タイトル:【愛他】 実翠石との生活Ⅱ その1
ファイル:実翠石との生活Ⅱ その1.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:203 レス数:5
初投稿日時:2024/04/30-16:18:08修正日時:2024/04/30-16:18:08
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実翠石との生活Ⅱ その1
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両親が死んでから一年ほどが経った。
死因が交通事故だったおかげで悲しむ暇もないくらいあれやこれやとあったのだが、それもようやく一段落ついた。
その反動だろうか、最近はひどく寂しさを感じるようになってしまった。
大切な一人娘だからと何かにつけて優しくしてくれた両親は、もう居ない。
初めて貰ったボーナスで温泉旅行をプレゼントしたときは、泣いて喜んでくれたのを思い出す。もっと親孝行したかった。
両親が遺してくれた家に一人で居ると、それが殊更身に沁みる。
今勤めている会社がほぼテレワークで事足りるが故に人と直接接する機会が無いという点も、この寂しさを助長していたのかもしれない。


本日の業務を終え、今日の夕食は外食で済まそうかと考え商店街をぶらついていると、視界の端にペットショップが映った。
寂しいならペットでも飼ってみたら?という知人のアドバイスが脳裏に蘇った事もあり、
冷やかし半分でなんとはなしにショーウインドウを覗いて見る。

その少女の愛らしさに、私は一瞬で心奪われた。

よく手入れされた、上質な絹を思わせる髪。
僅かに上がった目尻が少女の快活さを感じさせ、オッドアイがそこにさらなる彩りを与えている。
ふんわりとした、それでいて小さめの唇に浮かべた笑み。
シミ一つ見当たらない滑らかで健康的な肌。

その少女は、椅子に腰掛けて足をぶらぶらとさせながら、楽しげな様子で道行く人々を眺めていた。
こちらに気付くと椅子からぴょこんと降り、ショーウインドウ越しにこちらを覗き込むように顔を近付けてくる。
こちらに向けて浮かべた満面の笑みは、向日葵を思わせる眩しさだった。
視界の端に、おいでおいでと小さく手招きする少女の手が見える。
その手が導くまま、私はペットショップに入っていった。

手近にいたアルバイトと思しき若い女性店員に声をかけ、ショーウインドウに居る少女についてあれやこれやと質問する。
あの娘は実翠石という種類らしい。
あの実装石の近縁種とのことだが、正直信じられなかった。
といっても私自身、実装石について大した事を知っている訳ではない。
なんだか臭くて気持ち悪いけど、ペットとして飼われている事もある、程度の認識だった。
まあ、とある事情により、今では不愉快を通り越して忌々しいと思えるような存在になっていたが。
よろしければ少し実翠石ちゃんとお話します?という勧めに首を縦に振ると、店の一角にあるふれ合いスペースに通された。
実装石が何体か居たようだが、私の意識は既に実翠石に向いており眼中に入らなかった。
程なくしてショーウインドウから実翠石が連れてこられる。
「いらっしゃいませ、お客さま」
深々と頭を下げ終えると、人懐っこい笑顔を浮かべる。
そのまま他愛のない話を交わしている内に、どんどんこの実翠石に対する好意が膨れがっていくのを感じた。
別れ際にハグされながら、
「お客さまがわたしのご主人さまになってくれたら、すごく嬉しいです!」
と言われた頃には、完全に墜ちていたと思う。
気が付けば、是非とも彼女をお迎えしたいと口にしていた。
お迎えに関して店員と話を詰めている間、視界の端に映る実装石が妙に怖い顔をしていたが、理由はよく分からなかった。

数日後、満を持して彼女をお迎えに行く。
ペットショップに着き、店員さんからお迎えに関してのレクチャーを受けた後、ふれ合いスペースに通された。
先日来たときは何匹か実装石が居たはずだが、今日は姿が見えなかった。まあ、実装石など正直どうでもいい。
ふれ合いスペースで待つ実翠石の少女は、私と正対すると、スカートの両端をつまみ、深々と頭を垂れた。
「この度はお買い上げいただきありがとうございますです。
ご主人さまに気に入っていただけるよう、精一杯がんばりますです」
姿勢を正してこちらに微笑む彼女の愛らしさに、何故かドギマギしてしまった。
「こ、こちらこそ、よろしく。
 早速だけど、左手を出してもらえるかな?」
すっと差し出された彼女の左手、その中指に指輪を嵌める。
飼いの証となる指輪をかざして満足げな笑みを浮かべた彼女は、そのまま私に抱きついてきた。
「うれしいです、ご主人さま!」
このまま抱きしめていたかったが、彼女にはもう一つ、受け取ってもらわねばならないものがあった。
「あなたに名前を付けたいのだけど、いいかな?」
ぱっと身体を離して、私の目を期待に満ちたオッドアイで見つめてくる。
「常磐、って名前なんだけど、どうかな?」
常磐緑から拝借して、末永く、幸せであってほしいという願いを込めた名前。
「ときわ・・・ときわ・・・わたしは・・・ときわ・・・。
 素敵なお名前、ありがとうです、ご主人さま!」
再び抱き付き、幸せそうに頬ずりしてくる常磐に、私の心を占めていた寂しさが徐々に温かいものに上書きされてゆくのを感じた。

「お世話になりましたです」
総出で見送ってくれる店員さん達に、常磐は深々とお辞儀した。
店員さん達の笑顔に見送られながら、店を後にする。
繋いだ小さな手の温かさが、たまらなく愛おしかった。

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1 Re: Name:匿名石 2024/05/01-05:09:10 No:00009068[申告]
実翠石迎えるのって遭遇する糞蟲が嫉妬に狂い喚くリスクも然る事ながら
ペットロスのダメージが大きそうな気がしてきた
2 Re: Name:匿名石 2024/05/01-13:44:29 No:00009070[申告]
そろそろ実装ちゃんの近似種らしいとこ見てェなァ…
3 Re: Name:匿名石 2024/05/01-20:32:01 No:00009071[申告]
ペットと人間の距離感じゃねえんだよな
4 Re: Name:匿名石 2024/05/01-22:15:54 No:00009072[申告]
実在したら従順な生きオナホとしての需要が一番高そう
5 Re: Name:匿名石 2024/05/02-01:48:43 No:00009073[申告]
バレたら社会的に死にそう
コミュニケーション可能な希少生物だから定期面談義務とか規制入るだろうね問題が表面化したらすぐ
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