タイトル:【他愛・実虐】 こんどは、実装石の視点から
ファイル:雪の日に(実装サイド.txt
作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:4044 レス数:2
初投稿日時:2006/09/01-04:41:57修正日時:2006/09/01-04:41:57
←戻る↓レスへ飛ぶ

実装石サイド…

大雪の中、実装石の家族が彷徨っていました。

「ママ、寒いテチィ…」
「凍え死んじゃうテチィ…」
「蛆ちゃんも寒いレチィ?」
「レフ〜…」
「我慢するデスゥ…。」

実装石親子は困っていました。
いつも大雪を凌ぐために利用していた洞穴が他の同族に占領されていたからです。
このままでは、皆凍死してしまいます。

「あれは…小屋デス!」

そんな時、実装石の目に麓の小屋が飛び込んできました。

「ママ!おうちテチィ!」
「あそこに行くテチィ!」
「レフレフ〜ン!」
「蛆ちゃんもうれしいレチィ!」
「善は急げデスゥ!ついでに住んでるニンゲンを奴隷にすれば一生安泰デスゥ。」

実装親子はこれから待ち受けてるであろう幸福な生活を思い浮かべながら小屋へ向かいました。
途中で飛ばされそうになりながらも持ち前の粘り強さで何とか小屋にたどり着きました。

「オマエたち、皆無事デスゥ?」
「大丈夫テチー。」
「さ…寒いテチー…。」
「レ…レフ〜ン…。」
「蛆ちゃん、頑張るレチ!」
「ほら、小屋はすぐそこデス!」

しかし、この小屋を頼ってきたのは実装石だけではありませんでした。

「テ?何か居るテチ?」
「ママ、なんか赤いのが居るテチ。」
「あれは実装紅デスゥ。ワタシたちと同じように小屋に入れてもらうつもりデスゥ。」
「レフレフ、レフー!」
「蛆ちゃんが、先を越されてしまうと言ってるレチ!」
「まあ、落ち着くデスゥ。どうせ、アイツはニンゲンに追い出されるデスゥ。今急ぐと、とばっちりを食らうかもしれないデスゥ。
 それに、醜いものを見た後なら、ワタシたちの美しさがより際立って見えるデスゥ。ニンゲンなんてイチコロデスゥ。」
「さすがママテチ!」

実装親子は実装紅が追い出されるのをニヤニヤしながら待っていました…。
しかし…

「ママ…赤いの出てこないテチ。」
「…お…おかしいデス。」

実装紅は小屋に入ったきり出てきません。

「どうするテチ?」
「ちょっと予想と違ったデス。けど、赤いのが入れるならワタシ達なら余裕デス。赤いのはその後追い出せば良いデス!」
「ママ、頭いいテチ!」
「レフ!」
「蛆ちゃんも、そうだと言ってるレチ。」
「オマエたちはここで待ってるデスゥ。」

実装石は、小屋の扉を叩きました。
すると、すぐに扉が開いて青年が出てきました。
中には、先ほどの実装紅の姿も見えます。

「(デププ、これなら楽勝デスゥ)ニンゲン、外は寒いデスゥ!サッサと中に入れるデスゥ!!」

しかし…

「デギャァッ!」

実装石は家に入れてもらうどころか、思いっきり蹴り飛ばされてしまいました。
実装石は顔を抑えながらデェ…デェ…と泣いています。

「何でワタシがこんな目にあうデスゥ?」
「ママ!大丈夫テチ?」
「いったい何が起きたテチ?」
「な、なんでもないデス。このくらいは想定内デスゥ。」

実装石はどこかで聞いたような台詞を吐きながら考えました。

「(何がいけなかったデス?赤いのが入れてワタシが入れないはずはないデスゥ!)」
「レフレフ、レフレフ。」
「蛆ちゃん、なんレチィ?」
「レフレフー、レフ、レフレフー。」
「ニンゲンの心を動かすような頼み方じゃないと入れないんじゃないかといっているレチ。」
「そんな筈ないデス!全てのニンゲンはワタシの前にひざまづくはずデス!」
「レフ!レフレフーン!」
「あのニンゲン、頭がイカレてるレチ?」
「レフ!」
「ノータリンなら仕方ないデスゥ。まったく、ニンゲンも救えない生物デスゥ。」
「でも、どうやって、心を動かすような頼み方をすればいいテチ?」

そうです、それが問題なのです。
実装石の頭では分かるはずもなくただ、ただ時間が過ぎていくばかりです。
と…

「何か来るレチィ。」

実装親子は急いで物陰に隠れました。
やって来たのは、実蒼石と実翠石でした。

「テェェェェェェ!!青いのテチィ!」
「殺されるテチィ!!」
「落ち着くデス!あいつらはこっちに気づいてないデス!むしろ、ここはチャンスデスゥ!」

実装石は口の端を吊り上げニンマリと笑いました。

「青いのと、偽者をよく観察して、追い出されたらその逆のことをすればいいデスゥ。万が一ヤツラが入れたらその時は同じことをすればいいデスゥ。」
「ママ、天才テチ!」
「ママの子供に生まれて鼻高々テチ!」

実装親子は、実蒼石と実翠石の一挙一動を観察しました。

「…ママ、なんかアイツらも入れたテチ…。」
「デ…この際構わんデス。」

実装石は仔実装を一匹連れて扉の前に立ちました。

「いいデスゥ?ニンゲンは何かを庇う姿に心を打たれるみたいデスゥ。それが、コドモならなお更デス。オマエは弱ったふりをしれてば良いデス。後はワタシに任せるデス。」
「ママ、すごいテチ!頭良すぎテチ!」

実装石は、仔を抱いて扉を叩きました。
すると、すぐに扉が開いて青年が出てきました。
中には、先ほどの実蒼石と実翠石の姿も見えます。

「ニンゲン!私とこの子を家の中に入れるデスゥ!」
「テチ…ワタチは全然大丈夫じゃないテチ…」
「デププ!このままじゃ凍えちゃうデスゥw」

すると、青年の手が実装石たちに伸び…

「(成功デスゥww)」

仔実装を掴むとそのまま雪の中に埋めてしまいました。
一瞬何が起きたか理解できませんでしたが、雪の中から仔の鳴き声が聞こえると

「デギャー!なんてことするデスゥ!今助けるデスゥ!」

実装石は慌てて雪を掘り返し始めました。

「テ…寒いテチ…」

助けられた仔実装は青白い顔をしてガタガタ震えていました。
命は助かりそうでしたが、あまりのショックに閉じたドアに向かってオロローンと泣き叫びました。


「訳分からんデスゥ!あのニンゲンは何がしたいデスゥ!?」
「レフレフ、レフレッフン!」
「あの、ニンゲンは相当なノータリンに違いないと蛆ちゃんが言っているレチ。」
「でも、これからどうするテチ?」
「…寒いテチ…。」
「デ……」

すると、実装石のたちの頭上を何かが通過しました。
それは、よろよろと飛んだあと、小屋の窓ガラスにぶつかりました。
それは、弱った実装燈でした。

「テチ!黒い羽虫テチ!弱っている今なら日ごろの恨みを晴らせるテチ!」
「落ち着くデスゥ、今はそんな事よりどうやってあのニンゲンを奴隷にして家に入るかデス。」

そう、騒いでいるうちに実装燈は小屋の中へと入っていきました。

「…テチ、黒い羽虫も入っちゃったテチ…。」
「……そうデス!この手でいくデス!」


「親指ちゃん、蛆ちゃん、準備は良いデス?」
「大丈夫レチ。」
「レフレフ!」
「それじゃぁ、いくデスゥ!!」

実装石は、親指実装と蛆実装を窓に向かって思いっきり投げつけました。
窓から入ろうとする生き物に弱い。実装石はそう考えたのでした。
投げられた、親指実装と蛆実装は宙を舞い、窓までもう少し…そして…。

ガタガタッ
グチャッ!

「レフェッ!」
「レチャッ!」

窓にぶつかった衝撃で、蛆実装は完全につぶれ、親指実装も半身がつぶれ、偽石にひびが入ってしまいました。

「(蛆ちゃんが…蛆ちゃんが…!)」

計算外でした。本当なら、

「このままじゃ凍えちゃうレチィ…。」
「レフレフー。」

と、言ってニンゲンに入れてもらうはずでした。
しかし、これではもう喋ることすらままなりません。
青年は物音に気づき窓のところまで来ましたが、

「チェ……蛆ちゃんが……潰れちゃったレチィ……凍えちゃう……レチィ…。」

それだけ言うと、もとは蛆実装だった塊を抱いてそのまま死んでしまいました。


「テ…何も反応がないテチ。」
「お…おかしいデス…今頃、中に入ってワタシたちを入れるよう命令しているはずデス。」
「窓すら開かなかったテチ…。」

親子そろって上を見上げていると、べチャッとなにかが落ちてきました。

「デッ?これはなんデス?」

実装石は落ちてきたものを手にとって見ました…。落ちてきたそれは…

「チェェェェェ!親指ちゃんと蛆ちゃんテチィ!」
「デェェェ!?」
「ニンゲンにやられたテチィ!あんまりテチィ!」

二匹が死んだのは自分のせいだとも気づかずに、実装親子は盛大に泣きました。


「デッスン…デッスン…。泣いていてもしょうがないデス。次の手段を考えるデス。」
「次の手段は何テチ?」
「………デ。」

実装石が頭を捻って出るはずのないアイデアを捻り出そうとしました。
と、そこに…

「ママ!今度は黄色いの来たテチ!」
「ちょうど良かったデス!オマエたち、アイツをちゃんと見るデスゥ!」

実装金は扉が開いた瞬間にスルリと中に入っていきました。

「ママ…黄色いのですら入れたテチ。」
「し、心配するなデス。ノータリンの黄色野郎が入れたデス。ワタシにかかればお茶の子サイサイデス!」
「テチ!侵入はママの得意分野テチ!」
「そうデス、殺された親指ちゃんと蛆ちゃんの為にもデス!」


実装石は、扉を叩くと扉の裏側になる場所へ移動しました。
扉が開いてもここなら姿は見えません。

「(この隙に侵入するデス!入ってしまえばこっちのものデス。中の連中を追い出して、コドモたちを入れてやれば万事解決デス。デプププ!)」

実装石はタイミングを見計らい…

「今のうちに入り込むデス!」

実装石はダッシュで小屋の中へ入ろうとしました。
しかし…

「デギャッ!」

突然、青年に踏みつけられ、そのまま外へ投げ捨てられました。

「デデェ!ちょっとま…」

実装石の叫びも届かず、無常にも扉は閉まってしまいました。

「デガァ!!何であんなノータリンが成功して賢いワタシが失敗するデスゥ!?」
「ママー!どうしたテチ?」
「なんで、入らなかったテチ?ママなら楽勝だったテチ?」
「……こ…今回は運が悪かったのデス。」

実装石は小屋を見上げます。
おかしい、何故こんなにも上手くいかないのだろう。
本当は今頃暖かい小屋の中でお腹いっぱい食べているはずなのに…。

「デェ…お腹すいたデスゥ。」
「テチ…そう言えば何も食べてないテチ…。」
「お腹すいたテチ…寒いテチ…。」
「デ…次のやつが来るまで腹ごしらえデス…。」

とは言うものの周りは雪で埋め尽くされ食べるものなど見当たりません。

「仕方ないデスゥ…」

実装石は雪を食べ始めました。
雪はお腹の中で溶けて水に成るだけなのですが、食べた気がするのでそれなりに空腹感は満たされるのです。
とにかく、実装石はデタラメなのです。

「冷たいテチ…」
「暖かいもの食べたいテチ…。」
「次のやつが来るまで待つデス。」

実装石の頭には、他の実装の真似をして中に入る、という事しか頭になかったのです。
もはや、自分たちだけの力で入るなんて考えはどこかへ言ってしまってました。

暫くして、ようやく他の実装が現れました。

「テチ!きたテチ、ピンクいのテチ!」
「デスッ!オマエたち、ちゃんと見ておくデス!」

実装雛は青年に何か言った後、今までの実装と同じように小屋の中に入っていきました。

「デププ!今の聞いたデス?」
「テチ、『ウニュー…お腹がすいたナノー。うにゅうじゃなくても良いから何か食べさせてほしいナノー。』って言ってたテチ!」
「自分勝手過ぎて悲しくなるテチ!愚かテチ。」

自分たちのことは棚に上げて、実装雛を罵る実装石。
アイツが入れたんだ、自分たちが入れないはずがない…。親実装も仔実装も安心しきっていました。

「きっと、寒いから入れろじゃ駄目だったんデスゥ。腹が減ったことをアピールしなきゃいけなかったんデスゥ。」

いままでの実装がどうやって入ったかなど完全に忘れきっています。
実装石は自信満々で扉を叩きました…。
扉が開くと…

「腹が減ったデスゥ!この際金平糖じゃなくても我慢してやるデス!だから何か食わせるデスゥ!」

これで完璧だ…そう思った矢先、実装石の口の中にさっき食べたものと同じものが突っ込まれました。

「ギャー!冷たいデスゥ!これはさっき散々食ったデスゥ!」

実装石は雪を吐き出すとヘナヘナと座り込んでしまいました。

「また駄目だったテチ?」
「ママ…実は…」
「そんなことないデスゥ!!あのニンゲンがノータリンなだけデスゥ!でも安心するデス、だんだんあのニンゲンもワタシの素晴らしさに気づき始めたデス。
 あと一回デス…あと一回でいいんデスゥ!」

実装石は自信を持って言い張ります。
少し賢い仔実装なら虚勢だと見抜くのですが…

「そうテチ!?焦らして焦らしてオトス作戦だったテチ?」
「肉を切らせて骨を断つテチ?」
「そ…その通りデス!デハハハハハ!」

実装石が奇妙な高笑いをしていると…

「!?」

いきなりギョッとした表情で物陰に隠れました。

「ママ、どうしたテチ?」
「しーデス!あれを見るデス!」

扉の前を見ると、なんと薔薇実装と雪華実装が並んで立っています。

「気付くのがあと一瞬遅かったら串刺しだったデス…。」
「アイツらも小屋に入るつもりテチ…?」
「きっとそうデス…。よく見ておくデス…。」

しかし、薔薇実装と雪華実装は黙って立っているだけです。
にも拘らず、暫くすると扉が開き、薔薇実装と雪華実装は中に入っていきました。

「テチ…?いったい何したテチ?」
「何もしてなかったテチ?」

首を傾げる仔実装をよそに、親実装は勝利を確信したかのようにガッツポーズをしました。

「ママ…これだけでいいテチ?」
「そうデス、じっとしてるデス。」
「雪が冷たいテチ…」
「我慢するデス。」

いままでが、何かしらの小技を使うのに対し、ただ立っているだけというものは、実装石にとって革新的に思えた。
だからこそ、これは絶対上手くいく、という自身があったのだ。
そして、予想通り小屋の扉が開き…

「………(寒いテチ…)」
「………(ガガガ…我慢するデス)」

実装石たちは先ほどの薔薇実装と雪華実装と同じように、黙って立っていました…
けれど…

バシィッ!

「デズァッ!」
「テチャァ!」

雪を払うどころか、自分たちごと払い倒されてしまいました。

「こ…これでも駄目デスゥ!」
「ママ…寒い…テチ…」
「デデェ!し…しっかりするデスゥ!!」

衰弱したコドモを揺すりながら、実装石は再びオロローンと泣きました。


「デガガガガガアアアアアアアアア!!ありえんデス!!訳分からんデスゥ!!」

実装石は怒りに任せ雪面をボスボスと叩き始めました。

「こっちが下手に出てればあの糞ニンゲン調子にのってぇデスゥ!!もうかんべんならんデスゥ!」
「テェ…許さんテチィ…」
「寒いテチィ…」

仔実装を見れば二匹とも寒さで衰弱しきってます。
外の寒さに加え、雪を食べたことにより中からも冷やされていたのです。
さすがの実装石も限界が近くなっていました。

「全部あの糞ニンゲンの仕業デスゥ!」

実装石はその辺に転がっていた手ごろな石を掴みました。

「他のヤツラのマネなんかしたのがバカデスゥ!ワタシたちにはこういう手段があったデスゥ!」

そして、雪を窓のところに掻き集めそこをよじ登ると…

ガシャァン!

「思い知ったかデスゥ!オマエたちも来るデスゥ!」
「テチ!入れるテチ!」
「やったテチ!」

さっきまで衰弱しきっていた筈の仔実装は飛び跳ねながら、家の中へ侵入しました。

「最初からこうすればよかったデスゥ!」
「ママ頭いいテチ!」
「ポカポカテチー。」

親実装は偉そうにあたりを見回し、仔実装は無邪気にはしゃいでいます。

「糞ニンゲンを懲らしめるのも大事デスが、その前に腹ごしらえするデスゥ!」
「お腹ペコペコテチ!」

ちょうど、そこに青年が異変に気付きやってきました。

「デ?ちょうどよかったデスゥ!そこのニンゲン、とりあえず何か食わせるデス!」
「さっさとするテチ!ノロマ!」
「さもなくば…こうテチ!」
「こうデスゥ!」

先ほどまでの酷い扱いで、怒りが頂点に達していたのでしょう。
実装石たちは、いきなり糞を投げつけるという手荒な手段に出ました。
実装石の投げた糞が真っ直ぐ青年に飛んで行きました。
けれど…

「マスターに手を出すな!」

実蒼石の鋏がそれをさえぎりました…。

「そのニンゲンには借りがあるのダワ…」

実装紅も実装石の前に立ちはだかります…

「…デ…デ?」
「テチィ…」
「青いのと赤いの居るテチィ…」

実装石たちは、自分たちより前に他の実装が入っていたことをすっかり忘れていました。
先ほどまでは強がっていましたが、実蒼石と実装紅には敵うはずがありません。
実装石は、実装紅と実蒼石を交互に見た後、はっとしました。

「デ…ニンゲン!ワタシ達がピンチデスゥ!早く助けろデスゥ。」

そうだ、このニンゲンならこいつらを倒せる。
実装石はそう考えましたが、青年は何も答えません。
今までの成り行きを考えれば当然のことです。

「何ぼさっとしているデス!さっさと…」
「「テチャァァァァァァ!!」」
「デッ!?」

仔実装の悲鳴に驚き横の仔実装を見ると…

「テ…ママ…。」
「死にたくない…テチ」

二匹の仔実装はその体を水晶で貫かれていました。

「「……カワイソウ……」」

「デェェェェ!」

あまりの恐怖に、実装石は仔実装の亡骸には目もくれず一目散に逃げ出しました。
しかし…

ズボッ!

「デズァッ!」
「かかったカシラー!」
「デ…どうなっているデスゥ?」

周りは石。
上にだけ穴があいて空が見えています。

「落とし穴ナノー。」
「ただの穴なのに気づかずに落ちるなんて救えない奴です。」

正しくは、今は使われていない古井戸です。
実装石が実装紅と対峙している間にこっそりと蓋をはずして置いたのです。

「そこで反省するのがいいカシラー。」
「ふざけるなデスゥ!こんな所に放置されたら死んでしまうデスゥ!」
「しったこっちゃねぇです。」

実装雛と実装金と実翠石は急いで小屋に戻りました。


実装石の落ちた古井戸は、前にも蓋をはずしていた事があったのか、半分近く雪で埋まっていました。
けれど、ニンゲンでも上がれないほどの高さがありました。

「ここから、出すデスゥ!さもないと酷い目にあわせてやるデスゥ!」

いくら叫んでも返事は返ってきません。

「何をぼやってしているデスゥ!オマエらなんか本気になればイチコロデスゥ!」

それでも返事は返ってきません。
上からは雪が絶えず降り積もり、少しずつ埋まっていきます。

「デェッ!とにかく出るデス!」

しかし、実装石の手では上がることはできません。
それでも、実装石は必死に上がろうとしました。
それを、あざ笑うかのように次から次に雪が降ってきます。

「なんとかするデース!そうすれば、この美しいワタシを好きにさせてやるデース!」

実装石はまだ叫んでいます。
けれど、誰もそれを聞いていません。

実装石は何度も叫びました。
何度も何度も…

「お願いデース、助けてほしいデース…。」

もう、強がるだけの余裕もありません…。

「何で、他の実装は小屋の中に入れてワタシだけこんな目にあうデス…ワタシだって同じ実装デス…。実装石だって、実装紅だって同じ実装デス…」

けれど、そこに最大の理由がありました…。
実装石だから、この実装石は小屋に入れてもらえなかったのです。

「オロロロローーーン!お願いデスゥーーー!出して欲しいデスゥゥゥー!」

実装石は大声で泣き喚きました。
けれど、効果は有りません。
精魂尽き果てた実装石はその場に座り込みました。

「あんまりデス…差別デス…。」

もう、動くだけの体力も残っていません。

「デッスン…デッスン…。コドモも死んでしまったデスゥ…何もかも失ったデスゥ…。」

深々と降り続く雪…実装石の体は半分ほど埋まってしまいました。
もう、這い出す力も残っていません…。

「もう…疲れたデス…このまま眠るデス…」

実装石は目を閉じて、まどろみ始めました…
そうだ…せめて夢だけでも幸せに…

「デギャァァァァ!!」

しかし、実装石は眠ることすら出来ませんでした。

「デププ、美味いデスゥ!ワタシはラッキーデスゥ!」

なんと、実装石の声を聞きつけ別の実装石がやって来たのです。
その実装石は、埋まっている実装石の頭の一部を食いちぎるとぐちゃぐちゃと咀嚼し始めました。

「イダイデズゥゥ!!ヤメルデズゥ!」
「デププ、やっぱり同属は美味いデスゥ!」

そういうと、再び食いちぎってグチャグチャと咀嚼しました。

「デデッ!デデッ!」

頭の半分近くを食いちぎられたためか、実装石は妙な声を上げてビクビクと動いています。

「煩いデスゥ、一思いに黙らせてやるデスゥ!」

実装石は偽石を取り出すと、思いっきり噛み砕きました。

「デッ!」

埋まっている実装石はビクンと跳ねるとそのまま動かなくなりました。

「デププ…美味いデスゥ!」

実装石は安らかに眠ることすら出来ず死んでしまいました。
実装石に生まれたためにこんな運命をたどったのです。
そして、この実装石も、直ぐに後を追うのです。


全てを覆い尽くすように雪が深々と降っています。

-fin-




■感想(またはスクの続き)を投稿する
名前:
コメント:
画像ファイル:
削除キー:スクの続きを追加
スパムチェック:スパム防止のため1782を入力してください
1 Re: Name:匿名石 2018/08/01-23:09:23 No:00005546[申告]
糞蟲すぎた
最初からニンゲンや他を追い出す気満々だし
2 Re: Name:匿名石 2024/02/21-09:06:23 No:00008757[申告]
とにかく他実装の真似をして(そして失敗して)いくスタイルに笑った
最近は他実装もあまり見ないけど結構楽しい
戻る