タイトル:【観察】 ウジモドキ
ファイル:ウジモドキ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:583 レス数:2
初投稿日時:2024/06/13-17:20:46修正日時:2024/06/13-17:27:23
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スレ投下スクに加筆したものです。

【ウジモドキ】



双葉県虹浦市五月公園。
その日、いつものように親実装はエサを探しに出かけ、残された仔実装たちは親の帰りを待っていた。
小さな草の実を投げ合ったり、じゃれ合ったりする仔実装たち。
そんな中、一番上の長女はダンボールハウスの周りを探検していた。

「ワタチは一番のオネチャテチ。ママがいない間、この家をしっかり守るテチ」

そう思って怪しい者がいないか家のぐるりを巡っていたが、いつの間にか家から離れてしまったようで、
妹たちの騒ぐ声が随分遠くに聞こえていた。

「テチ……ちょっと遠くに来すぎたテチ。戻るテチ……」

さすがに不安を感じた長女が引き返そうとしたその時だった。
風がぴゅうと吹き、その風に乗って小さな鳴き声が聞こえてきた。

『レフェェ……レフェェェェェ……』
「……テェ、蛆チャテチ?」

確かにそれは、蛆実装の鳴き声のように聞こえた。
しかもいかにも寂しそうな、保護欲を刺激するか細い鳴き声である。

「なんでこんな所に蛆チャがいるテチ? ……探すテチ!」

長女は鳴き声がした方、つまり家とは反対方向の茂みの中へ入っていく。
草が生い茂って仔実装にはやや辛い道のりだったが、蛆ちゃんを保護するのだという思いが
足を進めさせていた……そして、"それ"はいた。

  *  *  *  *  *

その"蛆ちゃん"は、草の茎の上にちょこんと佇んでいた。
長女が近づいても助けを求めるでもなく、風が吹くたびに身体を揺らして
『レフェェ……レフェェェ……』と鳴いている。

「蛆チャ、親に捨てられたテチ? だいじょぶテチ、ワタチがホゴしてあげるテチ」

長女はそう呟きながら、茎の上にいる"蛆ちゃん"に手を伸ばし、触れた。
その瞬間……!

『レフッ!』

小さな鳴き声と共に"蛆ちゃん"の身体が割れ、触手を伸ばすように広がって長女の頭に絡みついた!

「テチャ!? 蛆チャ何するテチ……テッ、まっくらテチャ!」

突然の出来事に驚き、長女はブバッと糞を漏らして腰を抜かす。
いつの間にか目の前が真っ暗になっていて、蛆ちゃんどころか自分の手足も見えない。

……それは、蛆実装ではなかった。
"ウジモドキジッソウグライ(蛆擬き実装喰らい)"という食実装植物の一種で、
蛆様蔦と呼ばれる蛆実装に似た形に折り畳まれた蔦状器官で実装石をおびき寄せる。
そして獲物が蛆様蔦に触れると急速に展開し、毒液を含んだ蔦で獲物を捕らえる。
しかも風が吹いたり獲物を捕らえる際に、蛆実装の鳴き声にも似た音を立てるというから驚きである。
なお最近まで双葉県には自生していなかったが、温暖化の影響で最近はぽつぽつと発見例があるようだ。

「助けテチ……動けないテチュ……テェェ、何も見えないテチュ……たすけ、テェ……」

毒を含んだ蔦が目に当たって長女は視覚を奪われ、全身が痺れて大声も上げられず、身動きも取れない。
こうなってしまえば、あとは蔦からにじみ出る消化液でゆっくり消化、吸収されるだけだ。

「テヒィィ……変テチ……ピリピリする……テチ、身体、動かない、テッチ……。
 ママ、ママァ……イモチャたち、誰でも、いいテチ……助け、テチィ……」

長女の頭部は、巻き付いた蔦で徐々に溶かされている。
既に両目は喪われ、頭巾はボロボロになって脱げ落ち、頭のあちこちで骨が露出していた。
それでもなお長女は、蔦の毒に含まれる麻酔効果によって、痛みでパキンすることなく生きている。
1時間もすれば全身に毒が回りパキンするが、恐らくその前に頭を溶かされ尽くして死を迎えるだろう。

  *  *  *  *  *

3時間ほど経った頃、エサ探しから戻った親実装が長女の後を追ってきた。
親実装の優れた嗅覚は、長女のニオイを敏感に察知し現場まで導いていた。
だが、そこで親実装が見たものは……。

頭部を何者かに切断された長女の死骸だった。
いや、蔦で溶かされて千切れたので切断という表現は正しくないが、
親実装にはそこまで冷静に観察する余裕はなかった。

「お、オロロ~ン! 誰がこんな酷いことをしたデスゥ!」

首のない死骸を抱きかかえて泣きじゃくる親実装。
……その時、風がぴゅうと吹いた。

『レフェェ……レフェェェ……』
「デェ……? そこにいるのは蛆ちゃんデス?」

鳴き声のした方を見ると、近くの草の茎に"蛆実装"の姿があった。

『レフェェ……』
「どうしてこんな所にいるデス? 親に捨てられたデス?」
『レフェェ……レフェェェ……』
「……オマエ、ワタシの仔になるデス?」

長女を喪いその無惨な死骸を目にしてショックを受けていた親実装は、
独りきりの蛆実装を見つけて保護欲が刺激されたようだ。
立ち上がって優しく微笑むと"蛆実装"の身体に手を差し伸べ……。

『レフッ!』



終わり
1 続: Name:匿名 2024/06/13-17:21:19 No:00009177[申告]
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1 Re: Name:匿名石 2024/06/23-11:20:35 No:00009196[申告]
親実装もいけるのか?
2 Re: Name:匿名石 2024/06/29-12:21:49 No:00009205[申告]
>親実装もいけるのか?
毒があるんで大丈夫です
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