タイトル:【観察】 大分県の実装石
ファイル:敢えて地名は伏せました.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:180 レス数:0
初投稿日時:2024/12/30-02:20:45修正日時:2024/12/30-02:20:45
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大分県の実装石


 大分県に実装石は居ない、これは誰しもが知っている常識である。

 大分県には実装石は住んでいないし、県外から実装石を連れて来てもすぐに死んでしま
う。一時期ネット上で『実装チャレンジ』なる行為が流行ったことがあり、それは県外から
連れてきた実装石が県境を越えてどこまで生存できるか試す模様をネット上にアップする
もので、実装石がパキンするならまだ良い方だが個体によっては派手に爆発四散するその様
は大分県のイメージダウンとして大問題となり最後には県外からの実装石持ち込みが県の
条例で禁止されるまでの騒ぎとなった。因みにエモいコマーシャルで有名な二〇堂という焼
酎で実装臭がこびりついた箇所を拭くと匂いがすぐに落ちる、という豆知識もネットで一
時期流行ったがそれは二〇堂が大分の焼酎だからであり、実装石が直接触れると即死もの
の劇物なので実装石を飼っているご家庭では全くお勧めできない。

 世にネットが普及し始めた頃、『大分県の実装石』という話題が世を騒がせた事があった。
その際、映像や画像も投稿されたこともあったのだが、その後ネット上ではねつ造だと否定
する者、肯定・擁護する者達の喧々囂々の議論が巻き起こり当時の貧弱なネット環境はあっ
という間にダウン。「大分実装はDOSより怖い」と言われるまでとなった大分実装騒動は
某巨大掲示板に於ける「大分実装の話題の書き込みは永久BAN」という不文律が確立され
る事でようやく収束し、その後ネット上から大分実装を語る者も消え何時しかその存在も
忘れ去られた。


 私は大分に知人が居り時々遊びに行っているのだが、その友人が実装石を飼っているとい
う話を聞き最初は私も耳を疑った。だが彼とは学生時代から十数年付き合っている中で彼が
そのような冗談を仕掛けるような人間ではないという事はよく解っており、それでも半信半
疑でその『実物』を見たときは本当に驚いてしまった。

 その実装石は確かに間違いなく実装石であった。が、私が普段目にする実装石とは明らか
に雰囲気が違う。一言で言えば控えめ・・・と言ったところか、人によっては嫌悪感を催すよ
うな押しの強さのようなそういった感じが微塵もないのだ。実際、大分の実装石は総じて大
人しい。鳴き声も成体では「デスゥ・・・」となる鳴き声も「テェスゥ・・・」という感じになり
決して不愉快さを感じさせないし、寧ろ心地よさすら感じさせる。実装石であって実装石で
はないその佇まいはある種のカルチャーショックすら覚えた。

 飼育環境も独特ともいえる実装臭の為、ゲージ飼いが基本とされる通常の実装石に対して
大分の実装石は家の中で普通に放し飼いだ。餌も実装フードを与えられるものの、通常の実
装フードは違った製造管理をされたものを与えられているとの事である。外に出て行っても
通常の実装石の場合は実装石同伴では入店できない施設や店舗などが少なからず有る事に
対しこちらではほとんどフリーパスのような状況であり、通常の実装石の優良個体レベル
がこちらではごく平均的なレベルといった感じだ。

 ただ不自由な部分もあり大分の実装石は土地を離れて遠くには行けない。正確に言えば、
友人が居住しているN市とU市の辺りから他の地域には出られないとの事であり、地域の
言葉で “わらべさま(この辺りの実装石はこう呼ばれる)には旅をさせるな、川越せば狂い、
山越せば石割れる” とも言われ、ここからもこの地の実装石はこの土地の風土に根ざした
ものである事がわかる。因みに(狂い)は糞虫化、(石割れ)はパキンの事と思われる。そのた
め、この地域にはどうしても要件などで家を開けなければならない飼い主のために所謂実装
石のペットホテルのようなものがあってそこに預けて行くのだそうだ。これも通常の実装石
では考えられない点であり、この地域における実装石の(わらべささま)という呼び名からし
ても非常に親しまれている存在だという社会的背景もあるのだろう。

 どうしてこんな独特の実装石がこの地に根ざしたのか。友人曰くこの地の歴史が関係して
いるのではないか、との事で即ちN市とU市の辺りは大分県が出来てしばらくの間は隣県
の一部だったらしく、そのため大分県の他の地域より(大分化)していない為ではないのかと
いう説が言われているそうだがそれ以上のことは解らないという。


 しかし、ある意味実装石の理想郷ともいえるこの地にもその行く末には暗雲が立ちこめ
ていた。近年、この地の実装石の数が目に見えるほどに減っており、その大きな理由として
実装石の繁殖が年々難しくなっている為との事である。

この地も大分県になってから100年以上が経ちいよいよ(大分化)が進んできたからなので
はないか、そう危惧する友人の姿に私は一抹の寂しさを感じずには居られなかった。


〈終わり〉

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 実装石が生存できないはずの大分県でひっそり生き続ける実装石を妄想してみました。

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