
何度もふみつけられて内臓が破裂し、口と総排泄孔の双方から汚物を吐き出す蛆実装。
だが、テチミは容赦無く踏み付け続け、
『レピャッ』
水風船が破裂するようにして蛆実装は死んだ。
テチミは肩で息をしながら、蛆実装だったものを見下ろす。
憎悪は治まるどころか、別の目標に向かいつつあった。
ゴシュジンサマ、いや、蛆ちゃんなんて気の利かないものを寄越してきたバカなクソニンゲンにも思い知らせてやらなくては。
テチミは驚いた顔で自分の方を見ている飼い主に、歯を剥いて甲高い鳴き声を上げた。
『このバカニンゲン、間抜けな顔をしている暇があったら高貴で美しいワタチにもっとふさわしいプレゼントを持って来いテチャァァァァァァッッ!!』
テチミの凶行と反抗に対する飼い主の対応は早かった。
『ヂッ!?』
テチミは首を捻られた上で水槽の底に叩き付けられて染みと化し、蛆実装の後を追う羽目になった。
掃除をする気にもならなかった飼い主は、そのまま水槽をゴミに出した。
安くてコミュニケーション出来るなんていっても実装石はろくなもんじゃなかったな。
次のペットは猫にしよう、と考えるテチミの元飼い主であった。

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盗みの報い


今日はバレンタインデーだ。
・・・と言っても彼氏が居ない私には無縁の日、などと片付けるのもつまらないので、せっかくだからチョコ系のスイーツを楽しむ事にした。
「えへへ〜、チョコレートケーキ、楽しみです〜」
近所のケーキショップからの帰り道。
よほどケーキが待ちきれないらしく、ケーキショップを出てからというもの、常磐は終始満面の笑みを浮かべていた。
つられて私まで顔が緩みそうになる。
「おまけももらっちゃったし、すっごくうれしいです!」
常磐が持つ紙袋には、ケーキショップでもらったおまけ、というか試供品が入っていた。
「あ〜、うん、そうだね・・・」
試供品というかジョークグッズに近いそれに、思わず苦笑が漏れる。
バレンタインらしくチョコレートではあるのだけれど、正直なところ貰っても扱いに困る代物だった。
だが、無碍に断ることも出来ずについつい受け取ってしまったのだ。
まあ、扱いについては後々考えればいいか、などと考えている時だった。
『デギャアアアアアアアアアァッ!!』
物陰から野良と思しき成体実装が一匹、急に飛び出してきたのだ。
その指の無い両手には、錆びた釘のようなものがにぎられている。
「危ない!」
「えっ、わっ、きゃぁっ!?」
咄嗟に常磐の手を引いたおかげで刺されずに済んだが、その拍子に常磐は試供品入の紙袋を落としてしまう。
「デッピャピャピャピャピャピャピャッ!」
成体実装はこちらを嘲るように嫌らしい笑みを浮かべると、常磐が落とした紙袋を拾い上げて逃げてゆく。
「あっ、だめです!返してです!」
追いかけようとする常磐だったが、私はその手を離さずに引き止めた。
「常磐、危ないわよ。それに、ケーキの方は無事だから」
本命のチョコレートケーキは私が手に下げていた袋に入っている。
試供品のほうは、ケーキショップの店員さんには悪いけど、盗られても惜しくはなかった。
そうでなくとも、野良実装が触ったものは食べる気など起きないし。
「お姉さま、ごめんなさいです・・・」
「大丈夫、大丈夫だから気にしないで」
しょんぼりする常磐を慰めながら、私は常磐の手を引いて家路についた。


『お前達、帰ったデス!』
常磐から紙袋を奪った野良実装は、仔供達が待つ家に意気揚々と帰り着いた。
『ママ、おかえりなさいテチ!』
『寒い中いつもありがとうテチ!』
『お腹空いたテチャァッ!』
『今日はすごく良い物が手に入ったデス!』
出迎える我が仔達に、野良実装は胸を張って応えた。
街中でたまたま見かけたヒトモドキが甘そうな匂いのする物を持っているのを見て取った野良実装は、不意打ちをかけて見事にそれを奪い取る事に成功したのだ。
産まれてこの方、まともな甘味など口にした事が無い仔供達だ。
きっとすごく喜んでくれるに違いない。
野良実装はさっそく奪った包みを噛み破り、中身をひっくり返した。
中から出てきたチョコレートの粒の甘そうな香りが、野良実装一家の鼻腔を満たしてゆく。
『ママ、すごいおいしそうテチ!』
『アマアマテチ!?アマアマテチ!?』
『早く食べたいテチャァッ!』
『落ち着くデス。たくさんあるから一緒に食べるデス』
野良実装は仔供達に一粒ずつ配り、仔供達に食べて良いと告げた。
『いただきますテチ!』
そう言ってチョコレートを口に含む仔供達だったが、数瞬の後、揃って口と総排泄孔から体内のありとあらゆるものをぶち撒け始めた。
『テヂベチャアアアアアアアアアアアッッ!!??』
『チヒィィィィィィィィィィィィィィィィ!!??』
『テブェォェァアアアアアアアアアアッッ!?!?』
顔面を真っ赤に染めて、指の無い手で口元を掻きむしる仔実装達。
『お、お前達、どうしたんデス!?』
仔実装達がもがき苦しむ様に野良実装は顔を青ざめさせた。
もっとも、原因が分からぬ野良実装に手の打ちようなどあるはずもない。
『ヂッ!?(パキンッ!)』
『テベヂッ!(パキンッ!)』
『チョベッ!?(パキンッ!)』
野良実装が手をこまねいている内に、仔実装達は偽石を崩壊させ、自らぶち撒けた汚物にまみれて死んでいった。
愛する我が仔達のあまりにも唐突で壮絶な最期に、野良実装の思考は完全に停止している。
文字の読めない野良実装が知る由もないことだが、噛み破った包みにはこう書いてあった。
【キャロライナリーパー入りロシアンルーレットチョコレート12個入】
【入っていないのは一つだけ!あなたは生き残る事ができるか!?】


「ほら、常磐、あーんして?」
「あ、あ〜ん・・・」
家に帰っても落ち込んだままの常磐の、その小さく可愛いお口に、私はチョコレートを一粒、そっと含ませてやった。
「んっ、甘くておいしいです〜」
口内に広がる甘味のおかげか、ようやく笑顔が戻り始める。
「ケーキは夕飯の後だから、今はこれで我慢してね?」
頬をちょんとつつく私に、常磐は笑顔を大きくして抱き着いてくる。
「お姉さま、大好きです!」

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1 Re: Name:匿名石 2025/02/24-18:49:58 No:00009530[申告]
もはや常磐は実装石にとって死神も同然…!
2 Re: Name:匿名石 2025/02/25-02:39:07 No:00009531[申告]
ホント千本ノックの如く嫉妬の炎に次々妬かれ散る糞蟲共は誘蛾灯に群がる夏の虫の様で風情すら感じるねぇ
3 Re: Name:匿名石 2025/02/25-17:18:59 No:00009532[申告]
糞蟲達が自滅していく様がたまらなく良い
4 Re: Name:匿名石 2025/02/25-19:48:38 No:00009533[申告]
「見えたらおわり」ぐらいのキャッチコピーでも通じそう
5 Re: Name:匿名石 2025/02/26-17:44:06 No:00009534[申告]
実装石こそ実翠石のデキソコナイだと教えてあげたい
6 Re: Name:匿名石 2025/03/12-08:46:14 No:00009561[申告]
入ってないのは一つだけて普通に地獄やんw
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