タイトル:【虐】 ゴールデン・ウィークのはじまりデス 実装の髪についての私的な考察を多分に含むデス
ファイル:ゴールデン・ウィークへ.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:378 レス数:7
初投稿日時:2024/04/28-01:07:13修正日時:2024/05/05-03:40:24
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(会話はリンガル越しですがわざわざそれ描写するとテンポ悪くなるのでご容赦を)

ワタチはゴチュインチャマに飼われてチアワセテチュン♡
鏡さんの前でポーズキメキメ♡鏡さんは可愛いワタチが映るから大好きテチン♡

あ、ゴチュインチャマが見てるテチ♡

「今日も人間との仔の証のかわいい黒髪が綺麗だねブリブリ」

「テチューン♡ブリブリのサラサラ黒髪、かわいいテッチュン♡」
ゴチュインチャマに褒めてもらって嬉ウンチもプリっちゃうテチン♡

ワタチはブリブリ♡世界一チアワセな黒髪チャンなんテチ~ン♡

いつかゴチュインチャマのオチンポチャマで仔を作りたいテチンっ…♡

あっ♡考えたらキモチヨクなってゴチュインチャマの前なのにオマタいじいじしちゃうテチ♡

……

(痴れたなあ)俺を見てオナニーに耽る水槽の中の黒髪仔実装・ブリブリを見下して笑う。
いい具合に調子に乗っている。来た当初はしっかり者だったが、今や見る影もない。

もはや珍しくもない黒髪実装。

黒髪はニンゲンとの仔実装だとされた時期もあったが、「ニンゲンと仔を作った!」と親実装がかなり強く思い込むことで仔実装の髪が黒くなるというメカニズムが解明されて久しい。
黒髪化の理由については、紫外線に弱く日陰で生きる通常の実装石と対比し一生を人間の庇護下に置かれると母実装が判断する仔は日照時間中の行動増加が見込まれる為に紫外線に強い黒髪が発生するという説が有力だ。

たかが三点しか髪はないじゃないかと思われるだろうが、頭巾に覆われない前頭部やボリュームの多い後頭部がカバーする範囲はそれほど少なくなく、この黒髪が決してバカにできない効果があるとの研究報告がある。
もっとも、だからといってそれが完全に正しいという事もないのだろうが。まあここはどうでもいい。
ニンゲンとの仔であるという認知を刷り込まれた黒髪仔実装は今やショップでも多少の代わり種程度で安価に手に入る。
大体が出生についてのカンチガイを玩具にしようという虐待派向けの悪趣味なパーティグッズとして。

ブリブリには絵本の読み聞かせやお勉強の名目で黒髪溺愛系のヤバいYoutuberの動画の視聴の義務づけられ、さらにネムリとシビレをパウダー状にして少量振りかけたゴハンによって脳が縮んでいる。
俺の言う事なら何でも信じるかな~りユルいバカになってもらったのだ。
脱糞音が由来のぞんざいなネーミングは

『ブライト&ブリリアントの略だよ、輝く華麗って意味なんだよ』

と説明している。
彼女は来るべき運命に向けて仕上がりつつある。楽しみだ。

……

「コワイコワイのお勉強の時間だぞ、ブリブリ」

「テェン?コワイコワイはイヤイヤなんテチン!」

「でもコワイコワイな人を知らなきゃ危ないこともあるんだぞ?頑張ったらご褒美をやるから、さあ座って観なさい」

俺はブリブリを座らせ、水槽の前にタブレットをセットしある動画を流す。これもまた毎日の日課である。

『黒髪専属虐待師です、今回はワガママ放題育てられた成体黒髪・ゲリモラス一世を虐待していこうと思います」

目のイッている金髪の男が磔にされている黒髪を指差す。

「デギャアン!?ワタチをどうする気デスン!?ご主人様が黙ってないデスーンッ!!」
ふざけたネーミングの太った黒髪実装は暴れる。

「黙れ」「デスギャアッ」
即座に金髪によって耳に指を突っ込まれ拷問が開始された。

……

「デギャアアアアア!イヤデスゥ!」

その後も金髪は彼女自慢の黒髪をウンコまみれのブラシでとかしたり、黒髪の毛を己の尻穴に突っ込んだり、ションベンを黒髪の鼻に注入したりと嫌がらせの限りを尽くす。
ねっとりと、しかしスピード感をもっていじめ抜く。


十数分で「ェアッ…ェアアッ、ゴシュジンサマ、ゴシュジンサマァ」と呻くのみのぴくりぴくりと蠢く訳の分からない肉塊となった黒髪実装。

「流そうと思いま~す」
金髪はにやりと笑いながら洋式便器型の何かへと黒髪実装を運び、その中に放り込む。

「タスケテデス、ゴシュジンサマ、ゴシュジンサ……デギャッ」

ぐちゃ、ばき、どごっ。ぎゅるぎゅる、きゅぽんっ!
マヌケな音と共に黒髪実装が破砕され、血しぶきを吹き上げながら吸い込まれていった。

便器型の処理マシンだったのだ。

「今回の虐待は、いかがでしたでしょうか、それではまたお会いしましょう!」

金髪がカメラに向かって微笑んだ。

……

「テェェェ!コワイテチー!コワイテチー!」泣き叫ぶブリブリ。

「ほらほら泣かないで、大丈夫だよブリブリ、お勉強でわかったことを言ってごらん?」

「テチン!キンパツは黒髪がキライキライでコワイコワイテチ!」

「そう!前に言ったことは覚えているかな?」

「テ!髪さんが黒いほど心が綺麗なんテチ!」

「よくできました!ご褒美に美味しいコンペイトウをあげる!」
毎日、金髪の男が黒髪実装をいじめる動画や殺害する動画を見せている。

そして黒髪=善、金髪=悪という図式を刷り込んでいる。
動画を見終えたブリブリは鏡の前に立ち、決まって自分の髪を強く抱きしめる。

「黒髪チャンに産まれて、よかったテチ!」黒髪をより誇るようになっていくだ。
(こうなりゃ上出来、もういいかな)俺はニヤリと笑った。

……


「おやすみテチュゴチュインチャマ…♡ムニャムニャ…♡」
寝床に入ったブリブリに就寝用ネムリを食わせ、眠るのを確認する。

ペタペタとブリブリの顔と身体へ入念にマスキングテープを貼り、髪だけが露出するようにする。
よく起きねえなコイツ。俺は下準備を整えてそれを取り出した。

『GSIクレオス Mr.カラー スプレー S9 ゴールド (1160円)』だ。

ダンボール製の塗装スペースに眠ったブリブリを置き、俺はスプレーを噴射した。
ブシュウ、飛沫の音が聞こえる。ブリブリの髪が染まっていく。

金色、それはブリブリにとって最大悪の象徴の色。金髪は邪悪の具現であり、悪い者たちの共通項。
ブリブリを金髪に染め終え、俺はマスキングテープを剥がしてブリブリを水槽へ戻した。

こんなシンナーくせえのに起きねえのすげえなコイツと思いながら朝に思いを馳せる。
起きたらすぐに大好きな鏡の前に立ってごらん。最高の『ゴールデン』ウィークが始まるよ。

……

「テェ…?ン…?テェ!?」

水槽に設置した監視カメラは、眠りから覚めたブリブリの慌てぶりをしっかりと捉えている。

黒髪を愛するブリブリは己の後ろ髪を前に回し、抱いて眠る。
ネムリを使った状態で手足を解いても自然とそうなってしまうくらい身に染みた動作だ。
当然、寝起きにすぐ目に入るのは黒の毛束、己の髪。
だが、現在寝起きのブリブリが目にしているのは見たこともない『悪の色』たる金の毛束だ。

別室から俺はそれをニヤつきながら見守る。
悪の象徴を頭に戴いた感想はどうかな?

……

生来、実装石とは毛髪に異常執着する。
短い腕では咄嗟に保護しきれない脳天や後頭部を保護する緩衝材として重要に思うのだろう。
短足でアタマでっかち故に走ればよく転倒をする実装石にとって、頭巾と併せ頭部を保護するそれの重大さはかなりわかりやすい。

という事を前提としても、その精神的な面における執着はやはり異様な熱意に満ちている。
上記の説をとった上でその理由についていくつもの説が唱えられてきた。

曰く、野生状態では失えばほぼ二度と生えて来ない為だからだとか、
曰く、実装石の美的価値観において重要だからだとか、
曰く、胎内で臍の緒のような機構として母と己を繋げていた部位だからとか、

古今東西から様々な説がある。

とにかく、ありとあらゆる実装石は己の毛髪を愛することだけが確かで、失えば場合によってはショック死すら迎える。
それを守る為ならば肉体を損傷する事も髪と命と天秤にかける事も厭わない本末転倒な極まった個体すらいるという。

ブリブリは黒髪仔実装。
ニンゲンとの間の仔実装の証(だと彼女は思い込んでいる)である黒髪は輪をかけて深く執着の対象。
更に教育によって黒髪とは善徳の象徴そのものだった。

……

「テェ、テププッ!」
タオルで作られたフカフカの寝床で気持ちよく目を覚ましたブリブリは大混乱する頭を落ち着けていた。

「テププッ~!」
いつもの黒髪ではなく金色の髪が目に入るが、まさかそんな事はあるはずがない!笑いすら出てしまう、なんて悪趣味な夢だろう!

「これはユメなんテチ~ン!」
寝床からヨチヨチと飛び起きて大好きな鏡の前に立ってみる。小さな身体をくるくると回してみる。

「ひどい色テチ~ン!テププッ~!」
腹を抱えて笑ってしまう。善の具現である壮麗な黒髪を生やした自分が?金髪など生やす筈がない!

髪の毛の質感も普段のふわふわサラサラとしたものではない、ガサついていて硬い!


「テププッ!ユメならヘーキなはずテッチ!ワルイワルイな色の髪なんかいらないテチ~!」

後ろ髪の何本かを掴む、仔実装の手では数本が把握できる限界。
……思い切りよくブリブリは髪の毛を引き抜くべく、引っ張った。

ぶちり。ブリブリの頭を刺す鋭い痛み。はらり、スポンジ製のマットが敷かれている水槽の床に、金色の髪の毛が何本か落ちる。

「テチャ!テ?テテ?テテテ…」
なんで?なんで?痛い?ユメのはずなのになんで?
頭の上にハテナを浮かべて床に散った数本の金髪を眺める。

プリプリプリプリプリプリプリプリ……。

反射的にウンチが漏れる。快感と共に自分を落ち着かせようという精神の防衛本能で生まれてから最も多くの量のウンチが漏れる。
異臭が漂ってパンツが汚れおフクもおクツもウンチでドロドロになってしまうと嫌な汗がブリブリの額を伝った。

心臓の脈打ちがバクバクと早まると共に全身の感覚が鋭敏になって、やがて、髪の生えている三箇所が少しだけ痒いことに気がついた。肌がスプレーの溶剤によって荒れているのだがブリブリはその原理を知るはずもない。

ブリブリは思う。夢の中でこんなリアルな感覚を覚えた頃がこれまであったか?

「ッテチャア!!」
寝起きのボンヤリを払う薄寒さがブリブリの背中を覆った時、糞でぬかるんだ足元にぐらついてその場に転んでしまった。
目の前には鏡。頭をぶつけると、やはり痛かった。

荒唐無稽なシュールな夢は悪夢に変じ、どころか悪夢のような現実だった。

「テェ、テチャ…テッチャアアアアアアアン!?」
これは夢ではない。夢の中ではない。自分は金髪になってしまった。
ブリブリの絶叫が土曜の朝にこだまする。

……

「ブリブリ!?どうしたんだ!?」
俺は鳴き声を聞きつけたフリをして満を持しての入室をする。

「テェック…テェック…!ご、ゴチュインチャマぁ…」
蹲り震えるクソまみれのブリブリが顔を上げ、テチテチと小走りで水槽にの端にピッタリと身体をくっつけて俺に近づこうとする。

クソが水槽内に散乱して臭い。あの時漏らしたまま暴れて狂乱したようだ。なんなら今も尻から少量がプリプリと垂れている。

「な、なんて髪の色をしているんだ!?そんな悪い色の実装石なんか飼った覚えはないぞ!?俺をだましていたのかこの金髪野郎!」
俺はわざとらしく驚いたフリをして髪の毛を指さす。

「ちがうテチ!ゴチュインチャマ!起きたらこうなってたんテチィ!」
ブリブリは手足を広げて大きく動かし、己の潔白をボディランゲージでアピールする。

「そんな筈があるか!?漏らして暴れるなんて悪いことをしているしお前は本当は悪の金髪実装だったんだな!?」
俺は大根演技でショックを受けたフリを続ける。ブリブリはあたふたと顔を振り、相当困った様子だ。

「ち、ちがうテチィ!ブリブリは黒髪チャンなんテチィ!金髪イヤイヤだからウンチブリブリでキモチヨクなって落ち着いてたんテチィ!」
涙目のブリブリが必死になる。

「ウソをつくな!本当に金髪が嫌ならそれを抜いてみろ!?できないのか!?」
俺の言葉にビクつき、一瞬後ろ髪を掴むもすぐに手を前に突き出して拒絶のジェスチャーを示すブリブリ。
髪を失いたくない本能が金髪への嫌悪をまだ上回っているらしい。

「……!!ダメテチ!!髪さん抜くのイヤイヤテチ!」

「どうしてだ!?」

「髪さんナイナイはダメなんテチ!悲しいテチ!」

「でも金髪はワルイワルイだろ!わかってる筈だろ!?」
ブリブリへ押しをかけた。バカへ堕ち痴れてもしつこい教育がお前には染みている筈だ。そうだろう?ブリブリ。

……

「テッ」

ブリブリはフリーズする。これまでの教育で刷り込まれてきた悪の金髪たちの姿。
記憶の中にある、黒髪実装を金髪いじめ抜く数々の場面。
『金髪ニンゲンコワイデスゥ~!!』昨夜見せられたビデオでもゲリモラス一世という黒髪実装が叫んでいた。

金髪の実装石が黒髪をいじめていたビデオも見たことがある。
黒髪の仔実装の鼻の中ににウンチを突っ込んでは笑顔で『ワタチのウンチはどうデス?いい香りデス~デピャピャ』と黒髪をいじめながら壊れたように笑っていた。
品性下劣な姿であんなのが金髪だ、自分はそうなりたくない。でも金髪だからそうなってしまうのでは?それでもイヤだ!

何か実装石としての根源が髪の毛の消失を咎めている。金髪はイヤだしキライなのに動けない、なぜか引き抜けない。

「テェェン!テェェン!!」
ブリブリは突っ立ったままで泣き出した。

……

「どうしたんだブリブリ、いつも教育してただろう!?黒髪は素晴らしいが金髪は最悪なんだって!」

とうとう言語にもろくにならないような号泣を始めたブリブリに俺はなおも押しをかけていく。
金髪嫌悪と並行して脱毛を拒む本能の加速。
さあ俺の教育VS実装石の本能のデスマッチだ。リングはブリブリの脳内だ。

「テェェン!イヤテチー!ブリブリ黒髪チャンなんテチー!金髪じゃないんテチー!」テェェン!」

「よく見ろ!鏡だ、お前は金髪だろうがブリブリ!」
俺は水槽内の鏡を手元に掴み、ブリブリの顔の前に持っていく。

「ゴチュインチャマぁ!いやテチィ!ちがうんテチィィン!黒髪なんテチィ!!いまに黒髪になるんテチ!金髪ちがうんテチィ!」
顔をイヤイヤと背けたがるブリブリの頭をがっしりと掴んで、瞼を強制的に開かせて鏡へ向かい合わせる。

「どう見ても金髪だろうが!!」

……

ブリブリの頭の中には楽しい思い出と黒髪の誇りが渦を巻く。

「綺麗な黒髪だね!君が一番綺麗だったよ!」
ショップで出会った時に言われた言葉。この時からゴチュインチャマはブリブリにとって自分だけの王子様だった。

「黒髪だから可愛いなあ!黒髪だからいい仔だなあ!」
ブリブリを褒める時にはいつだって黒髪を誉めていた。

「金髪っていうコワイものが世の中にはいっぱいあるんだよブリブリ」
言い聞かせられてきた金髪の悪逆と非道、ビデオでも散々に学習させられた。

だから黒髪は素晴らしい存在の証だと信じてきた、自分こそ黒髪の申し子だと誇ってきた。
黒髪を大事にして過ごしてきた、そんな黒髪がなんで金髪に?

ダイジダイジのサラサラ黒髪は金色になって、なんでガサガサしているの?
なんでこうなったの?なんで?

ゴチュインチャマが怒ってる。

大好きなゴチュインチャマのためなのになんで髪の毛を引き抜けないの?
金髪も大キライな筈なのに、なんで抜くのがこんなにコワイの?
気がついたらもうゴチュインチャマの腕の中に持ち上げられている。

……

クソを垂れ終わったらしく、尻からプスプスと屁しか出なくなったブリブリを俺は持ち上げる。
既にパンツはクソの重みに負けてずり落ちてしまっていたし、足の間のクソももうカラカラに乾びている。
このくらいになればそこまで手に持つにも気にならない。

「もういい、引き抜けないなら俺がお前をハゲにして野良のいる公園に放す!」
死の宣告に等しい言葉、さあどう出るブリブリ。

「そ、そん、そんあ、そんなのひどいテチ!なんでそんなこというんテチィ、チィィ!!」

公園には散歩には何度か連れて行っている。野良の姿は多少汚い程度だが清潔な暮らしの飼いのこいつにとっては醜く見えたのだろう。
近所の野良どもは市の指導もあり悪意あるような連中ではないが、話を盛って伝えてあるからか凄まじい震えようだ。

「じゃあ髪を抜け!すぐ抜け!その金髪がそんなに大事なのか!?」

「もうイヤテチ!テェ!イヤテチィ!イヤイヤ、イヤなんテチィィィ!」
めちゃくちゃに全身を振り回すブリブリは息の上がって顔も若干青くなる。ストレスからか目の色も曇ってきた。

「何が嫌なんだブリブリ!言ってみろ!言ってみろこの『糞蟲』!」
俺は満を持しての言葉をブリブリにぶつける。実装石にとって最大の侮辱語。

「全部テチ!全部イヤテチィ!クソムシ違うんテチィィィ!!チィ、テッチャアア!!イヤ!イヤテチ!」

舌打ちをしそうになる。血涙の色は濃くなっているし、プルプルと震えてストレスの限界に達しそうな勢いだ。

「いやテチィ!黒髪なんテチ!!髪さんきっともとに戻るから抜きたくないんテチィ!黒髪なんテチィ!」

こうなるともう反応も頭打ちだろうか、意地でも引き抜かなさそうだ。まあ仔実装ならこんなもんか。

「髪さん抜かないテチィィ!黒髪に戻れるはずなんテチィ!ゴチュインチャマァ!しんじテチィ~~!!」

ああ、本能が勝利したことをなんとも残念に思う。

「もういい!さっき言ったことは覚えてるな?お前がやらんなら俺がやる!」

「テッチュン!?待って、まっテチ!チィィ!チッテチャア!」

パキンするまで虐待するほどテクニシャンじゃない。そろそろおしまいは近いぞ、ブリブリ。

「テギャア!テッギャアアアアア!!!」

ぶちぶち、ぶちっ、ぱさり、はらはら。半端に根本の黒い金髪を俺は一気に引き抜いた。

……

ブリブリの金に塗られた髪の毛が水槽に落ちていく。

乱雑な脱毛で頭の皮まで剥がれて、痛々しく傷がつき血が漏れる。
ブリブリはその痛みより自分だけの王子様の拒絶と、その期待に沿うことができなかった絶望感の方がよっぽど痛かった。

「ごめんなさいテチ…ゴチュインチャマ…抜けなくってごめんなさいテチ…でも黒髪チャンなんテチ」
ただ繰り返すブリブリ。虚に飼い主の男を見つめている。

「ハハハ!金髪ナイナイできたぞブリブリ!金髪野郎がよ。」
怒っているはずの男は笑っていた。

「テチ…ゴチュインチャマ…!金髪ナイナイでうれちいテチ~…!きっと髪さんまた生えてくるんテチ~……ブリブリは黒髪チャンなんテチ~……!」
ハゲにされたというのに、笑った飼い主に合わせて引き攣った顔でなんとか笑うブリブリ。
自然とそのポーズは実装石特有の『媚び』の形をとっていた。

「裏切りモノのキモい心が金髪なハゲが!何を笑っているんだ!?俺を騙していたくせに!」
わざとらしく怒りの形相を浮かべる男にブリブリはビクビクと震える。だが必死で笑って媚び続けた。

「来い!公園がお前を待ってるぞこの金髪野郎!」
男はガッチリと潰すような強さでブリブリを掴み、ドタドタと歩いて外へ出ていく。外気と風に触れてブリブリの頭の傷が痛む。

……

「いい天気デスゥ~」「テチ~」路傍を散歩する飼い実装の親仔がチラリと目に入る。
「……テッチュ!テチャアア!まっテチ!お部屋に戻しテチ!コワイコワイテチ!チィィ!」

急に正気づいて暴れ出すブリブリ。だがガッチリと掴んだ男の手を振り解ける筈がない。

飼いと野良との見分けがつかないブリブリは、先程の散歩親仔が自分の血の匂いを嗅ぎつけた恐るべきならずものに映った。

「きっと生えてくる髪さんを食べようとしてるんテチィ!黒髪チャンが食べられるんテチィ!!」
荒唐無稽な妄想を走らせて、ブリブリは燦々と輝く太陽と麗らかな陽気が心底恐ろしくなった。
絶叫は無視される。ブリブリはおウチに向けて手を伸ばし続けていた。

……

「ついたぞ!ブリブリ!」
「テギャッ!」

公園にたどり着いてしまった男の手からブリブリは、叩きつけるように落とされた。

「ゴチュインチャマ!考え直しテチ!イイコにするテチ!ほんとにブリブリは黒髪チャンなんテチ!きっとまた髪さん生えてきたら黒髪なんテチ!」

必死で訴えるブリブリ。実装石の本能的に髪の再生などあり得ないと知っているが諦めきれずに理想からそう口にする。
ニンゲンの技術なら再生は造作もないが、彼女はそれを知らないし、彼女の飼い主もそれをするつもりは毛頭ない。毛髪だけに。

しゃがみこんだ男は、ニンマリと笑った。

ポケットから『GSIクレオス Mr.カラー スプレー S9 ゴールド (1160円)』を取り出し…

プシュウ。

「チギャア!クチャいテチ!クチャいのイヤなんテッチ!!」ブリブリに噴射する。溶剤の臭いがブリブリを不愉快がらせる。

「なんテチ…テッ!?テェ……」ブリブリは目を開け、咄嗟に顔を守った手が『あの色』になっているのに気がついた。悪の色に。

「わかるかな?これが種明かし」男の言葉が投げ落とされた。

ブリブリは手の色と男の持つ何かの缶を見比べた。

痴れきった頭が恐怖と絶望のという冷や水で一瞬の輝きを取り戻す。
缶からは霧が出た、それを防ごうとした手が金色になった、あれはその色になる霧だ、金色にする霧だ。

つまり?

「ゴチュインチャマが、黒髪チャンを金髪にしたんテチ…?」

「ほい大正解」

……
……
……

「ママ~!変なコが起きたテチー」
仔の声がするデスゥ、倒れていた仔が目を覚ましたみたいデス。

「ここ…どこテチ!?テッ!?」
「ワタチのおウチデス、これからゴハンを食べるんデス」
不憫な子デス、ハゲハゲにされて捨てられて変な色にされてるデス。

きっとオモチャにされて捨てられたんデスゥ。
でも大丈夫デス、今日からウチの……

「テッギャアアアアア!?コワイコワイテチ!糞蟲の野良テチ!!!逃げるテチ、逃げるテチ!!」

「デデ!?ま、待つデス!」「どっかいっちゃったテチ」

……

ダッシュで野良のハウスから逃げ出したブリブリは、夕暮れの公園内を爆走する。
あれからブリブリはショックにより倒れ、そこを優しい野良に拾われたのだ。
温厚な一家は優しくブリブリを介抱し、家族に迎えようと準備をしていた。

しかし飼い主の教育が後を引き、万に一つもないような救いの手をブリブリは払いのけてしまった。

「かえるテチかえるテチ、髪さん生えたら黒髪チャンに戻って、ゴチュインチャマもニコニコになるんテチ」

不気味な薄暗さの外の世界を初めて見るブリブリは恐怖に包まれながら、ヨタヨタとおウチを目指してデタラメに彷徨う。
悲しいかな、混乱した頭で適当に右折左折を繰り返すのでただ闇雲な8の字状に多少のブレは含みつつループしているだけだ。

「デチャッ!」バランスを崩して頭から前転するような形で転ぶブリブリ。塞がって薄皮の出来ていた額の傷が開き、ズキズキと痛む。

「いだいデチ!髪さんナイナイでアタマさんよわよわなんテチっ、髪さんはやく生えテッチ!」涙をぽろぽろと流して喚く。
短い手を額へ伸ばすが、当然届かない。ショボショボと立ち上がってまた走り出す。ヨタヨタとした頼りない8の字走りを延々と続けていく。

おウチに辿りつくことを信じて。

「おっ、なんやおると思ったら変な塗装されとるってことは捨て仔やんケ」
「テチっ!?」

公園を通りかかった金髪の人間がブリブリを見下ろした。

『金髪』の男。

「テチャ…!」
恐怖の存在、悪の象徴、初めて間近で見るその男は筋骨隆々で威圧感がありすぎた。

「かわいそうにオモチャにされたんやな、よっしゃ助けたる!」
丸太のような手をその場で立ちすくみ固まっていたブリブリに伸ばし、優しく掴んだ金髪の男。
ブリブリは恐怖する。悪の象徴に攫われようとしている!どうにかしなきゃ、逃げなければ!!

「なにっ」「テヂャアッ!」
恐怖から男に手に噛みついたブリブリ。男は大人しく見えた仔実装の急な変化に対応できず、ブリブリを投げる形で落としてしまう。

「ヂッ」
哀れにも筋力があった男の投擲は意図しない動作でも強すぎる威力を生んだ。
公園のフチ、ちょっとした壁へとブリブリは激突し、ぐちゃりと潰れてしまった。

「あちゃ~…事故ってことにしてくれや…すまん」
男が壁のシミとなったブリブリに手を合わせる。

半端に形の残ったブリブリの死体。
特に形が辛うじて残っているその額は傷がばっくりと開く形で、めちゃくちゃに混ざった赤緑の体液が垂れている。
それは夜の闇で黒く映り、前髪のようにも見えた。

おわり

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1 Re: Name:匿名石 2024/04/28-06:52:25 No:00009056[申告]
認識や知能を歪められたせいで奇跡的に二度も差し伸べられた手を振り払って惨死するのだいぶ哀れ
2 Re: Name:匿名石 2024/04/28-13:06:28 No:00009058[申告]
名前に愛情のカケラ微塵も無いの笑うわ
まだ多少なり知性があった命名時に由来に対してどうやってお茶を濁したのか気になる
3 Re: Name:匿名石 2024/04/30-03:26:50 No:00009061[申告]
凝った上げ落とし最高です
4 Re: Name:匿名石 2024/04/30-19:58:58 No:00009063[申告]
調教師が某茶髪セミロンの人かと思った
5 Re: Name:匿名石 2024/04/30-21:02:35 No:00009064[申告]
ブリブリのダメなところが最初の10行くらいで見事に出てて好き
保管ありがとう
6 Re: Name:匿名石 2024/04/30-21:08:33 No:00009065[申告]
最後に出てきた金髪のあんちゃんは宮沢熹一を想像してしまった
7 Re: Name:匿名石 2024/05/10-17:39:07 No:00009102[申告]
かわいそう
野良の一家と推定キー坊が
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