「お掃除実装石」 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- 最近は実装石をペットとしてではなく、お掃除係として飼うのが流行っている お掃除とは言っても雑巾で拭き掃除をしたり、掃除機をかけるのではない そんなものは非力で指もない実装石に期待するだけ無駄だ 実装石がお掃除するものは…ウンチである ある男は犬を飼っていた 柴犬(3歳♀)のティンダロスだ 今日も散歩に出かけると、ティンダロスは便意を催し道端にウンチをする 飼い主はさっとエチケット袋を出してウンチを取る…のではなく エチケット袋の中に入っている実装石親仔を取り出す 親はミドリと名付けられたお掃除用実装石だ ペットとしての分類で販売されていたわけではないが、値段的には高級実装石クラスと言えるだろう そしてその仔のテチコ ミドリの手入れによって、どちらも身ぎれいにされている 飼い主「じゃあ今日もキレイに掃除してくれよ。先に帰ってるから」 ミドリ「はいデスおまかせくださいデス。いってらっしゃいませご主人様、ティンダロス様」 テチコ「…」 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- 親のミドリはせっせと犬のウンチを食べ始める アスファルトにこびりついたものもきっちりと舐め取る まるでそこには何も無かったかのように、一片たりとも痕跡を残さないようにする… それがお掃除実装石としての流儀だと教わってきたからだ ミドリ「ふう…今日は多いデスゥ。これは一苦労デス」 口のまわりをウンチまみれにしながらも、せっせと犬のウンチを咀嚼し飲み込んでいく ふと、ミドリは仔のテチコが全くウンチを食べてないことに気づいた ミドリ「…テチコ?今日も食が進んでないようデス。どこか具合でも悪いデスゥ?」 テチコはミドリが飼い主に 「一人で食べるにはウンチの量が多いので一匹だけ仔を産ませてほしいデス」と訴え、 その希望が許可された目に入れても痛くない仔だ 現在では飼い実装に仔は絶対に産ませるなというのが実装石飼育の常識となっており、 今の御時世で仔を設けることができた珍しいケースだろう しかし最近はテチコが食が細くなっていて、ミドリはとても心配していた テチコ「…なの……かしいテチ」 ミドリ「デスゥ?」 テチコ「こんなの、おかしいテチ!犬のウンチを食べるのなんてどうかしてるテチ!具合が悪いのはママの頭のほうテチィ!」 急に怒り出すテチコ… しかしミドリも、テチコが生活に不満を抱いていることには薄々気づいてはいた 困った顔をしながらミドリはゆっくりと優しく諭す ミドリ「何もおかしくは無いデスゥ、ワタシ達は飼い実装という恵まれた地位にいるデス。ご主人様もお掃除をすることを期待して、ちゃんとできたら褒めてくれるデス」 テチコ「…でも、そんなの愛されてるとは言えないテチ!毎日まずいウンチしか食べられないのはもう嫌テチィ!しかもあのクソ犬がウンチを出さない日は何も食べられないテチ」 ミドリ「テチコ!ティンダロス様に何てことを言うデス!」 犬に侮蔑的な発言をしたテチコを、ミドリはバシィ!と叩いた 少し強く叩きすぎたのか、テチコ頬が赤く腫れ上がる 手をあげることなど今まで無かったが、ここで強く躾けないと取り返しのつかないことになる、と ミドリは鼻息を荒くし強気の態度でテチコを見下ろした -------------------------------------------------------------------------------------------------------- テチコ「テ…それでも、ママ…おかしいテチ…犬が家の中で、ワタチ達が庭で飼われてるのもおかしいテチ…」 しかし、頬を抑えながら涙を流してテチコの訴えは続き… 今まで溜め込んできた不満や不安を言葉にしてぶつけていく テチコ「ご主人様も犬は可愛がってるけど、ワタチ達のことは撫でてくれたことがないテチ。これって本当に愛されてるテチ!?」 ミドリ「犬じゃないデス、ティンダロス様デス。それに、ワタシ達はご主人様に愛されてるデスゥ。そうじゃなきゃ名前ももらってないし、オマエを産む許可なんてくれなかったはずデス」 テチコ「嘘テチ」 ミドリ「テチコ…」 ミドリはお掃除実装石として生まれながらに教育をされてきた しかし、テチコはそうではない。ここに二世実装石の教育の難しさがあった テチコ「嘘テチ嘘テチ!ワタチ達は便利に使われてるだけテチ!ワタチは幸せになるために産まれたテチィ!そのために最大限の努力をするべきテチ!」 ミドリ「話はお家に帰ってから聞くデスゥ、まずはこのウンチを片付けてから…」 ミドリがウンチを指し示すと、テチコはテチャアアアと発狂するような声をあげた テチコ「もうウンチを食べる生活は嫌テチィィ!もう我慢できないテチ!すぐ帰ってご主人様に処遇の改善を求めるテチ!最低限、まともな食事と家の中で暮らす事は必須テチィ!!」 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ミドリ「テチコ!待つデス!」 静止を振り切ってテチコが家のほうへ駆け出すと… 仔実装の遅いスピードではあるが、角を曲がろうとしたところで運悪く自転車に轢かれてしまった テチコ「ヂッ」 自転車の男「んだよクソムシが…轢いちまったじゃねえか。汚えな…」 自転車が去っていくと、後には右半身が潰れたテチコが残っていた ミドリ「テチコッ…!」 ミドリは大慌てでテチコに駆け寄る 実装石の生命力は極めて高く、即死でなければ生き残るチャンスはある テチコは半身が潰れており血も多く失っているがまだ息をしており、 家に連れて帰って飼い主に助けを求めれば元通りになるかもしれない ミドリ「…偽石は無事なようデス、すぐに帰って治療をすれば、助かるはずデス…でも…」 ミドリは犬のウンチを食べることを優先した ご主人様の命令は絶対だ 焦りながらも黙々と口に詰め込み、地面に顔をこすりつけて舐め取る テチコ「…ママ…ごめんテチ…早く…助けテチ…痛いテチ…」 テチコは全身を走る激痛と強烈な吐き気の中、反省をした 自分が変なことを言ったから罰があたったんだと… しかし反面、自分が死にかけてこんなに苦しんでいるのに業務を遂行するママに寒気すら覚えた -------------------------------------------------------------------------------------------------------- そしてミドリが10分ほどかけて犬のウンチを片付けると、次はテチコから弾け出た血と肉塊にも目を向ける …あれもキレイにお掃除しなくてはいけないだろう ミドリは地面にこびりついたテチコの肉を食べ、血をすする ミドリ「むしゃ、むしゃ…じゅるる…こ、これは…」 美味い テチコの肉や血はなんて美味いんだ 産まれてからほとんど犬と自分たちのウンチしか食べていないミドリの舌には、麻薬のような味だった テチコ「痛い…寒い…ママァ…」 ミドリは息も絶え絶えのテチコを見て、一瞬考える 考えるが…結論が出るのは早かった ミドリ「これはもう助からないデスゥ、お掃除が必要みたいデス」 テチコ「ママ…?」 ママの口が大きく開き、ぞぶりと音が響き渡ったあとテチコの意識は閉じた…… -------------------------------------------------------------------------------------------------------- そしてミドリは一匹、帰宅する 飼い主「遅かったなミドリ。テチコはどうしたんだ?」 ミドリ「自転車に轢かれちゃったデス。不注意デス。それで宜しければまた仔を産む許可がほしいデスゥ」 ミドリの口や服についてる赤いものと緑のもの…ウンチの色ではない 飼い主はテチコはミドリに「お掃除」されたことに気づくが、それについて特に何も感じることはなかった 所詮お掃除道具だ ミドリはよく働いてくれているし、きちんと犬のウンチの掃除さえしてくれれば問題はない 身銭を切る気はないが、それが定期的なご褒美になるというならそれも良いだろう 飼い主「おぉいいぞ、じゃあ…一ヶ月に一匹だけな。ウンチさえ片付けてくれれば俺はそれでいいんだ」 ミドリ「ご主人様ありがとうございますデス」 そうしてミドリはその後もたくさんのテチコを設け、幸せな飼い実装生活を続けた (終)
1 Re: Name:匿名石 2025/02/14-06:58:52 No:00009517[申告] |
テチコもご主人様に利用されているうちが華だったのに次世代からは母実装に利用されるという
ミドリは自分の裁量の範囲で幸福を見つける事が出来たんだね |