タイトル:【観察】 突然変異した実装石
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作者:匿名 総投稿数:非公開 総ダウンロード数:675 レス数:3
初投稿日時:2023/09/11-12:03:46修正日時:2023/09/11-12:03:46
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突然変異は頻繁に起こっているのだという。
しかし、それが後の世代に引き継がれる『進化』となることは少ない。
いくつかの例を紹介しよう。


   *   *   *


1.ポケット


とある公園で産まれた仔実装に、突然変異が起きていた。

「ママ、これはなんテチ?」

その仔実装の服には、親のそれにはない小さな袋状の部分がたくさんついていた。
おなかの前に大きめのがひとつ、腰の左右に中くらいのがひとつずつ。
さらに前掛けにも小さいのがひとつ。

「デデッ!?お服にポケットがたくさんついてるデス!」

親実装は仔実装の服に付いているポケットを見て驚きの声を上げた。
ポケットなどニンゲンに連れられた飼い実装の服についているのを
一度見たことがあるだけだったからだ…。

「ポケットってなんテチ?」
「ポケットがあると物が入れられて便利なんデス。
 ワタシのムスメはシンカした選ばれた実装石デスゥ!」

親実装は大喜び。
仔実装も何だか分からないが嬉しくなった。

「ワタチは選ばれた実装石テチ!」

こうして親に可愛がられて育った仔実装。
ポケットに木の実を入れて運ぶだけでなく、石をいくつも入れておいて
いざという時に相手に投げる戦法を思いついた。

「この石を投げれば悪い奴に襲われてもへっちゃらテチ!」

仔実装の投擲能力で小石を投げた所で大した威力はなさそうだが、
その仔実装はもはや自分にかなう者はいないと思い増長した。

…そして、人間に石を投げて脅したため、あっけなく潰された。
投石は人間の足に命中したが、ダメージにはならなかったのだ。

「あ?実装ごときがナニ人間様に石投げてんの?生意気なんですけど」
「一発でおしまいだと思ったら大間違いテチ!石はもっとあるんテチ!
 たんこぶだらけになりたくなかったら、シンカしたワタチに食べ物よこすテチ!」
「進化?…何のことか分からんが、石を投げる悪いおてては…こうだ!」

仔実装は続けて石を投げようとしたが、捕まって両手を折られしまう。

「チャアアアア!痛いテチ!やめるテチ!ワタチはシンカした実装せ————」
「チィチィ鳴くな、仔蟲!」
————ブチュッ
「ヂィィィィッ!」

あっけなく踏み潰され、その実生を終えた。
彼女は次代にその変異を残せなかった…つまり進化には至らなかったのである。
なおその実装服のポケットはというと…。

「ポケットのある実装服…こいつ元飼いだったのか?まぁどうでもいいか」

…以前の飼い主がつけてやったのだと判断され、踏みにじられてボロクズになったという。




2.スパイク


寒冷地に住む実装石が秋に産んだ仔に、突然変異が起きていた。
産まれた仔実装の靴には底にスパイクがついていたため、
冬になると凍った雪の上で転ばずに行動できた。

「氷の上でも滑らないテチ!ワタチはシンカしたテチ!」

だがそんな仔実装も、家族を襲う食料難からは逃れられなかった。
食料の乏しくなったある日、親実装がいきなり襲ってきたのだ。

「待つデスゥ!」
「テチャアアアア!ママ、何するテチ!」

凍った雪の上を、仔実装はスパイクのおかげでちょこまかと逃げ回った。
対する親実装は時おり足を滑らせているため、中々追いつけずにいる。
仔実装は逃げながら必死で親実装に命乞いをした。

「ママ!やめテチ!ワタチは選ばれた仔実装テチ!」
「そうデスゥ、オマエは今日のゴハンに選ばれたデスゥ!
 ママがおいしく食べてやるから安心するデスゥ!
 …ほぅら捕まえたデスゥ、じたばたするなデス…全く、邪魔なトゲトゲの靴デス。
 これのせいで捕まえるのに時間が掛かったデスゥ」

親実装は仔実装のスパイク靴を剥ぎ取ると雪の上に投げ捨てた。
そして、裸足になったその足に食らいついた。

「痛いテチ!やめテチッ!ワタチはシンカしたテッ…」
「クチャクチャ…」
「テヂャアアアア!」
「…ゴクン。げぇ~っぷ。とりあえず足だけにして、残りは後で食べるデスゥ…」
「テ…テ…ワタチの足さんが…シンカした足さんが…」

この仔実装は数日かけて食いつくされ、突然変異が後の世代に繋がることはなかった。




3.コロコロウンチ


ある野良一家に産まれた仔に、突然変異が起きていた。
その仔実装は、生まれつきウンチが軟便ではなくコロコロしていた。
臭いもきつくなく、もし飼い実装の家に生まれていたなら歓迎されたであろう。
いや、例え野良でも、便の臭いが薄いことは敵に居場所を知られにくくなるので
実装石にとって歓迎するべきことではあるのだが、ある問題があった。

「オマエのウンチは硬くて蛆ちゃんたちのエサにならないテチ。駄目イモウトチャテチ」
「レフー、オネチャのウンチ硬くて食べれないレフー。使えないオネチャレフー」
「テェェ…ワタチのウンチは臭くないシンカしたウンチなんテチ…」

蛆を除けば末っ子である仔実装は、本来なら蛆の世話を任されるはずだった。
しかし硬いウンチは蛆には食べさせられない。
よって蛆の世話はすぐ上の姉が代わりに行い、末っ子の仔実装は役立たず扱いされていた。

ある日、近所の飢えた野良一家が襲撃してきた。

『デジャアア!ニク寄こせデシャアアア!』『ニク食わせろテチィィ!』×6
「デデッ!?数が多すぎるデス!みんな逃げるデスゥ!」

一家は急いで逃げ出したが、末っ子の仔実装だけは蹴転がされて囮にされた。

「役立たずのオマエは要らんデス!囮になるデスゥ!」
「ママ、ワタチはシンカしたんテチ!見捨てないテチャー!」

仔実装は飢えた野良一家に食い殺された。
その際、生きたまま腹を食い破られたが…。

『デェ?腹の中の糞が硬いデス?ポロポロしてて取りやすいデス』
『ウンチが簡単に取り除けるテチ!食べやすいオニクテチ!』
『まるでワタチたちのために用意されたようテチ!』
『べちゃべちゃのウンチがないだけでこんなにおいしくなるテチ!』
「テェェ…ワタチがシンカしたのは…食べやすくなるためじゃない、テチィ…」

進化したはずの自分が親には要らないと言われ、
自分を襲った相手からは食べやすく美味しくなってるなどと言われてしまい…
仔実装はショックを受けながら死んでいった。
またしても、突然変異が後の世代に繋がることはなかったのである。


   *   *   *


このように、様々な突然変異は大半が無意味に終わり、
今日もいわゆる普通の実装石が、実装社会では幅を利かせるのだった。


~終~

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1 Re: Name:匿名石 2023/09/12-06:40:39 No:00007957[申告]
超頭いい仔産まれても秋仔だから問答無用で粘膜舐め取られず蛆のままにされて食われるとかあるんやろなあ…
2 Re: Name:匿名石 2025/03/09-07:20:50 No:00009556[申告]
変異した形質が次代に受け継がれることが少ないのは、その生息環境によるものであろう。
ある絵師さんのイラストによれば、砂漠地帯に定着した個体群の実装服は砂色であった。
繭化した蛆実装からならばもっと色々な変異体を発見できるのだろうか。
そのような変異を試行錯誤しながら実装石たちは環境への適応を模索していると考えれば、人間側からの品種改変も或いはもっと捗るのではないかと思わしき興味深いレポートであると思いました。
3 Re: Name:匿名石 2025/03/09-23:33:14 No:00009557[申告]
変異体はある程度生まれ易いんだろうけどその芽を摘んでいるのも実装石らしさからってのがジレンマよね
特別に滅法弱い実装石だからか変異を自覚して皆傲っているのがちと面白い
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