タイトル:【虐他】 実翠石との生活Ⅱ その2 嫉妬
ファイル:実翠石との生活Ⅱ その2 嫉妬.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:220 レス数:4
初投稿日時:2024/05/05-13:03:01修正日時:2024/05/05-13:03:01
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実翠石との生活Ⅱ その2 嫉妬
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常磐と名付けた実翠石をお迎えしてからというもの、私はQOLの向上を実感していた。
洗濯や掃除を積極的に手伝ってくれるし、食事も一緒に作るようになったせいか、それなりに凝ったものが食卓に並ぶようになった。
テレワーク中もお茶を淹れてくれたりと至れり尽くせりだ。
それでいて、すきを見ては何かとじゃれつくように甘えてくる。
最近では私をお姉さまと呼んでくれるようにもなった。
なんだか出来のいい甘えたがりな妹ができた気分だ。

今日は休日ということもあり、常磐を連れて商店街をぶらついていた。
食べ歩き系YouTuberが商店街を特集した動画がバズっていたので、
日頃から家事を手伝ってくれている常磐への労いも兼ねて行ってみようということになったのだ。
たい焼きやらたこ焼きやらクレープやらを店先でいただきながら、あちらこちらと歩いていると、
リードに繋がれた実装石を連れた私と同年代ぐらいの女性が現れた。
その女性の顔に見覚えがあり、声をかける。
「あれ、もしかして・・・」
「えっ、久しぶり。元気してた?」
先方もこちらに気付いたらしい。親しげに声を掛けてきた。
彼女は中学以来の友人だった。
彼女こと敏子が大学進学のために地元を離れて以来疎遠になっていたが、こちらを覚えてくれていたようだ。
二言三言話している内に、敏子は私の連れが気になったようだ。
「ところでその娘は・・・?」
「ああこの娘?この娘はね・・・」
最近お迎えした実翠石だと説明すると、常磐が敏子に対して丁寧にお辞儀した。
「はじめましてです。常磐と申しますです」
「はじめまして。ずいぶんお利口さんなのね・・・」
「ええ。常磐が来てくれたおかげで、毎日すごく助かってるの」
常磐がいかに尽くしてくれるか、どれだけ可愛いかを敏子に力説すると、
「お、お姉さま・・・そんなに褒められると、さすがに照れるです・・・」
頬を赤く染めて私の服を軽く引っ張る。そんな様子もやっぱり可愛らしかった。
視界の端に映る実装石が歯を剥いてこちらを睨みつけているのが見えた。何か気に入らないことでもあるのだろうか?
「ところで、その実装石は?」
「ああ、この子ね。最近飼い始めたの。ほらグリーン、ご挨拶は?」
敏子が実装石に促すが、相変わらずこちらを睨みつけたままだった。
「はじめましてです〜」
常磐が軽く手を振って挨拶してみても反応はなかった。いや、より顔を醜く歪め、今にも吠えかかろうとしているのか、喉奥から唸り声を上げていた。
「ご、ごめんね。ちょっと人見知りしてるのかも」
敏子が詫びを入れるぐらいには非友好的な態度だったので、この辺りで立ち話を切り上げることにする。
今度暇なときにでも家に遊びに来てよ、と言うと、ありがとう、と敏子は返して、その場は別れた。



「ちょっとグリーン、さっきの態度はどういうつもり?」
敏子は自宅に帰り着くなり、リンガル越しにグリーンに問いかけた。
久々にあった友人に挨拶が出来ないならまだしも、敵意を剥き出しにするというのはどういうつもりなのか確かめる必要があった。
『アイツは糞蟲デス』
グリーンは拗ねた様子で吐き捨てるように言った。
「糞蟲?どういうこと?」
『ニンゲンさんに媚びてたデス!ベタベタとニンゲンさんに触っていい気になってたデス!
 ワタシを見て笑ってたデス!バカにしやがってムカつくデス!』
言い募るうちに興奮してきたのだろう、地団駄を踏んで声を荒らげ始めた。
最近実装石を飼い始めた敏子には、グリーンの態度が理解出来なかった。
実装石は実翠石に対して強い敵愾心を持っているが、敏子はその事を知らなかった。
また、敏子が知る由もなかったが、グリーンは常磐のことを覚えていた。
かつてペットショップの店員と一緒に自分を馬鹿にした実翠石=常磐には、とりわけ強い憎しみを抱いていた。
(実際のところ、馬鹿にした云々は完全にグリーンの思い込みに過ぎない上に、常磐はグリーンのことなど覚えてすらいなかった)
その実翠石が飼いになり、飼い主とひどく仲良さそうな様子を見せつけてきたのだ。
並の実装石なら発狂して襲いかかっていただろうが、グリーンはそこそこ賢い躾済みだったからこそあの程度の反応で済んでいた。
なおもグリーンは喚き続けた。
『糞蟲を甘やかすニンゲンも糞蟲の仲間デス!』
「は?今何て言ったの?」
敏子の口調に怒りが混ざったのを感じ取り、グリーンは怒りを忘れてビクリとした。
「私の友達を糞呼ばわりするの?どういうつもり?」
『ご、ごめんなさいデス・・・。言い過ぎたデス・・・』
ペコペコと頭を下げるグリーンに免じて、今回は不問にすることにした。
だが、ここでしっかりと躾けておかなかったことが、後の悲劇につながることとなる。



「お邪魔します」
「いらっしゃい」
「いらっしゃいませです!」
とある金曜日の夜。
今日は敏子を自宅に招いて、ささやかな酒宴と洒落込んだ。
常磐と一緒に酒に合う料理をあれこれと作っていたのだが、
二人で作っているうちにだんだん楽しくなってきて、
気が付けばかなりの品数の料理がテーブルを埋めていた。
そんなわけで私も敏子もお酒が進み、気付けばお互いかなり酔っていた。
「お客様、大丈夫です?お水、飲んで下さいです」
「ありがと〜。ほんと常磐ちゃんは良い娘だね〜」
「ありがとうございますです」
「料理もおいしいし、気が利くし、なによりすっごく可愛いし。うちのグリーンとは大違いよね〜」
そりゃ実翠石と実装石では出来ることに差があるのは当たり前だろう、と思いながらも続きを促した。
「実装石のことはあんまり詳しくないんだけど、あんまり手間はかからないんじゃないの?」
「いや、実際飼ってみると意外と大変なのよ。特に臭いとか糞の処理とか」
「それはまあ、生き物だから仕方ないんじゃない?」
「それでも限度ってものがあるよ?毎日大量に臭い糞をされるとさすがにね」
「でも、ちゃんと実装石用のトイレでしてるんでしょ?」
「一応はね。家の中で所構わずされたらいくらなんでもライン超えよ?」
それからも、友人の口からは実装石に対する愚痴が延々と溢れ出た。
ひょっとして、ペットとのマッチングがよろしくなかったのだろうか?
「まあまあ、きっと実装石にもいいところはあると思うです」
同じペットとして思うところがあるのか、常磐がフォローを入れる。
「そうかな。そうだといいんだけどな・・・」
敏子の口から漏れた呟きは、ひどく弱々しかった。



「ただいま〜」
昨晩は結局そのまま酔い潰れて一泊してしまい、敏子が家に帰り着いたのは翌日の午前中になってしまった。
家のドアを開けた途端、独特の悪臭が鼻を突く。
実装石の糞の臭いだ。
グリーンには悪臭抑制剤入のフードを与えているのだが、成体実装故の糞の多さのためか、
効果については使わないよりマシといった程度だった。
当のグリーンは主人を出迎えるでもなく、ケージの中で惰眠を貪っている。
同じペットのはずなのにこうも差があるのかという思いが脳裏に浮かぶが、そもそも実翠石と実装石を比較すること自体が誤りだと思い直す。
とりあえずは糞の処理をしなければ。
空気清浄機も買ったほうがいいかもしれない。
今更になって襲ってきた二日酔いによる頭痛をこらえつつ、敏子はグリーンを起こさないように実装石用トイレの掃除を始めた。
この時、何故飼い主が飼い実装に気を遣わなければならないのかと頭に浮かんだが、飼い主としての義務感でそれを打ち消した。

糞の悪臭と二日酔いによる頭痛とのダブルパンチで吐いてしまった敏子は、実装石用トイレの掃除を終えた後はそのまま寝入ってしまった。
身体を揺する感覚に目を覚ますと、既に夕方になっていたことに気付く。
未だに続く頭痛と、片付けたはずの糞の臭いに思わず眉を顰める。
この悪臭と身体を揺らす原因、グリーンに視線を向ける。
『ご主人サマ、お腹すいたデス、ご飯欲しいデス』
あれだけ食っちゃ寝していたのにまだ足りないのか、と敏子の顔が険しくなる。
悪臭抑制剤入の餌だけあって徳用フードよりも値が張る上に、食事量も成体実装の体格に合わせた量を与えねばならないため、
家計が少なからず圧迫されている点も敏子を僅かに苛つかせた。
仕方無しに餌皿にフードを盛ってやると、礼も言わずに貪り始める。フードの欠片がボロボロと溢れ、実装服と床を汚してゆく。
飼ってから数週間経つが、明らかに飼い始めの頃よりも食べ方が汚くなっていた。
躾け直しが必要なのかもしれないな、そう思う敏子の考えなどいざ知らずといった様子で、
グリーンは食事を終えた途端にトイレに糞をひり出した。
敏子の目付きが険しさを増したにも気付かず、グリーンが呑気に聞いてくる。
『どうしたデス、暇なら一緒にお歌を歌うデス!』
デーデーと無駄にでかい鳴き声でお歌なるものを披露するグリーンに、さすがに苛つきを隠せなくなった。
「止めて。うるさいから」
冷たく言い放たれるとさすがにマズイと思ったのか、グリーンはしょんぼりと項垂れてケージへと戻った。
そんな様子も敏子にとっては不愉快だった。
「・・・常磐ちゃんはあんなに可愛いのに・・・」
ポツリと呟いた敏子の言葉だが、グリーンには聞き捨てならなかった。
ときわ、とは以前に会った実翠石の名前だったはずだ。
何故自分の主人の口から実翠石の名前が出てくるのか。
実装石よりも劣った実翠石が可愛いとはどういうことだ。
主人が冷たいのもそのせいなのか。
グリーンの内心に湧き上がった実翠石への嫉妬は、抑えつけられていた糞蟲性を呼び覚ましつつあった。


翌日の日曜日、敏子はグリーンを置いて外出した。
公開を楽しみにしていた映画を見に行くためだが、グリーンと少し離れたいという思いもあった。
一人暮らしの寂しさを紛らわすために飼ったはずだが、実翠石という存在を知ってしまうと、
実装石がどうにも不潔で不愉快な、劣った存在に思えて仕方がなかった。
そんなことを思ってしまった自身の卑しさから、目を背けたかったというのもあった。
そんな飼い主の思いなど知らないグリーンは、今日は名誉挽回の日だと考えていた。
自分が飼い実装石としていかに素晴らしい存在か、実翠石よりも実装石が優れた存在かを主人に示そうと意気込んでいた。
自分を置いて出掛けるというのは誤算だったが、それならば主人が居ない間に家中を掃除をしてアピールすれば良いと考え直した。


楽しみにしていた映画は期待以上の面白さだった。
帰りに寄ったカフェの期間限定スイーツも美味しかった。
グリーンにもクッキーをお土産を買い、敏子は帰宅した。
「ただいま〜」
目の前に広がる我が家の惨状に、敏子は充実した休日を過ごせたという満足感が彼方へと消え去るのを感じた。
一人暮らし用の中型冷蔵庫が倒れ、中身がぶち撒けられていた。冷蔵庫の上に置いていた電子レンジも床に転がっている。
部屋の奥の方も棚が倒れたのか物が散乱しているのが見て取れた。
そして目の前には、たっぷりと糞を漏らしたグリーンが倒れた冷蔵庫を見て立ちすくんでいる。
「・・・グリーン、これはどういうこと?」
敏子の声にビクリと身体を震わせるグリーン。
デスデスと弁明しようとするグリーンに、友人は釘を差した。
「嘘をついたら許さないから」
グリーンが泣きながら説明したところによれば、部屋の惨状は次のようにもたらされた。

敏子が外出したあと、グリーンは敏子に喜んで貰おうと部屋の掃除を始めたとのこと。
床の拭き掃除が終わり、棚の上の埃を掃除しようとよじ登ったら棚が倒れて物が散らばってしまった。
これはマズイと思い、美味しいものを作って許してもらおうと考え、冷蔵庫から中身を出そうと扉をよじ登ったら冷蔵庫もひっくり返してしまった。
あまりのことに思わず糞を漏らしてしまった。

「・・・はぁ」
敏子は深いため息を吐いた。
よかれと思ってやろうとしたら失敗した。
よくある話だが、自分が被害に遭うと全く笑えなかった。
とりあえず片付けねば。
デスデスと何か言っているグリーンにケージに戻って出てくるなと伝え、部屋の掃除に取り掛かった。

掃除が終わる頃には夜九時を回っていた。
床に転がっていた電子レンジは結局壊れて使えなくなっていた。
棚の上に置いてあったお気に入りの小物も多くが割れたり欠けたりといった状態だった。
冷蔵庫の中身も軒並み生ゴミ行きになった。
腹は空いたが掃除に疲れ切り、食事をする気力も湧かなかった。
ささくれだった気分を癒やすために、冷蔵庫内の僅かな生き残りであるストロング系チューハイを開ける。
ツマミもなしに飲んでいたせいか、すぐに酔いが回ってきた。
視界に映ったグリーンが、パンツに糞をこびりつかせたままこちらを見つめていた。
デスデスと何か鳴いていたようだったが、リンガルを見る気すら失せていた敏子は、うるさい、と煩わしげに言うだけだった。
(この時グリーンは遠慮がちに餌を催促していた。)
「・・・常磐ちゃんはあんなに可愛くて良い娘だったのに・・・」
敏子の口から、先日と同様の言葉が漏れた。
うちのグリーンはどうしてこうなのだろう。
臭いし、餌代はかかるし、声は汚くてうるさいし。
寂しさを埋めるよりもうっとおしさが鼻につくようになってきた。
ペットショップの店長の謳い文句では、賢く大人しく飼いやすいという話だったが、今ではその片鱗も感じられない。
いっそ棚なり冷蔵庫なりが倒れたときにそのまま下敷きになって死んでくれていればよかったのに。
アルコールがもたらすネガティブな思考に脳が支配されそうになる。
そのままテーブルに突っ伏した。
「・・・うちにも実翠石が来てくれたらなあ・・・」
そんなことを呟きながら、敏子はアルコールがもたらす眠気に身を委ねていった。

主人の口から漏れた実翠石への言及を、グリーンは聞き逃さなかった。
あんな糞蟲が可愛いとはどういうことだ。
あんな糞蟲よりワタシの方が可愛いのに。
糞蟲を甘やかすと碌なことにならないのに。
糞蟲を甘やかす奴も糞蟲の仲間なのに。
糞蟲には思い知らせてやらねばならない。
実翠石への嫉妬と憎悪に捻じくれ曲がったグリーンの思考は、その矛先を最も身近な存在へと向ける。
そう、自身の主人へと。


月曜日の朝、敏子の寝覚めは最悪なものとなった。
べちゃり、と頬に走る不快な感触と鼻を突く悪臭に、敏子は強制的に起こされた。
視界に映るグリーンはデププと不快な笑みを浮かべている。
頬を拭う。不快な感触の正体はグリーンの糞だった。
リンガルを見る。
『とっとと起きるデスクソニンゲン!』
『高貴なワタシにふさわしい豪華な食事を持ってくるデス!』
『使えないクソニンゲンデス!このワタシが直々に教育してやるデス!』
目を疑いたくなる文章が羅列されていた。
困惑している最中にもグリーンは投糞を続けていた。
みるみる部屋が汚染されていくのを看過できず、敏子はグリーンを抑えにかかった。
「止めなさい!いい加減にして!」
グリーンの両腕を掴むと、グリーンは振りほどこうと暴れに暴れた。
自然とグリーンを持ち上げる形となり、グリーンは拘束から逃れようとさらに暴れまわる。
力を込めているうちに、グリーンの左腕が折れた。
「デギャアアアアアッッ!?」
「ひっ!?」
激痛により悲鳴を上げ、ブリブリと大量に脱糞するグリーンに驚いた敏子は、思わずグリーンを床に落としてしまった。
「デッギャアアアアアアアアアアアアッッ!!」
床に落下した衝撃で、グリーンの両足は潰れ、右腕も折れててしまった。総排泄孔からはさらに糞が溢れて床を汚してゆく。
イゴイゴと蠢くグリーンを心配するより先に、ようやく大人しくなったと敏子は胸を撫で下ろす。
だが、至る所に糞が飛び散った部屋の惨状は、敏子を暗澹とさせた。
とりあえずは部屋を掃除しないといけない。このまま放置すれば臭いが染み付いてしまう。
いや、その前に職場に連絡して休みを取らなければ。
月曜日の朝から最悪な気分にさせられた敏子には、グリーンに対する愛情など欠片も残っていなかった。

幸い職場の上司からは休暇の許可を貰えた。事の次第を話したらひどく同情された。
午前中一杯かけて部屋の掃除と消臭を済ませ、今後のグリーンの扱いについて思案する。
デギャデギャとうるさいので口に雑巾を詰めて黙らせたこの糞蟲をどう処理するべきか。
飼い続けるという選択肢は敏子の中にはもう無かった。
ペットショップで購入したため、グリーンには個体識別用のマイクロチップが埋めてある。
下手に捨てればバレて罰金を科されかねない。
里子に出そうにもこんな糞蟲は引取り手など現れないだろう。
保健所に引き渡そうと思い電話したところ、生憎受け入れる余裕が無いと断られてしまった。
そうなると殺して捨てるしかない。
だが、ただ殺すだけでは駄目だ。偽石を破壊して確実に殺さないと蘇生しかねない。(このあたりは先程スマホで調べた)
グリーンをキッチンのシンクに転がし、ゴム手袋を付けてカッターナイフを取り出す。
グリーンはこれから自身を見舞うであろう暴力に恐怖し、脱糞しながら命乞いをするが、
口を雑巾で塞がれているのでフガフガという情けない音しか出せなかった。
敏子はもうリンガルを見ようとすらしなかった。
偽石は頭部か胸部にあることが多いので、まずは胸部から探すことにする。
胸部の中心に思いっきりカッターナイフを突き立てて、一気に総排泄孔まで切り裂く。
皮膚どころか内臓ごと切り裂かれた激痛に身を捩り暴れるグリーンに、大人しくさせようと敏子は何度もカッターナイフを突き立てた。
五、六回程突き刺してようやく大人しくなったところで、胸部に手を突っ込み偽石を探す。
内臓を弄られる度にグリーンは身体をビクビクと痙攣させる。
普通ならばもう死んでいてもおかしくはないのだが、偽石強化措置を受けているが故にグリーンの苦しみは続いた。
指先に当たった硬い感触を摘み上げると、結晶のような物が出てきた。
おそらくこれが偽石だろう。
試しにカッターの刃先で引っ掻いてみると、ビクンッとグリーンが身体を大きく震わせた。
迷惑をかけられた分、なるべく苦しんで死んで欲しい。
そう思い、カッターの刃先でキツツキのように偽石を突き回す。
ガクガクと身体を痙攣させながら苦しむグリーンの様子に、特に楽しむでもなく機械的に手を動かす。
連続した刺突に耐えきれずに偽石が割れるまで、さほどの時間はかからなかった。


グリーンの惨殺死体はチラシで何重にも包んでゴミ袋に詰めた。
幸い明日はゴミの日なので、出勤時に捨ててしまえばいいだろう。
ケージやトイレといったペット用品も捨てたいが、こちらは後回しにした。
いっそ中古ショップに売るのもいいかもしれないと敏子は思った。
疲れ切った敏子はテーブルに突っ伏した。
なんとはなしにテーブル上にあったリンガルのログを遡る。
『お腹すいたデス。ご飯欲しいデス』
『退屈デス。ボールで遊んで欲しいデス』
『偶にはお外に連れてって欲しいデス』
『コンペイトウとか食べたいデス』
読み返せば、グリーンからは求められるばかりだった。
敏子が求めていた、寂しさを埋めるために何かしてくれた事などほとんど無かった。
『幸せを見つけるデス!』
リンガルのログ、その最初の方に残っていた言葉を見て、思わず呟く。

「私の幸せは、全然考えてくれてなかったんだよね・・・」

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1 Re: Name:匿名石 2024/05/05-13:45:29 No:00009086[申告]
なんか悲しい生物だな実装石…人間に飼われたい割にペットとして不適格な要素が多すぎる
グリーンは実翠と遭遇して糞虫にならなくてもいずれ不幸になっていただろうという印象
犬猫なら自分だけ思想も許されるのになぁ
2 Re: Name:匿名石 2024/05/05-14:55:16 No:00009087[申告]
殺したあとにログ見てごめんね…ってなる流れかと思ったら期待を裏切らないクソムシぶりで安心した
女さんも高い金出して実翠買えばよかったね
3 Re: Name:匿名石 2024/05/05-15:11:23 No:00009088[申告]
前作と併せて読むと己の立ち位置を理解して振る舞う実翠と身の程を弁えない実装との対比が面白い
臭い汚い己の欲望を満たす事しか考えないで致命的にペットには向かないですね
4 Re: Name:匿名石 2024/05/05-19:54:50 No:00009089[申告]
飼い実装への再チャレンジとそれを勝ち取るという同族にとっては誰でも羨む境遇を得ながらも嫉妬に身を滅ぼす愚かさよ…
人間の社会において実翠が随分者としてその居場所を模索して対価として愛情を得る事を処世と奮起している様を糞蟲と軽率に断じる実装達って
所詮、飼われる事がゴールで後は暴走する我欲と自尊心を抑制する日々といのが大半なのが救えないよな
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