スレに投下したスクの微修正版です。
設定の一部はロダの3365「妊娠実装で遊ぼう！」から連想しました。
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【透明な義眼】



実装石の避妊処置として片目を義眼にする方法がある。
例えば左目をくり抜き、緑色プラスチック製の義眼を埋め込むのだ。
これで実装石は妊娠できなくなるので、飼い実装にこの処置を行う飼い主はそれなりにいる。


……さて、ここは双葉実装研究所。

「では、新開発した義眼のテストを行います」

研究主任の亜希子が、眠らせた成体実装の「両目」をくり抜き透明な義眼を埋め込んだ。
通常の義眼は目の機能を持たないが、実装細胞を培養して作られたこの義眼は目の機能を有する。
もちろん実装石のデタラメな生命力があって初めて視神経がつながるため、他の動物には使えない。

視神経がつながった頃合いを見計らって、亜希子主任が手元のスイッチを入れる。
透明だった実装石の義眼が、左目が緑に、右目が赤に染まる。
偽石の発するエネルギーをわずかに拝借して義眼が緑と赤に染まる仕組みだ。

傍目には義眼と気づきにくいし、視覚は維持されるため実装石への負担も少ない。
そして左目緑と右目赤の状態を維持している限り、実装石は妊娠しないのだ。

「次の実験に移ります」

亜希子主任は成体実装を目覚めさせた。
自分の目が義眼になっているとは夢にも思わないらしく、平然とケースの中をうろついたり
周囲を取り囲む研究員におあいそポーズをしたりしている。

『ワタシかわいいデッスゥ～ン？』（※以下、実装石の声はリンガルを通したもの）
「はい、じゃあ両目を緑にします」

亜希子主任は実装石のおあいそを無視して実験を続ける。
パチリと音がし、成体実装の右目の義眼が緑色に染まった。
両目緑となった成体実装が『デデッ、おなかが変デス！？』と鳴くや否や、腹が膨らみ始めた。
そして数分ほど経つと、成体実装は座り込んで胎教を歌い始める。

『デッデロゲ～デッデロゲ～』
「はい、じゃあ右目を赤に戻します」

再びパチリと音がし、成体実装の右目の義眼が再び赤に染まる。
成体実装は自分の腹の中の胎児が急速に消えていくのを感じたのか、慌てた様子で腹を撫でる。

『デェッ！？　ワタシの仔が消えていくデスッ！　どうなってるデス！？』

数分ほどで、成体実装の腹は完全に元に戻ってしまった。
成体実装は色付きの涙を流して泣きじゃくる。

『オロロ～ン、オロロ～ン！　ワタシの仔がいなくなったデスゥ～！』
「はい、最後に両目を赤くします」

またしてもパチリと音がし、成体実装の両目の義眼が赤く染まる。
急に来た陣痛に『産まれるデスッ！？』と驚いた様子だったが、その場にしゃがんで出産を始めた。

『テッテレー』『テッテレー』『テッテレー』『テッテレー』『テッテｒ……
『デビャァァァ……も、もう産まれちゃダメデスゥゥ……し、死んじゃう……デズゥ……』

絶え間なく続く強制出産に、成体実装は瞬く間にやせ細っていく。
やがて、パキン、と音がして成体実装は事切れた。

「完成だわ……！　避妊処置をしつつ目の機能を残し、さらに飼い主の気分が変わった場合に
　再び出産させることもできる究極の義眼……！　名付けて……」

————実装石避妊用義眼【ミエールウメール】


　　*　　*　　*　　*　　*


この避妊処置は愛護派だけでなく一部の酔狂な虐待派も引き付けた。
虐待目的で飼っている実装石の目を緑にしたり赤にしたりパチパチと切り替えて遊ぶらしい。

『（パチリ）デッ、仔ができたデス？　デッデロゲ～デッデロ（パチリ）……デェッ、仔が消えたデス！
　どうなってるデス！？（パチリ）……デデッ、う、産まれるデ（パチリ）……また仔が消えたデジャ！？』

これを繰り返すと母体に強い負担がかかり、最終的に出産される仔の奇形率が上がるというデータもある。

『や、やっと産まれたデズ……デギャアア！　何デズこれはァァ！？』

今回産まれたのは、身体の両端に頭がついた蛆実装だったようだ。

さて幅広い客層に恵まれたこの義眼だが、ひとつだけ注意点があった。
……義眼は左目赤で右目緑の状態にはできないようになっている。
実装石をその状態にすることは最大のタブーであるからだ。
大多数の利用者はそれに疑問を持つことなく受け入れていたが……。
好奇心旺盛な人はいるもので、ある利用者がスイッチを改造したらしく……犠牲者が出た。
噂ではその犠牲者は身体中を鋏で切り裂かれていたそうだ。
【ミエールウメール】は正しい用法を守ってお使いください。

『そうデスッ！　正しい用法を守って使えデスゥゥゥゥゥ！
　妊娠させたり妊娠解除したり強制出産させたりパチパチ切り替えるんじゃねぇデジャアアア！』
————パチリ


終わり